2023.12.07

『家計簿の夕べ』が開催されました。

こんにちは!
兜LIVE!編集部です。


2023年11月15日(水)、毎年恒例の人気のイベント『家計簿の夕べ』が開催されました。こちらは「夢をかなえ、豊かな暮らし、安心できる家計を実現する道具として家計簿をうまく活用して貰う」ことを目的としたイベントです。


物価高や新NISA開始などお金に関する変化が激しい昨今、不安を感じても実際に何をすればいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。


そんな方の味方になるのが、家計簿です。家計の状態を見える化できる家計簿は、個人や家庭における経済を回すためのツールとして昔から活用されてきました。


家計簿の効果や歴史について見つめ直す本イベント。当日の様子をレポートしていきます。


◆主催者代表の挨拶


始めに、家計簿普及促進委員会を代表して、「マネーツリー株式会社」ビジネスディベロップメント ディレクターの山口賢造(やまぐち けんぞう)さんによる開会の挨拶がありました。


「『家計簿の夕べ』も今年で6回目を迎えました。このイベントが開催されると年末が近づいてきた、という思いの方も多いと思います」


「当社の家計簿事業は、今年でちょうど10年目になりました。この10年間のあいだに、キャッシュレスが日常になったり、来年からの新NISA開始で若年層の方々も気持ちよく投資を始められる状況が作られてきた、といった変化を感じます」


「社会が目まぐるしく変わっていくなかで、家計簿をはじめとしてお金に関するリテラシーを良い方向に上げていく良い機会がどんどん増えてきました。今回、基調講演も非常に面白いテーマでお話をしていただきます。私も勉強させていただきながら、パネルディスカッションで自分が思っていることやこの10年間で考えたことをお話しできればと思っております」


◆基調講演「家計簿誕生の原点に立ち返る」


家計管理を支える家計簿は、いったいどのように生まれたのでしょうか。
今回の基調講演では「家計簿誕生の原点に立ち返る」と題し、家計簿を初めて世に送り出した婦人之友社の取締役経営企画室室長 山下純一(やました じゅんいち)さんおよび婦人之友社 デジタル事業推進室 柏崎まゆみ(かしわざき まゆみ)さんからお話をいただきました。


◆家計簿誕生の背景。羽仁もと子の”実験室”から生まれた

婦人之友社の山下純一さんからは、以下についてお話しいただきました。


・家計簿を初めて出版した婦人之友社の概要
・家計簿が生まれた背景や体系
・考案者である羽仁もと子について
・現代に続く『友の会』の概要



「120年前に考案された家計簿の出版元として、複雑化を極めている現代の家計の経済に対してどのように考えていくべきかをお話しさせていただきます」


「婦人之友社は1903年、羽仁吉一と妻の羽仁もと子によって創業され、今年創業120年を迎えました。創業日の4月3日は、羽仁夫妻の長女である羽仁説子の誕生日の翌日です。これが意味するところは、羽仁夫妻は自分たちの家を実験室にして、その実験結果を婦人之友社という媒体を通して世に問いかけた、ということです」


「婦人之友社は、創業者夫妻の娘が成長する過程において生じるさまざまな課題を実験して、その結果を報告し、共鳴した人たちの支持を得て拡大していきました。家計簿も、羽仁もと子の実験室の中で考案されました。単なる空想や理想論の押し付けではなく、彼女の実体験から生み出されたのです」


「羽仁もと子のもう1つの特徴は、結果を独り占めしなかったことです。実証実験で得た知見を世の中に問いかけて共有し、さらに実践してブラッシュアップしていきました。共同作業に関わった人たちが学んだ知見を自分たちの周りに広めていくコミュニティが『全国友の会』(婦人之友読者の集い)です。現在では、海外含めて180の支部、1万4,000人の会員がおります」


「羽仁もと子の家計簿が出版されたのは、1904年のことです。 当時、世の中では家庭における婦人の地位向上や生活機能の革新を研究するムーブメントが起きていました。羽仁もと子が予算の作成、記帳といった簡易帳簿方式の家計簿を考案したものが家計簿の最初の姿で、現在市販されている家計簿としては最も古いものです」



「家計簿の裏表紙には5つの特色が書かれており、創刊以来、変わらずに受け継がれています。特色の1つに、”どんなに経済の下手な人でも、この家計簿をつけていると、しらずしらず一家の財政を健全にすることができます。 ”と書いてあります。言い伝えですが、羽仁もと子は当初、家計簿の「けい」を「計」ではなく経営の「経」にしようとしたことがあったそうです。予算と実績を日時で記入し、家の経済を見える化する。これは、現代の経営管理と根本を同じくしています。家計簿は、まさに家庭を経営する帳簿なのです」


羽仁もと子が始めた「コミュニティで情報を共有し合い、改善していく」というスタイルは、現代でも受け継がれています。全国友の会では、全国800か所で講習会を行っており、オンラインミーティングも盛んだそうです。「家計簿の付け方というノウハウだけでなく、家計簿をつけることで分かる生き方の変化について、多くの人々が実体験を元にして学んでいる」とのこと。


家計簿は、ただ単に収入や支出の記録簿というだけではなく、人々をつなぐ掛け橋であり、皆でより良く生きるための手がかりだと感じました。


◆家計簿創刊の願いと120年の歩み


婦人之友社の柏崎まゆみさんからは、家計簿に込められた創立者の思想、120年に渡る会社の歴史、そして現代でどのように事業を展開しているのかをお話しいただきました。


「『貯蓄から投資へ』と言われるようになって久しいですがなかなか進まない現状の中、政策の目玉として2024年から新NISA制度が始まります。 投資熱が高まる一方で、生活の不安を抱えている人たちも多くいます」


「投資を始めるのに必要なのは お金や資産に関する知識、金融リテラシーです。人生100年時代の到来には、家計管理や生活設計に関わるリテラシーは不可欠です。人生100年時代を支えるツールこそが家計簿ではないかと考えていますが、まずは家計簿を作った当時のお話から、家計簿に込められた願いについてお話しします」


「1904年12月に羽仁もと子は家計簿を創刊しました。来年2024年12月には、家計簿創刊120年を迎えます。羽仁もと子が考案した家計簿には予算がありました。それまでも支出を書き留める帳面のようなものはありましたが、予算を持つことで家計を健全にできるというのが、当初から一貫している考え方です」



「ここで注目すべき点は、この時代に家計簿が欧米から取り入れたものではないということです。日本で誕生したという点で、家計簿の原点として、これは日本の文化だと刻みたいと思います」


「羽仁もと子は単に家計簿を作って売ったのではなく、家庭生活の改善や平和な社会の実現に家計簿の記帳が大事であると世の中に提唱しました。家族一人一人が家計の状況を理解して気持ちを一つにし、自立した関係で互いに協力していくようにしたいという彼女の考えは多くの賛同者を呼び、家計簿も広まっていきました」


「 第二次世界大戦が終息した翌年の1946年には、『家計簿をつけ通す同盟』が発足します。終戦後はひどいインフレで、落ち着いて家計簿をつけられるような状況ではありませんでしたが、統計学の権威である有沢広巳氏から『今のような大変な時代だからこそ、家計簿をつけ続けてほしい。家計簿をつけ続けることによって、どこにもない貴重な記録が生まれる』と励まされ、同盟が始まりました」


「同盟は、上半期の収支決算と下半期の私の希望を募集する形で始まりました。会員から郵送された収支報告書は毎月集計して『婦人之友』紙面上に掲載。1年が終わると、資料として会員に届けられました。毎月報告するという公的な目標を持つことで、同盟は家計簿の学校のような役割も果たしていました」



「こちらは、同盟の記録による家計の収入と支出の推移を示したグラフです。棒グラフは収入を表し、青い部分は世帯主の勤労収入、オレンジの部分が妻の勤労収入、折れ線が支出の合計を示しています。戦後のハイパーインフレで赤字家計だったのが、1952年頃からだんだん黒字家計になっていき、高度経済成長期は収入と支出が右肩上がりです。1993年まで右肩上がりだった総収入ですが、その後は下落しながらほぼ横ばいです。ちょうど日本のデフレの時期に重なります」


「デフレの30年間、収入も支出も伸び悩む経験をした私たちは物が安いことに慣れています。これからインフレの時代が来るとしたら、どんな苦労が日本人の家計を待ち構えており、どのように対処していればいいのでしょうか」


「ベストセラーになった『三千円の使いかた』(中央公論新社)という作品には、羽仁もと子の家計簿が登場します。著書の原田ひ香さんは、雑誌『婦人之友』への寄稿文の中で『日本が戦後にスピーディに立ち直った理由には、狂った物価高騰の中でも家計簿をつけ続けた市井の主婦の力があったのではないか』と書かれています。女性たちによる家計簿のチカラが結集して経済成長を支えた面を決して見過ごしてはならず、過去に学ぶべきことや忘れてはならないことがここにあります」


「これからの家計簿を語るとき、人生100年時代の到来が大きなテーマです。長寿社会が何をもたらすのか、婦人之友社では生活者の視点で研究し課題を見つけ、問いかけていくことを大事にしています。老老介護という言葉も聞かれ、80歳代で100歳代の方の介護する時代も珍しくなくなる時代も、もうそこまで来ているのかなと思います。 人生80年だった時代から人生100年のスパンで考える時代へと、家計の基礎概念をシフトしていく必要があるでしょう」


「家計簿の存在意義とは何ですかと聞かれたら、自分らしく生きるための指針になるものだとお答えしたいと思います。人によって心理的に安心できる金額も違います。だからこそ、『自分で』『お金と向き合うこと』が大切です」


「お金と向き合うには収入と支出を明らかにして、その数字を掴むことから始めます。 ところが今はキャッシュレス化が進んでお金が見えなくなり、自分がいくら使っているのか、ましてや自分以外の家族はいくら使ったのかを掴むことが難しくなっています。これから日本社会でインフレが起こるかもしれない局面で、家計簿の存在価値はさらに増すことでしょう。家計簿は日本の文化です 。次世代に継承するべく、これからも家計簿の啓蒙活動を続けていきたいと考えています」


◆家計簿普及促進委員会6社によるパネルディスカッション:「現在における家計簿の役割を再考する」

後半は、家計簿普及促進委員会6社によるパネルディスカッションが行われました。
「現在における家計簿の役割を再考する」を軸として、家計簿サービスへの想いや金融リテラシー教育などについてお話しいただく、聞き応えたっぷりのプログラムとなりました。


家計簿普及促進委員会パネリスト6社の紹介

まず始めに、パネリスト6社をご紹介します。


「マネーフォワード」が提供する家計簿アプリ「マネーフォワード ME」は、履歴情報から簡単に家計簿を作成できるサービスです。銀行やクレジットカード、ECサイトや証券など2,000を超える金融関連サービスから入出金履歴や残高、購入履歴などの情報を取得し、自動で家計簿を作成できます。ビジネスパートナーの方から主婦の方まで、地域や年齢、性別問わず幅広いユーザーが利用しています。

株式会社マネーフォワード


「くふうAIスタジオ」は、累計1,000万ダウンロードを超えるオンライン家計簿アプリ「Zaim」を運営しています。「毎日のお金も、一生のお金も、あなたらしく改善」をコンセプトに、レシート撮影や銀行、カードと連携して自動的に入力できる家計の管理機能のほか、サブスクサービスの見直しができる「Zaim 定額サービスチェッカー」、自治体から受けられる給付金自動抽出機能など、個人のお金にまつわるサービスを幅広く展開しています。
※ 株式会社くふうAIスタジオ


マネーツリーが提供する資産管理サービス「Moneytree」は、セキュリティ・プライバシー・透明性に重点を置き、 ユーザーが安心して利用できる環境を提供しています。登録日以降のデータを永年保存、AIによる明細のカテゴリ自動判別、他のサービスとの連携など、便利で賢い機能が揃っています。広告表示がない点も嬉しい家計簿です。
マネーツリー株式会社


「スマートアイデア」は、2秒でつけられる簡単家計簿アプリ「おカネレコ」を運営しています。電卓をモチーフにしたシンプルな画面設計と、会員登録や金融機関登録不要という手軽さが特長のサービスで、利用者は480万人を突破。入力が簡単で”続く”家計簿アプリです。
スマートアイデア株式会社


「婦人之友社」の創設者は、家計簿を考案して世に広め、家計運営を推奨した羽仁もと子さん。予算生活を基礎にした羽仁もと子案家計簿は、現在もロングセラーとして多くの人々に親しまれています。
2020年にはクラウド版家計簿「kakei+(カケイプラス)」も加わり、多様化するライフスタイルに合わせて多くの子育て世代の家計を応援している会社です。
株式会社婦人之友社


創刊から73年。家計簿初心者からやりくり名人まで幅広い方々に活用いただける「明るい暮らしの家計簿」は、金融広報中央委員会の前身「貯蓄増強中央委員会」が長年改良を加え完成させた「家計簿の決定版」。
会社のキャラクター「ときわん」とFPが家計管理のお悩みを解決するYouTubeチャンネル“ときわんTV”で無料動画の配信を行っています。
ときわ総合サービス株式会社


◆テーマ①家計簿を提供する原点は?現在の各サービスの状況は?


いよいよパネルディスカッションがスタート。
まず最初のテーマとして、各社代表に家計簿サービスを提供したいと思った動機や起業の理由をお答えいただきました。


●「ときわ総合サービス」内田裕之(うちだ ひろゆき)さん

『明るい暮らしの家計簿』は、昭和28年に貯蓄増強中央委員会が発行した家計簿が元になっています。日本経済の復興には貯蓄の増強が必要というスローガンを立て、その活動の一つに家計簿運動があったそうです。


「ときわ総合サービス」は、昭和25年に「日本信用調査」という社名で設立されました。手形振出し企業の信用を公正中立的な立場から判定する企業としてスタートし、家計簿の発行にも携わっていたようです。


家計簿を何十年も利用されてきた方は多く、見返すとその時代の思い出が蘇るという声もよく聞きます。大変だった時代も家計簿を続けたことで乗り越えられたという体験談を耳にしますと、たかが1冊の家計簿ですが、各家庭の生活の根幹に携わって歴史や思い出作りに貢献できていることを大変誇りに思っています。


●「マネーツリー」山口賢造(やまぐち けんぞう)さん



データを集めることで収支を簡単に見える化し、家計簿を続けられるようにしたい、というのがサービスのスタートです。


個人的な話ですが、2012年は自分で立ち上げたアプリデザイン会社を、マネーツリーのメンバーが偶然見つけてくれて、デザインの依頼を受けたのが始まりでした。
マネーツリーの代表メンバーはオーストラリアとアメリカ出身の外国人で、彼らは日本の家計簿文化をすごく面白がっていました。「家計簿が続かない人に向けてサービスを作りたい」と言っていたのをよく覚えています。外国でも銀行の明細書を集めるなど家計簿に似た習慣はありますが、記帳という感じではなかったので、新鮮だったようです。


今はクレジットカードやキャッシュレス決済が当たり前になってきて、もうキャッシュレスの流れは止められません。こういった新しい習慣が家計簿に対してどう影響してくるか、1利用者としても期待しているところです。


●「スマートアイデア」江尻尚平(えじり しょうへい)さん



以前やっていた会社はガラケーをメインにしたマーケティングリサーチの会社だったのですが、ガラケーが無くなるにあたって、新しいことを始めようと考えました。当時は非常にお金に困っており、日々出ていくお金をうまく管理できないかと思ったのです。


家計簿をつけようかと思いましたが、なかなか紙の家計簿はハードルが高くて。せっかくスマートフォンアプリという世界が出てきたのだから、そこで便利なものを作れたらたくさんの人が喜んでくれるのではないかと思い、2012年に「おカネレコ」を作りました。


「誰でも使えて、誰もがつけられる家計簿を作ろう」と考え、簡単でシンプルな電卓のインターフェースにしました。計算機を使ったことがある方は使えるというわけです。多くの方にダウンロードいただき、「家計簿が続かないことに悩んでいる人がこんなに多かったんだな」と気づきました。ここは解決していくべき領域だと思い、どうすれば皆さんが家計簿をつけられるかを一生懸命考えてやってきました。


●「マネーフォワード」瀧俊雄(たき としお)さん



起業するきっかけの1つは、アメリカの「Mint(ミント)」という家計簿サービスです。アメリカにはこんなスマホアプリがあるのに、なぜ日本にはないんだろうと思いました。当時の日本では、自動型家計簿はコンピュータの画面で見るものでした。でも「お金が気になったら手元で見たい」と思っていたので、Mintに影響されて起業しました。


2011〜2012年頃にスマートフォンが普及しはじめたのでスマホアプリでサービスを出せること、そしてクラウド上で開発する環境が比較的安く手に入るようになったこと、これらの条件がそろったのも大きなきっかけでした。


家計簿は人がスマホで最初にインストールするアプリの1つなので、最初に動いた世代のサービスが残っているように思います。2011年頃は日本経済の雰囲気も暗かったですし、役に立つアプリを作って雰囲気を変えたい、という気持ちがありましたね。


●「くふうAIスタジオ」志賀恭子(しが きょうこ)さん



弊社代表の閑歳(閑歳孝子氏)は家計簿が作りたかったわけではなく、人が自由に行動するために重要なファクターとなるお金を、一人ひとりが主体的に使えるような世界観を目指してサービスを開発したといいます。


「一人ひとり家計簿の使い方は自由」というのは、紙もアプリも同じだと思います。もちろん節約のためでもありますが、いろいろな人がそれぞれ好きな使い方をして、「何かに価値を感じてお金を払っている」というのをログとして残していく。そしてログを見たときに「もっとこういう風に人生を変えていきたい」とか「今の自分が好きだな」と思えるような振り返りができるものを作りたい、と閑歳は考えています。これからもそれを続けていきたいし、お金から発生する思い出やログが残っていくサービスを作っていければと思います。


●「婦人之友社」柏崎まゆみ(かしわざき まゆみ)さん



皆さんのお話をうかがって、家計簿サービスを提供する原点のどこかに「誰でもつけらえるものを作りたい」「誰でも続けられるものを作りたい」という思いがあるんだなと思いました。119年前に生まれた家計簿が、令和の時代にこんなに多様性を持って進化したことを羽仁もと子が知ったら、何を考えるのだろうと想像します。


婦人之友社は紙のおこづかい帳や家計簿を出版しながら、クラウド家計簿サービスも出しているという点では、社会の中では唯一の会社です。子どもから高齢者まで、すべての人のお金のことを社会に伝えていくという役割を感じました。


◆テーマ②自社サービスをどのように使って欲しいか。最近の「推し」機能は?


●「くふうAIスタジオ」志賀恭子(しが きょうこ)さん

画像を入れることができるので、レシートの撮影だけでなく、作ったご飯や出かけた場所の写真も付けるなど、思い出を振り返れるような使い方もしていただけたらと思います。


最近、買った食材をAIで読み取ってレシピ提案をする機能をリリースしました。家計の記録ではありますが、記録をすることによって暮らしが少し豊かになるようなサービスをどんどん作っていきたいです。


●「マネーフォワード」瀧俊雄(たき としお)さん

サブスクリプションサービスを一目で把握できる機能「サブスクレポート」は面白いと思います。サブスクを見直す延長線には、固定費を見直すということがあります。固定費の見直しは、家計改善には能動的な行動です。変動費の見直しよりもキツい意思決定ですが、そこには向き合う問題のちゃんとした痛みが隠れていると思います。


●「婦人之友社」柏崎まゆみ(かしわざき まゆみ)さん
羽仁もと子案家計簿は、暮らしに根付いた費目分けが魅力です。他社さんに比べて費目が多いのですが、お金を何に使ったかという見える化が得意です。クラウド家計簿「kakei+」は、費目分けに迷わない費目アシスト機能がついています。予算があることで、何に使えばいいかが数字で見えてくるんですね。


また、私どもの家計簿の特徴として、昔から利用者と距離が近いことが挙げられます。今も「家計簿110番」という問い合わせ先がありますので、記帳につまづいたときは遠慮なくお問い合わせいただきたいと思います。


雑誌やnoteで読み物も提供していますので、それらを通して家計に関するリテラシーを高めていただきたいと願っています。



●「スマートアイデア」江尻尚平(えじり しょうへい)さん
私がファイナンシャルプランナーとして話す場合などに、「家計簿をつけてますか」と質問すると、皆さん暗い顔をされるんですね。「家計簿は難しい」という印象がついてしまっているので、それを変えなければいけないと思っています。


そこで、今年の9月に「マイポケ」をリリースしました。家計簿をつけるとキャラクターが育っていくという育成ゲームのような機能です。その後のアンケートでは、回答いただいたうち16%の方が「家計簿が習慣化した」とお答えいただきました。


気づいたのは、家計簿を楽しいものにすることで継続の効果が出せるということです。自動化や手軽化という方向性もありつつ、家計管理を楽しい世界にできればと思っています。


●「マネーツリー」山口賢造(やまぐち けんぞう)さん
一番の売りは自動化です。弊社の家計簿アプリではIDが作成されますが、このIDがあれば、他社さんのサービスに資産情報を持っていける機能を提供しています。例えば、マネーツリーで貯めたデータをお客さまの同意の元に連携させて、確定申告に使ったり、資産データを計算して投資に回したり、保険会社や証券会社のシミュレーションに使ったりできます。具体的に将来設計したい方にとって便利な機能だと思います。


●「ときわ総合サービス」内田裕之(うちだ ひろゆき)さん
キャッシュレス決済が普及した時代だからこそ、自分の手と頭を使って家計簿をつけて、収支を見える化していただきたいと思っています。キャッシュレス決済はメリットが多い一方で、データ上の数字が動いてるだけなので、お金を使った実感が感じにくいのです。ですので、家計簿にしっかりと記録を残して、買い物をしたという実績を残していただきたいです。


電子的な取り組みとしては、昨年から YouTubeで“ときわんTV”をスタートしました。社内FPが記帳のコツや見えないお金の管理方法、家計管理のアドバイスなどをご紹介していますので、ぜひご視聴いただければと思います。


◆テーマ③日本の金融リテラシーの現状評価 家計簿は金融リテラシーを向上できるか


●「スマートアイデア」江尻尚平(えじり しょうへい)さん
金融の知識は、なかなか行き届いていないと感じます。私がおすすめしているのは、「つける・貯める・増やす」という3つの力です。「つける」はまさに家計簿の記帳のことで、家計を見える化することを最初にお伝えしています。見える化しないと、どこが問題があって何を改善すべきかが分からないんですね。そういった意味で、家計簿は金融リテラシーの中で初歩であり、一番重要なところだと思います。


●「マネーツリー」山口賢造(やまぐち けんぞう)さん
YouTubeの普及は金融リテラシーの向上とすごく結びついていると感じます。 自分と同じ悩みの人に向けたコンテンツを簡単に探せますので。


個人的に「倹者の流儀」というYouTubeチャンネルをたまに見るんですが、さまざまな節約の工夫が紹介されていて面白いです。見ていると「自分にもできるんじゃないか」という気持ちになりますし、「こういうやり方があるんだ」という気づきも多いですね。FPさんのような専門家に聞くのもいいですし、自分と同じような課題を持っている人をYouTubeで見ると勉強になると思います。


●「ときわ総合サービス」内田裕之(うちだ ひろゆき)さん
金融経済教育推進機構が立ち上がり、講師の派遣や株式ゲームの無料配布など、投資や金融リテラシー教育の環境づくりが着々と進んでいると感じます。


ただ、教育現場では二極化が進んでいます。公立校では金融リテラシーを追加する余裕がなさそうに見える一方、私立では積極的に取り入れている中高一貫校もあるため、学校によって差がどんどん開いてしまいます。


そこでまず家庭内でできるアイデアとしては、家計管理に子どもも巻き込む、というものがあります。進学や海外旅行などのライフプランを実現するには家族全員の協力が必要なので、共通の目標であれば皆で協力して前向きに進められるのではないかと思っています。



●「マネーフォワード」瀧俊雄(たき としお)さん
子どもたちにお金の話をするとき、自分の仕事の話は比較的聞いてもらいやすいと感じます。例えば、「お給料はどうやって決まるのか」などですね。身近にサンプルが少ないせいか、子どもたちは収入の解像度が低いので、そういう点を見せてあげるのがポイントの1つだと思います。


また、心がけているのは「簡単に見せたい」という欲求に耐えることです。世に出ている投資のイメージ図を見ると、現実的にはありえない倍率でお金が増えていたり、前後のイラストで投資した人が老けていなかったりします。詐欺って、ものすごくシンプルにして分かりやすく伝えてくるんです。


詐欺に対抗して、子どもたちにお金を教えるときもシンプルにしたくなるんですが、「確かにちょっと難しいことを教えている」ということを一回認めた方がいいと考えています。


●「婦人之友社」柏崎まゆみ(かしわざき まゆみ)さん
電車の中で、高校生が指値オペのタイミングや長期金利などについて勉強している姿を見たことがあります。そういう高校生がこれから大人になるんだと思ったら、大人はうかうかしていられないと思いました。


私たち日本人は、どれだけ正しくお金を理解できているのでしょうか。記帳でつまづくきっかけは人それぞれですが、背景にはお金の動きの捉え方やリテラシーの危うさがあるという実感があります。


家計簿は、個人の金融リテラシー向上の練習問題集のような役割を持っているのではないでしょうか。お金のことを正しく知れば上手に使えるようになりますし、長寿社会でも自分らしく豊かに生きることが何か分かるようになると思います。生きているかぎり、記帳の習慣を継続して行くことが大切だと思います。


●「くふうAIスタジオ」志賀恭子(しが きょうこ)さん
まだまだ「お金」という言葉が汚いとか、稼ぐことについて人前で話しづらいという風潮があり、ご家庭で親御さんがお子さんと話す機会が増えづらいのかなと思っています。そういった親御さんに向けて、サービスを通して家庭内のお金の話を促進していける仕組みを作っていければと考えました。


今の時代、お金を増やすための選択肢も増えてきています。家計簿を起点として、お金を使うだけではなく、お金の増やし方の選択肢を提供できる仕組みができるといいのではないかと感じています。


◆テーマ④若者世代、高齢者世代へお金との向き合い方をアドバイス


●「ときわ総合サービス」内田裕之(うちだ ひろゆき)さん
金融広報中央委員会が出している世論調査によれば、8割もの人が老後の生活に不安を感じており、その理由の7割が十分な金融資産がないからということです。ただ、不安の声が聞こえる一方で、海外旅行に行ったとか自家用車が新車の高級ミニバンに代わったなんて話も耳にします。日本人特有の性格で、自慢話にならないように楽しくお金を使ったことよりも苦労話を強調して話すために、不安ばかりのイメージになってしまうのかなと思います。


世論調査には、心の豊かさを実感するための条件を尋ねたアンケートもありました。現在心の豊かさを実感している世帯は、1番目に健康、2番目に経済的な豊かさ、3番目に家族との絆が大事だと回答していました。それに対して、現在心の豊かさを実感できていない世帯は、1番目は経済的な豊かさ、2番目に健康が来て、家族との絆はなんと6番目だそうです。


経済的な不安が原因で家族の絆の重要性が弱まってしまうというのは、大変残念なことです。お金のプランを漠然としたままにせず、家計簿をつけて1つ1つの不安にしっかりと向き合うことが、心の豊かさを実感できる家庭につながっていくのではないでしょうか。


●「くふうAIスタジオ」志賀恭子(しが きょうこ)さん
家計改善や投資に対してハードルが高いと感じられてる方は大勢いらっしゃると思います。一人ひとりお金との向き合い方や考え方、スタイルは違いますので、それぞれを支援するサービスを提供したり、事例を紹介したりする仕組みができればと思います。


世の中の制度がどんどん変わっていく中で、自分は遅れてしまっているんじゃないかと不安にならないように、気軽に始められたり多様性が受け入れられたりしていることを押し出していけたらと思います。


●「スマートアイデア」江尻尚平(えじり しょうへい)さん
日本では貯金や貯蓄で貯めてきた世代がほとんどで、増えることもあれば減ることもある投資に対してどう向き合うかは難しい問題だと思っています。ハイリターンにはハイリスクがある金融の世界を肌身に感じないとダメなのかなと思いますね。


大事なのは、一歩を踏み出すことです。2,000円など少額でも投資を始めることで、知識だけではなく体感していくことが重要です。少しずつチャレンジして、小さなリスクに向き合うところから慣らしていくのがいいんじゃないかなと思います。



●「マネーフォワード」瀧俊雄(たき としお)さん
今までと環境が変わってきていると思います。一つは、政策的にはインフレを待ち望んでいたとはいえ、物価高は実態としては全然いいものじゃないこと。もう一つは、賃上げ可能な社会になってきているので、人の取り合いになっていくということです。


転職や副業など含め、賃上げの波にうまく乗れる方法を何か考えられるといいと思います。我々はそういったサービスは提供していませんが、さまざまな企業がメッセージを出しているので、いろいろ見てみてはいかがでしょうか。


●「婦人之友社」柏崎まゆみ(かしわざき まゆみ)さん
節約志向は日本人の性質なのか、ちょっと過剰なぐらいに防衛している感があり、もっと自信を持ってお金をしっかり使ってもいいんじゃないかなと思います。


ただ、投資はリスクがあることなので、覚悟がないままになんとなくだとか、みんなが月1万でやってるからといった感じで始めるのは良くないと思います。生活準備金を持たずにお金をすべてつぎ込んでしまうのも、食費などを切り詰めて投資資金を捻出するのも良くありません。投資は、余剰のお金で行うものです。特に食費は健康のために必要な支出なので、しっかりと予算を取っていただきたいです。


●「マネーツリー」山口賢造(やまぐち けんぞう)さん
自分自身で実感しましたが、嫌なことを先送りしたい性格の人はクレジットカードや後払いは控えたほうがいいです(笑)。代わりに、デビットカードをおすすめしたいです。利用した金額がその場で口座から引き落とされるので、現金と同じ感覚で使えますから。やっぱり、お金が出ていく痛みを知るっていうのはとても重要だと思います。

◆質問コーナー

パネルディスカッションの最後には、参加者からの質問にパネリストの皆さんがお答えくださいました。


『小学生のような幼い子どもたちにお金そのものについて興味を持ってもらうためにはどうしたらいいのでしょうか』


●「マネーフォワード」瀧さん
おこづかいを使い切るように圧をかけるのがおすすめです。肝心なのは、お金を稼ぐ方法よりも買うことを覚えさせることです。そうすれば、子どもは「くだらないものを買わされる」という体験ができるんですね。大した金額ではないですし、失敗は早い方がいいんです。


『実際の家計簿ユーザーからのフィードバックはどのように活かされていらっしゃいますか』


●「婦人之友社」柏崎さん
実際に使っているユーザーの声はすごくヒントになるので、機能追加や使いにくい部分の改善に生かしています。「これは!」と思うご意見はメルマガ等で紹介しますし、新サービスである「kakei+」は、友の方と一緒に育てていきたいとお伝えしています。Windows版のソフト開発でも実際に利用者の方の声から新しい機能をどんどんつけていった経験がありますので、今の時代に合うものを新しい頭で作っていかなければいけないと思っています。


◆まとめ


119年前に日本で生まれて海外にも広まり、多くの家庭の経済を見つめてきた家計簿。ただの数字の記録にとどまらず、個人や家庭の生活状況を映し出し、より良い将来を作るための指針という役割も果たしていると気づきました。


不安とは「知らない・分からない」から来るものです。今現在で何が問題なのかを知り、お金の不安を解消するための第一歩として、ぜひ家計簿を手にとってみてはいかがでしょうか。


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