2018.12.06

ここでしか聞けない話を肴に美味しい日本酒を味わう― 『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました!

こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
 
11月10日(土)、東京メトロ茅場町駅からほど近いイベントスペース・FinGATE KAYABAにて、イベント『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。


毎回、参加者の皆さんに大変好評なこのイベント、今回のゲストは関谷醸造7代目蔵元の関谷健さんです。伝統的な酒蔵を営みながら、革新的な挑戦を続ける関谷醸造の取り組みや、そこから生まれた日本酒について、そして利き酒・試飲タイムと盛りだくさんの内容をレポートします。


 
◆パイオニア精神を受け継ぐ「関谷醸造」

関谷醸造株式会社7代目蔵元:関谷健さん


関谷醸造は、元治元年の1864年に、愛知県設楽町にて創業された酒造会社です。もともとは、年貢の米を扱う庄屋であったという関谷家。そこへ婿養子として入った初代蔵元が、独立をするために米で商売をしようと考えたのが、起業のきっかけとなりました。

婿入り先の家業に甘んじることなく、事業を興した初代蔵元のパイオニア精神。現代にも脈々と受け継がれているこの精神が分かる、エピソードをひとつご紹介いただきました。
 


1993年、関谷醸造は季節雇用の蔵人主導で行っていた酒造りを、通年雇用の社員だけで完結するよう転換を図りました。日本酒造りの職人である「蔵人」は元来、冬に出稼ぎという形で酒蔵にて従事し、春になると地元へ帰ります。しかし、蔵人の高齢化によって人材を確保できないという危機的状況が発生。そこから社員を一流の蔵人にすべく養成を実施し、自社のスタッフだけでの酒造りを可能にしました。

これは愛知県にある中小規模の酒造会社の中で先駆けて行った、当時では非常に革新的な取り組みだったそうです。


◆農業への本格的参入「酒米をつくる」


2007年、関谷醸造は農業への本格的な参入をします。そのきっかけは、酒米「夢山水」を作る農家さんと意見交換会をした時の「わしらを見てわかるとおり、だいぶ高齢化が進んどる」といった一言だったそうです。


設楽町では後継者不足などから70~80代の農家さんがまだまだ現役で働いているのが実情で、将来的に事態が深刻化するのは明らかでした。当時はどうすることもできなかったものの、関谷さんの心にずっと引っかかっていたその言葉。小泉政権時代の規制緩和を機に「うちで田んぼを引き受けよう」と、農業経験が全くない社員たちと共に、田植え機の乗り方を覚える事から農業をスタートさせました。

今では25ヘクタール、東京ドームに換算するとなんと8個以上という広大な農地で、酒米を栽培しているそうです。


◆地元の厳選素材で作る最高の日本酒「蓬莱泉 摩訶」


 関谷醸造には「蓬莱泉 吟」という日本酒があり、もともとは主力商品として販売展開していました。しかし「『吟』自体も素晴らしい商品とはいえ、原料米が『山田錦』で、地元で作れない米だった」のが気がかりだったと関谷さんは言います。

創業150年の節目に、酒蔵最高峰の一品を作りたいと考えたとき、米・水・麹と材料すべてを地元のもので仕上げた日本酒にしようと生まれたのが「蓬莱泉 摩訶」でした。
 



材料は、自社の一番の田んぼで採れた最高の出来の米を使用し、地元・奥三河の湧水で仕込みます。ラベルの絵と書は、地元の書家である福瀬餓鬼氏の作品という徹底ぶりです。

関谷さんは、「最高峰」を分かりやすく伝える方法のひとつとして、地元の素材にこだわる事がとても有効だと言います。なぜかというと、ワインなどの品質を保証する「原産地呼称制度」にあるように、「地元の素材を使用=高品質」というイメージを多くの消費者が持っているからだそうです。


また、材料をすべて地のもので揃えたというこだわりが、商品の個性としてそのままアピールポイントにもつながります。自社で酒米を作るようになったのも、良いきっかけになったとの事でした。


杜氏による酒造りも「好きなようにやらせている」そうで、その自由さが日本酒の美味しさにも反映されているのではないかと想像しました。


◆美酒に酔いしれる至福のひと時「利き酒・試飲タイム」


貴重なお話を聞くにつれ、「早く関谷醸造さんの日本酒が飲みたい!」と高まる欲求!いよいよ待ちに待った利き酒・試飲の時間がやってきました。まずは、A・B・Cと名前が伏せられた3種の日本酒を飲み比べ、正解を当てる利き酒タイムです。

対象の日本酒は「蓬莱泉 和(純米吟醸)」「蓬莱泉 和 熟成生酒(純米吟醸)」「別撰 蓬莱泉(普通酒<特別本醸造規格>)」。見た目はほとんど変わりませんでしたが、飲み口と香りにずいぶんと違いがありました。


 


「美味しいなぁ~」と悦に入りながら、ふと参加者の皆さんを見回すと「全問正解するぞ」と神経を研ぎ澄ませて飲み比べているご様子。私も気合いを入れ直して回答しました。

結果は、参加者の4割ほどの方が全問正解されていて、なんと私も全問正解できました!ただ、飲み比べているうちにすぐ酔ってしまったので、ビギナーズラックでの勝利です。

その後、ふるまわれたお酒は「蓬莱泉 摩訶」「蓬莱泉 美」「蓬莱泉 ROKU_」の3種類。どれも蔵元・関谷さんおすすめの逸品です。私はキリっとした飲み口で「摩訶」が一番好きでした。


関谷醸造の日本酒は、仕込み水の性質から香りが控えめな商品が多いそうです。しかし今回は、その中でも「香りが強い珍しいラインアップになった」とお話がありました。

レアな日本酒を贅沢に飲み比べできるのも、こうしたイベントならではの楽しみです。




今回、日本酒に合わせて用意されたおつまみは、地元・愛知県ゆかりの3種「三河猪家の猪ハム」「鶏肝の山椒煮」「クリームチーズの味噌漬け」です。

関谷さんが事業を運営する上で大切にしている事のひとつに「地域内経済循環」があります。地元の酒蔵・生産者が作ったものを地域外にて販売し、言わば「外貨」を獲得することで地域経済を豊かにしていきたいと考えているそうです。


また、これらはすべて、関谷醸造直営のレストランバー「SAKE BAR 圓谷(まるたに)」で提供されているメニュー。日本酒を知り尽くした酒造会社ならではの、日本酒にバッチリ合うおつまみで、皆さんどんどんお酒が進みます。お酒の力で場もなごみ、関谷さんも交えた日本酒トークがあちらこちらで花を咲かせていました。
 

◆まとめ


今回のイベントを通じて感じたのは、関谷さんの「地元愛」です。地元の農業を支えるために農業参入を果たしたり、地域経済を活性化させるために「地のもの」を大切にしたり。「設楽町は本当に何もないド田舎なんです」と、冒頭に冗談めかして地元を紹介されていましたが、地元を愛するからこそ、より良い日本酒を作って地元を発展させようという強い気持ちを感じました。


また、関谷醸造では田植え体験や酒造り見学といった「コト消費」にも力を入れていて、時流のマーケティングについても学べた非常に有意義な時間となりました。12月にも同様のイベントが開催されますので、日本酒好きはもちろん、マーケティングに興味のある方なども、是非来てみてほしいです。何か「気づき」をもたらすひと時になるのではないでしょうか。


イベント後は、神田べっぴんにて2次会も開催しました♪



本当であれば、土曜日はお休みだったのですが、お店を開けていただきありがとうございました!


兜LIVE!では、今後もお酒を通して学び、楽しめるイベントを開催していきたいと思います。次回もお楽しみに!


関谷醸造


神田べっぴん



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