イベントレポート

2019.03.06

法政大学特任教授・陣内秀信さんの取材に行ってまいりました!


みなさん、こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
 
今回は1月26日(金)の『Tokyo Financial Street』にお越しいただいた、建築史家にして法政大学特任教授である陣内秀信さんの取材に行ってまいりました。
 

*陣内秀信さんプロフィール
建築史家、法政大学特任教授。イタリア建築、都市史を主な研究領域とし、ヴェネツィアと戦前までの東京の類似性を指摘した『東京の空間人類学』でサントリー学芸賞を受賞。日本橋付近の水辺の活用方法などの研究し、水の都市として再生させるための取り組みも行なっている。
 

\こんなことをお聞きしました!/
◆ ヴェネツィアと日本橋兜町エリアの共通点
◆ 陣内さんの描く理想の兜町
◆ 都市空間の整備がもたらす街の魅力向上とは
◆ 兜町・茅場町の人たちに対するメッセージ
 


◆ かつては東京も水の都だった 


兜LIVE!編集部(以下、兜):陣内さん、こんにちは。 本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。陣内さんは、東京とイタリアのヴェネツィアには共通点があると仰っていますが、実際にどのような共通点があるのでしょうか?


陣内さん:ヴェネツィアとかつての東京、江戸には似ているところがたくさんあります。銀座も京橋も八丁堀などのエリアも元々は別々の島だったんです。現在では埋め立てられてしまった部分が多いですが、かつては水路が網目のように街の中を巡って、そこを船が通っていて港の機能を果たしていました。


ヴェネツィアも同じで、港の機能が街の中に全て入っているんです。それからさらに面白いことはヴェネツィアにはカナルグランデっていう大動脈にあたる運河が逆S字型に町を流れてるんですけど、江戸にも同じ様に日本橋川が流れていました。


真ん中にカナルグランデとしての日本橋川があり、商店が集まり商業の中心となる。そして、その付近には魚市場があって庶民の生活の場となり、裏手には吉原の遊郭や堺町・葺屋町の芝居町がありました。この街の形成はヴェネツィアによく似ているんです。


:江戸に水路が行き渡っていたことは、現在の東京の景色からは想像がつきませんね...。


陣内さん:昔、鉄筋コンクリート技術の先駆者の一人と言われている中村鎮さんという建築家の方が「東京水上都市公園」という計画を雑誌で発表しました。江戸橋から現在の日証館のあたりにかけて、情緒ある江戸由来の建築を活用しながら、水上に都市空間を作ろうという計画を立てていたんです。そういう話が出てくるぐらい、当時の人々は水辺に思いを馳せていたんですね。


ところがだんだん船が使われなくなり水辺に視点が行かなくなると水が汚れてきてしまいます。さらに、1964年の東京オリンピックの際に日本橋川の上に首都高速ができました。そのため、現在は素敵な水辺がうまく活用されていないという状況です。


でも、最近はだんだん水がきれいになりましたよね。しかも船が水辺に少しずつ戻ってきています。あとは、首都高の地下化の計画があり、それが実現すれば日本橋川の景観はもっと綺麗になります。しかし、首都高の今後についてはいろいろな議論があり、外郭環状道路が完成すれば、都心への車の乗り入れが減り、都心環状を取り去ることが可能になる、という専門家も多くいます。



◆兜町エリアを、水辺を生かした街に


:現在このエリアでは再開発が進んでいますが、兜町・茅場町がどんな街並みになると良いのでしょうか。陣内さんご自身の意見をお伺いしたいです。


陣内さん:いずれにしても、首都高が日本橋川の上からなくなるまでかなり時間がかかるでしょうから、それ以外の活動にも力を入れて欲しいですね。


例えば、最近は「かわてらす」という民間事業者が川の近くにテラスとテーブルを設置し、そこで飲食を楽しめるような場所が少しづつ増えてきています。


兜町にある日証館も水辺に船着場を作るなど、素敵な水辺の活用方法を検討中です。そうやって一つ一つの活動を繋げていくと日本橋川の魅力が高まり、多くの人の関心が生まれ、需要も増えてくる。そうなってくると兜町エリアは、東京の中でもっとスポットライトを浴びるような場所になれるはずです。


:水辺を意識した街づくりですね。船着場が出来たら兜町も随分変わりそうですね!


陣内さん:都市は色々な要素の複合化が重要です。時代によって同じものを続けていったらいずれは衰退してしまうので、新しい趣向や機能を入れる。ほとんどの都市がそうやってステップアップしてきました。


銀座の街づくりに長い間関わっているのですが、見てるとやはり時代とともに街づくりの方針が変化しています。良い方向にばかり変わってはいないかもしれないけど、やっぱり新しいことにチャレンジして時代に適応する、ブランディング化する、魅力を高める、ということを目指してきたわけです。


だから、兜町エリアも金融の街ということをベースにしながら新しい要素を入れてもっと積極的になって欲しいです。ギャラリーや美術館の設置も考えられるだろうし、水辺に近いというのは最大のメリットなので、素敵な景観を最大限に活かして欲しいなと思います。



◆兜町には機能の多様性が必要


:兜町には日本橋川や日証館などの河川だけでなく昔ながらの建築物もあります。こういった都市空間を整備することは、国際金融都市としての街の魅力向上にも繋がるのでしょうか。


陣内さん:兜町エリアの土地としてのポテンシャルは当然あります。そのため、マンション地区だけは避けて欲しいと感じています。兜町エリアは金融発祥の地でもありますから、"住"だけでなく様々な機能をもった街になって欲しいと思います。


:様々な機能とは、実際にどのような整備が考えられますか?


陣内さん:例えば外国からきた人達との交流の場。もちろん金融の世界でも大切だと思うんですけど、様々な人たちが交流できる場所があるといいですね。


あと飲食店もですよね。夜が少し寂しいかな...と思っています。兜町エリアは、24時間明かりが煌々と灯っている必要は無いけど、少なくとも夜の0時くらいまでは賑やかさのある、都心ならではの魅力を持った街にもなるべきだと思っています。


それともう一つ重要なのは、近隣の人たちが楽しむことができる場所。例えば虎ノ門ヒルズのような、ベビーカーを押した子供連れの家族が楽しめるような空間があってもいいわけです。ビジネス街というベースは大事にしつつも、でもそれだけにこだわらないことが大切だと思っています。



◆過去を踏まえつつ、新しいものを取り入れてより魅力的な兜町へ


:最後に、兜町・茅場町に関わっていき、これから新しい街をつくる方々に対してメッセージをお願いします。


陣内さん:兜町・茅場町は江戸から現代にかけて活気があって、いろんな機能と活動があった舞台ですよね。今は少し大人しくなってしまっているけど、深い歴史がたくさん残っているはずです。


元々持っている立地上のメリットを踏まえた上で、過去から学びつつダイナミックに新しい要素を加えて組み替えていく。今の兜町にはそういうチャレンジングな姿勢が求められていると思います。


そのためにも海外都市の視察にもっと行った方がいいと思っています。今の日本人たちはあまり海外に関心がなくなってしまっている。ニューヨークの動き、ハンブルクの動き、ロンドンの動き。世界では様々なことがたくさん起こっています。やっぱりそれを実際の目で見る必要があると思っています。


:街に多様性を取り入れていくということでしょうか?


陣内さん:そうです。ミラノだと、証券取引所の近くにスカラ座やかっこいい商業空間がある。つまり、様々な機能が1つの街に集約してるんです。みんなビジネスのためだけに行くのではなく、仕事が終わったらオペラを見たり、美味しいところで食事をしたり、そのあとはブティック街で買い物、という風にセットになっています。


国際的に東京に対する期待度は高まっているけど、海外からやってくるビジネスマンたちをもてなしていくためには、オフィス空間だけを整えるのではなく、娯楽となる空間もしっかり整える必要があると思います。


街の機能の多様性は、成功している都市はどこでもやっていることなんです。特に水辺には色々な機能が集まってくる必然性がある。それはもう俗っぽいものも含めて。兜町はダイナミックな近未来都市を目指す上で格好の土地だと思います。



◆まとめ

金融に携わる方々の多い兜町にあって、建築史家としての観点からお話をしてくださった陣内さんとの時間は、とても有意義なものとなりました。


「水辺を生かし、街に多様な機能を取り込む」陣内さんの描く都市像は、再開発の続く兜町にとって、大きなヒントになっていくと感じました。


今後、この街がどう変わっていくか楽しみです!




◆Tokyo Financial Street 085(陣内さんご出演)



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(著・イシダマクラ)

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