2026.10.06
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
2026年9月25日(金)、日本橋兜町のランドマーク「KABUTO ONE」で、講演会『私の経歴書』が開催されました。
今回の講演者は、2026年4月に株式会社東京証券取引所・代表取締役社長に就任された横山隆介さん。
IT部門で活躍され、さまざまな経験を経て、社長に就任。これまでの東証でのお仕事やその裏側などを約1時間にわたって語ってくださいました。
今回は、ビジネスパーソンが集まった、株式会社東京証券取引所・代表取締役社長・横山隆介さんの「私の経歴書」講演会の模様をお届けします。

2026年9月25日(金)、日本橋兜町にある複合オフィスビル「KABUTO ONE」に約50名が集まりました。18時、定刻通りに講演会がスタート。
まずは、横山隆介さん(以下、横山さん)の自己紹介から。

プロジェクターには、証券取引所の歴史、横山さんがこれまで歩んできたキャリア、その時々の世の中のできごと。そして、IT畑でお仕事をされてきたこともあり、IT業界の歴史についても触れた資料が映し出されます。

画面と同じ資料も配られました。

「今日は結構、裏話もするので、SNSには書かないでくださいね」
――横山さんが明るくそう話すと、会場は和やかな雰囲気に包まれました。
横山さんは1986年、株式会社東京証券取引所(以下、東証)に入所。入所してから10数年は、株式部やシステム関連部門、決済関連業務など、取引の実務に携わっておられました。

その後、IT企画の責任者、社長秘書、CIO(最高情報責任者)などを経て、株式会社大阪取引所の代表取締役社長に。そして2026年4月、東証の代表取締役社長に就任されました。
証券取引所一筋40年。まさに、取引所の“生き字引”ともいえる方です。

今回の講演会で使用された資料と同じように、自分の経歴と社会・技術の変化などを並べた年表を作ってみることを横山さんはおすすめしていました。
「今の自分がどんな時代の中にいるのか」を客観的に眺めてみることが、キャリアを考えるうえでのヒントになるのかもしれません。

続いて話題は、取引所の歴史へ。1878年5月に東京証券取引所の前身である東京株式取引所が、同年6月に大阪取引所の前身である大阪株式取引所が開設されました。設立にあたり、東京は日本近代金融の父とも言われる渋沢栄一氏、大阪は五代友厚氏が中心となったそう。
そして、横山さんが入所した1986年当時の取引所の様子へ。

当時の取引は、「立会所」と呼ばれるところでほぼ人の手で売買などの処理がされていた時代。取引結果の記録や株価の配信も、人力によるところが多かったといいます。
また、当時の取引所は証券会社による会員組織で、会員企業だけが直接取引に参加できる閉鎖的な仕組みだったとのこと。

その後、東証が株式会社化されると、株主も多様化していきます。取引所はより社会的な公共インフラとしての性格を強めていった、と振り返ります。

入所当初から10数年にわたり、株式部、システム総務部、決済管理部と主に売買に関する業務をされていました。
1987年、電電公社から民営化された日本電信電話株式会社(NTT)が上場すると、NTT株ブームが起こり、注文が殺到。

事務処理量が限界を超えてしまい、昼休みを延長したり、取引終了後も長時間にわたって後処理に追われたりする日々が続きました。
入所したての頃、その後自分がシステムに関わることになるとは思ってもいなかったそうです。当時は情報収集するといえば、テレビなどのメディア、本や雑誌といったもので、今よりもずっと情報を得るのが大変だった時代。苦労されたこともあったとのこと。

「将来を見通すのはなかなか難しいというのが、40年たって実感することですね。でも、それを前提にいろいろ考えていくのが大切なことかなと思います」
と、当時を振り返ります。

話は、1990年代へ。バブル崩壊や三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が相次いで破綻し、日本長期信用銀行(長銀)と日本債券信用銀行が経営難に陥るなど、日本金融史上で起きた大きなできごとへと移ります。

1990年代に起こったさまざまなできごとから、預金や投資をしている人々の財産をどう保護していくのかが問題となり、法律が制定されていきます。
90年代に起こったことを踏まえて、2008年にアメリカで起きたリーマン・ショックでは、大きな混乱を避けられたのではないかと当時を振り返ります。

横山さんは2000年から東証のIT企画に携わるようになります。2005年から2006年にかけて、東証ではシステムに関わる大きな事故が立て続けに発生しました。
証券会社による「ジェイコム株の誤発注問題」と「ライブドア・ショック」です。当時はシステムのキャパシティ管理に対する認識が、社内的にも十分ではなかったと横山さんは振り返ります。

一連の事故を受けて、金融庁への報告はもちろん、社会やメディア、国会からの厳しい批判への対応が続いたそうです。横山さんは、当時IT企画部の課長としてその対応にあたっていました。

ふたつの事故の本質的な課題を「システムの重要性への認識と責任体制が全社的に不足していた」と総括します。
その後、東証の業務部門が責任を持ってシステムの要件定義を行い、開発プロセス全体を見直す体制へと変わっていきました。

こうした改革のさなか、外部から新たな社長が招かれます。野村證券出身で、株式会社産業再生機構の社長も務めた斉藤惇氏です。数々の事故のあとに着任した斉藤惇氏のもとで、横山さんは2年間、社長秘書を務めることになりました。

「今の自分をかたちづくっている考え方のうち、4割は社長秘書時代に斉藤さんから受けた影響ではないか」――そう振り返るほど、濃密な2年間だったといいます。
当時の東証には、まだ会員組織時代の名残が色濃く残っていたそうです。上場会社や証券会社を「管理する対象」ではなく、「お客様」として捉える視点。

そして、グローバルな競争のなかで事業を行っているという視点が、社内に十分に根付いていなかったと語ります。
斉藤氏からは、こうした経営者としての視点を叩き込まれた、と横山さんは振り返ります。

話題は、2020年10月に発生した、東証として初の終日売買停止というトラブルへ。
障害は、その日の取引開始前に発覚。午前の売買を開始できないまま、昼休みの間にも協議を重ね、その日は終日の売買停止を決定したといいます。会場では、当時のニュース映像も流されました。

同日中には記者会見を実施し、社長や役員の方が対応。会見では、システム開発の実務に関わった関連会社側に説明を委ねることなく、「取引所を開設している立場としての責任は、あくまで自分たちにある」という姿勢を一貫して示したそうです。

横山さんは、東証のシステムを把握していたので、会見の場では自らの言葉で説明できたと語ります。
責任の所在をうやむやにせず、開発会社に丸投げしない――横山さんは、こうした姿勢が重要だったと振り返ります。

2013年1月に東京証券取引所グループと大阪取引所が経営統合し、株式会社日本取引所グループ(JPX)が発足しました。
その後、2023年に大阪取引所の代表取締役社長に就任。東証はもともと、転勤が少ない会社だったそうですが、横山さん自身も社長就任を受けて、大阪へ引っ越しすることに。

「いくつになっても、新しい経験はできるものですね」と、当時を振り返りながら話してくださいました。
ここで、意外な一面が。横山さんの趣味は、落語と文楽。

大学時代は落語研究会に所属していたこともあるほどの落語ファン。大阪時代には、演芸場の舞台に立ってトークをしたこともあったといいます。
また、大阪は文楽の本場でもあります。大阪取引所在任中に、証券取引所における新年最初の取引日、「大発会」に文楽の一座を招いたそう。

数字やシステムと向き合う仕事の傍らで、こうした伝統芸能への愛着を語る横山さんの姿に、会場の空気も一段と和みました。
横山さんの趣味の話も交え、1時間にわたる講演会『私の経歴書』は、明るい雰囲気のなかで終了しました。

今回は、2026年4月に株式会社東京証券取引所代表取締役社長に就任した横山隆介さんの講演会『私の経歴書』の模様をお届けしました。
バブル崩壊、システム障害など、さまざまなできごとと時代の波が押し寄せるなか、日本の株式市場を支える仕事と向き合い続けた40年を、明るくさわやかに語る姿が印象的でした。

仕事と真摯に向き合い続けてきた横山さんが、何を大切にしているのか。横山さんの素顔に触れる、貴重な1時間となりました。
ありがとうございました!
【取材場所】
KABUTO ONE
住所: 東京都中央区日本橋兜町7−1
アクセス:東京メトロ日比谷線・東西線「茅場町」駅直結
JR線、東京メトロ丸の内線「東京」駅 八重洲北口 徒歩12分
東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線「日本橋」駅 D2出口 徒歩2分
ホームページ:https://kabutoone.tokyo/
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