2024.03.18

【蔵元トーク】#64 流輝(群馬県藤岡市 松屋酒造)

こんにちは!
兜LIVE編集部です。


2月17日(土) 、『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。
江戸時代には日枝神社の門前町として栄え、酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。
東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、五穀豊穣にちなんでいるとのこと。平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広め、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。


今回は、群馬県藤岡市で「流輝」を醸す松屋酒造代表取締役社長の松原さんをお迎えして開催しました。群馬県からは2蔵めになります。
冒頭、松原さんから能登地方地震で被災された多くの皆様に対するお見舞いや一日も早い復旧・復興をお祈りする旨発言があり、その後は、松原さんの真摯なお話の中にもユーモアたっぷりの楽しい90分となりました。



◆ 会社概要

▼群馬県の概要
・人口194万人(全国第19位)
・温泉(草津、伊香保、四万)
・水瓶としてダム
・スキー場
・山(浅間山、赤城山、榛名山、妙義山)
・県庁 前橋市 人口 高崎市37万人
・知事 山本一太(全くお酒を飲まない)
・マスコット ぐんまちゃん
・名産 水沢うどん(伊香保地区),下仁田ねぎ,こんにゃく,嬬恋キャベツ,上州豚牛
・上毛かるた 焼まんじゅう
・世界文化遺産 富岡製糸場と絹糸遺産群



▼藤岡市の概要
・人口約6万人
・八高線 群馬藤岡駅、北藤岡駅
・神流川、鮎川、鏑川と川に囲まれた町 下久保ダム
・風情ある瓦屋根の蔵が残る中心部と緑と川に恵まれた山間部や古墳群
・産業は瓦と養蚕
・世界文化遺産 絹糸遺産群として高山社跡
・トマト、イチゴ(やよいひめ)、梨
・ラーメンの町としてラーメンマップを作成
・酒蔵 高井㈱、松屋酒造



▼松屋酒造
・富山県で米問屋を営んでいたが、酒造業に転換。四代目当主が群馬県藤岡市に
出店(蔵を居抜きで購入)。1951年5月30日に松屋酒造株式会社として出発。
・代表銘柄は「当選」(かつては全国から注文があったが、公職選挙法の改正でお酒の贈答ができなくなったので、随分減った)



・平成4年(1992)に五代目松原三友の代になり、県内で最初の杜氏を雇わない社員で製造する蔵となった。その際、製造量を落として再出発した。




◆ 自己紹介(松原広幸 まつばらひろゆき)

▼昭和53年(1978) 5月8日生まれ(おうし座) B型
・酒蔵で働きたいということで農大二高に行ったが、毎晩、麹造りを手伝わされて酒造りをしたくなくなったため、農大に行かず一浪して受験勉強


▼平成14年(2002) 東京経済大学経営学部流通マーケティング学科卒業
・大学のバイトで江戸川区、足立区の酒販店を回る


▼平成14年(2002)~ アパレル業を経て
・地酒ジャパン 池袋東武百貨店で「小さな蔵の隠れた地酒祭り」


▼平成18年(2006) 松屋酒造株式会社入社


▼平成19年(2007) 滝野川試験醸造コース


▼平成20年(2008) 「流輝(るか)」を立ち上げる


▼平成30年(2018) 製造責任者 兼 代表取締役に就任


◆受賞歴

・平成22年(2010) 全国新酒鑑評会入賞
・平成24年(2012) 全国新酒鑑評会入賞
・平成29年(2017) 全国新酒鑑評会入賞 純米大吟醸切り替え
・令和 3年(2021) 全国新酒鑑評会金賞
・令和 4年(2022) 全国新酒鑑評会金賞
・令和 5年(2023) 全国新酒鑑評会入賞
・小山商店 多摩独酌会
 2012年 2位 2013年 5位 2015年 3位 2018年 2位
・平成29年 2017 SAKE COMPETITION シルバー受賞
・令和1年 2019 SAKE COMPETITION シルバー受賞
・令和5年 2023 SAKE COMPETITION シルバー受賞



◆流輝&平井城

▼流輝
・自分の子供につけるために考えていた名前の中で流れ輝くというイメージ
・2008年より 純米吟醸山田錦を中心に 初年度は5ケースのみ
・香りある優しく飲みやすく
・鶏料理や白身魚に合わせる 関東系日本酒




▼平井城
・上杉憲実の居城 群馬県産の酒造好適米「舞風」を使って、群馬県の酵母、水、スタッフで作る(オール群馬)

 

◆松屋酒造の目指す酒

・小仕込みで手間を惜しまず丁寧に
・時代に順応した日本酒を醸す
・果実味の感じられる綺麗な酒質を磨き続け
・食や地域と共にある日本酒造りに専念し
・応援してくださる人とのつながりを大切に
・語らいのできる人間味あふれる日本酒を製造する


◆食や地域と共にある日本酒造り

・居酒屋 奥多野 (藤岡市藤岡186)のいのぶた鍋、自家製つくね
・成田屋 流輝パウンド



・海無し県ですが、群馬県民は魚が好き(マグロ消費量全国7位)
・魚は外に食べに行くもの。魚に合う酒が流輝の理想




◆人とのつながりを大切に語らいのできる日本酒を目指す

・X、インスタグラムを利用して製造報告や飲み手と交流
・FM群馬にラジオCM
・イベント、交流のある飲食店酒の会には参加
https://matsuya-sakebrewery.jp/




・現在、酒造組合青年部 稲水倶楽部会長
・ラジオPR学生動画コンテスト、草津試飲会




◆語らいのできる人間味あふれる日本酒を製造する





・藤岡市は、川に囲まれており、当社周辺を流れる神流川、鮎川の地下水に井戸を掘り仕込水を採取している。



◆ 時代に順応した日本酒を醸す

・特徴である麹造りとヤエガキ式上槽の近代化


・令和5~6年 取り組み①
上槽システムの改善
ヤエガキ式槽でもガスの残る酒が造りたい


・令和5~6年 取り組み②
制御盤のデジタル化と麹の品質を向上



▼令和5~6年取り組み①

・シリンダーの導入
ヤエガキ式槽の新しいポンプに合致する強い油圧150~200に対応できるステンレス製の新型シリンダーを導入する。上槽の圧を高めてガス感を残す工夫をした。



<上層準備:一枚一枚たたんで準備>



<上層準備:一枚一枚たたんで準備>

<醪注入時>



<酒粕>



<昨年の同じ搾りとの比較>
・圧を強くかけることで上槽時間の短縮に成功しました。
・酒粕を軽量したところ粕歩合は36.3%でした。
・肉垂れ歩合で酒化率を計算したところ昨年の同等の搾りと比較して2.1%酒化率の向上がみられました。
・搾る圧が上がったことで酒化率の向上と上槽時間の短縮をすることができそうです。



・結果、ガス感は感じられるほどない。しかしながら、ガス感がでなくても、それ相応の努力をしてフレッシュな酒を表現できるように鍛錬をしていきます。


▼令和5~6年取り組み②
・ハクヨー制御盤のデジタル化と湿度調整ツマミの導入
ハクヨー3段自動麹製麴機は3段で麹造りができることが特徴ですが、段を増やすと麹が安定しないので現在は1段のみで製造しています。とても良い麹ができるのですが、もしもう1段同じ力価で製造できれば倍の麹を一回で製造できます。


・いつも造っている麹と同じかそれ以上の品質で製造量を増やせれば、現行の制御盤を新型化することで酵素力価のバランスを変えることなく1回の製麹での生産性をあげられるのではないか


                              (旧制御盤)                                            (三段自動製麴機)


・現代の製麹や機能に合った制御盤を㈱ハクヨーに製造してもらいました。より細かい温度管理を行い、品質の向上を目指しました。

<結果考察>

・倍造ると倍の水分と倍の熱が発生するため、品温管理に大変苦戦しました。制御盤の操作の仕方も違いがあり、設定の違いもあり、操作に大変苦労しました。


・結果はうまくいかなかった。1回で倍の麹を製造していくことは相当な訓練が必要だと考えさせられました。今後、いきなり倍の麹をつくって正確な麹をつくるのではなく、まずは機械の操作に慣れて、少しづつ量を増やし品温管理の練習をしていく必要があります。

取り組み①、取り組み②ともに希望の結果はでませんでしたが、品質の向上にはつながっています。引き続き果実味の感じられる綺麗な酒質を磨き続け、良質な酒をつくる可能性を追求していきたい。


◆今回のお酒について


■利き酒3種 お酒の説明
①流輝 純米吟醸 無ろ過生 山田錦
使用米 兵庫県産又は滋賀県産 山田錦 60%精米
アルコール分 16度 日本酒度±0 酸度1.6
1.8リットル¥3050位(税抜) 720ミリ¥1590位
※ 流輝のフラッグシップでスタンダード酒。優しくほのかに香る 含み味
今期9本目の醪。今期2本目の山田錦赤。12月の仕込。造りにも慣れてきて気温も落ち着いてこの時期が精神的にも安定していて良いお酒ができる時期です。一時期、日本酒度-6~-8位で上槽していた時期もありますが、今は+に近づいた数値の日本酒度で搾っています。



②流輝 純米吟醸 無ろ過生 五百万石
使用米 新潟県産 五百万石 55%精米
アルコール分 16度 日本酒度±0 酸度1.7
1.8リットル¥3050位(税抜) 720ミリ¥1590位(税抜)
※ 純米吟醸の米違い酒。優しくも青々しいシャープな酸。
今期7本目の醪。初搾りから五百万石を使い続けてますのでこの時期にはだいぶ慣れてきてコツを掴めてきます。山田錦と比べると酒質がシャープで酸を感じる傾向にあります。①、②は設計も酵母も一緒で米違いになります。それぞれの個性をお楽しみください。



③流輝 純米吟醸 ももいろ無ろ過生
使用米 秋田県産 秋田酒こまち 55%精米
アルコール分 10度 日本酒度-57 酸度2.7
1.8リットル¥3240位(税抜) 720ミリ¥1650位(税抜)
※ 当蔵の人気酒。ピンクグレープフルーツ様。甘み、独特な酸
1本目のももいろは五百万石。2本目のももいろは秋田県産秋田酒こまちで仕込んでいます。色は1本目のほうが強く出ました。秋田酒こまちでつくると例年酸が強くでますが今年はバランスよくできました。色はひかえ目です。



では、松原さんのご発声で乾杯!




◆最後はみんなで集合写真

・毎回、恒例の集合写真です。オンライン参加の方もご一緒に!



◆まとめ

群馬県藤岡市の街並みや自然環境を思い浮かべながらお話を聴くことができました。真摯なお話の中にユーモアたっぷり、今までで笑いの回数ナンバーワンだったのでは!!
「食や地域と共にある日本酒造り」のお話の中で登場した「居酒屋奥多野」には蔵訪問した際にご案内いただきました。和気あいあいとした素敵なお店でした。ぜひ、蔵訪問した際は「居酒屋奥多野」にもお立ち寄りください。
松原さん、ありがとうございました!



<イベント前には渋沢栄一翁が生涯大切にした佐渡の縁起石「赤石」にタッチして運気アップ!>




<蔵元トークの後は、茅場町の銘店「つまみ菜」にて大いに盛り上がりました!>




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