イベントレポート

2020.11.06

「21世紀の岩戸開き」“一粒萬倍 A SEED -天の岩戸開き- ”の特別ライブが東証Arrowsにて行われました

2020年10月3日(土)、東京証券取引所内の東証Arrowsで、“一粒萬倍 A SEED -天の岩戸開き- ”の特別ライブが行われました。


“一粒萬倍 A SEED”とは、五穀豊穣への感謝と祈念というテーマを、能・狂言・日本舞踊、現代舞踊・花、和・洋音楽の融合などをテーマに表現する総合芸術・奉納舞台。

(一粒萬倍 A SEEDに関して詳しくはこちら


今回のライブは2020年11月2日、3日に「GINZA SIX」観世能楽堂にて上演する公演に先立って催されたものです。テーマは「天の岩戸開き」。新型コロナウイルスが世界にかけた暗雲を“一粒萬倍 A SEED”が払う、いわば“21世紀の岩戸開き”としたい、という祈りと願いを込めた催しです。


東証Arrowsでの演奏は、2019年4月の“新元号記念ライブ”に続き2回目。今回は新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、無観客でライブを行い、後日映像を配信する形となりました。



この日は、午前中から配信用の映像撮影を実施。16時からは記者を招いたプレス発表会・無観客ライブが行われました。


また同舞台でイザナギ・イザナミの夫婦役を務める紫派藤間流・藤間貴彦さん、藤間爽子さん兄妹、アメノミナカヌシ役を演じる観世流シテ方・武田文志さんに、兜町界隈を案内し、渋沢栄一ゆかりの史跡を紹介する場面も。


本記事では、配信用ライブ撮影の様子、史跡探訪の様子、プレス発表会で行われた無観客
ライブの様子をレポートしていきます。


*一粒萬倍 天の岩戸開き 上演告知 はこちら


世界を照らす“21世紀の岩戸開き” 一粒萬倍の感謝と祈り

配信用のライブ映像撮影は10時30分から始まりました。撮影スタッフさんたちが、機材や音を入念にチェックし、スケジュールの確認を行っていました。チェックが完了し、まずは演奏のみのリハーサル・撮影がスタート。お昼休憩を挟んだのち、舞踊チームを入れてのリハーサルと撮影が行われました。


配信するライブをより良いものにするために、以前までとは違った進行を試したり、細かく区切って撮影したり。スタッフさんや、それに応える演者さんたちの熱気と迫力が伝わってきました。



今回は東証Arrowsで撮影するため、新しい試みとして「チッカー」(会場頭上にある円状の電光掲示板)に舞台内容の説明を掲示する、という手法が用いられました。能楽堂では、舞台の合間に声で表現されていたものです。テレビでよく見るチッカーは株価が表示されますが、今回の舞台撮影ではいつもと違った光景を見ることができ、なんだか不思議な気分になりました。


ちなみに、東証Arrowsの天井は、凹凸があり音が響く造りとなっています。五穀豊穣を願う5回の鐘といい、どうやら東京証券取引所と“一粒萬倍 A SEED”は、確かな強い縁で結ばれているようです。



舞台は大きく分けて、二幕の構成。第一幕は、ビッグバンと日本の神話を結びつけ、男で

もなく女でもない始まりの神・アメノミナカヌシの発生(登場)からイザナギ・イザナミ
の国生み、アマテラス・ツクヨミ・スサノオの誕生まで。第二幕では、スサノオの猛威か
らアマテラスの天の岩戸開き、一粒萬倍・五穀豊穣までを表現します。


「シャーン」という鈴の音が、静まり返った会場にこぼれたあと、力強い太鼓の響きで第
一幕がスタート。マグマがボコボコと湧き上がっていくような振動がビックバンを想起さ
せます。バイオリンやチェロが太鼓や笛、琴など和楽器と見事に融合。悠久の時や深く沈
むような哀しみなどをイメージさせる音色を奏でていました。


第一幕で印象的だったのはイザナギの心情が表れている一連の演奏。国生みの局面では壮
大なスケールと雄々しさが、イザナミを失ったシーンでは深い悲しみと命の儚さ、そして
黄泉平坂から逃げる場面では緊張と恐怖と焦りが、それぞれ肌で感じられるものとなって
いました。


第二幕はスサノオの荒ぶる気性を体現する舞からスタート。スサノオは登場こそ落ち着い
た様子でしたが、演奏が4分の1ほど進行したあたりから突如急変。荒ぶる神となり舞台
を縦横無尽に駆け、すべてを壊してしまうような荒々しい動きですばやく舞い踊ります。
一本一本、爪に至るまで力が入っているのがわかる、スサノオの手。演奏が終わると、肩
をつりあげたまま、ゆっくりとした足取りで裾の方へと消えていきました。



スサノオにおびえアマテラスが隠れてしまった世界では、おどろおどろしい音楽が会場を這うように包み、光が闇に包まれていく様子が演者の舞によって再現されています。また、天の岩戸から無事アマテラスが世界に戻ってきたシーンではまばゆい白が、五穀豊穣がもたらされた際には暖かい日の出を意識させるオレンジ色の光が会場を照らし、世界観をより強固なものにしていました。


撮影した映像は後日配信されるとのことです。お楽しみに!


渋沢栄一の意思に触れる佐渡の“赤石”訪問

撮影の合間を縫って、イザナギ・イザナミを演じる藤間貴彦さん・爽子さん兄妹と、アメノミナカヌシを演じる能楽師・武田文志さんに、東証スタッフが周辺を案内。史跡や資料を紹介しました。


「物事の発祥や歴史に触れるのが好き」という貴彦さん。「ここから何かが始まった。何十年もの歴史が詰まっている、と考えるとワクワクするんです」と、解説を聞きながら嬉しそうに話します。



東証Arrowsからすぐに位置する、かつて第一国立銀行のあった銀行発祥の地(現、みずほ銀行兜町支店)に到着した際は、兄弟そろって歴史の重みに触れ、爽子さんは「こんな場所にあるなんて……」と感嘆の声を漏らしていました。



その後、渋沢栄一が愛した“赤石”をお参りするため、日証館へ向かいました。渋沢栄一といえば、来年の大河ドラマの主人公で、2024年度発行予定の新しい一万円札の肖像に選出されたことは記憶に新しいニュースです。


渋沢栄一は大蔵省退官後、第一国立銀行(のちの第一銀行、幾度の合併を経て、現在のみずほ銀行となる)の設立に尽力。江戸、明治、大正、昭和という、列強との激動の時代を生き抜き、先述の第一国立銀行のほか、東京株式取引所(現、東京証券取引所)や、東京海上保険(現、東京海上日動火災保険)、麒麟麦酒など、現在まで残る多くの企業の設立に寄与しています。一説によると、設立に関わった企業の数は500社以上といわれています。


“赤石”は、渋沢栄一が日本橋兜町に邸宅を構えた際に繁栄の祈りを込めた縁起石として佐渡から取り寄せ、設置したもの。彼は別の邸宅に移り住んだ後も赤石を大切に扱いました。その後、2017年、平和不動産創立70周年を記念して、日証館のエントランスに展示されることとなりました。


以来、“赤石”は渋沢栄一の活動力にあやかれる験担ぎの場所、いわばお地蔵さまのような存在として扱われてきました。



訪れたお三方はそれぞれ、しっかりと赤石に触れ、全員で記念撮影。



日証館へ入ってすぐの場所に鎮座している“赤石”ですが、重厚な入り口に気後れするのか、なかなか見学に訪れる人は少ないそう。


これを聞いて、貴彦さんは「実際、いま触っただけでもすごくパワーをもらった気がするのに、あまり人が来ないのはもったいない。歴史的に見ても価値があるものだし、もっとたくさんの人に見てもらいたい」と話していました。


東証Arrowsに戻る道中では、再度スタッフによって兜町周辺の歴史についての解説がなされます。着物のお三方が歩く姿は、レトロで重厚な建物の様子と合わさって、どこか大正時代を思わせるような佇まい。歴史の積み重なった、趣深い雰囲気を感じられました。



かつて、渋沢栄一が兜町に住んでいたのは、現在の日証館の所在地。つまり“赤石”は約130年かけてこの土地へと戻ってきたわけです。130年ぶりの再会にノスタルジックな感情が湧いてきます。

観世流シテ方・武田文志氏の露払い 世界的アーティストも参加する「一粒萬倍 A SEED -天の岩戸開き- 」

16時からは、11月3日、4日の舞台に向けたプレス発表会と無観客ライブが行われました。プレス発表会には、演奏者、舞踊チーム、藤間貴彦さん・爽子さん、武田文志さん、そして日本舞踊家 花柳茂義実さんが登壇。


最初に紹介されたのは、今回の舞台のキーアイテム、アメノミナカヌシが宿る“大王松”。こちらはフラワーアーティスト ダニエル・オスト(Daniel Ost)氏デザインの作品です。



同氏はベルギー王室の装飾や世界の歴史的博物館にも作品を発表し、花の建築家、花の彫刻家とも呼ばれている世界的アーティスト。花を使って空間全体を表現する作品は、植物を題材に使った空間アートとも称され、品のある作風や大胆でいて繊細な芸術性で高い評価を集めています。


大王松に託された願いは、世界の平和と調和、社会の繁栄や人々の幸せ(五穀豊穣)。末広がりの形にまとめられた松の葉の細部まで趣向が凝らされており、生命力を感じる苔が、台座を包みます。




東証Arrowsオープンプラットホーム中央で、藤間貴彦さん・爽子さん兄妹、武田文志さん、そして花柳流の日本舞踊家 花柳茂義実さんが、今回の舞台への意気込みを話してくれました。


「今回で3回目となる出演。兄妹ならではの息のあった演舞がまたお見せできると思う」と貴彦さん。


一方の爽子さんは今回で2回目の出演。「新型コロナウイルスの影響もあって、今年はなかなか舞台に立つことができませんでしたので、皆様と一緒に踊ることができて本当にうれしい。今からとっても楽しみ。前回よりもさらにバージョンアップした内容がお見せできると思う」と話していました。


*藤間兄妹インタビュー@東証Arrows 2020 はこちら


茂義実さんは「コロナ禍という厳しい状況ですけれども、ぜひ楽しんでほしい」とコメント。


また武田さんは、“一粒萬倍 A SEED -天の岩戸開き- ”の露払いとして、素顔に紋付き袴で舞う「素舞」を披露してくれました。流れる水のような舞と力強い掛け声が轟きます。武田さんの素舞には、内に秘めた大きな覚悟が表れているようでした。



武田さんは、「“一粒萬倍”は奉納舞台と位置付けられている舞台。(コロナ禍の)こういう状況だからこそ、一粒のお米から始まる五穀豊穣の感謝を表現し、世の中の幸せを、いつも以上の想いを込めて祈りたい。今日、赤石に触れたこともその一環で、渋沢栄一の験を担いだことが、これからの平和につながっていけばいいなと思っています」と、赤石に言及しつつコメント。


一粒萬倍には不思議な縁があるとのことで、「私が活動している能楽は、起源が祈りや鎮魂にあるといわれています。“一粒萬倍”のテーマも同じく、感謝や祈り。出演のお誘いは偶然のことでしたが、自然と共通の精神性を感じてしまいました」。


*観世流シテ方武田文志氏コメントはこちら


11月2日、3日の舞台が行われる観世能楽堂については、「僕ら能楽師は、(能楽堂を)非常に神聖視し、大切に思っています。神聖ゆえ制約もあるのが難しいところではあるのですが、主宰の松浦さんは“一粒萬倍 A SEED”が奉納舞台であること、感謝や記念がテーマであることをしっかりと伝え、筋を通してくださりました。ありがたいことに、“一粒萬倍 A SEED”の中心・おへその部分は能だ、という言葉もいただいていているので、コロナ禍という状況も相まって、今度の舞台にはとても大きい責任を感じています」と述べ、従来以上に熱い想いを抱いていることも窺えました。


その後は無観客ライブの上演。舞踊チームも加わり、出演者の集中している様子や息遣いが伝わってくるような迫力に満ちた空気感でした。特に圧巻だったのは、アマテラスが五穀の豊穣を祈るシーン。




真っ白の照明がアマテラスを神々しく照らし、眩く輝きを放っていました。壁に大きく現れる影も相まって、アマテラスが世界にとって大切な光であることが一目瞭然に。場面場面において、凜として美しく、そして神々しい独特な雰囲気をつくりだしていました。



まとめ

感謝と祈りを伝える舞台 “一粒萬倍 A SEED”。


東京証券取引所という五穀豊穣の聖地でのライブということで、印象に残っているのは、チッカー(電光掲示板)に表示された物語の一節。舞台をしめくくる言葉「命と命は生かし、生かされ、一つに繋がっている。ここをもって、一粒萬倍」が電光掲示板でゆっくりと円状に流れていく様子は、まるで荘厳な輪廻の様子を表わしているようで、心に焼き付く光景となりました。



11月2日、3日の「GINZA SIX」観世能楽堂の公演は、3回とも大盛況で幕を閉じました。


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