2022.01.18
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
12月25日(土) 、ハイブリッド形式(現地開催&オンライン)で『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。
江戸時代には酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。
平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広め、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。
今回は、三重県鈴鹿市で「作」を醸す清水清三郎商店の第6代蔵元 清水慎一郎さんをお迎えしての開催でした。昨年はオンラインでしたが、今回は茅場町にお越しいただき、リアルでも楽しんでもらえたし、青森や山口の方にもオンラインでご参加いただきました。ありがとうございます。
▼酒席の制限
・緊急事態宣言等があり、飲食店でお酒の提供が制限された。そんな中、お茶とのペアリングコースを提供するお店があり、何度かお伺いした。
・最初は面白さが勝っていた。しかし暫くすると、「お茶を飲んでいるとお腹がいっぱいになる」とか、「お茶のカフェインのせいで寝付けない」などと感じるようになった。「お酒だとそんなことはないのに」と思い、お酒を飲めることの有難さを感じた。
▼コロナ禍で進めてきたこと
・現在、蔵を新しくしているところ。既存の建物を壊して新しく建て直したりしている。また、ラベルの刷新を行った。
・この2年間はどこにも出かけずに、じっくりと考えるよい機会になった。コロナの終息がいつになるか分からないが、その暁には、今まで考えてきたことを実行に移していきたい。
▼リニューアルの経緯
・2021年10月1日に商品の全面リニューアルを行った。これはコロナ禍が始まる前から準備していたもの。刷新に向けてデザイナーや印刷屋と交渉したり、HPの準備を進めたりしてきた。当蔵は1869年創業で2019年に150周年を迎えたことも契機となった。
<参考:公式HPでの商品リニューアルの告知>
▼ロゴの変更
・新しい会社のロゴは「揺り水・菱」と名付けた。テーマは「水」。「さんずい」のようなものが揺れていて、それが菱型を構成している。
・テーマを「水」としたのは、社名である「清水清三郎商店」の文字の中に、「さんずい」や「水」が繰り返し出てくること、また、酒造りには豊かで清らかな水を惜しみなく潤沢に使用することが必要だからである。
・菱形に組まれた三つのパーツは、「酒を造る人」、「酒を提供する人」、「酒を味わう人」を表している。酒は、誰かの口に入った時に価値が決まる。酒の価値に占める酒蔵のウェイトは限定的だという思いから、3つのパーツで構成するロゴマークとした。
▼「鈴鹿川」のラベルの変更
・「鈴鹿川」のラベルの模様は、「伊勢型紙」から採用した。
・「伊勢型紙」は、江戸小紋や京友禅で染物を行う際の型紙。江戸時代、武士が華美な装いを控えつつも、「伊勢型紙」の細かな文様でセンスを競ったようである。
・「伊勢型紙」は鈴鹿市の白子(しろこ)地区で独占的に製作されてきた。3枚の美濃和紙を紙の目に従ってタテ、ヨコ、タテと柿渋で張り合わせると、強度が増し、染料で歪まないようになる。これを彫刻刀で彫るのだが、人間技と思えない精巧な作業である。
<参考:「伊勢型紙」の製造工程>
▼「作」のラベルの変更
・「作」のラベルには、もう一つの伝統産業である「鈴鹿墨」のイメージを使用した。
・墨の主要産地は奈良である。「呉竹 筆ペン」を知っている人も多いと思うが、「呉竹」は墨のメーカーである。そして、他の産地として鈴鹿がある。先ごろまで職人が1人だけだったが、2人に増えた。息子さんが鈴鹿に戻って職人となったからである。
・奈良の墨は分業で作られるが、鈴鹿は1人の職人が全工程を行うので、書家の方々に重宝されていると聞く。
<参考:Wikipedia「墨」>
(抜粋)現在の墨の主要産地としては、奈良県産(奈良墨)が9割のシェアを占めるほか、藤白墨と同じく平安時代に始まり紀伊徳川家に支えられた歴史を持つ三重県産(鈴鹿墨)や、藤白墨の松煙生産を現代に復興させた和歌山県産(紀州松煙墨)がある。
<参考:「呉竹」について>
▼容量の変更
・「鈴鹿川」銘柄のお酒は、1升瓶の販売を取りやめた。また、720mlではなく750mlに変更した。
・「作」銘柄のお酒も、720mlは750mlに変更した。こちらは、1升瓶の販売を継続している。
・750mlにしたのは、ある海外のレストランのソムリエから言われたことが頭に残っていたから。
・バンコクのレストランでペアリングコースを提供されているのだが、ワインは750ml瓶なので、ワイングラスに75mlづつ10杯注ぐことができる。しかし、日本酒は720mlであるため、75mlづつ注ぐと最後に30ml足りなくなって困るという話であった。
・1年ほど前に、瓶屋さんから750ml瓶の提案を受け、瓶の高さが数ミリしか違わないとのことであったので、四合瓶は全て750mlに変更することにした。
<参考:「ワインボトルはなぜ750mlなのか?」>
(要旨)理由は、フランスワインをイギリスに輸出するのに便利だったから。
イギリスでは「1ガロン=4.5ℓ(4,500ml)」。1本750mlで1ダース12本だと「2ガロン=9ℓ(9,000ml)」で効率が良かった。
また、ボルドー地方で使用される樽は、225ℓ(225,000ml)が主流。これは750ml×300本という容量になり、製造の観点からも利便性があった。
▼GIとは
・GIは、ワインのAOCを参考にした制度。国の間で互いに取り決めを行うことで、取り決めに参加した国において原産地呼称が保護される。
・今では、ボルドーやシャブリ、シャンパーニュといった名称が保護されているのは当然に思うかもしれないが、かつてはカリフォルニアでシャブリを名乗るワインが造られたこともあった。
・また、日本でも「赤玉ポートワイン」が販売されていたが、原産地呼称保護のため、今では商品名を変更している。
・原産地呼称の保護は農産物分野でも進められている。日本酒でも、GI長野やGI佐賀など、広がりを見せている。
<参考:酒類のGI制度とは>
・GIは、Geographical Indicationの頭文字で、地理的表示とも表記。国税庁長官の指定を受けると産地名を独占的に名乗ることができる。
<参考:国税庁告示「酒類の地理的表示に関する表示基準を定める件」>
<参考:「酒類の地理的表示に関する表示基準の取扱いについて(法令解釈通達)」>
<参考:酒類の地理的表示一覧>
<参考:地理的表示「三重」生産基準>
(※)Appellation d'Origine Controlee(アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)の略称で、原産地呼称を意味する。
<参考:赤玉ポートワインについて>
(※)赤玉ポートワインは、1973年に「赤玉スイートワイン」に名称を変更。原産地呼称を守るマドリッド協定により、1973年にポートワインの名称使用を止めたことが理由。
<参考:EUのワイン法について>
(※)「原産地呼称保護(PDO)ワイン」と「地理的表示保護(PGI)ワイン」の違いに関する説明あり。
▼GI三重のマークについて
・GI三重のマークは、「神酒(みき)」と「御饌(みけ)」(お供えをする食べ物)、そして、太陽をデザインしたものである。
・上部の丸い部分が太陽である。冬至には伊勢神宮・内宮の宇治橋の大鳥居から朝日が昇り、夏至には「二見が浦」の夫婦岩の間に夕日が沈むことに因んでいる。
・丸い部分の中には、「御饌」である「束ね熨斗(たばねのし)」をデザインし、下部に「神酒」を注ぐ盃をかたどっている。
・「束ね熨斗」は、縁起が良いとされる日本の伝統文様。婚礼衣装や大漁旗などにもその図柄が用いられている。これは、鮑を薄く剥いたものを干してつくる「のしあわび」を束ねた形を表している。
・贈り物を包む「熨斗紙」についている六角形の色紙の中にある黄色い部分は、本来は「のしあわび」を紙で包んだもの。1本でも大事にされているものを沢山束ねたのが「束ね熨斗」といえる。
・伊勢に近い国崎(くざき)では、獲れたアワビを「のしあわび」に加工し、伊勢神宮へ献上し続けているという歴史がある。5~7月頃に採られた一番良いアワビを選んで加工しているという。
・ 「のしあわび」作りの写真を見ると白装束で作業されている。これは、国崎が神領であり、神に捧げるための儀式だからである。
<参考:「GI 三重 シンボルマーク」について>
<参考:「束ね熨斗」について>
<参考:伊勢神宮の「あわび」>
▼何故アワビなのか
・実は、伊勢神宮があの場所にあるのは、アワビが理由だからと言われている。これは、神宮司庁の人から聞いた話である。
・古来より、アワビは不老不死の効能があるとされ、秦の始皇帝が徐福に「不老不死の霊薬」の探索を命じた際、徐福は東方に赴いたとされる。東方で求めたのがアワビだということである。
・大和朝廷の貴族や官僚はそうしたことを知っていた。都で疫病が流行り、天照大御神を祀る社を移す必要が生じた時、倭姫命(やまとひめのみこと)が各地を巡り、適地を探した。倭姫命は伊勢でアワビが豊富に採れることを知り、伊勢神宮を創建したとされる。
・内宮には、お供え物の調理場があるが、その中で、アワビを置く台は高いところに置かれ、別格の扱いを受けている。
▼三重の「水」に着目した動画の製作
・三重の日本酒のブランディングの観点から、酒造組合で、三重の「水」に着目した動画を製作した。GI三重では、使用米に縛りを設けなかったことから、「水」が重要な要素になると考えたためである。
<三重酒造組合「Celestial Water」動画>
(※)ページの左下から動画を視聴可能。
・上記の動画の完成が今年の始め頃。その後、海女の大野愛子さん、元筑波大学教授で地質学者の久田健一郎先生、ブランドコンサルティングの斉藤(矢野)麻子さんのインタビューを加えたものを5月頃に作成した。
・久田先生によると、欧州などが硬水で、日本が軟水なのは、日本の特異な地質が原因だという。
・例えば、欧州のパリを中心とした地域の地質は、海底が隆起したものなので、海底にあった石灰質が石灰岩として地質を構成している。そして、石灰岩を流れる地下水は硬水になる。
・これに対して、日本列島は「付加体」で構成されているという。「付加体」とは、海洋プレートが海溝で大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレートの上の堆積物がはぎ取られ、陸側に付加したものをいう。
・日本列島を構成する岩石は、こうした「付加体」や、マグマが溶けて上がってきた花崗岩とされる。そして、雨量も豊富である。このため、日本で得られる水は欧州と大きく異なり、キレイな軟水が豊富に得られるという。
・三重県はその中部を「中央構造線」が通り、県の北部と南部で地質が異なるという特性がある。また、三重県は日本有数の雨量の多さであり、水のキレイさは「神がかっている」という思いで、動画のタイトルを「Celestial Water」としている。
<参考:大鹿村中央構造線博物館「日本列島の土台は「付加体」の岩石」>
<参考:三重県酒造組合の資料「Celestial Water」>
<参考:元筑波大学・久田健一郎氏>
▼「三重Heritage認定制度」の創設
・今年の10月1日に「三重Heritage認定制度」を創設した。認定の条件は以下の3点。
①「GI三重」認定酒であること。
②三重県原産または三重県育成品種である米と、三重県の酵母を使用していること。
③純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒であること。
▼三重県原産または三重県育成品種である米
・上述の3点のうち、ポイントとなるのは②である。特に、三重県で生産された山田錦であっても、「三重県原産」ではないため対象外となる。「Heritage」は「遺産」と訳されるが、「元々あったもの」という意味もあるので、そこに拘った。
・「三重県原産の米」としては、「関取」、「竹成」、「伊勢錦」、「イセヒカリ」がある。
・「関取」、「竹成」、「伊勢錦」は耳慣れないかもしれないが、幕末から明治にかけて「伊勢の三穂(みつほ)」と呼ばれ、当時としては多収穫な米であった。また、「関取」は江戸では寿司米として人気があったという。
・「伊勢錦」は元坂酒造さんが30年前に復活され、今でも使われている。この米は、三重大学による最近の研究で、DNA分析により、山田穂と同一の米であることが分かっている。山田穂は、短稈渡舟と共に山田錦の親とされる。
・「イセヒカリ」はコシヒカリの突然変異種であり、伊勢神宮の神田で発見された米である。
・「三重県育成品種」のうち、酒米としては、「神の穂」と「弓形穂(ゆみなりほ)」がある。三重県は、まだ、山形県のように多くの育成品種は無いが、今後を見据えて、「三重県育成品種」を条件に加えた。
<参考:「伊勢の三穂(みつほ)」について>
(※)「2003/09/13第24回企画展「三重の食文化 食材から考える」1」のページ。
<参考:「神の穂」について>
(「酒造好適米水稲新品種「神の穂」の育成と栽培法」三重県農業研究所報告32号(2009))
(※)「越南165号」を母、「夢山水」を父として交配。2008年に三重県の認定品種として採用。早生で五百万石と同程度の大粒。
(若戎酒造HPから)
(※)「三重酒18号」として開発。一般公募により名称の募集を行い、「神の穂」と命名。
▼三重県酵母
・酵母については、三重県酵母が5種類ある。また、蔵付き酵母も適格となる。
▼「三重Heritage認定制度」の認定酒
・「三重Heritage認定制度」の認定酒は12/20日に決定されたところ。今回、約10銘柄が認定された。これから、「三重Heritage認定制度」のマークの入ったお酒が市場に出回ることになる。
・マークは米粒をかたどっており、その中に稲穂がある。中央に「Mie Heritage」の文字があり、マークの中に点々と散りばめられているのは酵母を表す。
・当蔵では、「作 なぐわし 鈴鹿 神の穂」というお酒が「三重Heritage認定制度」の認定を受けた。年明け1/5日22時からのBSテレビ東京の番組「都会を出て暮らそうよ BEYOND TOKYO」で、日本酒スタイリスト島田律子さんに、このお酒をご紹介頂ける予定。
<1/5日の「都会を出て暮らそうよ BEYOND TOKYO」>
・「なぐわし」は「名+ぐわし」で構成される古語。「ぐわし」は「かぐわし」(香+ぐわし)に残っているように「素晴らしい」という意味。
・「名前が素晴らしい」という意味なので、素晴らしい土地である「東条」の山田錦を使用したお酒の名前を、「作 なぐわし 東条 山田錦」としていた。その後段を「鈴鹿 神の穂」に変えたお酒である。
・「なぐわし」も、倭姫命(やまとひめ)が鈴鹿に来た時の記述に由来する。「倭姫命世記」(やまとひめのみことせいき)に残されている記述で、倭姫命が鈴鹿を治める者に名を尋ねたところ「味酒鈴鹿国『奈具波志』忍山」(うまさけすずかのくになぐわしおしやま)と答えたという。
・なお、「味酒鈴鹿国」(うまさけすずかのくに)という言葉は、当時、鈴鹿の国が美味しいお酒を造る土地として知られていたということであり、「味酒」(うまさけ)は「鈴鹿」の枕詞とされている。
<参考:「倭姫命世記」の該当箇所に関する解説>
▼令和元年の「世界酒蔵ランキング1位」の賞盃
・最近になり、令和元年の「世界酒蔵ランキング1位」の賞盃を頂いた。この賞は令和元年が初回。なお、今年は残念ながら4位だった。
<参考:「世界酒蔵ランキング」について>
▼過去3年の受賞状況
・受賞状況をスライドでご紹介。2021年は、IWCで「Sake Brewer of the Year」を受賞した。
<参考:2021年IWC「Sake Brewer of the Year」について>
▼Bioと酸化防止剤
・1~2年前にフランスで開催された展示会「ヴィネクスポ・ボルドー(VINEXPO Bordeaux)」に行った際、自分達のブースに「Bio」と書いてあるのを見つけた。
・主催者に問い合わせたところ、「日本酒は酸化防止剤(亜硫酸塩=SO2)無添加なのでBio表記をした」と回答。それまで、「自分達がやってきたこと」をアピールしてきたが、「やっていないこと」に注目されたのは新鮮だった。
・それを受けて考えた日本酒の説明表記をスライドで説明。「保存料 酸化防止剤 不使用」のほか、「無補糖」と記載。グルコースやpH、酸度の記載は、ワインにおける表記に使われるもの。なお、ワインの酸度表記にあわせて日本酒の酸度を記すと一桁低くなる。
<参考:「ヴィネクスポ・ボルドー」について>
<参考:酸化防止剤(亜硫酸塩=SO2)について>
▼「ビオディナミ」と陰暦
・もう一つ、Bioの関係では、「ビオディナミ」にまつわる話がある。スライド上部に記載したのが、Bioワインの区分。「ビオディナミ」は自然農法の一種で、特に厳格な農法を用いる。
・以前、オーストリアで「ビオディナミ」に取り組むワイナリーを訪れた際、「月の満ち欠けに従ってブドウの摘み取り等を行う」と聞いてオカルトかと思ったが、「ビオディナミ」では月の周期が生物に及ぼす影響を考慮すると知った。
・同じスライドの下部に載せたのが「伊勢暦」。お伊勢参りの目的の一つは「伊勢暦」を持ち帰ることだったとされている。
・「伊勢暦」は農業暦としての役割を持つ。「伊勢暦」が使われていた時代は当然陰暦で、月の満ち欠けに基づく暦だった。
・こうしたことを踏まえて、フランスのソムリエに「日本でも月の暦に従って農業が行われていた」と話すと「日本は進んでいたんだね」と大変驚かれる。
<参考:「ビオディナミ農法」について>
・どのお酒も、味わいの透明感を大事に造っている。ただ、透明感といっても、味を無くしていく訳ではない。米をどんどん磨けばキレイにはなるが、味わいも少なくなる。「味わいは少なくしつつ、表現はあり、後切れが良い」というお酒を目指している。
・「後切れが良い」という点についていえば、日本では「キレが良い」というのが受ける。しかし、ワインの世界では、「余韻が長い」ということが良いこととされている。その価値観では「キレが良い」のは悪いこととなる。
・これに対して自分は、これらは「同じことを言っているのだ」と言っている。「余韻が長い」とは何かといえば、心地よい余韻を指している。そのものズバリの味ではない。日本酒の「キレが良い」というのも、飲んだ後の心地よさを指している。
・これを例えていえば、雨の日に、傘を差した女性とすれ違ったとする。すれ違った時に、その女性がちらっと見えて、すごく美人だったという印象を受ける。しかし、その女性はもう歩き去っていて、ここにはいない。でも「すごく美人だったな」という印象は残る。これが余韻ではないか。
・なお、この美人の例えは、昨今の世情に照らすとあまりよろしくないと思うので、この例えを使うのは、今日を最後にしておきたい。
①「作 新酒」純米大吟醸、精米歩合50%
・当蔵は四季醸造。法令上の醸造年度は7月1日から切り替わるが、「新酒」と銘打つのは、醸造年度とは関係なく、新米で醸造したお酒としている。使用米はロットにより変わっていく。
・酵母は自社保存株。元は「きょうかい1801」系だが、酢酸イソアミルも相応に出る株となっている。
②「作 穂乃智」純米、精米歩合60%
・金沢酵母を使用。「きょうかい14号」系となる。
③「作 雅乃智 中取り」純米大吟醸、精米歩合50%
・三重県または兵庫県の山田錦のみを使用。酵母は①と同じ1801系の自社保存株。
(Q)750mlの導入にあたって、難しい点があればお聞きしたい。
(A)今回、720mlから750mlに容量はアップしたが、時期が悪いので、価格は据え置いた。この点、酒販店さんから「買い手が750mlを買うので、720mlが売れなくなって困る」との声が寄せられた。
(Q)「鈴鹿川」と「作」には、どのような違いがあるのか。
(A)そこは企業秘密(笑)。実のところ、「鈴鹿川」と「作」で大きな違いはない。どの「鈴鹿川」と、どの「作」が似ているか、という話になるとややこしいので、詳細は企業秘密としている。
(Q)「三重Heritage認定制度」はとても良い制度だと思う。
(A)「三重Heritage認定制度」を評価頂けて嬉しく思う。なお、「三重Heritage認定制度」の名称を検討する際、「三重Origin」という呼び方も検討した。
しかし、「Origin」という言葉は、AOC(Appellation d'Origine Controlee)に含まれている。GI三重でAOCの意味合いがあるので、それとは異なる用語が良いということになり、「Heritage」とした。
日本各地にGIが浸透しつつあるが、そこから更に付加価値を付けるものとして、「Heritage」のような制度が広がってゆくと良いのではないかと思っている。
なお、日本酒はワインと異なり、原材料の味が、そのままお酒の味にはならない。そのため、ワインのように「テロワール」が決定的な要素という訳ではない。
杜氏や蔵元の考え方があり、そのうえで、原材料である米や、麹などの多くの要素が日本酒の味わいを決める。米の産地は、その一要素でしかない。
しかし、お米を作り続けてもらえる環境を維持するのも大事なこと。そうした観点から、地元のお米に着目した認定制度を設けることには意味があると思う。
(Q)海外における日本酒の評価についてお聞きしたい。
(A)輸出は増えている。その要因として、海外における料理の味わいの変化もあるのではないかと考えている。
例えば、1970年代のフレンチは、バターと生クリームを使用したこってりしたソースが主流だった。こうした料理には、タンニンのしっかりした赤ワインが合うのだと思う。
それが、80年代から90年代にかけて、ヘルシー志向もあり、料理の脂肪分を減らすようになってきた。ソースについていえば、泡立てたエスプーマのような軽いソースが使われるようになった。
最近では、ソムリエとしてフランスで活躍されている宮川圭一郎さんによれば、「料理が点と線になった」という。皿の上に点と線でソースを飾るようなシンプルな状態になっている。
そうした中、コクを出すために、日本料理が研究されて、料理に出汁を活用するようになってきている。そうした料理に日本酒が合わない訳がない、と思っている。
<参考:宮川圭一郎さんによる「フレンチの変化と日本酒」(1)(2)>
<参考:辻仁成さんによる宮川圭一郎さんのインタビュー記事(Kura Masterについて)>
毎回、恒例の集合写真です。ハイブリッド形式でしたので、現地参加の方とオンライン参加の方、ご一緒に!!
*写真撮影の時のみマスクを外しております
清水さんには、兜LIVE!蔵元トークで4年連続お話をいただきましたが、毎年、新しい話題に事欠くことがないくらい進化しています。2022年もぜひ、兜LIVE!でお会いしたいですね。お待ちしております!
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