イベントレポート

2020.11.13

第29回『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。

こんにちは!

兜LIVE編集部です。


10月24日(土) 、オンラインにて『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。16時スタートの2時間拡大版でした。


今では世界的な金融街と言われる日本橋兜町。

江戸時代には酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。

平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広め、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。


今回は山形県酒田市で「楯野川(たてのかわ)」などを手掛ける楯の川酒造でした。製造担当五十嵐さんによる蔵案内に始まり、その後は、代表取締役社長の佐藤淳平さんより、最近の取組みに関するお話など盛り沢山の内容でした。最後はチャットの質問を1つずつ丁寧にご回答いただき、あっという間の2時間でした。


「楯野川」さん、どんどん進化していて、今後ますます楽しみです。

◆蔵案内

案内人の五十嵐さん


▼精米
・自社精米だが、精米所は少し離れた場所にあるので今回は中継無し。新中野工業製の精米機を3台設置している。扁平精米や原型精米は行っていない。
 


▼洗米
・2種類の洗米機を使用。
・1つはウッドソンのバッチ式洗米機。主に麹米向けに使用。


・もう一つは「圧密式」の洗米機。主に掛米向けに使用。

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<参考:ウッドソン社の「圧密式」洗米機
(※)上記洗米機はバッチ式としても使用可能。しかし、圧密式は連続洗米で効果を発揮するため、10 ㎏ずつ断続投入するバッチ式の使用はお薦めしないとのこと。

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▼蒸米・放冷
・甑と放冷機を使用。
 


▼麹室



・蒸米を床に引き込む(「床用製麹機」)。

・翌日、隣の部屋に移す。ステンレス製の麹箱に10kgづつ盛り、箱麹法を行う。


・麹箱をステンレスにしたのは昨年から。木製の箱は熱して消毒するが、微生物が残存するというデータが出ている。ステンレスに変えたところデータは良好。麹の造り方は変えていない。


・出麹後、青いプラスチック製の箱に移して枯らす。これも昨年から導入。 


・ステンレスの麹箱は箱の角のところが結露しやすいという難点はあるものの、青いプラスチック製の箱でしっかり枯らすことができるようになり、締まった良い麹に仕上がっている。糖化力が持続する麹といえる。


▼酒母室
・中に入ると電波状況が悪いため、入口から中継。現在、10本の酒母が立っている状況。
 


▼仕込み蔵
・大小2種のサーマルタンクを使い分け。小さなタンクは精米歩合18%から一桁台のものに使用。大きなタンクはその他のものに使用(当蔵は全量純米大吟醸蔵であるため最低精米歩合は50%)。

・醪日数は27~28日程度。

<美味しそうな醪>


▼上槽
・ヤブタを使用。今年はまだ上槽は行っていない。
 

◆最近の取組み

佐藤淳平さんから、最近の取組みについて説明がありました。



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①契約栽培米の「特別栽培」移行と、今後の使用米
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▼契約栽培への拘り
・酒造組合経由でお米を購入する場合、1~2年前には注文する必要がある。これにはリスクがあるが、折角リスクを取るのであれば、農家さんと一緒に酒造りを進めたいと考えた。

・また、酒造組合経由で購入すると、様々な生産者のお米を混ぜて納入される。その結果、精米後の出来もバラツキが生じ、米が割れたり割けたりする。

・当蔵では、できるだけ農家ごとに精米を行い、精米後の品質が確保できるように努めている。

・日本酒の原料は水のほか、「米・米麹」であり、米が主原料。それをどう調達するかは非常に重要であると考えている。


▼「特別栽培」移行
・現在、当蔵の使用米の85%は地元農家との契約栽培。10年前からの取り組みで、現在は70ヘクタールある。収穫量は年間7000俵。等級検査も自社で行う。

・栽培方法は慣行栽培だったが、慣行栽培よりも50%以上農薬・化学肥料の使用を削減した「特別栽培」に移行する。目的は米のタンパク質を減らすこと。

・今期は、「出羽燦々」、「美山錦」、「雪女神」の全量を「特別栽培」とした。なお、「出羽燦々」の一部は「有機栽培」である。「雪女神」は今期から鶴岡市の3ヘクタールの圃場で栽培を開始。

・兵庫県産「山田錦」については、農家さんに依頼し、約半分を「特別栽培」として頂いた。数年かけて感触を確かめ、将来的には全量を特別栽培にシフトする計画。

・「亀の尾」や、後出する「惣兵衛早生(そうべえわせ)」は、育て方が難しく、現在は慣行栽培。


▼今後の使用米
・将来的には全量「契約栽培」かつ「特別栽培以上」の米で酒造りをしていきたい。

・全量を地元米にしたいところだが、この20年の経験を踏まえた結論として、「山田錦」は外せない。一方、雄町はラインナップから外してゆくことになるだろう。


<参考:「楯野川」味わいマップ
(※)「雄町」だけ、ポジショニングが他と少々異なっているようです。


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②在来品種 惣兵衛早生(そうべえわせ)での醸造
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・2019BYから、亀の尾の親の品種である「惣兵衛早生」での醸造を開始。先週発売開始したところで、種籾の入手からお酒のリリースまで3年を要した。

・「惣兵衛早生」は、庄内地方の在来種。鶴岡市藤島地区にある農業試験場の方から数グラムの種籾を譲り受けて、初の復活栽培を実施。昨期、漸くタンク2本を仕込めるまでになった。2019年収穫米の等級検査はぎりぎり三等。

・「惣兵衛早生」は在来種であり、これに関する記録などは見あたらない。品質的には亀の尾に似て、少し硬めの米である。


<参考:「惣兵衛早生」栽培のストーリーと楯野川の新シリーズ 「Shield(シールド)」>

<参考:「惣兵衛早生」についての蔵元ブログ
(※)「Shield」シリーズでは、庄内や山形県が発祥の品種にスポットライトを当てることを企図。「亀の尾」・「惣兵衛早生」について米の特徴などの把握が進んだのち、高級酒への使用も展望。


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③オリジナル酵母の使用 
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・約2年前から、蔵付き酵母の分離に取組み、オリジナル酵母を選抜。2019BYではタンク2~3本の仕込みを実施。2020BYから本格的に使用する。

・9号系に近く、発酵力が強く、落ち着いた香りになる傾向。

・2020BYもメインで使用するのは山形酵母や協会酵母になるが、徐々にオリジナル酵母にシフトさせ、独自の酒質の純米大吟醸を提供してゆきたい。


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④攻めの姿勢
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・コロナで春先に今後3年間は設備投資凍結という判断をしたが、8月9月と前年並みの数字に戻ってきた。このため、攻めの姿勢に転じることとした。

・現在、大型倉庫と大型冷蔵庫の建設を進めており、年内には完成予定。


◆ブラインドテイスティグ

恒例のブラインドテイスティングでは、佐藤淳平さんも真剣です笑。今回は見事に正解しました。当てるのが目的ではなく、自分の好みを知ってもらうのが狙いです。


▼3種の日本酒
①「楯野川」 純米大吟醸 主流

    日本酒度:-1
    アルコール度数: 15%
    酸度:1.3
    原料米: 兵庫県産山田錦
    精米歩合:50%
    価格:720ml 1980円/1,800ml 3740円(税込)

    
②「楯野川」 純米大吟醸 雄町

    日本酒度:+4
    アルコール度数:15%
    酸度:1.4
    原料米: 岡山県産雄町
    精米歩合:50%
    価格:720ml 1925円/1,800ml 3630円(税込)


③「山川光男」 2020はる 生酒

    日本酒度:***
    アルコール度数:15%
    酸度:***
    原料米:***
    精米歩合:50%
    価格:720ml 2090円/1,800ml 3960円(税込)


・「山川光男」は、以下の4蔵の銘柄から一文字づつ取ってネーミング。
「山」=山形正宗
「川」=楯野川
「光」=東光
「男」=羽陽男山

・上記4蔵が交代で、「山川光男」ブランドのお酒を製造。春・夏・秋・冬の
4バージョンを販売している。今年は「はる」が「楯野川」の担当ということでこのお酒を出品。

・次回、「楯野川」が担当するのは来年5月分の予定。1回火入れの商品を
出す予定。
<参考:公式HP「山川光男」公式HP> 



◆オンライン飲み会をしながらQ&A

ブラインドテイスティングが終わり、残りの30分はオンライン飲み会をしながら、佐藤淳平さんが、チャットの質問に対して1つ1つ丁寧に答えていただきました。


(Q)コロナの販売への影響は。

(A)4、5月は売上が半減。しかし6月には輸出が再開し、総売上が前年水準に戻った。7~9月は90~95%程度。10月は前年水準が確保できる見込み。

但し、一升瓶の動きは悪く、その分を輸出が補っている。当蔵で1.5トン仕込みを上槽すると、例えば一升瓶200ケース、四合瓶100ケースの商品となるが、夏の季節商品や「ひやおろし」は、四合瓶が完売する一方、一升瓶は100ケース残るといった状態だった。


(Q)お米の出来具合は。

(A)7月までは寒くて雨が多かった。このため、出穂時期が1週間遅れた。しかし、8月の途中から暑くなり、遅れを回復。暑すぎるという影響も出なかったようだ。


(Q)ビーガン認証は。

(A)特に考えていなかったが、面白いのではないかと思う。


(Q)アッサンブラージュは。

(A)やるとしたら自社内。しかし、今のところ、タンク毎に詰めている。このため、例えば同じ「清流」でもタンクにより少しづつ異なる。

アッサンブラージュを否定するつもりはないが、高級シャンパンのアッサンブラージュは加糖なども行う訳で、日本酒のブレンドと文脈が異なる。


(※)シャンパンのアッサンブラージュは、加糖や瓶内二次発酵の前、スティル・ワインをブレンドする段階で行う。


(Q)コロナの契約栽培への影響は。

(A)例年、8月末には、翌年春の生産契約を行う。今年の作付けは契約済だったが、3月末頃にコロナの影響について検討。4月に農家さんに無理を言って、70ヘクタールのうち10ヘクタールを飯米の作付けに変更して頂いた。残る60ヘクタールは全て購入。来年の契約は今年の8月末に終えており、70ヘクタールに戻して頂くこととしている。


(Q)「奥羽自慢」・ワイナリー等の取り組みについて。

(A)7年前に、2年間休造していた蔵を引き継いだ。7期目で漸く黒字化した。
ワイン醸造は3年前に免許を取得。来年ワイナリーを新設する。若手の阿部、北山が頑張っている。
2023年秋にはウイスキー醸造をしたいと検討しているが、こちらは免許取得もこれからといった段階。


(Q)低アル酒への取り組みは。

(A)「奥羽自慢」の新ブランド「吾有事」では低アル酒に取り組んだが、ピークが早いという難点がある。輸出して1~2年冷蔵保管してもらうには持たない。そのため、あまり興味はなく、「吾有事」の低アル酒も廃版。

<参考:「吾有事」、SAKE TIMES記事

最後はみんなで集合写真です!


◆まとめ

兜LIVE!に毎年登場していただいている楯野川。これまでも、18%精米、8%精米、そして1%精米の日本酒を発売するなど「攻め」まくりでした。そして、今後も攻めの姿勢で次から次と新しいことにチャレンジしています。そんな蔵元の情熱的な想いを「楯野川」飲むことで、皆さんと共有したいですね。


『楯野川』を飲まれたことがない方は、ぜひ、お試しあれ!!

 


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