2022.12.06

今年で5回目の開催!大人気イベント「家計簿の夕べ」に参加してきました

こんにちは!

兜LIVE!編集部です。


2022年11月16日(水)、毎年人気のイベント『家計簿の夕べ』が開催されました。



「夢をかなえ、豊かな暮らし、安心できる家計を実現する道具として家計簿をうまく活用して貰う」ことを目的に毎年開催しているイベントで、昨年に引き続きリアルとオンラインでの同時開催となりました。


前半は神戸女子大学家政学科教授・ガンガ伸子先生による基調講演。後半は家計簿普及促進委員会の6社とコミュニティメンバーによる「物価高対応をはじめとする家計管理を巡る最近の話題」と題したパネルディスカッションが行われました。後半にはスペシャルゲストとして、個人で家計簿を利用しているユーザーさんの登壇という、イベント初の試みもあり大変盛り上がる内容となりました。


当日の様子をレポートしていきます。


◆主催者代表の挨拶からスタート

初めに、家計簿普及促進委員会を代表して、「スマートアイデア」代表取締役・江尻尚平(えじり しょうへい)さんによる開会の挨拶がありました。



「第5回目となる本イベントですが、毎年新しい発見があります。家計簿の魅力はもちろん、どのように活用していくか議論する良い機会になっています。特に今年は円安であったり物価高であったりと、家計にとっては難しい状況になってきています。そのため、家計簿の重要性がさらに高まっていくのではないかなと思っております。今回の基調講演、パネルディスカッションを通じて、皆さまの家計管理へのヒントとなるような時間になれば幸いです」


◆神戸女子大学家政学科教授・ガンガ伸子氏による基調講演

江尻さんのご挨拶の中にもありましたが、昨今の社会情勢による物価高は、目に見えて我々の生活に大きな影響を及ぼしてきています。賃金が上がらない中、生活必需品や光熱費の上昇を肌で感じている方も多いかと思います。この困難を乗り越えるべく、家計管理においてどのようなことに注意していく必要があるのでしょうか。


食料経済学の専門家で家計の食料消費について研究されている、ガンガ伸子先生がオンラインでの講義を行ってくださいました。




◆統計データから見る家計を取り巻く昨今の状況


「まず始めに、長期的な消費者物価指数の推移を見ていきますと、私たちは数十年間、物価上昇を経験してこなかった、それが2022年に入り急上昇している事がわかります。歴史的な上昇幅になるそうです。資源高と円安の同時進行による影響、さらには天候不順による農産物の不作が追い討ちをかけたと言われています。さらに生鮮食品以外にも、特に電気ガスなどのエネルギーの価格高騰が著しくなっています」



「生活者の肌感覚では、食料品や光熱費などの自分にとって欠かせないものの値段が上昇すると、非常に生活が圧迫されていると感じるようになります。では、皆さんにとってはどうでしょうか?このようなデータを見ることも大切ですが、それぞれのライフスタイルに合わせて考えることが大切です」


自分自身の生活における物価の影響を具体的に数字で把握することは、家計のやりくりのヒントとなり得ます。色々なものが価格上昇する中で、自分にとって何の支出がどれだけ生活に影響しているか、習慣的に家計簿をつけて家計の見える化を図っていくことが大切だなと感じました。


◆家計消費を中心とした家計に関する基礎概念

「家計の見える化の次に、その上で何かできる策がないか、いくつかの家計に関する基礎概念から紐解いていきたいと思います。企業経営で用いられる損益分岐点の図をご覧ください」



「損益分岐点とは利益が出る境目のことです。利益を上げやすくするためにはこの点を下げていく必要があり、それには固定費の削減が重要になってきます。これは家計に置き換えると基礎的支出に相当し、ここを見直していくことが支出の削減にとても有効です。基礎的支出は必需品的なもので削減が難しいものが多いのですが、家計簿をつけているとその中でも節約できそうなものが発見できることがあります。例えば、スマホの料金プランや不要なサブスクリプションなどがそれにあたります」



「世帯人員別に一人当たりに換算した生活費を見ていくと、世帯人員が多くなればなるほど一人当たりの生活費は少なくて済みます。工業生産でも農業においても事業規模が大きくなればなるほど単位あたりのコストが小さくなるという規模の経済性が働きますが、これは家族においても同様です。現在は世帯規模が縮小していることから、規模の効果が働きにくくなっているということも、少し意識しておくと良いかもしれません」



「単身世帯の食料費は4人世帯の1人分の1.9倍かかるというデータがあります。このように割高になってしまうのは、弁当などの調理済みの食品購入や外食が多いことなどに起因します。世帯規模の効果が働きやすい内食(食材を買ってきて家で調理する)の割合を増やすことや、少人数の家族においてもまとめて調理するなどすれば規模の効果を発揮できます。最近の円安による物価上昇への対策を考える上では食料自給率の高い食品(国産品)を購入することも有効な方策です。米、野菜、魚介類といった自給率の高い食品です。野菜などは肥料の高騰から値段が上がってきているものはありますが、それでも国産品は価格が安定しているものが多くあるので、意識してみると良いと思います」



「食料消費に関して第2のエンゲル係数という考え方があります。摂取エネルギーの中で穀類、芋類などのでんぷん質食品に占めるエネルギー比率(でんぷん質率)は、所得が低いほど高くなる傾向にあります。これは、所得が低いとできるだけ安上がりに栄養を摂ろうとし、そのために穀類などが多くなる事を意味します。このことを参考に、栄養的にも経済的にも合理的なメニューを考えることは、食生活の質を落とさずに食料費の節約効果に繋がります。栄養バランスを考えて単価の安い食品を購入する、自給率の高い食品を選択する、国産品を選ぶ。また、旬の食材は栄養価が高くかつ価格も安いものが多いので、積極的に利用する。以上のことを、食料費の物価高騰の対策として取り入れていただければと思います」


日々の生活に密接した「食」の視点から、物価高を乗り切るたくさんのヒントをいただきました。


◆家計簿普及促進委員会6社によるパネルディスカッション


後半は、家計簿のスペシャリスト6社によるトークセッション!家計の管理術をテーマに、すでに家計簿をつけている人には共感を、苦手だけれどもこれからチャレンジしたい方には後押しとなることを目的としたプログラムで、毎回こちらも盛り上がりを見せています。



家計簿普及促進委員会の6社が、きんゆう女子。とコミュニティメンバーからの質問に答えていくというディスカッション形式で行われました。


◆家計簿普及促進委員会パネリスト6社の紹介

まず始めに、パネリスト6社のご紹介をしていきます。



キャッシュレス派も現金派も使いやすい機能が充実しているオンライン家計簿アプリ「Zaim」。「毎日のお金も、一生のお金も、あなたらしく改善」というコンセプトのもとユーザーに寄り添ったサービスを提供しています。累計1000万ダウンロードを突破しているそうです。


Zaim



イベント開始の挨拶もされた江尻さんが代表を務める「スマートアイデア」は、2秒でつけることができる簡単家計簿アプリ「おカネレコ」、家族向け家計簿「おカネレコプラス」を運営。FPオンライン相談サービス「マネシル」などFintech分野に注力した事業も展開しています。


スマートアイデア



創刊から71年。『家計簿初心者』から『やりくり名人』まで幅広い方々に活用いただける「明るい暮らしの家計簿」は、金融広報中央委員会の前身「貯蓄増強中央委員会」が長年改良を加え完成させた「家計簿の決定版」。

今年から会社のキャラクター「ときわん」とFPが家計管理のお悩みを解決するYouTubeチャンネル“ときわんTV”で無料動画配信を始めました。


ときわ総合サービス



家計簿を世に広め、家計運営を推奨した家計簿の考案者・羽仁もと子さんが創設した「婦人之友社」。家計を支え続けて120年という家計簿の老舗です。2020年には、クラウド版家計簿をリリースするなど、多様化するライフスタイルに合わせ多くの子育て世代の家計を応援している会社です。


婦人之友社



シンプルなデザインで、様々なライフスタイルに寄り添う資産管理サービス「Moneytree」。明細を学習して自動的に支出をカテゴリ別に振り分けるAI技術の導入など、楽にお金の管理ができる家計簿の新しい形を提案しています。


マネーツリー



様々な銀行、ECサイト、クレジットカードなどの金融サービスと連携してお金の流れを見ていくことのできる、自動家計簿アプリ「マネーフォワード ME」を運営する「マネーフォワード」。キャッシュレス時代だからこその「手触り感」をいかに普通のこととして伝えていくかということもテーマにされています。


マネーフォワード


◆家計簿のプロに聞く!物価上昇を乗り切るヒント

登壇企業6社の紹介に続き、いよいよパネルディスカッションがスタート。

「物価が上がっている中、どのように家計管理に向き合ったら良いのか」という、誰もが気になるテーマについて各社代表に伺っていきます。さらに、このような物価高の現状に対してどのような肌感覚があるのかについてもお答えいただきました。



●「婦人之友社」徳永光子(とくなが みつこ)さん
私は料理関連の記事を担当することもあり、比較的多くの種類の食材を購入することがあります。やはりここ1、2ヶ月で嗜好品、生活必需品を問わず、急激に値上がりしているなと感じています。手元にある家計簿から昨年と今年の1月から9月の電気使用量を見比べますと、10%削減できていることがわかりました。しかし、料金は15%増えているという事実も判明しました。こういった細かい事も数字として把握できることで、対策を取りやすくなるのも、家計簿を付けるメリットかと思います。


●「ときわ総合サービス」鷹取しん子(たかとり しんこ)さん
週一回の食品宅配サービスを利用する際、毎週のように「値上げのお知らせ」という案内が入っているのを見て物価高を実感しています。ガンガ伸子先生のお話にもありましたが、旬の野菜を購入したり価格の安定しているお米を食べる機会が増えました。ちなみに、私は家計簿出版社に入社して初めて家計簿の記帳を始めたのですが、食費、旅行費、交際費がとても多いことが分かりました。それは同時に「食べること、沢山の人に会うことが好き」という自分の価値観に気づかされた事でもありました。お金の使い方から自分自身を知ることができるのも、家計簿の面白いところかなと思います。


●「スマートアイデア」江尻尚平(えじり しょうへい)さん
家計簿アプリを使用されているユーザーさんから「家計簿を付けていると物価上昇に気がつきました」という声をいただくことがあります。食料品の値上げは物価高を感じる分かりやすい例ですよね。食費を下げるための努力として、まとめ買いで調整するというユーザーさんの声もよく聞きます。ところで、ガンガ伸子先生も仰っていたように食料品よりもむしろ電気代などの方が上がっているという事実があります。ちゃんと家計簿を付けている方は、その体感の違いに気がつくことができています。私自身ももちろん家計簿を付けていまして、日々の支出を小まめに記録して家計管理を行っています。


●「マネーフォワード」瀧俊雄(たき としお)さん
当社で最近のインフレに関するアンケートをユーザーさん向けに実施しましたので、一部紹介したいと思います。先ほどの江尻さんのお話にもあったように、やはり物価高を体感している対象が光熱費とかガソリンなどが上位で、その次が食品となっていました。その対策としてユーザーさんの回答で「ついで買いを減らす」というものがありました。基本的にはスマホの料金プラン、保険などの固定費を見直してもらって、その次に「ついで買い以上の買い物を減らしていく」事が良いのではないかなと思います。少し話は逸れますが、今起こっているインフレの波はいつか収まってくるはずです。現状に耐えられる筋力をつけておくことは、この苦難を乗り越えた後、必ず力になっているのではないでしょうか。


●「Zaim」志賀恭子(しが きょうこ)さん
家計簿に関しては毎日続けていく事が大切だなと思います。続けていく事で社会のトレンド、物の相場感などに対する感覚も少しずつ身についてくるのではないでしょうか。「食費が上がっているのか」という点について、ユーザーさんの記録データから分析してみたところ、結果は1人当たりの食費の平均価格は2022年に入ってから大きく増えているという傾向はありませんでした。おそらく買っている物の中身を変えたりして、工夫をされているのではないかなと推測できます。


●「マネーツリー」山口賢造(やまぐち けんぞう)さん
私たちが子供の頃によく買っていたお菓子の値上がりを見て、色々な物の値段が上がったなという実感を覚えました。家計簿に関して、私自身は自動化のツール等をうまく活用して管理をしています。お金の使い道が自動的に記録されるよう、なるべくキャッシュレス決済やクレジットカードを利用して支出を把握するようにしています。



パネルディスカッション後半では、参加者の方からの素朴な疑問に、スマートアイデアの江尻さんがお答えくださいました。



・家計管理に関して、家計簿をどのように有効活用すれば良いのか改めて教えてください

「どこに幾ら使っているのか」に気づくことが大切で、それを「見える化」するのが家計簿の役割かなと思います。ただ、すべて完璧にやろうとすると続かなくなってしまうので、最初は収入と支出を記録するくらいの大らかな気持ちで付けていくのが良いと思います。


・クレジットカードなどの後払いについて、家計簿ではどのように管理するのが良いでしょうか

これは、2種類のやり方が考えられますね。一つ目は支払った時に記録する方法(発生主義)。もう一つは引き落とし時に記録する方法(現金主義)の二つがあります。どちらが良いかに関しては、各々の好みで選んで良いかなと思います。個人的におすすめなのは発生主義ですね。いつ何を買ったのか都度確認できる方が管理しやすいかと思います。


◆家計簿ユーザーさんの登壇

本イベント初の試みとなったのが、家計簿ユーザーさんご自身のディスカッション参加です。マネーフォワードを利用されて一年半ほどになるとのことで、1円単位での家計管理を行っているそうです。大きな拍手によって迎え入れられ、少し緊張されているご様子。



きんゆう女子。と会場から質問が飛びました。


・家計簿アプリを使い始めたきっかけは何ですか?

大きなきっかけというのは特にありませんが、漠然とした将来への不安から始めた事を覚えています。様々な資産管理についての情報が溢れる中で、「自分は今いくら稼いでいて、いくら使っているのか」という基本に立ち返り、整理するために始めました。


・物価高の中、個人としては何か対策や工夫はされていますか?

そうですね。先ほど価値観というお話が出ていましたが「自分が何に使ったらより幸せになれるのか」という事をきちんと見極めてお金を使うようにしています。


・ポジティブに家計簿をつけ続けていくにはどうしたら良いと思いますか?

ゲーム感覚で楽しむのが、長続きするコツかなと思います。



「家計簿は義務感から付けようとするとなかなか継続しない」と各社口を揃える中、ユーザーさんご自身の感覚や価値観を大切にした家計簿の利用方法に、パネリストからも賞賛の声が上がっていました。


◆まとめ


イベントを通してとりわけ印象に残ったのが、マネーフォワードの瀧さんが仰っていた「家計簿は地図とGPSのような関係なのかもしれない」というお話でした。つまり、家計簿をつけていないと自分の家計がどのような状態なのか分からなくなってしまうということ。


近年、コロナ禍の影響や副業の推奨などもあって働き方そのものが大きく変わってきた中で、資産を管理する重要性がより高まっているように感じます。物価が上がっていく中でも、しっかりと家計簿をつけていくことで、自分の現状を見失わずに済むのではないでしょうか。


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