2023.11.21
こんにちは。
兜LIVE!編集部です。
皆さんは、KABUTO ONEにオフィスを構えている「株式会社証券保管振替機構」、通称(ほふり)という会社をご存知でしょうか。会社概要を簡単に説明すると「振替法(社債、株式等の振替に関する法律)」に基づく「振替機関」として内閣総理大臣・法務大臣から指定を受け、株券などの有価証券の保管、受け渡しを効率化することを目的として制定された機関です。
もう少し分かりやすく例えるならば、水や電気といった人々の生活に欠かせないインフラがあるのと同様に、証券取引にとって大切なインフラというものがあり、その役目を担っているのが「株式会社証券保管振替機構」です。
始めに「ほふり」の成り立ちについてご説明します。戦後の1949年に、新しい証券取引法の下で証券取引所が再開され、米国の制度を範とした新しい証券取引制度が導入されました。その後、市場における取引の量が次第に増えると「特別な法律に基づく本格的な振替決済制度の導入」の必要性が意識されるようになり、1984年に「保振法」が成立し、公布されました。
この「保振法」に基づき、株券等の保管振替事業を営む公益法人として、「財団法人証券保管振替機構」が設立され、1991年に株券等の保管振替事業を開始しました。翌年の1992年には保管振替事業の全面実施がされることとなりました。
2001年、ペーパーレス化を可能にする「短社法(短期社債等の振替に関する法律)」が成立、公布されるとともに、保振法に基づく保管振替機関を「株式会社化」するための法改正が行われました。2002年に「株式会社証券保管振替機構」が設立されました。
2022年、保管振替事業開始30周年ならびに株式会社設立20周年を迎えた「株式会社証券保管振替機構」。その仕事は非常に専門性が高く、一般にはあまり馴染みのない事業内容であるため、どのような会社なのかイメージを持てないという方も多いのではないかと思います。
今回は、KABUTO ONEにオフィスを構える「株式会社証券保管振替機構(ほふり)」で働く社員の皆さんに、業務内容、オフィスの使い心地、働く中での楽しみなどについて伺いました。
今回は、業務の説明からオフィスの秘密までお答えいただけるということで、4名の社員さんにお集まりいただきました。
写真左から、振替業務部の大代(だいだい)さん、システム部の棚橋さん、同じくシステム部の滝野さん、総合企画部の中村さんです。
若手、中堅、ベテランの社員さんと部署も世代も異なる方々に、お仕事の話を始め、オフィスでの過ごし方やちょっとした楽しみなど様々な側面から会社の事をお聞きしました。
トップバッターは振替業務部の大代さん。今回お集まりいただいた4名の中で、古き良き時代の兜町の様子を知る方でもあり、KABUTO ONEにオフィス移転する際、その設計にも尽力されたそうです。
——2022年は振替事業開始から30周年ならびに株式会社設立20周年だったとお聞きしました。おめでとうございます!始めに、会社の設立についてお聞かせ願えますか?
大代:1984年に財団というかたちで「ほふり」が発足し、1991年から保管振替事業を開始しました。その頃からこの界隈で業務していました。2002年から株式会社化されました。
——現在はKABUTO ONEにオフィスを構えていらっしゃいますが、以前はどうだったのでしょうか?
大代:保管振替事業を開始した1991年には、KABUTO ONE近くの第二証券会館に入居しておりました。もしかしたらその前には町内での一時的な移転もあったかもしれませんが、基本的にはずっとそこで業務を行っていたと聞いております。
——KABUTO ONEへの移転について教えてください。いつ頃から検討を始め、何が決め手となりKABUTO ONEへの移転を決められたのでしょうか?
大代:実際に移転を考え始めたのは2014年で、会社として正式に決定したのは2018年になります。2011年の東日本大震災を期に、BCP(事業継続計画)に対する考え方が大きく変わったというのがきっかけの一つだったと思います。まず、それまで本社近くにあったバックアップ拠点を本社と同時被災した際も続けて業務ができるように、大阪に移すことになりました。そしてその上で、本社機能の素早い復旧のためにはどうしたら良いのか、より耐震性の高い建物に移るべきではないか、そういった考えから本社の移転が決まりました。
——KABUTO ONEに移る決め手はどういったものでしょうか?
大代:大きく2点ありまして、1点目が「立地」、2点目が「ビルスペック」になります。
立地に関してですが、地震に対する地域危険度が低い土地であること、業務上、関係が深い証券取引所を始め、日銀や大手金融機関の本社機能が集まっているエリアであるという点を重要視しました。
「ビルスペック」については、当社の業務が他に替えが効かないという性質上、災害に強い相応のスペックが必要であると考えました。14項目の基準を設けて様々なビルを比較し、個々に点数を付け評価を行いました。地震・水害対策の他にも、例えば、セキュリティ面だったり、ビルの使い勝手であったり様々な要素を点数化して比較・検討し、その結果、KABUTO ONEに移転することが決まりました。
——先ほど、執務室、オフィス、会議室などを見学させていただいたのですが、モノトーンを基調とした落ち着いた雰囲気、開放感のあるフリースペースなどとても素敵なレイアウトだなと感じました。大代さんはオフィスの設計についても関わられていると聞きました。こだわりなどあれば教えていただけますか?
大代:オフィスをつくる際に悩んだのが「社員が一体感を感じ、風通しのよいオフィスにするためにはどうすればよいか」ということでした。試行錯誤していく中で生まれたのが「フローオフィス」というコンセプトです。フローは文字通り「空気」や「人」の流れを表していて、人と人がスムーズに交わる事ができると、自然とコミュニケーションが生まれ、情報伝達も円滑になって、新しいアイデアも出てくるのではと考えました。
一例ですが、フローオフィスの取り組みのひとつに上下階の移動をスムーズにした内部階段があります。これによってフロアの行き来もスムーズになり、かなりストレスも減ったのかなと思います。また、仕事の性質上、打ち合わせをかなり多く行うのですが、その際問題となるのが打ち合わせ場所の確保です。そこで、階段前に電光掲示板を設置し会議室やオープンスペースの空き状況がひと目でわかるようにしました。打ち合わせ場所を探す手間やストレスをかなり減らす事ができ、
集まりやすくなったのではないかと思います。
会議室の空き状況がひと目でわかるようになっていて、自身の端末からアクセスできる。
上下階を繋ぐ内部階段。
——新しいオフィスの形を模索していく中で、苦労したことはありますか?
大代:社員がリラックスして快適に仕事に取り組める環境をどのように作るかということでした。会社によっては、瞑想や仮眠ができるようなスペースがあったり卓球台があったりと、様々な仕掛けがあるかと思います。ですが、我々の会社は、少し堅いイメージがあるものですから、「ストレスのないリラックスしたオフィス」がどこまで許されるのか、とても難しい課題でした。イメージが崩れるような変なオフィスをつくると会社で居場所がなくなるかもしれませんし(笑)プレッシャーはかなり感じていました。
——移転そのものに関して、物理的なものだけでなくデータの移行(電子化)なども大変でしたか?
大代:重要な情報(個人情報等)を取り扱っておりますので、細心の注意を払って電子化を進めました。電子化を依頼する業者さんの選定から時間をかけて、1年近くかけて計画的に作業を進めていきました。実際に、電子化する作業現場を見に行ってセキュリティの確認なども行いました。最終的に段ボール300箱ほどの書籍を電子化し、保管するキャビネット数を60%ほど削減することができました。
——古いものと新しいものが混在しながら日々変化していっている兜町・茅場町エリアですが、この街の印象を教えてください。
大代:まず、昔に比べて街が綺麗になりましたね。昭和の名残を感じる古い建物も取り壊され、新しいビルが増えたなと思います。お洒落なレストラン、洋菓子屋さんなども増えて街が明るくなりましたし、平日の日中でも私服の若い世代の人たちを見かけるようになりました。街に活気が出てきているなと感じています。
インターネットに転がっている情報だけではイマイチ分かり辛い「ほふり」の事業内容。ここからは総合企画部の中村さんがご説明くださいました。
——一般にはあまり馴染みのない「証券決済インフラ」という事業内容ですが、主にどのようなお仕事をされているのでしょうか。
中村:確かに「証券決済インフラ」と聞いても中々ピンとはこないですよね(笑)。専門的な用語をいきなり使ってしまって恐縮なのですが、「ほふり」は「証券集中保管機関(CSD)」の分類となっています。
どういった事をしているのかと言いますと、株式や証券自体の管理及び、その所有者や数量といった情報の管理を行なっています。また、「誰がどれだけ持っているか」という管理だけでなく、取引によって生まれた「流れ」も管理しなくてはなりません。そうした取引がおきた時(決済)に、その情報を管理するのも「ほふり」の役割です。全国で取引される有価証券(国債以外)の振替を行う日本で唯一の組織になります。取引、決済における重要な情報の記録と伝達を「ほふり」が一元的に引き受けているという側面から、金融のインフラ的な側面が強いのではないかと思います。
——この20年における保管振替の大きな事業のひとつに「株券の電子化」があると聞いています。そもそも「株券電子化」とはどういうことでしょうか?
中村:日本において、株券の電子化前は紙の媒体でおこなわれていたのはご存知かも知れません。電子化して情報として管理しているものと違って、紙媒体には色々な課題があります。例えば株券として発行するためにはモノとして作らなければならないので、印刷代、印紙代といったコストがかかってしまいます。また、紙として持つので紛失、盗難、災害による消失といったリスクも抱えることになります。電子化してシステム上で管理することで、コストの削減、盗難、消失のリスクを軽減でき、業務そのものが効率的になりました。
——「株券電子化」に関して、移行当時をリアルで体験されていた大代さんにその時の様子をお聞きしたいのですが。
大代:発行会社(約4,000銘柄)、証券会社、銀行さん合わせて300社くらいが“いっせーのせ”で移行するということで、当然誰も取り残されてはいけないわけで、そのための準備が大変でしたね。電子化についての認識を持っていただくため、周知・啓蒙活動に時間をかけました。何度も全国説明会を開いて制度の説明もしましたし、テレビCMといった広告もたくさん打ちました。電子化に向けての諸々の準備期間は、調査・研究などの下準備の期間も含めると10年近くになるのではないかと思います。
——準備期間10年という事に大変驚きました。大代さん、お話ありがとうございました。
再び中村さんにお聞きしたいのですが、ここまで様々なお話を伺ってきて「ほふり」は証券業界における「縁の下の力持ち」的なイメージを持ちました。とても責任ある大変なお仕事かと思うのですが、お仕事される際に苦労したエピソードや、やりがいを感じられたエピソードなどをお聞かせいただけますか?
中村:日本に同じ業態の会社がないため、この分野に関する知識を身に付けるのが大変でした。そもそも他で調べて出てくるようなものでもないので、知識の吸収は苦労したし、今もしているところです。
あとはやはり「間違えられない仕事」である、という点でしょうか。私は総合企画部に在籍していますが、企画を検討する段階でリスクや懸念などを念入りに炙り出して、より細かいところまで確認を怠らないようにしています。他の部署の方達もそうですが、大切な情報を預かっているという点からも、簡単にトライ&エラーをして試していけるような仕事ではないので、責任を感じるとともにやりがいも感じます。
ここからは、システム部門の入社9年目の棚橋さんと3年目の滝野さんのお二人に、ご自身から見たオフィスの使い勝手、居心地などを聞いてみました。
——棚橋さん、滝野さん、よろしくお願いいたします。お二人は移転前からのオフィスもご存知かと思いますが、現在のオフィスの使い心地などはいかがですか?
棚橋:今はシステム部に所属しているのですが、ひとつのシステムをつくりあげるには、何百人、場合によっては何千人という人が動いてプロジェクトを進めていく事があります。そのため、コミュニケーションを密に取っていく事が大切なのですが、第二証券会館にいた時は会議室がなかなか空かない事が多く、打ち合わせをしようにもできないという事がよくありました。
ですが、新しいオフィスに来てからは会議室に加えてフリースペースもたくさん設けられているので、気軽に打ち合わせや会話ができるような状態になりました。そういった点でオフィスの使い心地、働きやすさに繋がっていると思います。
——開放的なフリースペース、プライバシーが確保された小さな個室もありますね。
棚橋:会議室を取るまでもない、でも立ち話よりはもう少し深くいきたいなという時に、フリースペースでさくっと会話できるのも良いですね。効率良く仕事が進められるようになりました。
——先ほどのお話しにも出てきた内部階段をはじめ、柱で遮らない見通しの良いフロア、フリースペースなど、社員さんがストレスなくお仕事に取り組める環境が整っているように感じました。滝野さんは、現在のオフィスの使い心地をどのように感じていらっしゃいますか?
滝野:前のビルにいた時はパーテーションに囲まれていて、一日中そこで働いていると他部署の方達に会う機会があまり無く、区切られた感じでした。今はひとつのフロアに何部署かいる形になるので、横の部署の方達の顔も知っているし、どんな仕事をしているのかが聞こえてきたりもします。そういったところで、前のオフィスの時よりもずっと部署間の交流が増えたように感じます。
——なるほど。大代さんが仰っていたオフィスの「風通しのよさ」「空気の流れ」に通じるものを感じました。他にも様々な工夫があるとお聞きしました。オフィス内に開放的な食堂もあるとか。
滝野:はい。食堂もとても充実しています。かなりリーズナブルな価格で定食なども楽しめますし、フリースペースとして終日活用する事もできるので、社員の憩いの場にもなっています。食堂の存在が働く楽しみのひとつにもなっていますし、経済的な面でもプラスになるので助かっています。
——会社の皆さんは営業などで外に出るというよりは、システムなど中で業務される方が多いのでしょうか?
中村:そうですね。打ち合わせが多い仕事であるとお話ししましたが、オンラインで行う事も増えましたので、外出の機会そのものも減ったのかなと思います。
——コロナ禍の中でリモートワークが増え、オフィスそのものを無くしてしまうという会社も多いと思いますが、どのように感じていらっしゃいますか?
中村:取り扱っている情報の種類にもよりますが、リモートを併用して業務されている方もいます。それでも一定数出社しなければできない業務も多々ありますので、そういった面からも、オフィスに新しい環境が整備されているのは重要だと思います。
——時代にマッチした設計と真新しいオフィスでお仕事できるのがとても羨ましいです。
棚橋さんと滝野さんにお伺いしたいのですが、お二人からみて、世代、チーム、役職の枠を越えて相談事やコミュニケーションを取りやすい職場環境だと感じますか?
棚橋:そうですね。開放的で誰が出社しているのかも分かりやすいオフィスなので、コミュニケーションも取りやすくなりました。オフィスそのものは移転前より狭くなったはずなのに、デスクや動線のレイアウトのおかげでとても広く感じます。そういった事も、心理的にも話しかけやすいなと思える要因のひとつなのかもしれません。
滝野:社内にいて、喋りかけにくいなと思うことは特にないですね。私が今関わっているプロジェクトが一つの部署だけでなく横断的に関わるものだったりしますので、行った先でパッと集まって情報共有できたりするのも良いですね。前のビルではやりにくかったのですが、オープンな環境だからこそできる事なのかなと思っています。
開放的なオフィスというお話からは少しずれてしまうかもしれませんが、一人で集中したい時、過ごしたい時というのもありまして、そういった時にも使えるスペースがあるのも、このオフィスの良い点だなと思います。ON・OFFをきちんと分けられる環境があるのも、オープンに皆と話せる機会が大切なのと同じくらい大事な事だと思っています。
——皆さんの和やかな雰囲気が伝わってくるインタビューになりました。業務の説明だけでなく、このオフィスで働く社員としての肌感覚など、様々なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
4名の方々のお話に共通して感じたのは、ご自身の仕事に対する高い意識でした。
お客さんから預かっている大切な個人情報を管理するという非常に機密性の高い仕事であり、プレッシャーも多いのではと想像します。そういった時に大切なのは、気軽に誰かと相談できる事であったり、一人で熟考する時間だったりします。見通しがよく開放的なオフィス、内部階段のといった動線の確保、一人になれる空間など、ちょっとしたストレスの排除やコミュニケーションを取りやすくする環境整備がなされた快適なオフィスだなと感じました。
本日はお忙しい中貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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