2023.07.18
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
6月24日(土) 、『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。
江戸時代には日枝神社の門前町として栄え、酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。
東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。
平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広め、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。
今回は、埼玉県飯能市で「天覧山」、「五十嵐」を醸す五十嵐酒造 代表取締役社長の五十嵐正則さんをお迎えしての開催でした。埼玉県は4蔵めとなります。埼玉県のお酒に馴染のない方が多いかもしれませんが、美味しいお酒が多数あります。五十嵐正則さんは、昨年3月にご登壇いただいた小江戸鏡山酒造の五十嵐昭洋さんのお兄様になります。
正則さんから、蔵の概要・酒造り、埼玉県の酒事情、飯能市のお話のほか、これまでの蔵の危機やチャレンジングな取り組みについてお聞かせ頂くことができました。さらに酒粕の効用についても(笑)
どうもありがとうございました!
・中学校時代からすぐに働きたいと考えていたので、埼玉の県立高校を卒業後、大阪の酒類販売専門学校(現在はない)に行き、大阪の佐倉酒店に入社してお酒の勉強をした。
・1年後に醸造試験所に講習生として入所していたが、このときはまだ19歳だったので、お酒を飲まないという誓約書を書いた。講習終了後も研修生として残り、広島に移転し「独立行政法人酒類研究所」となってもしばらく在籍していたが、岩手県釜石市の浜千鳥から来た杜氏さんの腕が良かったことから、蔵に戻って来て勉強しろということで、五十嵐酒造に入社した。
▼歴史
・埼玉最古の酒蔵は1774年徳川10代将軍家治(いえはる)が在位の頃に発祥した内木酒造(浦和)が最初。酒造りの歴史が600年以上ある兵庫などから見ると日本酒の歴史は意外と浅い。しかしながら、蔵数は32蔵と全国18位につけており、歴史が浅いと思わせないほど盛んな酒造りを行ってきている。大規模な蔵は1蔵のみで、「小さな蔵で手造りの日本酒」をスローガンとしている蔵が多い。
▼特徴
・荒川と利根川という2つの大河が流れている埼玉は、昔から美味しい湧き水が出る地域として知られている。全体的に軟水のため酒質はやわらかく、口当たりの良いまろやかなお酒が多い。骨太でしっかりとした味わいの辛口の地酒も多いが、女性が洋食とペアリングしてオシャレに飲める甘酸系の日本酒も近年つくられ、その人気により注目度も高まってきている。
▼出荷量
・埼玉県の出荷量は全国4位で、大宮にある小山本家酒造1蔵が非常に多いが、他の30蔵はそれほどでもないので、ほとんど地元で販売している蔵が多い。
▼飯能市の特徴
・飯能市は都心より50k圏内
・西武池袋線池袋駅から特急で40分
・飯能市は関東平野の境目であり約7割が山間部になる。
・天覧山は197mの山であるが、関東平野を一望できる。
・飯能市の南側は東京都青梅市と接している。
▼トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園
・飯能市はムーミン一押しで、ムーミン谷をイメージした公園(無料)。
・駐車場もあり、子どもに人気がある。
・変な建物も多く異世界!建物の中に入れる。
・蔵から車で5分
▼ムーミンのテーマパーク「ムーミン・バレーパーク」
・ムーミンの世界を再現している。
・カヌーやワークショップが体験できる。
▼発酵のテーマパーク OH!!!
・「OH!!!」と驚く発酵体験!“食の魔法”を味わって、学んで、体感できる場所。「発酵食品が身近にある暮らしを広めていくことで、食卓から世の中を健康にしたい。」そんな想いを胸に「OH!!!」と驚くような様々な発酵体験を経験できる。
・天覧山のふもと(蔵から車で10分)、飯能の豊かな自然に囲まれたロケーションで、発酵を取り入れたこだわりの料理や体にやさしいスイーツを満喫できる。
・ご飯がススムくんでおなじみの会社が運営
・マイキムチが作れる。
・スタートは青梅にある澤乃井で酒造りをしていたが、明治30年頃に飯能は良い水が出るから酒造りをしてはどうかという話があり、飯能で酒造りを始めた。
・五十嵐正則で5代目になる。
・現在、800石を製造している。
・年間製造量の7割が地元向けである。埼玉県内でも熊谷、さいたま市では売っていない。
・手造りを基本として、原料に拘っている。
・130年やっているといろいろな問題があった。
▼米の配給制度問題
米が自由に取引できなくなり、配給制度に変更されたのは1942年からで、前年の1941年の製造数量で、配給量が決められた。当社は1940年に移転したため、造りを600石から 100石に縮小した矢先だったので、配給量をかなり少なくされ、1968年に配給制度が廃止になるまで200~300石しか製造できなかった。
▼包装紙問題
昭和で一番酒の売れていた時代に、父が飯能から東京の酒販店に営業に行った際、当時、剣菱が人気があり、酒販店から剣菱の包装紙を持ってくれば取引すると言われ、それが転機となり、東京進出を断念して地元販売に専念することにした。
▼米不足問題
1993年(平成5年)の記録的な冷夏による不作が原因で「平成の米不足」となった(タイ米が初めて日本に輸入された)。このため、これまで取引していた長野県の美山錦や兵庫県の山田錦などは県外に出されなくなってしまった。この時、北海道、岩手、新潟、福井、広島が手を差し伸べてくれて、酒造りを継続することができた。この縁を今でも大切にしている。
▼後継者問題
包装紙問題で、東京進出を断念し、地元販売に専念することとしたが、地元の販売先が300軒程度あるなか、後継者がいる販売先は30軒程度しかないことがわかり、後述する「新しい日本酒造り」へ繋がることとなる。
▼協会酵母
・明治時代に初めて清酒酵母の存在が確認された。蔵に棲みついている酵母を採取し、培養して良質な日本酒が出来れば協会酵母と認定し、培養・保存と販売をしている。
・当社で使用している酵母は、協会7・9・10・14・18・19、赤色酵母・多酸性酵母、埼玉 C・G。
▼製造時期
・お酒の原料はお米なので、お米を収穫してから仕込みになる。当社では10月中旬から5月中旬まで仕込んでいる。
▼仕込みの大きさ
・通常は2000k仕込みで造っている(2000kで仕込むと純米酒約3500ℓ)。
・手をかけたいお酒は仕込み数量を小さくしており、大吟醸・純米大吟醸は600kで造ることにより肌理細かくなる。
▼搾り機
・通常は「薮田式圧縮機」を使ってお酒を搾っている。香りを残したいお酒は昔ながらの「ふね」で搾っている。圧力が掛からないため、濃厚で香り高いお酒が搾れる。
▼日本酒度
・純粋の水とお酒の重さを比べ測定した数値で、水と比べて軽いものを「+ (プラス)」で表記し、重いものを「 - (マイナス)」で表記したもの。これは日本酒に含まれる糖分によって左右されており、糖分が少ないほどプラスに傾き多いほどマイナスに傾く。したがって日本酒度がプラスなほど辛口になり、マイナスなほど甘口となる。
・しかしながら、甘口辛口を「日本酒度」だけで判断することはできず、合わせて「酸度」を見る必要がある。
▼酸度
・日本酒の味わいを表すもう一つの数値である「酸度」は、お酒の中に含まれる酸味成分(有機酸)の量を表した数値。
・酸味にはお酒に旨みをもたらし、お酒の味を引き締める効果があり酸度が高いほど濃厚で辛口に感じ、少ないほど淡麗で甘口に感じる。しかしながら、こちらも一概には言えず、日本酒度との兼ね合いで甘口にもなり辛口にもなるので、日本酒度との兼ね合いを見て好みのお酒を探すと良い。
▼精米歩合
・精米歩合とは、お酒の原料であるお米をどれだけ磨いて使用したのかを表している。一般的には、より%が低いものほど精米されており、雑みが少なく香り高いすっきりとした味わいのお酒になる。
①業界の常識からの脱却
酒を1年分しか仕込まない!
<メリット>
・必要以上の在庫を持たなくて良い。
・フレッシュな酒を提供できる。
<デメリット>
・味が急に変わる。
・酒がなくなる可能性も・・・
②地産地消
③東京進出!
・前述のとおり、剣菱の包装紙問題で東京進出を断念し、地元流通に専念していたところ、地元で取引している300軒の酒販店で、10軒程度しか跡取りがいないことがわかった。
このまま地元流通だけでは経営がじり貧になると考え、東京進出を考えた。
・東京に進出するには、他の地域に負けない地酒を造る必要があり、聖蹟桜ケ丘にある
小山商店を訪問し当社のお酒を飲んでもらったところ、全国の優れたお酒を飲まされ、こういった酒はできないのかということになり、「五十嵐」が誕生した。
・「五十嵐」のコンセプトは、蔵元に来ないと味わえないお酒を提供したい!ということ。
<メリット>
・フレッシュで味わいのあるお酒
・劣化しずらい
・製造のレベルアップ
・新規酒販店の開拓
・微炭酸と炭酸が抜けた後で味わいが違うので2度美味しい
<デメリット>
・搾る日が決まるのが早くて3日前なので、そこからの人員の確保が難しい(最低3人必要)
・必要とする本数がとれない
・時間が読めない
・五十嵐の味わいではないときは瓶詰めしない
④チャレンジ
▼山廃造りと生酛造り
・生もと系酒母を使った清酒~自然の力を利用した昔ながらの日本酒の造り方~ 生酛系酒母は、育(そだ)て酛ともいい、乳酸菌の生成する乳酸によって、雑菌の増殖を抑制させる古典的な酒母造りの方法。生酛系酒母には大きく生酛と山卸(やまおろし)廃止酛(山廃酛)の2種類がある。 生酛と山廃酛の違いは、生酛で行う酛(もと)摺(す)り(山卸し)を、楷(かい)入れ、汲(くみ)掛(かけ)という作業にすることで、作業を省力化した点。
▼「赤色清酒酵母」を使用した桃色(ピンク)のにごり酒
・ほのかに爽やかな香りが漂い、フレッシュな味わいを伴ったさらりとしたアタックの後から、イチゴやブルーベリーのようなジューシーな味わいが広がり、にごりの優しいのどごしとともに、さっぱりと爽快な甘味と酸味が軽やかに通り過ぎる。第一印象としては大人のフルーツカルピスを飲んでいるかのよう。
・アルコール度数低めで、日本酒初心者にも飲んでもらいたい軽快で飲みやすいにごり酒。
▼純米吟醸酒・天覧山の「振武」ラベルバージョン
・飯能戦争や振武軍に参加した渋沢平九郎に想いを馳せて製品化。2020年燗酒コンテスト最高金賞を受賞した。
・右下のモデルは、蔵元の五十嵐正則さん!!!(笑)
▼飯能市で成人を迎えた人、全員に飯能で製造しているお酒をプレゼント!
⑤蔵の解放
・酒粕には悪玉(LDL)コレステロールをやっつけて、 善玉(HDL)コレステロールを増やし、総コレステロール値を下げるという願ってもない作用がある。血圧を下げる作用や血栓を溶かす作用もあるので、心筋梗塞、動脈硬化の予防に役立つ。
・また、糖尿病は、インスリンというホルモンが正常に働かなくなり、血糖値が増える病気であるが、日本酒や酒粕の中にはインスリンと同じ働きをする物質があり、体内のインスリン作用不足を補うことができる。
・このほかにも、発ガン予防の効果があることや、骨粗鬆症の予防、ボケや老化の予防、免疫力を高めたり、肝硬変から肝臓を守る作用など、いろいろな健康効果があることが分かってきている。
■利き酒3種 お酒の説明
五十嵐の瓶詰ルール
搾って直ぐに瓶詰め ②無濾過原酒 ③貯蔵は-5度
④杜氏・社長が利き酒をして、瓶詰めするか決める。
五十嵐 純米大吟醸 無濾過生原酒 直汲み
日本酒度:-1
アルコール度数:16.8度
酸度:1.8 アミノ酸:1.0
原料米:北海道産 きたしずく 100%
精米歩合:45%
マスカットやリンゴのようなジューシーな果実を想起させる華やかな吟醸香。グラスを回してみると、米由来の旨味も感じられ、口当たりはなめらか。旨味のバランスが良く、余韻にアルコールの苦味が感じられ、全体を引き締めている。2022年和酒フェスではプレミアム部門最高金賞に選ばれた。
五十嵐 純米吟醸 雄町 無濾過生原酒 直汲み
日本酒度:-1
アルコール度数:16.4度
酸度:1.6 アミノ酸:0.8
原料米:岡山県産 雄町米
精米歩合:53%
価格:1800ml 3,520円
グラスに注いですぐに感じるのは、とても上品で繊細な吟醸香。ゆっくりとグラスを回すと、奥に隠れていた、微弱でもはっきりと感じられる旨味を感じられる。高揚感のある香りである。
五十嵐 純米 山廃仕込み 無濾過生原酒 直汲み
日本酒度:-1
アルコール度数:17.6度
酸度:酸度:2.2 アミノ酸:1.2
原料米:吟ぎんが・吟風
精米歩合:65%
価格:1800ml 2,970円/720ml 1,650円
優しく爽やかな香り、直汲みのガス感。優しい甘味に、厚みのある旨味、しっかりとした酸味。
製品化された今期の山廃を飲むのは今回が初めてです。7月より発売開始!
<会場のKABEATでの素敵なおつまみ>
乾杯!
・毎回、恒例の集合写真です。今回は、蔵元トークの会場ではなく、KABUTO ONE1階アトリウムの赤石にて。
埼玉県飯尾市や蔵のお話、そしてチャレンジについてなど、多岐に渡り盛り沢山の内容でした。11月の蔵開きに行きたくなりましたね。
埼玉県のお酒は美味しいです!
<五十嵐さんは蔵元トーク前にも、渋沢栄一が生涯大切にした佐渡の赤石(縁起石)にタッチして運気アップ!そして平和どぶろく兜町醸造所にもご挨拶!>
<懇親会はKABUTO ONE1階のKNAGで盛り上がりました!>
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