イベントレポート

2020.12.07

第30回『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。

こんにちは!
兜LIVE編集部です。
 
11月14日(土) 、オンラインにて『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
 
今では世界的な金融街と言われる日本橋兜町。
 
江戸時代には酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。
平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広め、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。



今回は、島根県松江市で「李白」を醸す李白酒造の代表取締役 田中裕一郎さんをお迎えしての開催でした。最初に、李白を飲んだことあるなしの質問をしたところ、4名の方が初めてのこと。(10名の方が無回答でした(涙))。


田中さん、新たなファンを4名増やすチャンスです!



まず、田中さんより、謝罪がありました。「案内にはバーチャル蔵見学とありますが、たくさんお話したいことがあるので、蔵見学はなしでごめんなさい」と。その後は、終了時間までの90分間、ほぼ話し続けられました。蔵の紹介に始まって、蔵に戻ってからの取組み、輸出のお話、味醂(みりん)についてなど、本当に盛り沢山。資料なしで溢れ出てくるようなトークで、あっという間に終了時間でした。


李白の田中さん、まだまだ話し足りなかったでしょうか(笑)


来年もまたお招きしたいと思います!


◆蔵について

・1882年創業。「李白」という銘柄は、島根出身で昭和初期の宰相、若槻礼次郎氏が命名。ラベルの文字も若槻氏の揮毫。


・李白酒造の経営理念は「酒文化を普及し正しく後世に継承する」ということ。


・販売は、県内、県外、海外が3分の1づつ。輸出に力を入れているのが特徴の一つ。輸出について酒蔵別でみると全国25位となる。概ね同順位にあるのは、銘柄でいうと「真澄」、「出羽桜」、「南部美人」など。


・石数は1500石なので、輸出比率は高い。海外向け販売の専業先を除けば、輸出比率は全国2位だと思う。


<参考:李白酒造の経営理念等

<参考:李白酒造に関するSAKETIMES記事

◆蔵に戻った経緯と「純米吟醸 雄町」について

・東京農大出身で、「出雲富士」今岡氏の一つ先輩になる。卒業後、今岡氏と同じ会社に勤めていたが、同じ時期に辞めて蔵に戻った。


・蔵に戻ったのは、杜氏による酒造りから社員による酒造りに転換するため。当蔵が製造部に新人を3名採用したタイミングで、この3名を育てるには「今しかない」と考えた。15年ほど前になる。


・当時の蔵人は、新人社員3名のほか、他の社員が2名、出雲杜氏系4名の計9名。こうした中で、新人中心で酒造りの実績を作るため、それまで蔵で造っていたお酒とは全く違うものを手掛けることにした。


・蔵で造っていたお酒のメインは「五百万石or山田錦+9号系酵母」。これは出雲杜氏が経験と勘で造ることができる。そこで手掛けることにしたのが「雄町+花酵母」。


・雄町は柔らかいお米で酒造適性がそれまでの米と異なる。また、花酵母は農大時代に研究しており、自分に優位性があった。


・製造にあたって作成した仕込み計画は、醪日数に25日~40日という幅を持たせて綿密に準備した。その甲斐があって、醪を狙い通りの数値に仕上げることができ、杜氏に「社員で造れる」ということを見せることが出来た。


・ところが、一つ誤算が発生。それは、醪日数が38日と長くなったせいで、そのお酒を搾る前に、暫くヤブタを使わない期間が生じてしまったこと。そのせいで、上槽時に「ヤブタ臭」がついてしまった。


・ヤブタは使い続けていれば臭いがつきにくいが、使わない期間があると、その後で「ヤブタ臭」とか「フクロ香」と言われる臭いがつきやすくなる。


・このお酒を搾る時、荒走り、中取り、責めを別々に取り、後で責めだけ炭素濾過してブレンドしようと考えていた。ところが結果的に、荒走りと中取りはヤブタ臭が付いた。数年保管してみたが変わらず、他のお酒に混ぜて販売せざるを得なかった。


・それから製造については設備の変更などにも取り組んだ。連続蒸米機から甑に変更し、蒸米時にクレーンで吊る際に重量を測ってデータを蓄積するなどして、酒造のデータ化に基づく技術の継承を進めてきた。


◆輸出について

▼輸出のスタート

・輸出に力を入れたのは先代社長の頃から。自分が最初に海外に行ったのは小学校2年生の時で、行き先は香港だった。その頃、西武百貨店が香港に出店しており、そこにお酒を出したいと考えて出掛けたのではないかと思う。


・香港西武の立ち上げメンバーが創ったのが「シティスーパー」という高級スーパー。この店にお酒を入れたのが当蔵の輸出の始まり。

<参考:シティスーパー

 

▼米国向け輸出について

・現在は、輸出の7割が米国向けとなっている。米国のインポーター「Vine Connections」との出会いにもストーリーがある。


・先代社長は、日本酒を外国人に知ってもらうために、「いい酒蔵元会」を組織して、日本酒を英語で紹介する「esake.com」というウェブサイトを立ち上げた。このサイトを見て、蔵に電話してきたのが「Vine Connections」の人だった。


・この電話をきっかけに、先代社長が、大門酒造の大門さん、ジョン・ゴントナーさんと一緒に米国を訪問して取引が始まった。


・驚くのが、その取引条件。何と後払いで合意してきて、他の蔵元もその条件で輸出するよう説得して回ったようだ。「損してもどうせ数十ケース。だったら、まずやってみよう」ということだったのだろうと思う。


・今は、「Vine Connections」を通じて米国全50州に輸出している。米国は州毎にアルコールの法律があり、州を跨いだアルコール販売ができない。「Vine Connections」は50州全てに2次卸を持ち、流通させている。


・「Vine Connections」は、5~6月に2週間ぐらいずつ、米国を巡るツアーを組んでいる。リーマンショックの後、数年ブランクがあったほかは、毎年実施されている。


・米国に輸出するようになってから15~16年程度だと思うが、この間で米国の日本酒事情は大きく変わった。各州の2次卸のうち、主要な先には日本酒専門の担当者もいる。


・そうした2次卸の一つが、カリフォルニア州などを拠点とする「ヤングス」という会社。非常に大きな会社で、ワイン・ビール・スピリッツ等を幅広く手掛けている。同社が毎年「和酒」の展示会を開催しており、それにあわせて出張する。


・和酒の展示会は数百人規模で、同社の展示会としては小規模な方。そこに同社の社長が現れ、社員が「社長がこの展示会を知っていたのは驚きだ。日本酒はまだまだ伸びる」と言っていたのが印象的。

<参考:「Young's Market Company」の和酒カタログ


 ▼日本酒に傾倒する外国人

・NYで清酒を製造する「ブルックリン・クラ」というブルワリーがある。同社のアメリカ人が「酒母の造り方を学びたい」として、昨年冬に、当蔵の高温糖化酛を勉強に来た。島根に一泊して酒母造りを学んだあと、他に蔵にも寄って勉強していったようだ。今は、こうした「クラフト・サケ」のブルワリーが世界に50はあるのではないかと言われている。


・オハイオ州のレストランの日本酒マネージャーが一週間泊まり込みで勉強しに来たこともある。このように、日本酒に魅了された人々が世界中に現れている。そうした人が現れる国では、日本酒は売れるようになると思う。


・李白の酒を売る時は、「嫁に出す」つもりで送り出している。インポーターは嫁の家族と思っている。世界中に「日本酒と心中する」ぐらいの気持ちの人がいる。そうした人々とやっていきたい。「金儲け目的」の人は日本酒とは相性が悪いのではないかと思う。 


▼海外における日本酒への理解と日本の現状

・17~18年前、海外で吟醸酒を飲ませてフルーティな香りがすると、「米の酒なのに、なぜフルーツを入れるんだ」と文句を言われた。それが今では、蔵元の話を聞きに来るような人は、お酒の基本的なことは良く知っている。特に、この5~10年で日本酒の国際化は大きく進んでいると思う。


・一方で、日本において、「アルコール飲料は飲むが日本酒は口にしない」という人は一定の層がいる。「酒文化を普及し正しく後世に継承する」という観点からみても、こうした層に対し、蔵元として、日本酒の魅力を伝えてゆかなければならないと考えている。


◆味醂(みりん)について

・現在、原料についての特殊な条件を付されることなく「みりん」を製造する免許を新規に取得することはできない状況になっている。当社は、そうした条件なしに「みりん」を製造できる免許を有している。


・この免許を維持するためには、3年に一度、3キロリットルの味醂を製造する必要がある。自分が蔵に戻った年は味醂を製造する年だったが、既に7キロリットルの在庫があった。


・これで3キロリットルの味醂を製造したら10年分の在庫を抱えることになる。自分は父に「みりんの免許を返上した方がいい」と進言した。父は「お前に免許を渡すために維持しているんだ」と言ったが、自分は「在庫の山を渡される方が迷惑だ」と言い返した。


・その後、どんな遣り取りをしたのか細かく覚えていないのだが、結果として「じゃあ俺が売ってやる」と言い、父が「売れるものなら売ってみろ」と返して、「売り言葉に買い言葉」のような状況になってしまった。


・それで「7年熟成みりん」の販売を開始したのだが、これが意外に売れ行きが良かった。在庫になっていた味醂は水飴を使ったものだったのだが、並行して純米味醂を製造して、これを「3年熟成純米本みりん」として販売するようになった。


・その販売を開始したのが12~13年前。これも評判が良く、3年熟成できず2年で販売に回さざるを得ないような状況が続いた。現在、当社の年商は3億5000万円だが、味醂はそのうち2,000万円を稼ぐ商品にまで育っている。


<参考:李白酒造のみりんについて>

<参考:「酒類等製造免許場数の推移」>
 (※)平成30年において、「みりん」免許は、みりんを主たる酒類としている  免許場が33、その他が79となっている。なお、「清酒」免許は、主たる酒類とする免許場が1580、その他が160。

◆その他

▼「飲める店・買える店」のサイト

・アメリカで、どこに行けば李白の酒が買えるかとか、飲めるかといったこと は、「Vine Connections」の、以下のサイトで検索できる。

<参考:Vine Connections


・日本では、同様の機能を持つ便利なサイトはなかなか無いが、最近、「さけコミ」というサイトが立ち上がったので紹介しておきたい。以下のURLでアクセスできる。

<参考:日本酒、地酒が飲める買えるお店紹介 - さけコミ


▼特定名称酒比率

・現在、普通酒は全体の20%。使用米は酒造好適米の「神の舞(かんのまい)」68%精米。普通酒で儲ける必要がないので、実は品質の割にリーズナブルな酒になっている。

<参考:「神の舞」について>

<参考:李白酒造HPの「日本酒よろず知識」





◆テイスティング

「李白」についてしっかり知識を吸収した後は、恒例のテイスティングです。当てるのが目的ではなく、自分の好みを知ってもらうのが狙いです。



▼日本酒3種
①「李白」 純米吟醸 雄町 生原酒

②「李白」 純米吟醸 WANDERING POET
③「李白」 特別純米 無濾過生原酒



【今回のお酒について】

①「李白」 純米吟醸 雄町 生原酒

・日本酒度+2、アルコール度数16.4%、酸度1.8、雄町(赤磐産)55%精米。

・「つるばら」の花酵母を使用。香りは、カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが半分ぐらいづつ出る。

・このお酒の生い立ちについては、後述する。


②「李白」 純米吟醸 WANDERING POET
・日本酒度+3、アルコール度数15%、酸度1.6、山田錦55%精米。

・9号系の島根酵母「61-K1」を使用。当蔵では純米吟醸以上のクラスのお酒は基本的にこの酵母を使用。香りは控えめ。

・「WANDERING POET」というのは海外でのニックネーム。インポーターと相談し、英語としての響きが良くなるように選定した。

<参考:島根酵母「61-K1」について>
(※)昭和61年に熊本酵母から選抜した酵母を島根で培養し続けているとのこと。


③「李白」 特別純米 無濾過生原酒

・日本酒度+4、アルコール度数17%、酸度1.8、島根県産五百万石58%精米。

・李白では、「島根県産五百万石58%精米」というお酒を色々と造っている。通常の火入れ酒や、ひやおろし、日本酒度+7や+14の辛口酒、それらの生酒など。特別純米だけ並べてお酒の会をやっても味わいが多様なので楽しんで頂ける。

・よく、五百万石は溶けにくいと言われるが、島根県産の五百万石は、そうでもない。

・自分としては「無濾過」という表現は避けたいと思っている。上槽も濾過であるし、炭素濾過にも抵抗はないので。美味しくなるのであれば炭素濾過もアリだと思う。しかし、このお酒は自分が蔵に戻る前から「無濾過生原酒」として売っているので「無濾過」と付けている。


最後はみんなで集合写真!



◆まとめ

常ににこやかにお話いただいた田中さん。今後も「李白」の追求に余念がないと思います。蔵の設備も新しくなっているとのことなので、ぜひ、次回は拡大版にして蔵見学もやってもらいましょう!

『李白』を飲まれたことがない方は、ぜひ、お試しあれ!!



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