2020.03.17

はじまり商店街「多拠点生活のすすめ 〜実践者と考える“移動する暮らし"〜」を開催しました。

こんにちは。はじまり商店街です。


1月16日(木)、茅場町のSalvadorにて「多拠点生活のすすめ 〜実践者と考える“移動する暮らし"〜」を開催しました。



今回のイベントは、デザイナーのワタナベルカさんがゲストで、はじまり商店街のコミュニティビルダーの辻麻梨菜さんがファシリテーター。山梨と東京との二拠点生活を実践している共通点を持つ2人によるイベントとなりました。会場は超満員。参加者の方々の多くは、実際に首都圏以外の地域とつながりたい、と考えている方。広い世代の参加者の方々からは共通して、実践者の話を知って自分の生き方に生かしていきたいといった熱気が会場全体から伝わってきました。


◎”生きる”を楽しむ!東京・千葉・山梨での生活

ワタナベルカさんはフリーランスのデザイナー。とは言っても「どうしてもフリーランスになりたい!」といった思いを持っていたわけではなく、会社員として働く中で体を痛め、会社で働くことが難しくなり、フリーランスになったとのことです。「デザインができる」という強みを生かしながら、古物商の免許もあり、シェアハウスのオーナーでもあると様々な周辺分野に仕事を広げ、生活する範囲も東京・千葉・山梨(甲府市・北杜市)と広げてきました。




実家は山梨県の北杜市。しかし、拠点はそこだけにとどまりません。首都圏では千葉県流山市でパートナーと生活し、山梨では甲府市で、空き家になっていた祖父母の家を改装して、「甲府別宅」という多拠点居住者向けのシェアハウスをを運営するようになります。現在の拠点は4ヶ所あり、拠点が増えたからと言って今までの場所を手放すわけではなく、緩やかに4つの拠点を使い分けていると言います。




東京・三軒茶屋のシェアハウス「モテアマス」はクリエイティブな人たちが集まっているシェアハウスで、その中で仕事を取ったり、融通したりということもできる環境。労働と娯楽で刺激を受ける場所です。千葉の流山市では、パートナーと暮らし、休息をし、ひとりでゆっくりと作業する場所として使っています。山梨の甲府では、シェアハウス「甲府別宅」をオーナーとして運営してくことにより、様々な人と出会い、甲府の良さをシェアしてコミュニティを楽しんでいます。北杜市はワタナベさんの実家。ご両親とゆっくりコミュニケーションする時間を取ったり、作業に充てたりしています。





◎多拠点生活には、居心地の良いコミュニティが大事!

山梨県という環境は多拠点居住にはちょうどいい距離感なのだとか。バスを使えば東京から片道2000円ほどで行き来が可能。適度に田舎で、自然があり、都会の緊張感の中で仕事をしたい時には便利に行き来できる距離感です。




しかし、多拠点生活を考える時にいちばん重要なのは、その地域と関わっていて居心地よく過ごせるか?というコミュニティの問題です。地方では特に、コミュニティを通して仕事をもらったり、発注したりが多くなります。また、都会とは違う人間関係や距離感に疲れて、友達ができずに戻ってきてしまう、という例もあります。


「多拠点居住がしたい」とあせるよりも、まずは色々な場所に行って、居心地の良いコミュニティを見つけることが大事なのではないでしょうか。拠点を増やすにあたっても、むやみに拠点を増やそうとするより、一か所でのコミュニティに居場所を見つけ、そこで安定してから次のコミュニティを見つける方が良いのではないかとおっしゃっていました。




また、多拠点居住における仕事も重要なポイントです。デザイナーであり、まちづくりにも詳しいとフリーランスとして営業しやすいスキルをもっていたワタナベさんですが、地方での仕事は、スペシャリストよりジェネラリストの方が求められる傾向にあると言います。


純粋に技術力の高い低いというよりも、いかに相談しやすいかは重要であり、ITの得意な人材が不足していることから、IT系に詳しい人には需要が高いとのことです。どんな仕事でもそうですが、地方では特に「この人だからお願いしたい」という人間としての信頼が重要になっています。



◎リアルがわかる!スケジュール管理やお金事情

今回はなんと、多拠点生活でかかるリアルなお金事情や、1ヶ月のスケジュールなども見せていただくことができました。ワタナベさんはデザインの仕事という特性上、人との打ち合わせと、自分一人で行う作業日が週の半々、くらいであり、現在は首都圏(東京・千葉)、山梨、その他の地域が月の3分の1ずつという、さらに移動が増えて行く方向であり、できるだけまとまった期間各地域にいるようにしているとのことでした。


最近では多拠点居住者を対象としたシェアハウスも増加しているため、「月何日利用でいくら」という値段設定をされている場所も多いそう(「甲府別宅」も利用日数に応じた料金体系)。荷物を置いておけるサービスなどもあるようなので、こういった場所を見つけることも多拠点居住のポイントです。




また、多拠点居住で留意しなければいけない点としては、キャリア形成の点が挙げられていました。ワタナベさんの仕事では、先輩がいないため技術などが学びづらい面もあるとのこと。この点については自分でどこまで自主的にスキルを高めていけるか、という意志の強さが課題になってくるようです。一方、会社員として働きながらコミュニティビルダーとしても活動している辻さんからは、人をつなぐ仕事が主のため、リモートで1人でできる仕事がまだ少ないという話がありました。昨今ではテレワークが可能な会社も増えてきましたが、本当に会わないとできない仕事と場所を問わずできる仕事を考えていく必要がありそうです。


移動の多い生活では体調管理も重要。長距離バスの感想で風邪を引きやすくなってしまったり、寝る環境が変わって睡眠の質が落ちてしまうことがある中、どうやったら健康をキープしていくかは大きな課題であり、「意識的に休む時間を入れる」ということを心がけているとのことでした。いずれにしても、意識的に自己管理をし、仕事と休息をしていく必要があるうえでは、強い意志が必要かもしれませんね。



◎改めて「あなたがしたい暮らしとは?」について考える



イベントの後半では、少人数のグループに分かれ、「あなたがしたい暮らしとは?」についてディスカッションを行いました。多拠点居住に憧れる方が多い中でも、その動機や実現したいライフスタイルは様々です。


・土地そのものに愛着を持っている
・実家や家族などの事情がある
・自分のキャリアアップやしたいことのためにその土地が適していた


など、どれも正解であり、大事なモチベーションです。しかし、多拠点居住が成功している人の多くは、たまたまやりたいことを実現する場所が複数あったから、良い人間関係に恵まれたから、というケースが多いようです。多拠点居住そのものを目的とするのではなく、やりたいことや居心地の良いコミュニティを見つける中で、ライフスタイルの一つの選択肢として、多拠点居住があるのでしょう。


現在、様々な地域では外から入ってくる人を受け入れる仕組みが広がっています。しかし、元々の住民と移住者たちの交流はまだまだできていないという所も多いようです。これからもはじまり商店街では、「地域とつながる」ことや、「地域とつながる方法」などをテーマにしたイベントを企画していきますので、ぜひ興味のある方はご参加くださいね。



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