2022.12.08
こんにちは。
兜LIVE!編集部です。
現在、兜町・茅場町エリアにて「グリーン(緑)と共にあるライフスタイル」をテーマとしたイベント「LIVING GREEN FES」が開催中です。その一環として、11月17日(木)に東京証券会館の屋上にある「Edible KAYABAEN(エディブル カヤバエン)」にて、初の試みとなるナイトシネマの上映イベントが開催されました。
「Edible KAYABAEN」は、「投資と成長の街」である日本橋茅場町を「食べられる街」にしようという発想から生まれたプロジェクトで、東京証券会館の屋上につくられたアーバン・コミュニティガーデンの名前でもあります。
「食べる」ことを学びの軸にして、子どもたちの生きる力を育み、健康で安心の町づくりに貢献することを目的に立ち上げられました。
そんなEdible KAYABAENで開催された本イベント。当日は思いのほかあたたかく、いつもなら冷たい海からの風が吹くこともなく、多くの方々が最後までカヤバエンでの出会いと歓談を楽しんでくださいました。コーヒーやクッキーの販売のほか、ホットワインやハーブティーも振る舞われました。
都会の真ん中にいながら、緑に囲まれた屋上庭園で過ごす贅沢なひととき。この光景が当たり前の日常になっていくと良いなと感じながら、イベントの開始を待ちます。
映画上映の後には、イベント主催者の方々を交えてのパネルトークやディスカッションが予定されているとのこと。夜も更けて、会場には続々と人が集まってきました。
上映された映画は、2014年にアメリカで公開された『都市を耕す エディブル・シティ(Edible City)』という作品です。アメリカの西海岸(サンフランシスコ、バークレー、オークランドの3都市)を舞台に、さまざまな食の問題に対して正面から真剣に向き合い、解決のために活動している人たちの姿を追ったドキュメンタリーフィルム。
経済格差が広がる社会情勢を背景に、安心安全な食べものを手に入れることが難しくなってきたアメリカの都市部では、市民自らが健康で安全な食べものを取り戻そうとさまざまな活動を始めました。映画のタイトルにもなっている「Edible City(食べられる街)」とは、そういった活動のことを指している言葉です。
一人ひとりの活動はやがてコミュニティを動かす力となり、最終的には社会全体に変化をもたらしていきます。そんな一連の活動をまとめたこの映画は、現在では都市農業のバイブルとも言われるほどの評価を得ている作品です。
上映後は、「持続可能な街づくり」「教育」「食」「農業」「建築」など、各方面で活躍するスペシャリストが集まったパネルトーク「Urban Farm Talk」がスタート。バイブルとも言われている映画だけあって、パネリストのみなさんは何度もご覧になっている様子でした。
まず始めに、今回のイベントを企画したパネリスト3名によるご挨拶がありました。
⚫︎フィル・キャッシュマンさん
パーマカルチャーデザイナー&指導者で、「Permaculture AWA」代表のフィル・キャッシュマンさん。2007年にビル・モリソン氏からパーマカルチャー・デザインを学び、そのシステムの研究と実践を重ねてきました。Edible KAYABAENの構想と設計を担当。今回のイベントではモデレーターとしても活躍してくださいました。
「映画について参加者の皆さんと感想など共有できたら嬉しいです。こういうガーデンがある場所で、仕事の後に集まってディスカッションする機会もそうそう無いと思います。皆さんにとって良い刺激になるのであれば幸いです」
⚫︎近藤ヒデノリさん
CMプランナー、クリエイティブディレクターを経て、2020年より創造性の研究実験機関「UoC(UNIVERSITY of CREATIVITY)」のディレクターとして活躍。「Tokyoを食べられる森にしよう」をテーマに、さまざまな企業やアーティスト、アクティビストとともにアーバン・ファーミング(都市の農的文化)の普及を目指していらっしゃいます。
「久しぶりにこの映画を観ましたが、観る度に新しい気づきがあります。ずっとメモを取りながら観ていました。東京でも、いま同じような動きが起こってきているのを感じているのですが、より東京らしい形で、今日集まったメンバーから広がっていくと良いなと思います」
⚫︎堀口博子さん
エディブル・スクールヤード・ジャパン代表の堀口さん。「食育菜園」を意味する「エディブル・スクールヤード」を日本で初めて紹介し、東京都多摩市立愛和小学校での教科連携による食農教育にも取り組まれました。2014年には「一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン」を設立。2022年に「Edible KAYABAEN」プロジェクトを始動しました。
「私が翻訳に携わった映画をここで上映することができ、とても感慨深いです。映画の中でもあった、『地球を変えるには都市が変わらなければいけない』というメッセージを今日改めて確認することができました」
ここからは、映画を観た上で「東京を食べられる森にできるのか?」というテーマについて、参加者みんなで考えていきます。
フィル・キャッシュマンさんの呼びかけで、観覧者同士が即席で班を作り、意見の交換を行う場が設けられました。初対面ゆえに最初は緊張した様子の各班でしたが、似たような志、感覚を持って今日のイベントに参加しているためか、次第にディスカッションも盛り上がりを見せました。映画の感想だけでなく、お互いの仕事や取り組み、所属しているコミュニティについての情報交換をメインテーマに話をされていたようです。
映画が上映された当時のムーブメントを経て、2022年現在はどのような状況なのか。ディスカッションの途中には、現地からの声を届けるという目的で、カリフォルニア在住の種子研究家・ウィーバー佳奈さんとフィル・キャッシュマンさんとの、対談形式で収録された映像が流されました。
「映画に出ていた農家さんや経営者の方々の中には、今でも活動を続けられている方がたくさんいらっしゃいます。加えて次世代の育成も進んでいて、新しい若い世代の方々も出てきているなと感じます。土を耕し、育てることはとても大切なことです。それは、自分たちの手で明るい未来をつくっていくプロセスに似ています。一人ひとりがそのことを意識し、楽しんで取り組んでいくことが重要だと思います」
さらに、プログラムの後半には、ゲストの方3名も加わってディスカッションが続きます。
⚫︎中央区立阪本小学校 小川校長先生
日本経済の中心地、日本橋兜町に立地する阪本小学校は、この場所ならではの環境を生かした学校教育を行っています。2022年9月より平和不動産と協力し、教科連携菜園学習がスタートしました。
「堀口さんの考えに感銘を受けまして、教科連携菜園学習をさせていただく運びになりました。Edible KAYABAENには、阪本小学校2年生の畑があります。教育者の立場としては『子どもの心に種子を蒔く』ということを大切にしています。その中で、子ども自身の体験を通じて命の大切さを学び、その経験を大人になっても活かしていってほしいと考えています」
⚫︎溝渕由樹さん
ヴィーガン対応で環境にもやさしいアメリカンベイクショップ「ovgo Baker(オブゴ ベイカー)」の代表を務める溝渕由樹さん。「自分は環境に良いものを食べている」という意識を持つことで、家族や周囲の人達だけではなく、次世代にも良い未来を残していけるとおっしゃいます。
「元々、環境問題や食料問題に興味があり、どうしたら多くの人にそのことを伝えていけるか考えていました。ヴィーガンなどの食の制限がある方達に多くの選択肢が提示できたらなと考え、ovgo Bakerをオープンしました。おしゃれで入りやすいお店を通じて、多くの人に環境問題を知ってもらえる機会を提供していけたらなと考えています」
⚫︎上野山健太さん
大阪と上海でのアトリエ建築設計事務所での勤務を経て日建設計で活躍する上野山健太さん。「環境と共に活きる建築」をテーマに活動中で、現在は国内外のプロジェクトと並行して日本橋の再開発プロジェクトにも取り組んでいます。
さまざまなプロフェッショナルな方々のお話を聞くことにより、「東京を食べられる森にするには?」という問いに対するヒントをたくさんいただくことができました。
日本国内でも少しずつ顕在化し始めている、低所得者層の孤食や栄養不足などの「食」に関連した社会問題。世界的にも食糧危機が叫ばれるいま、「問題解決の糸口は都市の中にあるのかもしれない」という、新たな気づきを得る機会となりました。
都会に暮らしながら、食と農のつながりを取り戻し、そこから人と人とのつながりも取り戻していく。果てしなく高い理想ではありますが、より良い社会をつくっていくためのヒントはそこにあるのではないかと感じさせられたイベントでした。
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