2023.06.14
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
この連載【金庫巡り】では、この日本橋兜町・茅場町周辺にある古い金庫にフォーカスして、その歴史や魅力を発信していきます。第二回となる今回は、なんといまだ現役で活躍中の古い金庫を持つ「フィリップ証券」を訪れました。
フィリップ証券はシンガポールを本拠地とし15ヶ国に展開するフィリップキャピタル・グループの日本法人で、株式や投資信託だけでなく、先物やFX等の幅広い金融商品を取り扱っている証券会社です。会社の前身である「上甲信弘商店」が設立されたのは、明治20年のこと。その後、大正10年に成瀬省一が東京支店を引き継ぎ「株式現物店成瀬省一商店」として独立、昭和19年には社名が「成瀬証券株式会社」となりました。そして、時代は平成へと移り「Phillip Financials株式会社」と合併、商号を「フィリップ証券株式会社」に変更し現在に至ります。
その本店が置かれているのが兜町で、昭和10年に建造されたアール・デコ様式の社屋は、現役で活躍しています。設計者は国内外の銀行建築を多く手がけた建築家の西村好時。すでに90年近くが経過していますが、その重厚さはいまだに衰えていません。そんなフィリップ証券では、古い金庫が現役で使われているとのことで訪問させてもらいました。
金庫が置かれているのは、地下の一角。鉄格子の向こうにそびえている様子だけを見ても迫力が伝わってきます。金庫といっても建物の中の一室という形で設計されているため、社屋全体と同じ年に造られたとされています。現在においても、この金庫を毎日社員さんが開け閉めしているというのには、正直驚きました。その珍しさから、過去には人気テレビ番組でも紹介されたことがあります。
2・3ヶ月に一回ほど、サビ防止のために金庫屋さんに磨いてもらうメンテナンスは欠かさず行われているそうですが、これまで一度も壊れたことはないとのこと。大きな震災などの影響も全くありませんでした。
もちろん誰もが開けられるようにはしていないそうで、責任者のみが取り扱えるものとしています。中は4〜6畳くらいの広さで、2009年までは約1000億円分の株券がここに保管されていたそう。主に株券のために機能していましたが、現在は印鑑などを置いていて、ほとんど倉庫がわりとして使われているとのことでした。
なお、地下金庫の見応えは抜群なのですが、外観を含めて社内は建築好き・レトロ好きの人からすると興奮必至のポイントがいくつもあります。例えば、階段ひとつをとっても、その歴史を感じる色合いや年季の入り方は、思わず見入ってしまうほど。
他にも、応接室の扉や窓枠など、至る所が写真を撮りたくなる要素で溢れていました。
金庫だけではなく、フィリップ証券が拠点を置き続けている兜町という街についても、お話を伺いました。
中尾さん(写真右)
「兜町は、いままさに生まれ変わろうとしているタイミングなのかもしれません。オシャレなケーキ屋さんやカフェなど、10年前では考えられなかったお店がいっぱい増えて、街に来る人の層も変わってきていると思います。歴史ある鰻屋さんがなくなったりと、ここでずっと働いている身からすると、少し寂しい変化もありますね」
阿部さん(写真左)
「中尾さんがおっしゃるように、昔ながらの純喫茶や赤提灯の飲み屋さんがなくなってきていることには、私も寂しさを感じています。あと、証券会社がどんどん減っていってしまって、金融の街というステータスが少し薄れていっているようにも思えます」
中里さん
「変化が大きいここ数年の兜町ですが、いまは古いものと新しいものがちょうど同居している状態なのかなと思いますね。それは良い点も悪い点も出てくる時期だと思いますが、兜町のこれまでの歴史を多くの人に伝えていくことも、この街で働いている私たちの仕事なのかもしれないと最近は思っています。兜町で金融関連の仕事をしていた、ということを自慢できるような街になっていくといいなと感じますね」
みなさんのお話から出てきたキーワードは兜町の「変化」に関するものが多く、長年この街に携わってきたからこその思いを聞くことができました。その中では、フィリップ証券の社屋や金庫をより一般の人にも知ってもらえる形で活用できたらおもしろいのかも、といった意見もありました。現在は一般公開して見学できるわけではありませんが、今後はそういった機会も訪れるかもしれません。
兜町というエリアは、この数年で大きく様変わりしてきていますが、現在でも日本の代表的な「金融の街」であることには違いありません。そんな街で、少しずつ変化しながら多くの時代を駆け抜けて来たフィリップ証券は、歴史ある金庫や社屋を大切に使いながらも、新しい価値を提供し続けています。
通常営業しているため内部見学はできませんが、外観はいつでも見られるので、兜町に来た際は少し立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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