2022.02.14

【後編】高らかに響くジャズ!「Jazz EMP@Tokyo Financial Street 2021」レポート

こんにちは!
兜LIVE!編集部です。


2021年12月5日、オンライン配信による「Jazz EMP@Tokyo Financial Street 2021」が、東京証券取引所「東証Arrows」にて開催されました。新進気鋭のミュージシャンたちによる白熱のライブ、アートを軸としたまちづくりの可能性を探るトークセッションの様子をお伝えしていきます!


前編はこちら


◆トークセッション2「ビジネス人材としてのアーティスト」




2組の演奏が終了し、「ビジネス人材としてのアーティスト」というテーマでトークセッションその2が行われました。登壇者はピアニストであり、音大生の就活サービス「ミュジキャリ」を運営するRENEW(株)代表取締役の白鳥さゆりさん(写真右)と、草加フィルハーモニー管弦楽団のバイオリニストにして、KPMGコンサルティング株式会社執行役員パートナーの大池一弥さん(写真左)。音楽の現場に立つお二人の視点から、「音大生の就活」をテーマにトークがスタートしました。




お二人の自己紹介に続き大池さんが紹介したのは0.05%という数字。これは、音大生が卒業後すぐにプロとしてやっていける可能性を色々な統計からパーセンテージで表したものになります。想像よりも相当低い数字に正直驚きました。音楽のみで自立(生計を立てる)することは我々が考える以上に狭き門であり、高いハードルであることが分かります。


そのような厳しい現実と向き合うための大きな手助けとなるのが、白鳥さんがリリースした「ミュジキャリ」です。2019年のサービス開始から右肩上がりで登録者は増え、2021年現在では音大生の約4割が使用しているとのこと!


音楽大学はもとより、先輩、後輩の垣根を越えて音大生の就職に関する有益な情報が得られるほか、音楽経験のアピール方法、自己分析と会社選びなどのサポートをしてくれます。新卒採用の現場では、人事担当者が音大生の特性や適性などよく分からないという実情がまだまだあります。

大池さんも、「私の会社でも音大卒の方が何人かいらっしゃいますが、集中力が高くコミュニケーション能力もあって優秀な方たちばかりです。人事担当としても、音大生に関する知識などをアップデートしていくことが必要ですね」と仰っていました。


続いて音大性をアーティストとして見た時に、どんな能力があって、どんな能力が企業に求められるか深掘りされました。




一般企業が新卒に求める能力のTOP3は、上から順に「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」となるそうです。そこから感じられるのは、企業活動の根本は人間の活動であり、人と人がどう繋がっていけるかが大切ということでしょう。


音大生に当てはめてみると、正に、音楽を創り出していく過程に必要なものTOP3と重なってきます。企業が重視する能力と音大生の強みがうまくマッチしていることがわかります。音大生の資質はとてもビジネスシーンに向いていると言えるようです。


セッションの最後に、白鳥さんから、就活を考えている音大生に向けてメッセージが送られました。


「企業が最終的に見ているものは『何を学んでいるか」ではなく『どう学んでいるか」だと感じています。私自身も、音大生の能力が高いことをもっともっと啓蒙していきたいと考えています。そして、音楽しかやってこなかった、というのは全くデメリットではありません。むしろそこを強みに思って欲しいです。とは言え、就職活動は楽なものではないので、やると決めたなら音楽をやるのと同じように真剣に取り組んでください。そうすれば、きっと納得感のある内定をいただけるのではないでしょうか」とエールを贈ってくださったところでトークセッションは終了となりました。


トークセッション#2 JAZZ EMP at Tokyo Financial Street2021


◆美しさと郷愁漂うフルートの調べ!「片山士駿カルテット」




トークセッションに引き続き、フルート奏者片山士駿さん率いるカルテットが登場し後半の演奏がスタート。美しさと郷愁を誘う片山士さんのオリジナル曲と、ジャズ・フルートのインタープレイが持ち味のバンドです。2016年に結成し、都内とその近郊のジャズクラブに定期的に出演し、オリジナル曲をメインにスタンダードやメンバーのオリジナル曲などをレパートリーとしています。メンバーチェンジを経て2021年春に現体制となりました。


シリアスな展開を予感させる1曲目がスタート。深い霧の中から少しずつ晴れ渡っていくようなリズムセクションのアレンジと、それに寄り添うようにフルートのメロディが絡んでいきます。サックスなどの管楽器とはまた異なる情緒的な音色がフルートの特徴。メンバー紹介に続いて演奏されたミドルテンポの曲では、ウッドベースのソロがフィーチャーされ、会場スタッフから拍手が沸き起こります。


3曲目に演奏された「ベイブリッジ」という曲。これは、新型コロナウイルスの世界的パンデミックのため、

NYから帰国された片山さんの歯がゆい日常を綴った楽曲です。しかし、それとはメロディアスで軽快なリズムにあしらわれたメロディに「ただ下を向くのではなく、希望を持とう」という前向きなメッセージを感じました。


ラストナンバーは、朗々としたピアノのイントロから始まる「チャイルドフット」。ウッドベースの作り出す幻想的な風景がとても印象に残りました。


オンラインに際し意識されたことを片山さんに伺ったところ、「お客さまがいらっしゃらないのでカメラをなるべく意識して、その奥にいる方々を想像しながら演奏しました」とのこと。視聴されている方へのメッセージとして、「色々な制約がある毎日ですが、ライブを通してご自宅での時間が少しでも豊かになってくださったのなら幸いです」と仰っていました。


片山士駿カルテット JAZZ EMP at Tokyo Financial Street2021


◆高い次元のインタープレイで魅せる「永武幹子トリオ」




ド迫力のインタープレイから始まった永武幹子トリオ。人気急上昇で、引っ張りだこの3人によるグループです。数々のグループやセッションに参加する永武さんをはじめ、手練れ揃いの3人が縦横無尽にプレイします。


目線の合図だけで行われる4ビートへのチェンジ、アグレッシブなアドリブソロなど、それぞれ内なるエネルギーが収まりきらず会場にどんどんと溢れ出ているといった印象を持ちました。この日唯一のエレキベースである織原さんのフレットレスベースによるゴーストノートとビブラートの効いたメロディも、バンドのカラーをより一層ソリッドにしていきます。


ハードなリフレインを前面に押し出した1曲目に始まり、永武さんがドラムの吉良さんをイメージして作曲したという、ラテンのリズムに高速4ビートが高い次元で融合した2曲目と続きます。3曲目には2021年3月発売のCDからチョイスした、少し落ち着いた印象の美しいフレットレスベースのメロディが光るバラードを演奏。最後は、お世話になったトランペット奏者の方をイメージして作曲したというブルースを聴かせてくださいました。


「配信なので、いつチャンネルを合わせても足を止めてくれるような楽曲を選びました」と、比較的分かりやすい選曲をしたという永武さん。「ジャズの魅力、楽しさがちょっとでも伝わったのならば嬉しいです!」とインタビューにも笑顔で答えてくださいました。


永武幹子トリオ JAZZ EMP at Tokyo Financial Street2021


◆ジャズ魅力と、音楽の素晴らしさがつまったアンサンブル「Tomonao Hara Group with 池田篤」




本年度の「Jazz EMP」もいよいよラストセッション! トリはもちろん原朋直さん率いる「Tomonao Hara Group」です。昨年は、原さんの盟友でありサックス奏者の池田篤さんのバンドに原さんが加わった形でしたが、今年は原さんのバンドに池田さんが加わり、7人編成での演奏となりました。




「出演バンドの皆さんが素晴らしくて少しビビってます(笑)」というMCに続き、演奏がスタート。ソロ回しもその場で決めたり、メンバーの自由意志や持ち味を生かしたりと、楽しいアンサンブルを披露してくださいました。自分のソロを終えた原さんがスマホで舞台上の様子を記念撮影するなど、観ているこちらも思わず笑顔になってしまいました。




2曲目を終えると、ゲストの池田さんが登場。互いのソロを笑顔で見合いつつ、それにまたフレーズで応えるなど、親密な関係が見て取れます。私生活でもきっと仲が良く、そしてリスペクトし合っているのだろうなと想像できました。


ジャズに限らないことですが、音楽におけるアドリブソロは相手がいてこそ成立するもの。コミュニケーション、協調、共感、他者に対してリスペクトする姿勢といった人間的な要素が大切なのではないかと感じました。


7拍子の「晩秋の風」では、原さんのトランペットソロをフィーチャリング。ドラムのポリリズムから生まれる細かいアプローチに乗って吹く、トランペットのロングトーン。主催者の一人でもある原さんの、次世代を担う若者に向けて贈られたエールだと感じました。




原さんはインタビューに、「4回目を終え、どんどんとイベントの余波が広がっているのを実感します。その上で、アーティストが内側で信じているものをどんどん掘り下げ演奏していくということに関して、その土壌を作っていくことがとても大事だと感じました。どんな人であっても機会に恵まれるような、そんな業界の空気をつくっていきたいです」と、本イベントを締めくくりました。


Tomonao Hara Group with 池田篤 JAZZ EMP at Tokyo Financial Street2021

◆まとめ




原朋直さんの感動的なロングトーンで締め括られた「Jazz EMP」。一番印象に残ったのは、やはりミュージシャンの方々それぞれの楽しそうな顔でした。自由な発想で演奏するという行為は、音楽家にとってなくてはならないものです。貴重な機会を提供する本イベントを、今後も継続して欲しいと感じました。


そして、もう一つ個人的に印象に残ったのが委員長の有友さん。舞台脇に立ち、今にも乗り込む勢いですべてのバンドをノリノリで聴いていらっしゃいました。誰よりも一番楽しんでいたのは実は、委員長自身だったのかもしれませんね!


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