2020.07.28
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
6月27日(土)、日本橋茅場町にあるFinGATE KAYABAにて第24回『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
事始めの街と呼ばれている日本橋兜町・茅場町。江戸時代には酒問屋で賑わっていたこの街で、日本各地の蔵元とともに日本酒について学び、味わい、楽しく交流しその魅力を広めるため、毎月1回の頻度でイベントを開催しています。
今回は和歌山県から平和酒造の杜氏である柴田英道さんをお招きし、日本酒「紀土-KID-」のご紹介のほか、平和酒造の歴史や文化、ものづくりへの思い、蔵元の製造工程の様子などをお話していただきました。
和歌山県といえばみかんを連想される方も多いですよね。温暖で気候が豊かな県ということもあり、果樹栽培が盛んで、みかん・柿・梅は日本一の生産量を誇ります。
海南市の特徴について柴田さんは、海南市から世界遺産に登録されている高野山へは車で約1時間の距離に位置しており、山に囲まれた自然豊かな地域でどちらかというと盆地。和歌山県は暖かいイメージがあると思いますが、海南市溝ノ口の冬は寒く、気温0度近くまで冷え込み、酒造りに適した土地とお話頂きました。
さらに、海南市溝ノ口は、縄文後期の溝ノ口遺跡が物語る、古くから稲作が盛んな土地であり、高野山から流れてくる井戸水も豊かで、酒造りに必要な「稲作」、「温度」、「水」の三つの条件が調和する、酒造りに適した場所です。その溝ノ口の特徴を活かして、現在では3蔵、昔は約10件の酒蔵が存在していたそうです。
平和酒造は昭和3年(西暦1928年)に創業され、もともとお寺だったとのこと。
なんと、そのお寺の名残として、現在の平和酒造の玄関の門はお寺の門を使用されているそうです。平和酒造初代(山本保氏)が、無量山超願寺という仏寺の家督を継ぐと伴に、生家の家業の酒造業を開始し、そのお寺の名前を使ったお酒「純米吟醸酒 紀土 無量山」があるのも興味深いと感じました。
日本酒の全国規模の鑑評会「全国新酒鑑評会」では複数回、金賞を受賞され、数多くのファンを抱える平和酒造ですが、何度も廃業の危機を経験されており、第二次世界大戦の影響で、酒造を休業せざるを得ない状況となりました。戦後もしばらく酒造免許の再開が許されなかったのですが、戦後の平和な時代で酒造りをするという希望を諦めず伝え続けました。再開の際には、世の中の平和を願う気持ちを込めて、「平和酒造」と名付けたそうです。今、私たちが平和酒造のお酒を頂けるのは、平和酒造のお酒造りに対する熱い思いのお陰と言っても過言ではないですね。
平和酒造 http://www.heiwashuzou.co.jp/wordpress/
①今回の主役、日本酒「紀土-KID-」のご紹介
名前の由来については、紀州(和歌山県)の風土に育まれたお酒をコンセプトに「紀土」と名付け、「KID」に関しては、柴田さんは、当時若い作り手だったということもあり、「若い作り手が育ってほしい」、「若い人にもっと日本酒を飲んでほしい」そんな気持ちを込めて、社長の山本典正さんと柴田さんが一緒に考え「紀土-KID-」と名付けたそうです。
原料米は、主に、山田錦、五百万石。山田錦は自社田で栽培されたお米を使用されており、一般向けに山田錦田植え体験を実施されています。イベント参加者の中には、平和酒造の田植え体験に参加された方がいらっしゃいました。田植え体験の後は、蔵見学もできるそうです。水は高野山から流れてくる軟水を使用されており、お酒をより柔らかい味にしてくれています。イベント当日にご用意頂いた仕込み水も、実際にお酒に使用しているお水をお持ち頂きました。
お酒を作る上で、特にこだわっていることとして、「オフフレーバーを絶対に出さないこと」と力説された柴田さん。オフフレーバーとは、品質が劣化して二次的に生じる異臭、変質のことを指し、オフフレーバーを極力排除すればするほど、日本酒が本来もっている良いところを引き出してくれる、と語ります。
製造工程で貯蔵をする際は、オフフレーバーがつかないよう工夫をされており、年間4回、蔵全体、天井から床まで全て拭き掃除をされているそうです。イベント参加者の方からは、「ここまでオフフレーバーを排除することにこだわりを持っている蔵元さんは初めてです」という意見も上がっていました。
②和歌山県の名産品の梅を使用した、梅酒「鶴梅」
和歌山産の完熟南高梅の中でも最高産地とされる南部(みなべ)の梅を使用し、造られた梅酒が「鶴梅」です。鶴梅の作り方と味の特徴として、梅を完熟させ、桃の香りを出しホワイトリカーに漬けて作られています。ホワイトリカーに漬けることにより、桃の香りをさらに抽出しやすくするのだとか。その桃の香りが、フルーティーな鶴梅の味を作り上げてくれているそうです。しかしながら、昨今の梅事情について厳しい状況にあると説明された柴田さん。気候の変化によって梅の収穫量は年々減少しており、価格も高騰しているそうです。
③クラフトビール「HEIWA CRAFT - 平和クラフト」
こちらは、女性社員の醸造家、高木さんが立ち上げたクラフトビールの新ブランド。平和の象徴であるカラフルな鳩のラベルが特徴で、現在は五種類展開されています。2020年6月5日に平和酒造のコンセプトショップ「平和酒店」が、和歌山県南海和歌山市駅の複合施設「キーノ和歌山」にオープンし、店内には、ビールサーバーが設置されている立ち飲みバーが併設されています。平和酒店でしか飲めないビールもあり、平和クラフトを含んだ、平和酒造のお酒をその場で楽しめるようになっているそうです。
平和酒造が目指していることは、お酒造りを通して「和歌山」「日本文化」を国内、世界に伝えること。「日本酒のロマネ・コンティを目指す。」と熱い志をご紹介頂きました。
6/5にオープンした平和酒造コンセプトショップ「平和酒店」は日本酒の良さ、カッコよさを発信することをコンセプトにし、もっと多くの人に日本酒の魅力を伝えたい気持ちが伝わってきました。
また、平和酒造はお酒の魅力を知ってもらうためのイベントを多く開催されています。イベントには基本的に蔵人が参加されています。蔵人が参加し、自ら作ったお酒を知ってもらい、飲んでもらい、称賛してもらえると「お酒造りをしてよかったな」と実感する機会になっている、と柴田さんは想いを伝えてくれました。「もっと美味しいお酒を造りたい」と、蔵人が思える環境づくりが、平和酒造が美味しいお酒を生み出している秘訣なのかもしれません。
平和酒造の人材育成方針で、特に印象深かったのが、「職人気質・匠のものづくりからの脱却」という概念。酒蔵の未来のためにも優秀な「人」を育てることが最も重要と考えている、と柴田さんは言います。
そこで、紀土の味をこの先もずっと残すため、属人化しない仕組みを取り入れています。例えば、見て覚えるのではなくマニュアルとして文書化、質問できる環境造り。長年の勘、感覚のみで判断するのではなく、五感も大切にしながらも数値化、判断基準を明確にすること。
若手時代は下積みの作業がメインで、実際にお酒を造るなど、経験を積める機会が少ない、と課題を上げた柴田さん。そこで、新入社員のモチベーションを上げるため、また一人前の酒造りを育てるために、新入社員一年目から杜氏の立場になって、酒造りの工程の最初の一歩からすべて任され、一人一本のタンクのお酒を造る「責任仕込み」という独自の取り組みをされています。例えば、4人同じレシピで造ったお酒にもかかわらず、それぞれの個性が出て異なる味に仕上がる。この取り組みの面白みを教えてくれました。目標は同じレシピで、全員同じ味を出せる安定した酒造りを実現させることだそうです。
柴田さんに3種類の日本酒の特徴をお話いただきながら、各自テイスティングを楽しんでいきます。
① 紀土 特別純米酒 カラクチキッド
口の中でほのかな甘みを感じた後に、軽快でキレのあるお酒。
最初の「あれ、日本酒の辛みが弱いのかな?」と思った後にくる、キレのある辛みが良い意味で裏切られます。
② 紀土 純米大吟醸
華やかでフルーティーな香りで、甘みのある純米大吟醸。
日本酒が苦手な人でも親しみやすいお酒。ピンクのラベルから華やかさが伝わり、味も華 やかな仕上がり。参加者の大半の方が、3つのお酒の中で一番気に入ったと絶賛されていた人気の銘柄となります。
③ 紀土 純米酒 あがらの田で育てた山田錦低精米 80% 30BY
自社田で作った山田錦を使用。お米の味わいがしっかりしていて、ほのかな酸味を感じるお酒。杜氏の柴田さんからは熱燗、常温で飲むのがお薦めとのこと。
参加者の約20名中、6名の方が全問正解されました。
景品は平和酒造の山本社長が執筆された本でした!
①紀土 純米酒
色んな食事、温度帯で楽しめる紀土の定番酒。
②紀土 純米吟醸 夏ノ疾風
爽やかな香りと涼やかで透明感のある味わいの、夏限定酒。
透明の瓶とラベルのブルーの紀土の文字から伝わる、涼やかさ。
夏を乗り切るのではなく、夏と楽しく付き合うお酒を目指し醸されたそうです。
鮎や焼きナスなど夏の食材と一緒に楽しみたい一本です。
③紀土 無量山 純米吟醸
紀土ブランド最高峰のシリーズ、無量山。
優しくきめ細かな甘み、ほんのりとした酸味と旨味を含んだ味わい。
そして、今回ご用意いただいた欠かせないお酒のお供はこちら。
地元和歌山県の郷土料理のごま豆腐、金山寺みそ、紀の川漬 でした。
平和酒造のお酒造りに対する熱い気持ちと、人を大切にする気持ちを知り、その場で頂く「紀土」は格別な味を引き出してくれました。作り手の思いを知って、実際にその日本酒を愉しむことができるのは、このイベントの醍醐味だと思います。「いいもの」は「いい人」から造られている、そんなことを考えさせられる機会となりました。
最後に柴田さんからメッセージを頂きました。
「日本には、たくさん美味しいものが溢れています。もちろん日本酒もその美味しいものの一つ。是非、食わず飲まず嫌いをしないで、何事にも、まずはチャレンジをしてみてほしいです。チャレンジを通して人として成長をすることを、紀土と共に感じてもらえると嬉しいです。」
紀土を特に若い世代を重点に、色んな世代の人に飲んでほしいという願いを感じました。
今回はコロナ対策のため各種消毒と検温の実施、参加者同士のソーシャルディスタンスを保つよう注意して開催いたしました。
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