2019.11.07
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
10月19日(土)日本橋茅場町にあるFinGATE KAYABA にて「日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ」を開催しました。
事始めの街と呼ばれている日本橋兜町・茅場町。江戸時代には酒問屋で賑わっていたこの街で、日本各地の蔵元とともに日本酒について学び、味わい、楽しく交流してその魅力を広めるため、月1回の頻度でイベントを開催しています。
今回のゲストは、山形県山形市で羽陽男山を醸す男山酒造の尾原俊之さん。尾原さんによる日本酒の理解を深めるお話や、利き酒など、盛りだくさんのイベントをレポートします。
よく男山って北海道じゃないの?という声を多く耳にしますが、実は現在25種類以上の男山と言う名前がついたお酒があるそうです。名前に羽陽とか金銀銅とか「男山」の名前の前の文字によって区別しています。
なぜこんなに男山と名前のついた日本酒が多いかと言うと、もともと京都岩清水八幡宮と言う神社があり、源氏の神様を祀っている山を男山と呼んでいました。
その名前をとったお酒が兵庫県の伊丹で清酒の先駆けとして造られ、清酒を大量生産する仕組みができた場所です。
江戸時代には「酒は剣菱・男山」と言われるぐらい、清酒の2代銘柄となりました。
中心地より距離があるので山形で酒を造るようになるには時間がかかりましたが、酒を造るようになりいざ名前をつける時、「男山」と言う名前だけで「いいお酒」と言う意味合いがあったため造られた地名を加えて「羽陽男山」という名前をつけたそうです。
羽陽の羽は出羽国(現在の山形県と秋田県)から取っています。江戸から見て出羽国は鳥が羽を広げたように見え、山形県はその羽の部分。陽は太陽があたり光っているところ。それで羽陽=山形の男山として名前をつけたそうです。
他に有名な男山と言う名前の日本酒は、北海道旭川の男山、新潟糸魚川の根知男山などがあります。
昔から酒造りと言えばどこか地方から杜氏が来るのが一般的で、山形県だと大抵は南部杜氏(岩手県の石鳥谷)からお酒を造りに来ていたそうです。
山形では市町村毎に造り酒屋があると言われるぐらいたくさんの酒屋がありますが、その市町村内で販売・流通する程度で規模が小さく、地方から杜氏がきても給料が払えない事も多くありました。
幸い男山酒造では、昔から米を北海道に販売したり、ウイスキーや焼酎を造ったりしていたので南部杜氏に長くいていただくことができました。杜氏がずっといることで、お酒の味の安定感を生み出すことにつながるそうです。
基本的に杜氏同士、酒蔵同士で技術情報を教えあったりすることはないのですが、
山形県工業技術センターに小関敏彦さんと言う有名な先生がおり、山形で造られるお酒に安定性が欠けるのは良くないということで、お酒を造る人たちの会として献上会を年1回ぐらい開き、県全体として酒質を良くしていこうと取り組みました。こうしたことから、山形県の特徴として、いろいろな会社の蔵人が顔を合わせる機会が多く、仲がよくなりました。
「まあ、いろんなエピソードはあるんですけど、、、」と尾原さん。そんな話をして下さる尾原さんからも山形県の酒造会社同士のアットホームさが伝わってきました。
山形県のお酒が全体的に重視されているのは味が綺麗なこと。
金蘭(きんらん)とか山形市内でも見かけず、小さな町から出てこない希少なお酒もありますが、普通酒でも十分美味しい。現地で飲んでいただくと本当にハズレがないそうです。
男山酒造では使用している仕込水が硬水でミネラル分が多いため、辛口がつくりやすい。飲むとブツッと味が切れるような渋みがあるのが特徴です。軟水から造られるお酒はスーと口当たりが滑らかな味になります。
日本酒度でいうと山形県村山市の高木酒造で造られている「十四代」は非常に甘く、マイナス2〜3。羽陽男山だとプラス3〜4となります。
最近の清酒鑑評会では、甘く香りがないと勝てない。酒業界が甘く華やかな方向に向いているような気がします。そのため男山酒造の杜氏が造るお酒は、こんなに甘くなくて大丈夫かと心配するけど、一つの柱として味の綺麗さで勝負していこうと思っているそうです。
コンクールで受賞したからとかで選ぶのではなくて、皆さんの好みに応じてお酒を選んでいただけると嬉しいです。と尾原さんはおっしゃっていました。
尾原さんのお話を聞き興味が湧いたところで、いよいよお楽しみのテイスティングタイムです。
まず、①「羽陽男山 酒未来(純米吟醸)」、②「羽陽男山 出羽豊穣(特別純米)」、③「羽陽男山 さわのはな(純米)」の3種類のお酒をテイスティングしました。
尾原さんよりテイスティングのヒントをいただきました。
①「酒未来 (純米吟醸)」は十四代でも使用しているお米ですが、アタックが甘く、後味が辛い。②「出羽豊穣 (特別純米酒)」は小さいタンクで7号酵母を使用したお酒。酸があって味わいもある感じ。③「さわのはな (純米)」は山形でも北のほうで収穫されるお米で冷めても美味しいのが特徴で、6号酵母を使用。一番酸味を感じるのでは。
飲み比べることで好みを見つけることができるのが、面白いところですよね。
今回から環境にも配慮しプラスチックゴミの削減を考え、お猪口でのテイスティングにしました。
前回までは透明のプラスチックカップだったので、色の違いはパッとはわかりません。
いつもよりも難しく感じます。
日本酒好きの参加者ばかりですが、今回は難しかったのか全問正解の方は2名でした。
正解者の方には男山酒造の特製お猪口がプレゼントされました。
その後、蔵元おすすめの3種類をおつまみとともにいただきました。
・山廃純米大吟醸「雪男山」
・山廃純米吟醸「雄町」
・特別本醸造酒「雷神」
おつまみで用意いただいたのは、地元山形県の近江漬け、Gavel derikatessenのハム、千歳山の玉こんにゃく。
玉こんにゃくは会が始まるぐらいから、会場にお醤油の美味しそうな匂いが漂っていたので、皆さんやっと口にできる!と言うような感じでした。
今回飲んだお酒は全部で6種類。銘柄のラベルにもそれぞれ個性がありますね。
一口に日本酒と言っても一つ一つ個性があり、参加していくつか飲んでみて自分の好みを見つけることができるのも、この日本酒イベントの良いところだと思います。
イベント後半は会場後方に移動しテーブルを囲むように交流しながら、蔵元の方にお持ちいただいた日本酒を和気あいあいと楽しみました。
直接蔵元の方よりお話を聞き、あまり東京で味わうことのできない日本酒を堪能し、参加者の皆さんも非常に満足そうな表情を浮かべていました。
同様のイベントは毎月開催されるので、興味がある方はぜひ参加してみてください。
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