2018.09.25
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
9月8日(土)に、東京日本橋兜町・茅場町にある「FinGATE KAYABA」にて、『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』というイベントを実施しました!
江戸時代、中央区日本橋兜町・茅場町の日本橋川沿いには酒問屋が立ち並び、賑わいを見せていました。兜LIVE!では、日本酒を街の魅力の一つとして捉え、日本各地の蔵元のご協力の下、どなたでも気軽に参加しやすい日本酒セミナーを4月から9月の毎月1回(8月を除く)開催しました。
「神沢川酒造場」5代目蔵元・望月正隆さん(写真中央)
今回のゲストは、静岡県の神沢川酒造場五代目蔵元・望月正隆さん。神沢川酒造場は、1912年(大正元年)、望月金蔵・由松(よしまつ)親子によって創業されました。もともと林業、養蚕業をしていた5代目蔵元の曾祖父。いろいろな事業に挑戦するチャレンジングな姿勢と、無類の酒好きが相まって、酒造業を始めたそうです。
“酒づくりは水から”という考えのもと、神沢川酒造場がある静岡市清水区由比は、神沢川の
傍、山が海に迫っているような地形であり、山ではみかん栽培が盛んなほか、駿河湾はここでしか捕れないサクラエビが有名な場所で、現在も漁港の街として栄えています。
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蔵元の紹介の後は酒造りについてのトークが始まりました。昔から、お酒は、売れた量ではなく生産量によって税金が加担されていたことから、作り過すぎても税金を取り損ねるということが少なく、日本では、全国的に酒蔵を増やした、という歴史的な背景があったようです。
明治後期以降、酒蔵が多い中、神沢川酒造場のような新しい酒蔵のお酒を飲んでもらうためには、”品質”にこだわる必要があったそうです。
神沢川酒造場は、品質を認めてもらうべく、創業から間もない大正2年頃から、お酒の味を評価するコンテストに出し続けてきました。根気強く何度も何度も挑戦を続け、大正3年には、静岡で県知事から賞を受賞するほどに。その後も、事あるごとにコンテストに自社のお酒を出し続けました。
間もなく、大量生産の時代に入り、周りにたくさんあった酒蔵も、値引きしなければ、いくら自慢のお酒をつくっても売れない状態。特に静岡は大きな影響を受けます。西日本の灘や伏見などは日本酒用の米どころが近く、そこでは大量のお酒を安くつくることが可能だったからです。
そんな状況に直面し、「静岡の酒蔵はどこも小さめで、少ない量しかつくれないから、価格で勝負しても太刀打ちできない。ならば、オリジナルの価値あるお酒をつくらなければならない」と神沢川酒造場は考えました。
そこで生まれたのが「静岡型吟醸」。昭和50年頃からの地酒ブームに乗って、徐々に評価さ
れるようになってきた、静岡のお酒に伝わる作り方です。酸が少なく、香りもほのか。軽く
、やわらかく、飲み飽きしない味です。昭和61年の全国新種鑑評会には、静岡県内の21蔵が出品し、17蔵が入賞、うち10蔵が金賞をいただきました。これを機に静岡は“吟醸王国”と呼ばれるようになったのです。
“米洗いに始まり、袋洗いに終わる”。
これは望月社長が大切にしている言葉です。神沢川酒造場では、酒づくりの最初の工程「洗米」から手を抜くことはありません。
また、その後の「蒸米」の工程でもその姿勢は同じ。適切な水分管理と緩やかな温度変化によって十分に水を吸わせた後、長い放冷時間と確実な温度降下によって、外は硬く、中は柔らかい、理想の米の状態に近づけていくそうです。お米の水の吸い方は気温や湿度によって毎日異なります。どの程度吸水させるか、機械で測って数字を出してはいますが、最後は人が判断しなければならない。
このような話を中心に、イベントでは望月社長のこだわる、「手づくりの良さを生かした酒造り」について、じっくり話を伺うことができました。望月社長の真剣な表情に、参加者の皆さんも話に聞き入っている様子でした。
蔵元の、日本酒に駆ける熱い想いを知ることができたところで、次は参加者が待ち望んだ利き酒チャレンジです。ちなみに利き酒チャレンジとは、名前をふせたお酒が3種類注がれ、お酒を当てるクイズ。今回注がれたお酒は「正雪 純米大吟醸 山田錦 斗瓶取」「正雪 純米大吟醸 雄町」「正雪 純米大吟醸 山田穂」の3種類です。
参加者の皆さんがお酒を楽しんでいる間、蔵元からヒントが与えられました。
「正雪 純米大吟醸 山田錦 斗瓶取」は、価格がなんと10,000円。お祝い事などでしか飲まないようなお酒です。雑味が少なく、香り高い味わいとなっています。
「正雪 純米大吟醸 雄町」は、口の中で溶けて味が残っていく感じ。
「正雪 純米大吟醸 山田穂」は、山田錦の母親にあたるお米を使用してつくられたお酒。少し硬いところがあり、クセのある味わいとなっています。
これらの蔵元からのヒントと、実際に味わった風味を照らし合わせてお酒の名前を当てていきました。真剣な表情で香りや舌ざわりを確かめる人や、隣同士で議論して答えを出す人など、お酒好きの参加者たちはそれぞれに利き酒を楽しんでいました。
今回のお酒に合わせ、地元・静岡のおつまみも一緒にいただきました。蒲鉾、山葵漬け、桜海老煎餅です。ここでも、望月社長のトークが会場を盛り上げます。
漁業が盛んな静岡では、シラスやサクラエビ、カツオやマグロなどの魚介類の他に、蒲鉾などの水産加工品も有名です。また、お酒づくりと一緒で栽培にきれいな水が必要となる、山葵。静岡の生産量は全国シェア1位を誇ります。
他にも、全国に出回っているツナ缶のほとんどの生産は静岡、などと地元自慢のトークに花が咲いていました。
その後、利き酒の3種類のお酒に加え、蔵元お勧めの日本酒「正雪 純米吟醸 別撰プレミアム」「正雪 純米プレミアム」「正雪 純米吟醸 吟ぎんが」の3種類を合わせた計6種類のお酒を楽みながら、参加者からの質疑応答に、望月社長が丁寧に答えていました。
今回のイベントでは、神沢川酒造場の生い立ちから、5代目蔵元・望月さんの未来に向けた熱い想い、また、日本酒以外でも、静岡の歴史や特徴など、興味深いお話をたくさん聞くことができました。
ちなみに代表銘柄「正雪」は、静岡生まれの正直な兵法家・由井正雪にあやかって命名されたそうです。望月さんの、誠実にお酒と向き合う姿が大変印象的でした。
普段何気なく飲む日本酒も、作り手の想いを聞くことで、味わいに深味が出るもの。それが「日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ」の醍醐味だと感じました。
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