2022.08.21

兜町にどぶろくのブルワリーパブ「平和どぶろく兜町醸造所」

こんにちは!
兜LIVE編集部です。


2022年6月17日、兜町にどぶろくのブルワリーパブ「平和どぶろく兜町醸造所」がオープンしました。お店を立ち上げたのは、和歌山県海南市に拠点を置く創業94年目の老舗、平和酒造株式会社。日本酒「紀土」やリキュール「鶴梅」でその名を知られる、日本が世界に誇る酒蔵の一つです。


今回は、平和酒造株式会社の代表取締役社長である山本 典正さんに、お店のコンセプトやどぶろくの魅力、兜町への思いなどについて、お話を伺ってきました。


◆できたてのどぶろくの魅力を、余すことなく楽しめるお店


ーーお店の概要やコンセプトについて教えていただけますか?

「平和どぶろく兜町醸造所」は、どぶろくのブルワリーパブというスタイルのお店です。18坪あるお店のうち4坪が醸造スペースになっていて、醸造者本人ができたてのどぶろくをお客様にご提供します。どぶろくは、農家などの家庭で醸造する「ホームブリュー」のお酒として知られています。できたては醸造発酵が終わった直後なので、フレッシュな炭酸を楽しんでいただけます。


ブルワリーパブというスタイルのお店は、クラフトビールやジンなど洋酒が主役のところが多く、日本のお酒が主役のところはとても少ないんです。全国的にも非常に珍しい取り組みで、都内には3店舗ほどしかありませんし、日本酒の酒蔵による出店は初めてではないかと思っています。



カレー鍋サイズの小さなタンクでどぶろくを醸造するというのも、他にはないユニークな取り組みです。どぶろく作りを突き詰めていった結果、酒蔵の大きなタンクより小さなタンクで仕込んだほうが、バリエーションを持てるなどのメリットがあるとわかりました。どぶろくのポテンシャルを最大限に引き出せるお店で、その魅力を余すことなく楽しんでいただければと思っています。


ーーどぶろくのラインナップについて紹介していただけますか?

他のお店ではできないどぶろく体験をしていただくために、豊富なラインナップをご用意しています。どぶろくの主な原料はお米ですが、山田錦を使ったものや五百万石を使ったものなど、銘柄による違いを楽しんでいただけるようになっています。黄麹を使ったどぶろくが一般的な中、白麹を使ったどぶろくも作っていますよ。



お米を使ったベーシックなどぶろくに加えて、小豆や黒豆、ホップなどを使っためずらしいどぶろくもご用意しています。米以外の原料を使ったどぶろくというのは、他ではあまり作られていないものですし、ユニークな商品だと自負しています。

私自身、どぶろくが大好きなので、より美味しいどぶろくを求めて、いろいろと試行錯誤していくうちに、米以外の材料を使うというところに辿り着きました。もともとどぶろくは農家で作られていましたから、田んぼで作られるものを原材料に使うのは、歴史的にもありえることだと考えています。


ーーどぶろくの魅力はどのようなところにあるのでしょうか?



どぶろくは日本酒の一卵性双生児ともいうべき存在ですが、独特の個性が魅力です。濾過して作る日本酒は清らかな味わいになりますが、どぶろくは濾過をしないぶん、素材の旨味を楽しむことができるんです。

お米を使ったどぶろくはやわらかでミルキーな風味を、お米以外を使って作るどぶろくは、小豆やホップなど、それぞれの素材特有の風味を味わえます。一つひとつ、他にはない個性を持っているので、その違い自体を楽しんでいただきたいですね。合わせる食べ物を変えてみるのもおすすめです。


ーー確かにバーフードのメニューも充実していますね。

どぶろくの魅力を感じていただくことが目的のお店ですので、どぶろくとのペアリングを楽しんでいただけるようなバーフードをご用意しています。和歌山県産のシラスや山椒など、どぶろくの美味しさを引き出す食材を厳選しました。



お好みのどぶろくとマッチするバーフードをご提案することもできますよ。例えば、プレーンなどぶろくには、金山寺味噌とクリームチーズをのせたクラッカーとのペアリングがおすすめです。まろやかな金山寺味噌と合わせるだけでも楽しめますが、クリームチーズが加わると、どぶろくのミルキーさがさらに引き立ち、食材の相乗効果を楽しんでいただけます。


◆どぶろくに馴染みのない人でも、気軽に立ち寄れる場所に

ーー店舗デザインのコンセプトについて教えていただけますか?




このお店の入っている「KITOKI(キトキ)」というビルは、木と気…自然と人の融和がコンセプトになっています。建物自体が木材とコンクリートのハイブリッド構造になっていて、木と気というコンセプトを体現しています。そのビルの1階に入るお店ですから、店舗のデザインを決める時も、木材をふんだんに使うなど、自然と人の融和というコンセプトを大切にしました。




女性や若い方に気軽に来ていただける店舗になるような工夫もしています。明るくオープンな雰囲気づくりを心がけ、おひとり様でも立ち寄りやすい店内にしました。最近は早い時間から飲みに出る方も多くなってきましたし、当店は13時からオープンしていますから、昼飲みにも活用していただけたら嬉しいですね。


ーーどのような客層をターゲットにされているのでしょうか?

当初は、お酒にあまり馴染みのない人、これまで日本酒をあまり飲んでこなかった若い人たちをターゲットに考えていました。でも、実際にお店をオープンしてみると、来ていただいているお客様の多くは、お酒好きな方、日本酒好きな方でした。

今でも来店していただいているお客様の7割は、このお店で飲むためにわざわざ来ていただいている方です。ですから、まずはそういった方にまた来ていただけることを目指していきたいですね。この先、兜町近辺で働かれている方の割合が増えていくかもしれませんし、お客様の動きに合わせた対応をしていきたいと考えています。


ーーこれからどのようなお店にしていきたいですか?



日本酒に魅せられた人間の一人として、日本酒文化は非常に価値あるものだと思っています。「平和どぶろく兜町醸造所」が、その文化の発信拠点となれたら嬉しいですね。お客様に、日本のお米から作られたお酒の魅力を伝えられる、そんなお店にしていきたいです。


「家族や友人に紹介したい」と思っていただけるお店にできればとも考えています。ここで日本酒の魅力を感じたお客様が、知り合いの方を連れてきて、その方がまた誰かを連れてきて…とつながっていけば、お店を取り巻く関係に広がりが出ていくでしょう。そうやって、お客様に愛されるお店にしていければと考えています。


◆兜町を「お酒だけではない、食のおもしろいエリア」へ

ーーどういったきっかけで、この兜町に出店されたのでしょうか?



ここ50年の間、日本酒の消費量は減少の一途を辿っています。なんとか新しい消費者を開拓できないかと、日本酒イベントを開催してきましたが、それにも限界を感じていたところでした。もっと消費者との距離が近い場所で、日本酒のクラフトマンシップを体感できる機会を提供したいと思っていました。


ちょうどその頃「兜町に『KITOKI(キトキ)』というユニークなビルを建てるから、1階になにかシンボリックなお店を入れたい」というご相談をいただいたんです。そこで「どぶろくの醸造所を作らせてもらえませんか?」とご提案をしたところ「いいね!」と言っていただけました。再開発中の兜町のニーズと、私たちの思いがタイミングよくマッチしたわけですね。


ーーこのお店を出すまで、この街と関わりはありましたか?

新卒で入った会社が茅場町近辺にあったので、兜町も地名として知ってはいました。ただ当時の兜町は、証券マンが行き交う、ビルの密集したエリアでした。部外者には近寄りがたい空気があって、足を踏み入れたことはありませんでした。


今では再開発が進んだこともあり、オープンなエリアになってきたと感じています。ベンチがあったり、周遊できるような仕掛けも施されていますよね。兜町で働いていない人たちも訪れやすいエリアに生まれ変わりつつあるなと思っています。


兜町にいると、あちこちに江戸時代の下町文化が息づいていることを感じます。江戸時代、灘や伏見など上方で作られた日本酒を、江戸の街に運んでくる船の船着き場があったのは兜町なんです。日本の伝統的なお酒と、とても親和性の高いエリアですよね。知れば知るほど、この街に出店してよかったなと思えます。


ーーこのエリアは現在開発中ですが、これからどのような街になっていって欲しいですか?



兜町で生活している人にも、そうでない人にも、気軽に周遊してもらえる街になっていくといいですね。最近では、休日になると若い人たちを見かけるようになりましたし、だんだんといい方向へと発展していっているなと体感しています。


兜町の再開発は、あちこちに新しいお店を配置する、種を撒くようなスタイルですが、その自然な進め方がまさに街づくりという感じで、非常に共感できるものがあります。やはり人々が集まる横丁というのは、自然発生的に形作られていくものですから。


再開発のために配置されたお店だけでなく「この街で営業したい」と思ったお店がやってくるようになると、兜町全体が活性化していくでしょう。兜町には美味しいスイーツのお店もありますから、これから「お酒だけではなく、食のおもしろいお店が集まっているエリア」というイメージを育てていけるといいですね。


平和どぶろく兜町醸造所


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