2018.06.04

「日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ」を開催しました。飯米の日本酒造りの先駆者が考える正しいお酒の飲み方とは?

撮影:兜LIVE!編集部

 
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
 
先日(5/19)FinGATE KAYABA にて、兜LIVE!主催「日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ」を開催しました。
 
5回にわたって開催されるイベントの第2回目のゲストは、宮城県の大沼酒造店16代目蔵元・大沼充さん。大沼さんによるトークや、利き酒、試飲など、盛りだくさんのイベントをレポートします。 


300年以上酒造りを続ける大沼酒造店

撮影:兜LIVE!編集部

 
大沼酒造店は、1712年(正徳2年)創業。伊達政宗の七男・宗高のお膝元である村田町の町酒屋として誕生しました。
 
現在の代表銘柄は「乾坤一」(けんこんいち)です。創業から明治時代までは長らく「不二政宗」という名前で親しまれてきましたが、初代宮城県知事・松平正直氏が乾坤一と命名しました。
 
のるかそるか(天か地か)の大勝負をすることを意味する「乾坤一擲」という言葉があるように、「天地を潤すほどの満足を与える酒であれ」「天下一うまい酒」といった思いで名付けられました。
 
「歴史が長いだけ」と謙遜して笑う大沼さんですが、300年以上もお酒を作り続けることは並大抵のことではありません。
 
宮城県といえば、東日本大震災での甚大な被害がまだ記憶に新しく、もちろん大沼酒造店も例外ではありません。お酒を造るためには、5〜6月には準備を始めなければならず、1シーズン酒造りをしなければ事業の継続が難しくなってしまう商売であるため、当時は必死だったそうです。
 
そんな時期を乗り越えた大沼酒造店は、最新の分析機やタンクを急冷するシステムを導入するなど、年々進化を遂げています。


時代とともにうつりかわる日本酒の流行

撮影:兜LIVE!編集部


皆さんは、どんな日本酒が好きですか?
または、日本酒といえばどのような味を思い浮かべますか?


フルーティーで飲みやすい日本酒が好き。どっしりとした日本酒らしいものが好き。日本酒って辛くて飲みづらいんじゃない?……
さまざまな好みやイメージがあると思いますが、「日本酒の味は、時代によって大きく移り変わっている」と大沼さんは言います。


第二次世界大戦前後は、食べることもままならないので、お酒に使えるお米はごくわずか。そのため、砂糖やアルコールを添加する酒造りが一般的でした。しかし、アルコールを入れると辛くなり、砂糖を入れるとしまりがなくなってしまうので、酸味も添加していたそうです。これがいわゆる「三倍増醸酒」です。


昭和30〜50年にかけては、月桂冠の松竹梅が発売されたことで、甘いお酒がもてはやされるようになりました。


その後注目されたのは、石本酒造の「越乃寒梅」に代表されるすっきりとしたお酒。甘いお酒ブームの中、砂糖を添加せず自分たちのお酒の味を貫いた「越乃寒梅」は、昔ほど甘いものが貴重ではなくなったという時代背景にも後押しされて人気を高めていきます。この影響を受けて、新潟県ではすっきりとしたお酒をつくる酒蔵が増えたそうです。


そこから、すっきりとした日本酒が好まれる時代が20年ほど続き、平成に入って日本人の食文化も知識もより豊かになってくると、今度は味わい深いお酒が求められるようになります。さらに、香りの質まで重視されるようになり、山形県の「出羽桜」や、より甘くてフルボディである「十四代」のようなお酒が人気となります。


このように、お酒の流行は常に食文化と比例するとのこと。これからどのようなお酒が人気となるのか、考えるのも楽しそうですね。


飯米で日本酒を作った先駆者

撮影:兜LIVE!編集部


大沼さんは、長年、純米酒(米、麴、水だけで造る日本酒)にこだわり続けてきました。

しかし、ある時東京に「宮城のお酒です」と自分のつくったお酒を持っていったところ、「水、米、作り手の3つの中で、宮城のものは水だけ。それは宮城のお酒とは言えないのでは?」と言われてしまいます。


とはいえ、宮城県の酒蔵の杜氏は9割9分が南部杜氏であり、杜氏を変えることは簡単なことではありません。そこで、お米を宮城のものに変える決断をしたのですが、宮城県は飯米王国です。他県から酒米を買う蔵が多い中、「それでも、宮城のお米でお酒を作りたい」と、飯米のササニシキで純米酒を作ることになりました。


酒米に比べて小粒でたんぱく質も多い飯米でお酒をつくるのは大変なこと。大沼さんの「好適米(酒造好適米・酒米)は強いんです」との言葉に、これまでの苦労や努力がつまっているように感じられました。


「飯米でも美味しいお酒ができるんです。今は飯米を使う酒蔵も増えていますが、自分が先駆者だと思っていますよ」と大沼さん。現在は造り手を退き、甥御さんに杜氏を任せていますが、その誇りはいつまでも受け継がれていくのでしょう。


利き酒・試飲タイム お酒のプロが語る本当のお酒の飲み方とは?

日本酒の歴史や大沼酒造店についてちょっぴり詳しくなったら、いよいよ試飲タイムです。まずは、3種類のお酒を利き酒しました。

撮影:兜LIVE!編集部


「超辛口純吟原酒」「純吟雄町」「H&E(ヘブン&アース)」の3種類が用意されているのですが、飲んだこともないお酒を当てられるのか、ドキドキします。


撮影:兜LIVE!編集部


ヒントは、名前の通り超辛口の純吟原酒と、甘口だというH&E。写真では分かりづらいですが、Aの色が少し濃いめです。

撮影:兜LIVE!編集部


飲んでみると、Aは甘口、B、Cはどちらも一口目はとても飲みやすく、後から辛さがきました。B、Cを2〜3度飲み比べて、より辛口のCを超辛口純吟原酒と予想。


初めての利き酒でしたが、結果は全問正解でした。参加者も、日本酒好きばかりとあって、ほとんどの人が全問正解していました。


その後、蔵元おすすめの純吟原酒「冬華」、純吟「ササシグレ」、純吟原酒「ひより」をおつまみとともにいただきました。地元宮城県の笹かまぼこ、潮牡蠣、奈良漬はどれも絶品!私は特に、紅生姜入りの笹かまぼこがお気に入りです。

撮影:兜LIVE!編集部


「ひより」は本来火入れをするお酒ですが、火入れ時期がイベント直前だったため、本生をお持ちいただきました!一般には流通しないお酒を飲めるのも、蔵元さんが来てくれるイベントならではですね。


撮影:兜LIVE!編集部


今回飲んだお酒は全部で9種類でした。


数種類の日本酒を飲み比べていると、「このお酒とこのお酒の違いは〜」なんて考えたくなってしまいますが、大沼さんは、「みんなでワイワイ、美味しく、楽しく飲むのが正しいお酒の飲み方なんです。程よく飲んで、ぐっすり眠って、次の日頑張れる。そんな飲み方をしてもらえたら嬉しいです」と言います。


少しとっつきにくい印象がある日本酒ですが、もっと気軽に楽しんで飲んでいいものなのかもしれませんね。大きく味の違うものなら、意外に利き酒もできてしまうので、友達同士で利き酒をするのも楽しいと思います。


最後に、ホヤをつまみに、熟成させた純米酒「愛国」をいただきました。

撮影:兜LIVE!編集部


撮影:兜LIVE!編集部


ビンの見た目は変わりませんが、一方は平成26年(2014年)に醸造、一方は平成27年(2015年)に醸造と、醸造年度の違う熟成酒です。1年しか変わりませんが、やはり26年に醸造したお酒の方が、辛さと深みがあるように感じました。


盛りだくさんの内容で1時間半にわたるイベントはお開きになりましたが、日本酒が大好きな参加者の皆さんは、まだまだ飲み足りない!と薄暗くなってきた兜町に姿を消していきました。


まとめ

大沼酒造店の酒造りの歴史や乾坤一について興味深いお話をたくさん聞くことができました。やはり、ただ飲むのと、蔵元さんからお話を伺って飲むのとでは、味わいが違います。


蔵元さんからの「例えば友達3人とお酒を飲みに行ったならば、1種類のお酒を注文して皆でシェアしながらいろいろな種類のお酒にトライするのではなく、最初から3種類のお酒を注文して、それを一人3つずつのお猪口をもらい飲み比べながらそれぞれのお酒の味わいを比較・確認するようにして飲んでみて欲しい。家で飲む時も同様に、買った自分の好みのお酒だけで飲むのではなく、お土産でもらった様なお酒なども合わせて一緒に3種類くらいのお酒を味わう飲み方を是非して欲しい。そうすれば、自分の好みのお酒の特徴がまたあらためて理解できるし、合わせていろいろなお酒の味わいも自分の好きなお酒を基軸として同時に比較しながら確認することができるので、お酒のバラエティーをしっかり楽しむことができて面白いと思いますよ。」とのお話には、忘れかけていたお酒の楽しみ方の基本をまた思い出させていただいた様な気がしました。


同様のイベントは、残り2回行われるので、興味がある方はぜひ参加してみてください。


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