2021.02.26

【かぶかやヒューマン】 #12「東京証券信用組合 理事長 八尾和夫さん」

証券信用組合って、なんだかとってもカタそうなイメージがありますよね。しかも、その理事長さんとなれば、厳格な方に違いない……!そんな予想を見事に壊してくれるのが、東京証券信用組合の理事長・八尾和夫さんです。八尾さんってどんな人なの?東京証券信用組合って何をしているの?直撃しました!


◆役職は9個!パワフルで多忙な毎日

~東京証券会館3階~




ーー八尾さん、こんにちは!(ドキドキ)
ようこそ!さあ、座って座って。



ーー早速ですが、八尾さんのプロフィールをざっくり教えてください。
昭和26年生まれの69歳です。1975年に日本銀行に入行し、留学や北京勤務などを経て、人事局研修課長や情報サービス局広報課長を務めました。


98年1月からは高松支店長、2002年5月からは仙台支店長を歴任し、05年6月に全信組連(全国信用協同組合連合会)の専務理事に。その後、中央労働金庫の常勤監事を務め、15年6月から現職です。


ーー経歴が華々しすぎて、何から聞いて良いのか(笑)。お名刺もたくさんありますね。


はい。現在の役職をすべてご紹介しますね。


・東京証券信用組合 理事長
・太陽生命株式会社 社外取締役
・東京都中小企業団体中央会評議員
・神宮ネット裏三田会 代表幹事
・関東笑狸会 会長(香川県勤務経験者のOB会)
・香川県産業活性化アドバイザー
・高松市観光大使
・やまがた特命観光・つや姫大使
・柳汀会副会長・関東支部長(中学高校の同窓会組織)


ーー9つも!八尾さんって、とてもパワフルなんですね!


◆関係者とのコミュニケーションや情報収集に注力

ーーこちらの「東京証券信用組合」はどんな組織なのですか?
証券界にいる人のための信用組合です。特定の業域を営業対象とする金融機関ですね。具体的には、証券会社やその関連会社および役職員を対象としていて、法人・個人に関わらず、預金・貸出・内国為替などの金融業務を行っています。地域性を持ちたいので、この中央区に限っては、証券界以外の事業者やその従業員、在住者の方ともお取引しています。



ーーふむふむ。東京都が運営しているのですか?
鋭いご質問ですね。国や都はまったく関係がない、いち民間金融機関なんです。


金融機関の在り方には、「株式会社」と「協同組織」の2つがあります。銀行は「株式会社」で、私たちのような信用組合や信用金庫は「協同組織」です。銀行は利益を上げることが一番の目的ですが、私たちはそうではありません。もちろん、生きるためには利益も大事ですが、利益が出たら仲間同士で分け合うようなスタンスです。


ーーそうなんですね!八尾さんは理事長として、日々どのようなことをされているのですか?
寝ても覚めても信組の経営のことを考えています。証券界のトップをはじめとする多くの方々と密接なコミュニケーションをとったり、当信組を活用していただくためにトップセールスをしたり、様々な会合に参加したり……。行政当局、他の信用組合や金融機関、マスコミなどとのコンタクトも重要な仕事です。



情報収集にもかなりの時間を割いていて、国内外の経済事情、コロナが与える影響、金融庁はどういう方向を向いているかなどをリサーチしています。それらすべてを知っておかないと、先のことを判断できないですから。新聞・雑誌・テレビ・ネットからはもちろん、ビジネスをしている人から生の声を聞く機会もたくさんありますね。


さらに、内部管理面の諸施策について役職員と議論・検討して、最終決断を下すことも大事な仕事です。


◆勉強と青春を謳歌した学生時代

ーー八尾さん、出身はどちらですか?
奈良県大和郡山市という、田舎の古い城下町です。ご存知ですか?金魚で有名な街なんですよ。


中学高校は男女共学の奈良女子大附属に通って、野球・ESS・器楽と多様なクラブに入り、青春を謳歌しました。大好きな野球は大学受験のために泣く泣く途中で辞めましたが、このときの無念さが私の野球愛に火をつけました。


ーーその後は慶応大学に入られたんですよね。
はい、経済学部です。自分のやりたいことがやれる大学だし、今でも仲間と縁があって、本当に良い大学でした。


入学後は受験勉強という非生産的な作業から解放されて、やりたい学問に取り組みました。アダム・スミスやマルクスをはじめ、社会思想史、哲学、資本主義の歴史に関する本を読み漁りましたよ。


ーーマルクス!その頃からすでに頭角を現していたのですね!
日銀に入ってから近代経済学の基礎知識不足に苦労しましたが、経営者になってからは逆に当時やった学問が役に立っていますね。


クラブ活動は、慶応英語会に所属しました。これは余談ですが、3年生のときに勧誘した新入生が今の妻です。日吉キャンパスの入口で声をかけたら入会金3500円を即払ってくれて……要はナンパですよね(笑)。私は3500円で買った夫という訳です!


ーーそんなに価値のある3500円、聞いたことがありません(笑)。大学では野球を再開しなかったのですか?
プレーはしませんが、六大学野球にはまり込み、神宮球場に通い続けました。早慶戦では試合前夜から神宮球場の通路に泊まり込み、麻雀をしながら翌日まで時間を過ごしたものです。



ーー現在代表幹事を務めている「神宮ネット裏三田会」と関係がありそうですね。こちらはどのような会ですか?
慶応の卒業生で構成された、慶応野球部を応援する人たちの集団です。野球部とは全く関係のない人専用なので、ファンクラブみたいなものですね。120人程の会員がいて、平均年齢は70歳を超えています!メンバーを通じて証券界の方をご紹介いただいたこともあり、意図せずビジネスにつながったこともあります。


◆1年間の留学で中国語を習得

ーー就職先に日銀を選ばれたのは何故ですか?
当時の世間の風潮もあり、民間企業ではなく公的な仕事に就きたいと考えていたのですが、先輩から「日銀の採用試験は筆記なしで面接だけだぞ」と聞いて、「これは良い!」と(笑)。


ーーそれで受かるのがスゴイです(笑)。入行後には、海外留学もされたとか。
30歳のときに「香港大学で中国語を習得してくるように」と業務命令が出ましてね。初めての語学、しかも与えられた時間はわずか1年。午前中は大学の授業、午後は家庭教師につき、夜は中国語の映画鑑賞と、詰め込みに詰め込みました。中国語は舌の使い方が複雑で、家庭教師の先生から口の中に指を突っ込まれて矯正されましたよ。


その後は北京の日本大使館に赴任し、中国の経済情勢を調査したり、中国の中央銀行と連絡調整したり、日銀総裁や大臣の通訳も任されたりしました。当時の中国はまだまだ経済的にも遅れていましたが、この数十年間で急成長して驚いています。


ちなみに、日銀では野球部に入り、ピッチャーをやっていましたよ。



ーー現職には、どのような経緯で就かれたのですか?
前任の川端作治理事長から「後任として来てくれないか」と頼まれたことがきっかけです。私のような証券界出身でも証券信組出身でもない人間が理事長を務めるのは、初めてのことなんですよ。


とは言え、これまでも証券会社や東京証券取引所とは縁が深かったので、着任時は「八尾さん久しぶり!」なんて言ってもらえて、やりやすかったですね。色んな世界を見てきた知見を活かして、この組織の世間の常識と離れた部分を、常識に近づけるよう努めています。


日銀は国を守ることが目的で、厳正・公正・中立を軸としていましたが、今はビジネス第一という、まったく違った考え方をするようになりました。お取引している方から「融資してもらって助かった」と言われると、本当にうれしいです。


私の今の仕事は、これまでの四十数年間で得た体験や人脈の集大成だと思っているんです。60歳を過ぎて、これまで味わったことのないビジネスの楽しさと充実感を感じていますね。



◆イベントを通して、この街の原点を取り戻したい

ーー八尾さんにとって、この街はどんな存在ですか?
食事処・喫茶店・古くからの本屋さんなどは、どこに行っても何とも言えない親しみやすさやあたたかさがあります。株式市場という生き馬の目を抜くような競争の世界から一歩外に出ると、人と人の接触がとても穏やかで情緒があり、ホッとするような雰囲気を感じる……とても不思議な街です。K5やKABUTO ONEなどの新たな建物も出現してきて、今後が楽しみですね。


ーー中でも、お気に入りのスポットはありますか?
このビルの中にある「ホテルオークラ日本橋レストラン」、この通りにある「イマノフルーツファクトリー」、お蕎麦の「亀鶴庵」、和食の「松はな」、究極の親子丼「鳥ふじ」にはよく行きます。コロナの前は、昼食後に「ゆう」や「SUN茶房」などの喫茶店にも行っていました。


ーー八尾さんは、兜町のJAZZイベント「Jazz EMP」の協賛など、この街のイベント活動にも積極的とか。
はい。この街は、金融証券の出発点であり、日本の資本主義発展の原点です。色んな証券会社が他所に移転してしまったけれど、元々は皆ここに居たんですよ。そういった原点を取り戻していきたいと思っているんです。


金融証券に関する様々なイベントを開くことで、このエリアから出ていった人たちがここに帰ってくるきっかけをつくれたらと。イベント後にアフターパーティを開けば、街の活気や交流も生みだせると思うんです。



◆先進性と下町情緒が共存する街であってほしい

ーー今後の目標を教えてください。
当信組の知名度を上げて、「お金のことならまず証券信組に相談してみよう」と思われる存在になりたいですね。プライベート面では、60歳で始めたゴルフをもっと極めていきたいです。


これは余談ですが、「白雪姫の会」という集まりがありましてね……。高校時代に所属していたESSで、男だけで白雪姫の英語劇をしたのですが、その仲間たちの職場が数年前からこのエリアに集結しているので、「兜町白雪姫の会」という名前をつけて飲み会やゴルフを開催しているんです(笑)。後ほど日経新聞に載った記事をご紹介しますね。
(※この記事の末尾にURLを掲載)


今はコロナの影響で、会食の場が無くなってしまって寂しいですが、また沢山の人と出会っていきたいです。直接会うことはビジネスでも大きな力になりますし、プライベートでお付き合いする人も増えていくので、私の生きがいなんですよ。



ーー八尾さんにとって、仕事はライフワークなんですね。最後に、現在開発中のこの街にどのようになっていってほしいかをお聞かせください。
金融証券の街としての先進性と下町情緒が共存する街であってほしいですね。高層ビルが乱立するようなことが無い方がよいと思います。ビルの高さは今ぐらいにとどめつつ、内部施設などはハイスペックなものを装備していく前提で、うまく雑居ビルなども整理統合してほしいですね。そうすれば、丸の内などとは違った独自性のある街並みが形成されるのではないでしょうか。


そして、当信組が「しんくみさん」と親しまれる存在になることで、この街のあたたかい雰囲気の醸成に少しでもお役に立てればと思っています。


◆取材を終えて

八尾さんにお話をうかがいました。いかがでしたか?ユーモアたっぷりにお話ししてくださったり、取材前のアンケートには丁寧な回答とメッセージを書いてくださったり、取材後にも参考資料を送ってくださったりと、終始きめ細やかな対応に感激しました。八尾さんがビジネスで成功されている理由も、まわりから愛されている理由も、よく分かりました。八尾さん、お忙しい中ありがとうございました!



東京証券信用組合 ホームページ

▼日本経済新聞朝刊「交遊抄」/八尾さんが寄稿したコラム(白雪姫の話)
 
▼「神宮ネット裏三田会」に関する記事


(ライター:安藤小百合

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