2020.10.14

【蔵元トーク】#27  川中島 幻舞(長野県 酒千蔵野)

こんにちは。兜LIVE編集部です。

9月12日(土)、オンラインにて『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。


事始めの街と呼ばれている日本橋兜町・茅場町。江戸時代には酒問屋で賑わっていたこの街には、今でも日本酒の種類が豊富な名店が点在しています。

兜町・茅場町を応援する兜LIVE!では、「日本酒」をまちの魅力の一つと捉え、どなたでも参加できるイベントを月1回の頻度で開催。日本各地の蔵元をお招きし、楽しく日本酒について学び、味わい、交流しています。


今回は新型コロナウイルス感染防止に伴い、三度目のオンライン開催となりました。

長野県の酒千蔵野(しゅせんくらの) 杜氏 千野 麻里子さんとオンラインで繋ぎ、日本酒ブランド『川中島 幻舞』のご紹介や、日本酒に対する想いなどをお話いただきました。


■少しずつ定着しつつある!?オンライン飲み

今回の兜LIVE!イベントは、三度目のオンラインでの開催となりました。

事前に本日紹介の日本酒3種とおつまみを宅配便で郵送し、当日は長野県と茅場町FinGATE、参加者の方々のご自宅を繋ぎました。

私も郵送されたお酒とおつまみを準備し、イベントが開催されるのを自宅にて待ちわびていました!



今回は29名の方にご参加いただきました。



チャットのアンケート機能を使用して、参加者さんとコミュニケーションを図りながら行いました。


長野県出身の方はいらっしゃいますか?や川中島を飲んだことはありますか?などのアンケートをとらせていただきました。

「川中島をこれまでに飲んだことがない」という方も4名いらっしゃいました。

ほとんどの方が飲んだことがあるという結果から、多くの方々に愛されるお酒なのだなと感じました。

■酒千蔵野 杜氏 千野 麻里子さんのご紹介

麻里子さんは、幼い頃から酒蔵を引き継ぐための教育を受けてきました。

醸造学について学ぶため、東京農業大学醸造学科へ進学されました。当時学科の女性は1割程度。

大学卒業後は約2年間醸造試験所にて、麹に熟練された先生のもとで学んだ後、長野県の蔵に戻ってきてからは様々な困難がありましたが、それらを乗り越えてこられたそうです。

その頃は、酒蔵は女人禁制でした。酒蔵は、蔵人たち(男性)の"聖域"といわれていましたが、ある日蔵人さんがお休みをされた際お手伝いをしたことがきっかけで、少しずつ認めていただけるようになったそうです。


そのようにして様々な壁を乗り越え、長野県の女性杜氏は当時一人だったそうですが、現在は7名と日本で一番女性杜氏が多い県となりました。

麻里子さんが、女性杜氏の第一人者として歴史を刻んだといえるかもしれませんね。

■蔵元の紹介

酒千蔵野(しゅせんくらの)の創業は、戦国時代のまっただ中の天文9年(1540年)。

ちょうど武田信玄と上杉謙信が数度にわたりまみえた「川中島合戦」の頃であり、その歴史舞台に酒千蔵野はあります。


その歴史は、優に450年以上続き伝統を静かに守り続けてきた酒蔵で、元々はいわゆる百姓酒屋。千曲川と犀川に挟まれた川中島は二毛作可能という肥沃の地、あまった年貢米を酒にし、村の人々に振る舞う。そんな土地に根ざした酒蔵で、代々百姓酒屋を営んでいましたが、1765年頃千野多右ヱ門が酒蔵を建設し本格的に日本酒造りへの情熱に燃え代々引き継がれています。長野県で一番古い蔵元であり、日本国内で7番目に古い酒蔵として認められています。全業種で、なんと22番目に古い企業でもあります。


何気なく忘れてしまった大事なもの。ふとした瞬間、それに気付かされたとき、ハッとする感覚。 原点の日本酒が持つ、素晴らしい魅力。信州人の、日本人のDNAに刻み込まれた感覚を感化していきたい。 地元に根ざした造り酒屋、地域の人たちが集う蔵元、フレッシュな酒が運ぶ華やかな空間。地域の皆様に愛される蔵元へ、信州の歴史と文化の承継、誇るべき日本文化の発信を酒千蔵野は独自のスタイルで提案していきます。


酒千蔵野は地酒の蔵として、お米には強いこだわりを持っています。麻里子さんは、日本酒に欠かせない田植えと稲刈りには常に参加しておられます。しかし、桃づくりなど果物栽培が盛んな地域のため、米を育てられる場所が減ってきているそうです。

「米作りは儲からないし、国の減反政策もあってどんどん果樹園になっています」と話す一方で「長野県は広いので、地域によって米質も水質も異なります。いろんな地域のお酒を味わってほしいです」と熱く語ってくださいました。


参加者さんからは沢山の質問が出て、中には少し専門的で鋭い質問もありました。


『「ヤブタ式」「槽搾り(ふねしぼり)」の使い分けはどのようにされていましたか?』

酒造りは3通りの方法「ヤブタ式」「槽搾り(ふねしぼり)」「袋吊り」で行っています。

酒造りは、毎年10月初旬から翌年の8月まで行っていて、季節に応じて作りかたを変えています。槽を利用して作るのは1.2月の寒い時期のみです。


『酒千蔵野の社名は、どのようにして決めたのですか?』

酒千蔵野は、「酒」と「蔵」の間に千野を入れてみました。酒蔵っぽくない名前が良いなと皆で話し合って決めました!


『幻舞の由来のストーリーを教えてください』

麻里子さんが修行をしていた頃、周囲の酒屋の方々から「そろそろ自分の酒をつくってみたら良いのではないか』と声を掛けられたそうです。12名のメンバーたちが集い、皆で名前を決めるためにアイディアを出し合いました。

その頃は、日本酒は3文字の商品がトレンドだったので『幻舞翠(げんぶすい)』という名前に決まりかけていました。

しかし、「もっと全国に名を轟かせるようなメジャーなお酒になってほしい」という願いを込めるべく”川中島”という名前を入れるために『川中島 幻舞』という名を付けました。

「ついつい踊って、舞いたくなるようなお酒」という想いが込められているそうです。

■川中島のご紹介

酒千蔵野は『川中島 幻舞』の他にもう一つ、『桂正宗』という酒も醸造しています。

『桂正宗』は伝統的な味わいで、古くから多くの方に愛されているお酒ですが、さらにより多くの方々からのニーズにこたえるために作りだされたのが『川中島 幻舞』だそうです。

若い層に向けた新しい酒『川中島 幻舞』と、代々築き上げてきた『桂正宗』を醸すことで、自分たちのお酒をいろんな人に広く楽しんでもらおうと研究を重ねているのだそうです。



今回用意していただいたお酒の特徴を教えていただきました。


①川中島 幻舞 純米吟醸 美山錦

・1番多くつくっているシリーズで今回は7月にしぼったもの

・うまみや甘みを出すように心がけている

・香りがふわっと広がるように無濾過、生原酒

・食中酒向け


②川中島 幻舞 特別純米 山田錦

・2番目に多くつくっているシリーズ

・5年ほど前からご縁があって、契約栽培で作ってもらっている兵庫県加西市 亀尾洋三氏さんのお米を使用

・山田錦のまろやかさ、少し酸もある味わいとのどごしで甘みと旨味を感じられる


③川中島 幻舞 純米大吟醸

・酒米は①美山錦と②山田錦を使用

・今年は少し甘めに仕上がった

・別名HARMONIC EMOTION

■お楽しみのテイスティングタイム♪

乾杯のご発声は、函館から参加している方にお願いしました!



私は残念ながら利き酒クイズは外してしまいました……。

精米歩合も異なりますが、お米が変わるだけでこんなにも変わるのだなと驚きました!


改めてもう一度味わってみると、

A(③):薄い黄色、フルーティーで甘味がもっとも強いなと感じました。

B(①):透明に近い色合い、この中では味に一番インパクトがあるなと思いました。

C(②):薄い黄色、優しい香りですっと入ってきました。

個人的にはC(②)が一番好みの味でした。


しかしどのお酒も、日本酒に慣れてない人でも非常に飲みやすいと思います。

また、A(③)は半年寝かせるというお話を聞き、日本酒としてはめずらしいのでまるでワインのようだと思いました!

さらに、今回FinGATE KAYABAのスタッフは特別に『川中島幻舞 純米吟醸 愛山』をいただきました。


こちらは、優しい甘みとコクが口に広がるような……また微かな酸味も感じる上品な味でした。


また、今回のブラインドテイスティングの当選者は、10名でした!

日本酒に合う素敵なおつまみは、八幡屋礒五郎の”七味唐からしの種”(柿の種)で、辛さだけでなく、醤油のコクもあったので、日本酒とても合っていました。



八幡屋礒五郎の七味は、長野市内ではどの家庭にも置いてあるメジャーなもの。お味噌汁などの料理にもかけて味わっているそうです。

麻里子さんは辛いものが苦手で実は食べたことがないそうですが、ご主人が好きで、甘いお酒に合うのではないかと思い送りました!とのことでした。

甘い日本酒と辛いおつまみで、口の中で一緒になると、、、なるほどハーモニーを奏でます。笑


と、ここでご主人(総務営業統括部長 千野健一氏)がサプライズ登場!

ご主人は、一見するとちょっと怖そう……でしたが、ご挨拶いただく中でとても優しいお人柄なのだと感じられました。


■いざバーチャル蔵見学へ!!

蔵元を見学できるというのは、オンラインならでは。

その場所に行かなくても、涼しいお家の中で美味しい日本酒を飲みながら参加できるのは幸せの極み。


オンラインなので蔵元と電波が切れてしまうというトラブルもありながらも、一つ一つ丁寧に紹介していただきました……笑

麹室などの作業場が通路からガラス越しに見えるようになっていたりと、蔵見学も意識した建物になっていました。


以前は見学を受け入れていたそうですが、4名という少人数かつ手作業で酒造りをしているなか、現在は酒造りに集中したいという想いから、見学は受け付けていないそうなので今回はとても貴重な機会でした!



蔵の写真や酒造りの様子はこちらのフォトストーリーもぜひ見てみてください♪


■まとめ

全国的に飲まれているお酒にも関わらず、実質的には4人でつくられているということを聞き、驚きました!と同時に、米づくりの農家が減っているという話を聞いて、日本全体で日本酒の文化が衰退していってしまわないか心配になりました。

”幻舞の名前の由来”や”将来的には長野のお米を使ってお酒をつくっていきたい”といったお話や、契約農家さんからお米の全量買取を行ったりなど地元を盛り上げていきたいという情熱的な想いを感じました。

戦国時代からの長い歴史と、女性杜氏という新しい要素が織りなすハーモニー。

伝統継承と弛まぬ努力・研鑽し続ける麻里子さんのご活躍に、期待に胸が高鳴ります!


『川中島 幻舞』を飲まれたことがない方は、ぜひ、お試しあれ!!


*酒千蔵野のHPはコチラ


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