2022.12.27

【蔵元トーク】#50 楯野川(山形県 楯の川酒造)

こんにちは!

兜LIVE編集部です。


11月12日(土) 、ハイブリッド形式(現地開催&オンライン)で『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。


今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。

江戸時代には日枝神社の門前町として栄え、酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。

東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。

平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広め、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。


今回は、山形県酒田市で「楯野川(たてのかわ)」を醸す楯の川酒造の佐藤淳平社長をお迎えしての開催でした。内容は、以下のとおり盛り沢山で、函館、青森、山口からのオンライン参加者を含め、多数の方々にご参加いただきました。ありがとうございます!


•楯の川酒造のご紹介

•日本酒業界のコロナ禍における動き

•楯の川酒造が目指す2 0 2 2 B Yの酒造り

•今後の展開と成長戦略

•月光川蒸留所の設立とウィスキー事業の展開

•姉妹蔵である奥羽自慢

•テイスティング

•お知らせ


◆楯の川酒造のご紹介

▼まずは、こちらのムービーをご覧ください。

<映像提供 企画:株式会社Cland,撮影:倉渕宏幸>



▼概要

・PRESIDENT:佐藤淳平

楯の川酒造六代目、44歳。弱冠20歳で社長に就任、赤字経営を立て直し業界屈指の事業規模を誇るまでに楯の川を成長させる。原料米の99%を削る精米歩合1%の日本酒「光明」など常識にとらわれない商品開発、山形県外で働くリモート社員の積極的な採用など、日本酒業界の革新に取り組む。経営哲学の基礎は「信長の野望」。



・PLACE:山形県酒田市

山形県の北西、日本海に面した庄内・酒田市に醸造所兼本社を構える。本社社員・各地のリモート社員が連携し業務を実施。



・ORIGIN:1832年(天保3年)創業

上杉藩の家臣が庄内を訪れた際に、水の良さを驚き初代平四郎に酒造りを始めることを薦め、平四郎は酒母製造業を創業。



▼TATENOKAWA100年ビジョン



・1832年の創業以来、楯の川酒造は徹底して品質を追求し、日本の「酒」「食」「農」 文化の発展に寄与してきた。

・変化する時流を掴み続け、付加価値の高い商品を創出することで、持続的成長を実現し、MADE IN JAPANを世界に広げる総合酒類カンパニーを目指す。



▼地域に根ざした酒造り



・山形県では古くから酒造りが盛んに行われており、付加価値の高い吟醸酒をメインに生産していることから、「吟醸王国山形」とも呼ばれている。

・当蔵のある酒田市は、日本海に面した庄内平野に位置している。良質の米ができる 土壌と気候、豊かな水に恵まれた地域です。

・楯の川酒造では、契約農家の方々と共に育てた出羽燦々をはじめとする山形県の米と鳥海山系の水を原料に、テロワールを重視した酒造りを行っている。


▼全量純米大吟醸

・「純米大吟醸」とは原材料に水と米、米麹だけを用い、原料米を50%以上磨いて低温でゆっくりと醸す吟醸造りで造られたお酒のこと。

・楯の川酒造は、2010年から山形県内では初めて、日本全国でも珍しい全量純米大吟醸の蔵となった。


<特化した理由>

1.澄み切った、エレガントな味を求めて原料米を削ることでタンパク質や油分の量が減り、より繊細でエレガントな味わいに仕上げることができる。

2.米文化の持続可能性を高めるために原料米を削るほど1本あたりに使う原料米の量が増加し、より多くの米を取引でき米農家の方をサポートできる。削った後の原料米も有効に活用することで、契約農家の方々と持続可能な米文化の構築を目指している。




▼新しい働き方

・脱属人化のチーム醸造

杜氏制度を廃止し知識とスキルを共有。新人教育、ジョブローテーションなどチ ームで取り組む醸造プロセスを構築。

・酒蔵のワークライフバランス実現

週休2日、定時退社、有給消化が当たり前。酒造りにおける質の追求と私生活の両立が可能なホワイトな社風づくり。

・住む場所を選ばない働き方

各種S a a S ツール・シェアオフィスを駆使し、どこでもリモートワークが可能な体制に。山形・東京・神奈川・京都・沖縄(石垣島)と 日本全国で社員が業務に取り組む(社員約64名のうち、11名がフルリモートワークで勤務)。



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SaaS:「Software as a Service」の略であり、「サービスとしてのソフトウェア」を意味する。ここで言うサービスとは「クラウドサービス」を意味する。つまり、SaaSはインターネット経由で提供されるソフトウェアということで、ソフトウェアを提供している側は「サーバー」、利用している側を「クライアント」として区別する。


▼展開事業・ブランド



◆日本酒業界のコロナ禍における動き

<3つのポイント>


▼飲食店需要の低下と家飲み需要の増加~少量化の流れの加速~



・緊急事態宣言下の飲食店の営業休止で一升瓶の日本酒需要が大幅に低下した。一方、家飲み需要の増加により四合瓶の需要が大幅に増加。飲食店営業の再開により一升瓶の数量も持ち直しているが、以前にもまして少量化の流れは加速すると思われる。



▼高級酒の需要拡大~ラグジュアリー日本酒の台頭~

・出荷量の減少に対して日本酒は高級化傾向に。S A K E 1 0 0「百光」を初め一升瓶の日常酒からプレゼント需要に答える四合瓶&1万円以上の商品へと市場のニーズが変化。



▼拡大し続ける海外市場

・高額商品需要でコロナ禍においても伸び続けた輸出金額に加え物流の再開と主に数量も過去最高に。高い成長率は依然として維持され全世界的に日本酒海外市場は堅調に拡大していく予想 。



◆楯の川酒造が目指す2022BYの酒造り

▼3つのポイント

①米の特徴を活かした味わい設計

溶けやすい今年の米をうまくコントロールし、味の幅・深みを持たせつつ洗練された味わいを保つ。

②強みである精米体制の強化

精米5号機の導入により、20%以下の高精白に取り組むの酒造り基盤の強化する。

③成長がやり甲斐に繋がる環境作り

明確にレベルアップを実感できるスキルマップ運用、個 々 が自走できるしなやかな現場を目指す。



醸造責任者 川名 啓介

筑波大学大学院(工学修士)を修了、工業部品メーカーを経て、楯の川酒造へと転 職。ロジカルな思考と繊細な利酒感覚を組み合わせ、楯の川酒造が目指すピュアで透 明感の高い酒質造りを牽引する。


▼概要

・人員構成

製造部16名 パート2名 季節パート2名

・仕込み期間

過去最長。仕込は9月20日スタート、来年7月末に甑倒しを予定。

・仕込み数量

2100石予定。半仕舞いで行う最大量に挑戦。

・使用原料

玄米比で山形県庄内産米80%、山田錦20%程度


▼環境整備

・育成環境の重視

育成環境の重視し、ジョブローテーションを半年~1年ごとに担当を異動 。各々がすべてのプロセスを理解し属人化を避ける 。



・明確な目標設定

対応可能業務と成長目標の可視化を目的として、醸造の各プロセスで習得したスキルを把握できるスキルマップを運用。




・挑戦機会の用意

若手醸造メンバーが企画から販売まで行い、これまでにない酒質を模索する「チャレンジボトル」プロジェクトの実施。



▼新たな取り組み①<造りのアップデート>

・精米5号機の導入

新たな精米棟を建設し、新たなダイヤモンド精米器(精米3,4号機と同じ)を導入。より美しくより早く均一な精米を行うことで、吸水の均一化、溶けの均一化が図れ、味のぼやけがない美しいテキスチャーに繋がる。



・新仕込蔵の運用

従来の総米600kgでの小仕込みよりさらに小さい、総米300kg程度の仕込みに挑戦。小回りが効く分、温度管理・発酵管理の面で高度な技術が必要になるため、より一層の醸造技術向上に取り組む。



・山形酵母NF-KA中心の酒造り

カプロン酸高生成酵母を極力使わない「山形酵母NF-KA」中心の造りに変更。分かりやすく華やかな香りに頼ることなく、洗練された味わいを飲み口に感じる、繊細な風味を楽しむお酒を目指す。



▼新たな取り組み②<22年のお米への対処>

・2022年産の庄内米の予想

8月の日照が例年の4割程度。栄養を使い切っていないお米が多い

お米の溶け方:溶け方は、例年並み~少し溶けやすい

味わいの出方:未熟米が多く、アミノ酸度が高くなる



・作りにおける対応策(種麹量の削減)

麹が糖化を行う際 、同時に生じる アミノ酸が雑味に繋がるため 、種麹量を抑えることでアミノ酸含有量が多く溶けやすい今年の米の対策をする。具体的には、あえて総ハゼを減らし突きハゼを増やすことで、麹由来の味をおさえて綺麗な酒質を目指すことで、今年の米の難しさをさらなる酒質向上につなげていく。



▼新たな取り組み③<次の次元への挑戦>

・2000石の壁のその先へ

石数を増やしていく上で直面すると言われる「2000石の壁」。この壁の突破に向けて、今年は製造体制のアップデートに向けた取り組みを開始予定。22BYは毎日「留」の作業が発生する「日仕舞」に小規模でトライ。来シーズンで「日仕舞」が可能な環境にするための設備の拡張、人材育成を進める。



◆今後の展開と成長戦略

                  <3つのカード>


▼高精白 x 〇〇

―― テロワール・ヴィンテージ・自然派、多様化する評価軸の中、弊社の強みである高精 白に他の要素を掛け合わせることで、新しい領域を生み出す。

・弊社独自の「精米歩合20%以下の醸造技術・豊富な経験」を基に 高精白を前提とした新たなブランド造りに取り組んでいく。


高精白への飽くなき探求 「光明」

1%にしか出せない味わいを楽しむ作品群

直径1 m以下の米を醸すその技術も含めて楽しむ日本酒

1%以下に磨き上げた時にだけ見える米の個性を表現



高精白×熟成への挑戦「涅槃」
20%以下の高精白日本酒の熟成に挑む作品群
雑味を排した高精白の酒質だからこその美しい熟成
熟成の起点である収穫年の個性と経年変化を楽しむ日本酒




高精白×テロワール「SAKERISE」

庄内酸にこだわり、この地が生む最高峰を目指す作品群

庄内の風土に着想を得た「光」を基に酒質・デザインを開発

「稲作指標」の導入など庄内の田園風景を守取り組みを推進



<参考>田園風景を守る取り組み

・稲作指標

「稲作指標」は商品1本あたりを醸造するのに必要な田んぼの面積で、その商品の購入によって保存された田んぼの広さを表す。耕作放棄地が拡大する今、日本酒を通した田園風景保全のための本指標を開発。



・閃光:ブロックチェーンによる証明

ブロックチェーンプラットフォーム「Tr a c i f i e d」を活用し、いつ、どこで、誰との関わりの中で「閃光」が生み出されたかを記録 。米の栽培から日本酒の醸造ま で、地域との関係性も含めてお客さまに届ける 。



▼輸出&インバウンド

ーー 成長する海外市場、新型コロナウイルスの規制緩和に伴うインバウンドの増加を的確に捉え、拡大市場において会社成長の原動力を得る。

・成長する海外市場にアプローチするため海外営業の基盤を強化。現在、約25%である海外比率を50%まで押し上げる方針。移動制限の緩和とともに現地へのアプローチに加えて、インバウンドへの国内接点を強化し海外でのプレセンスを高める。



▼総合酒類戦略

ーー 姉妹蔵「奥羽自慢」での果実酒事業に加え、2 0 2 1年「月光川蒸留所」を設立し、ウィスキー事業を開始。メイドインジャパンの酒類を世界へ届ける。

・2021年に「月光川蒸留所株式会社」を新しく設立し、急速に拡大するジャパニーズウィスキー市場に参入。姉妹蔵・奥羽自慢が手掛ける果実酒「HOCCA」とともに メイドインジャパンのお酒を世界に届けるグループを目指す。



◆月光川蒸留所の設立とウィスキー事業の展開

▼高い市場ポテンシャル

・国内のウイスキー消費量及び国産ウイスキーの輸出金額はここ10年ほどで大きく伸び、ウイスキー製造事業者にとっては追い風の状況。楯の川酒造だからこそ世界の人々に届けることができる上品で繊細なジャパニーズウィスキーの味わいを届けるべく、参入を決意。



▼コンセプト

「庄内の水と空気が生きるウィスキー」

山と川と海に囲まれた遊佐の美しい風土と時を職人の手仕事によって一樽一樽に閉 じ込める.洗練されたきめ細かさと透明感を大切にした美しいウィスキーを求めて



▼目指す味わい

~王道を突き詰めたきめ細かくエレガントな味わい~

・奇をてらわず、あくまで王道で勝負する

・柔らかく透明感のある水を活かす

・楯野川に通じるピュアな透明感のある味わい


▼日本酒の感性をウィスキー造りへ

~楯の川酒造製造部で経験を積んだ2名がウィスキー製造へ~



▼豪華な外部パートナー



▼3.5億円の資金調達
・10月には3 . 5億円の資金調達も実施。各種メディアにも取り上げていただき順調にプロジェクトの立ち上げが進行中。



◆姉妹蔵ある奥羽自慢

▼鶴岡の風土で醸す、日本酒とワイン

・奥羽自慢について

1 7 2 4年(享保9年)創業。山形県鶴岡市に醸造所を構え、日本酒「吾有事」とワイン「H OCC A」の両方を、30代以下を中心としたメンバーで醸しています。ワインの感性を日本酒に。日本酒の感性をワインに。クラシカルながらも遊び心があるお酒を作るべく日々取り組んでいます。2 0 1 2年に楯の川酒造6代目蔵元佐藤淳平が事業 を継承、若手中心の現在の体制に。



・奥羽自慢醸造責任者 阿部龍弥

楯の川酒造での8年間の醸造経験を経て、26歳の若さにて奥羽自慢の醸造責任者に抜擢。柔軟な発想と酒造りへの熱い想いで心を動かす味を日々追求している。



▼吾有事(22BY)



・「究極のフレッシュ」を目指す酒質設計

吾有事の特徴である「酸」「ミネラル」「ビター」の全てを生かした「フレッシュさ」の再現に挑む。

・飲み手に考えていただく矛盾を孕んだ造り

舌先・喉奥ではフレッシュで元気があるけど、儚く切れていくという、矛盾を造りだし飲み手に考えていただく造りを目指す。

・常に変化を求め、探求していく日本酒

味わいの設計から商品の企画、販売方法まで、今期も試行錯誤を繰り返し、変化しながら前に進んでいく。



▼HOCCA(22BY)



・日本酒の感性を果実酒に落とし込む

味わいの綺麗さを重視する日本酒における造りの感性をワイン醸造にも落とし込み、奥羽自慢らしい果実種を造る。

・ピュアでクリアでチャーミング味わい

阿部龍弥が造る吾有事にも通ずる“ピュアさ”“透明さ”に加えて、HOCCAの世界観を反映したチャーミングな酸を味わいの軸に。

・ネゴシアンとしてぶどう農家の方々と共に

23BYより、ぶどう農家の方と二人三脚でワインを造るネゴシアンとしてのワイン醸造を開始。現在パートナー農家の方を募集中。



▼積極的なイベント出店



・まだまだ新しいブランドであるたため、認知向上に向けてイベント出店も実施中!

ぜひ遊びにきてください!

※ 各種SNSで情報発信中




◆テイスティング(本日のお酒)

▼楯野川 急流(原料米:出羽燦々33%精米)

・楯野川が得意とする高精白日本酒のエントリーモデルに位置する一本。穏やかながら完熟した果実のような豊かな香りが広がり、甘味、旨味、酸味、辛味、あらゆる味わいの要素がきめ細やかに膨らんで綺麗な余韻を残す。

楯野川 純米大吟醸 急流 720ml



▼楯野川 主流(原料米:山田錦50%精米)

・楯野川の中心的なアイテムになるようにという願いを込めて、「主流」と名づけられた商品。味わい、飲みごたえ、飲みやすさの全てを兼ね備えた、日本酒ビギナーに も通にも喜ばれる1本。

楯野川 純米大吟醸 主流 720ml



▼楯野川 Shiled惣兵衛早生(原料米:惣兵衛早生50%精米)

・“幻の酒米”と呼ばれる「亀の尾」の親にあたる庄内地方の在来品種で、楯の川酒造が3年かけて復活。上品で落ち着いた香りと、奥行きを感じるしなやかな酸味。庄内の稲作の歴史を感じながらぜひお楽しみください。

Shield 惣兵衛早生 純米大吟醸 720ml




喉が渇きましたね。乾杯!



◆お知らせ

▼楯の川酒造 蔵見学始動!



▼無我ブラウン・干支ボトル販売中



◆最後はみんなで集合写真

・毎回、恒例の集合写真です。はい、「たてのかわ」! パチ(笑顔)



◆まとめ

兜LIVE!に5年連続登場していただいている楯野川。今後の展開と成長戦略で、「高精白 x 〇〇」、「輸出&インバウンド」、「総合酒類戦略」という3つのカードが印象的でした。特に、「総合酒類戦略」では、ついにウィスキー事業を開始するとのこと。早く飲んでみたいですね~

淳平社長、ありがとうございました!



<KABUTO ONE アトリウムにある渋沢栄一が生涯大切にした佐渡の赤石にて、ウィスキー事業の成功を祈願!>



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