2020.11.24

【かぶかやヒューマン】 #10 「神谷設備工業株式会社 代表取締役 神谷晴江さん」

皆さん、水上スキーというスポーツをご存知でしょうか?モーターボートに引っ張られながら水面を滑る競技で、東京(都心)では目にすることが少ないスポーツです。


茅場町にある「神谷設備工業株式会社」代表取締役の神谷晴江さんは、なんとその水上スキーの金メダリスト!社長で金メダリストって、一体どんな人なのでしょう?直撃してきました!


◆創業86年、老舗企業の4代目社長

茅場町にある「珈琲家」にてお話を伺いました。


――神谷さん、はじめまして!今日はありがとうございます。
いえいえ、こちらこそ。よろしくお願いします!



――神谷さんは、社長の他にも肩書きがたくさんあると聞いたのですが……。
茅場町一丁目町会の理事と青年部長、日本橋法人会茅場町一丁目支部副支部長、明徳稲荷神社の責任役員を務めています。生まれも育ちもずっと茅場町です。


――地域への密着度がスゴそうです……!神谷設備工業株式会社はどのような会社ですか?

私の祖父が昭和8年に創業した水道設備会社です。各家庭にトイレやお風呂が普及した東京オリンピックの頃に発展して、好景気の中では企業の社宅や研修所、銀行の支店の営繕などを多く手掛けていました。バブルがはじけてからは、この地域のビルや店舗の設備修理をしています。

2代目は叔父、3代目は私の父、そして私が4代目です。今年で創業86年なので、100年までは行きたいですね!



――どのような経緯で事業を継がれたのですか?
実は、父は子どもたちに後を継がせるつもりはなかったそうなんです。うちは7人兄弟で私は6番目なんですけれど、私が水上スキーをやっていたり、地域のお祭りを通して地元と密接に繋がっていたり、色々なタイミングが重なったりしたことで、継ぐことになったんです。


――茅場町一丁目町会の理事と青年部長、神社の役員もされているんですね。
父が生前に色んな役回りをしていたので、私はその後任という形です。特に青年部長としての仕事が多く、お祭りのときは青年部を取りまとめています。今まで日本橋界隈で女性の青年部長はいないので、身の引き締まる思いです。



日常的な活動で言うと、街のための力仕事が多いですね。街の清潔はとっても大事ですから、定期的な清掃活動やネズミ駆除に力を入れています。


兜町さんや八丁堀さん、八重洲さん、日本橋地域さんなど、他町会との関係構築も欠かせません。「何かあったときには皆で力を合わせていこう!」という良い雰囲気なので、日頃から顔を出したり話を聞いたりすることを大事にしています。


なにより、町内の皆さんに愛されることが大事ですから、常に自分から挨拶するように心掛けています。皆さんの方が良いアイデアを持っているので、気軽に色々な話を聞かせていただけたらと思っています。



◆この街の影響で、学生時代は海外留学も

――パワフルに活動されているんですね!幼少期からこの街を見ているとなると、街の変化をひしひしと感じていますよね。

それはもう!東京証券取引所に『立会場(※)』があったころは、外資系金融企業のサラリーマンや外国人証券マンが街中に溢れていました。

(※)取引所で売買取引を行う場所。たちあいば。


皆さんパワフルだし、ギラギラしているので、活気があると同時に治安も悪かったんですよ(笑)。とにかくワサワサしていて、子どもながらに「怖い街だな~」って思っていました。1999年に立会場が無くなってからは、だいぶ静かになっちゃいましたね。


――刺激的な環境で育ったのですね。
道で困っている外国人とコミュニケーションを取ることも多かったのですが、もっと英語を話せるようになりたくて、高校時代に1年間アメリカに留学しました。この街は私の人生に大きく影響を与えたと思います。


アメリカ留学時代の神谷さん


――神谷さんが感じるこの街の魅力って、どんなところでしょう。

それはもう、江戸時代から続く街であり、近代では日本の金融街と呼ばれた歴史ですよね。作家の谷崎潤一郎さんはこの辺りに住んでいたので、著書「幼少時代」に茅場町がよく登場するんですよ。自分の生まれ育った街が小説に出てくるのって、嬉しいですよね。

一度落ち着いてしまったこの街ですが、最近は「世界でクールな街40」に選出されるくらい盛り上がってきています(※)。これは誇りに思いますね。

(※)2020年10月のTimeOutインターナショナル版にて、兜町が「The 40 Coolest Neighborhood in the World」のno.34として紹介されました。


――神谷さんのお気に入りスポットはどこですか?

『イマノフルーツファクトリー』と『焼肉あかぎ』には出没します。あと、兜町の坂本町公園も好きですね。明治22年に日本初の公共公園として誕生したのですが、私は地域としてここの改修工事にも関わっているんです。既存の樹木を活かしながら、開放感のある芝生広場を設けて、周辺住人、小学校の子どもたちやサラリーマンの憩いの場所に生まれ変わります。完成は令和3年の夏予定なので、ご期待ください。


珈琲家さんの特製ホットケーキ!

◆東洋人初の金メダル!プロを目指したことも

――神谷さんと言えば、水上スキーです!22カ国200名近くの選手が参加した「2018年水上スキー世界シニア選手権大会 ジャンプ種目」で、東洋人初の金メダルを獲得されたんですよね!

はい。大学で部活として20歳から始めたので、今年で18年目になります。それまではバスケットボール、ソフトボール、弓道をやっていたのですが、どのチームスポーツも勝ったことが無くて。「どうせやるなら勝ちたい」と、水上スキーを選んだんです。



大学卒業後は3年ほどアメリカに修行に行って、その間はプロを目指していました。とは言え、観光ビザで一年の半分しか滞在出来ないので、半年は日本でバイトする生活をしていました。



――ハードですね。
バイトは築地のすし屋でお世話になっていたのですが、そこの社長が「お前、アメリカで結婚して水上スキーで食っていけるならいいけれど、そうじゃないならもう辞めろ!」って説教するんですよ(笑)。親だってそこまで言わないのに……。確かに水上スキーは賞金を稼げなかったですし、アメリカでインストラクターをやるのも私のイメージと違うなと。最後はその社長とうちの両親と4者面談までして(笑)、結局プロは諦めたんです。



◆仕事と水上スキー、どちらも私に必要なもの

――とは言え、現在も世界的に活躍されていて素晴らしいです。
平日は週2日ジムでトレーニングして、週末は江戸川で練習しています。東京パワーボードセンター(通称TPC)でオーナーも日本代表として活躍されています。国内大会と世界大会が毎年8月から10月にあるので、その時期は海外にも10日間ほど行っていますね。



――社長業と競技の両立は、大変ではありませんか?
うーん、そもそも両立出来ていると思っていないのですが、結果として出来ていると人から思ってもらえてたら嬉しいです。私の中では両方やるかやらないかですね。どっちもあることで、自分の中でバランスが取れているのだと思います。

仕事は、皆で協力して一つのことをやり遂げるチームワーク。水上スキーは、自分の努力で成績を出す個人競技です。この2つは全く別物なので、どちらも私にとって大切なんですよね。


――両方するために心掛けていることはありますか?
皆さんに理解してもらえるよう努めています。競技って、周りの人に盛り上げてもらえないと独りよがりで終わってしまうんですよね。自分からアピールしたり、マイナスに見えるポイントもプラスに持っていくようにしたりして、応援してもらえる空気をつくるようにしています。



例えば、大会間近は禁酒して食事にも気を付けているのですが、仕事の飲み会は予定に入ってきます。そこで「ごめんなさい、今大会間近でお酒飲めなくて……」と心置きなく言えるように、シーズンオフの期間はものすごく参加しておいたり(笑)。

あとは「今日はこのあとジムなんです」とか、自分からどんどん情報開示するようにしていますね。



◆皆が誇れる街にするために、率先して努力を

――この街には神谷さんのサポーターが多いと思います!今後の目標やビジョンはありますか?

私はこんな社長ですが(笑)、もっと人に喜ばれる仕事をして、お客さんから愛される会社に育てて、5代目6代目に繋げていきたいですね。水道設備関連のことって分かりにくいので、お客さんが分かりやすいような情報提供をしていきたいです。

街のことでは、青年部の皆や地域の企業さんと一丸となって、最高の街をつくりあげていきたいですね。メインイベントである山王祭は2年に1回ですが、お祭りがない年にもイベントをしたいです。50年60年先の歴史を、皆でつくって行きたいですね。



あとは……水上スキーでもう1度世界チャンピオンになりたいです!でも、2020年は試合が1つもなかったので身体をつくり込まないと……。


――そのためには、周りの皆さんの応援が必要ですね!最後に、今後のこの街への想いを聞かせてください。

KABUTO ONEなどの新しい施設も建設中ですが、いくら建物があっても人が居ないと意味がありません。銀座のように、便利なモノと元気な人の両方が集まる街になって欲しいですね。

私がそうだったように、街は人にものすごく影響を与えます。今度は、この街で働いている人々がこの街の歴史や賑わいから影響を受けて、次の歴史の一部になるような小さなアクションを気軽に起こしていってもらえたら嬉しいですね!この街で働いていることを誇れるように、まずは住人である私たちが頑張りたいと思います!


◆取材を終えて

神谷さんにお話をうかがいました。

いかがでしたか?予想通りのパワフルさはもちろん、真っすぐ目を見て丁寧にお話しして下さる温かい面もあり、とっても魅力的な方でした。神谷さんが再び世界チャンピオンになれるよう、街をあげて応援していきましょう♪

神谷さん、お忙しい中ありがとうございました!


茅場町一丁目町会のお祭りの手ぬぐいと一緒に。


▼インタビューをした場所
珈琲家
住所:東京都中央区日本橋茅場町1-6-2 桂昇ビル B1F


(ライター:安藤小百合


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