2021.12.07
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
大人気イベント『家計簿の夕べ』が今年も2021年11月17日(火)に開催されました。本イベントは「夢をかなえ、豊かな暮らし、安心できる家計を実現する道具として家計簿をうまく活用して貰う」ことを目的に毎年開催しているイベント。4回目となる今年は2021年8月にオープンした兜町・茅場町の新しいランドマーク『KABUTO ONE』にて行われました。
イベント前半は、金融広報中央委員会事務局長・渡邉昌一さんによる基調講演が行われ、後半は家計簿普及促進委員会の皆さんときんゆう女子。コミュニティメンバーによる「FIREと火の車の間、家計管理にどう心を燃やしますか?」と題したパネルディスカッションが行われました。当日の様子をレポートしていきます!
まずは家計簿普及促進委員会共同代表、ときわ総合サービスの清水紀男さんの挨拶からスタート。
紙ベースの家計簿サービスを展開する、ときわ総合サービスでは「紙の家計簿はスマホに取って代わられて大変でしょう?」とよく質問されるそうです。それについて清水さんは「豊かで安心できる暮らしを実現するツールとして家計簿を有効に使って欲しいということが一番の願いであり、その手段が紙かアプリかはどちらでも良いと考えています」とおっしゃいます。
「社歴もビジネスモデルも異なる6社が集まってスタートした『家計簿普及促進委員会』と、イベント『家計簿の夕べ』はライバルというよりも、むしろ同志として家計簿利用者の生活向上の役に立ちたいという理念を再確認する貴重な場にもなっている」と、開会の挨拶を締め括りました。
清水さんのお話を聞き、筆者もこの機会に家計簿に向き合い現状を把握し、生活の向上に繋げていけたら良いなと思いました。
次に、日本銀行情報サービス局長 兼 金融広報中央委員会事務局長・渡邉昌一さんによる「金融広報中央委員会の取り組みについて」の講演がありました。
『金融広報中央委員会』は、都道府県金融広報委員会、政府、日本銀行、地方公共団体、民間団体等と協力し、暮らしに身近な金融に関する幅広い広報活動を行っている組織です。その変遷を辿っていきましょう。
「貯蓄で安定」「輸出で発展」というスローガンを掲げ、日本銀行が旗を振っていた昭和の時代。その貯蓄奨励運動を推進していくための団体として、初代会長・渋沢敬三(渋沢栄一の孫)を中心に1952(昭和27)年に組織されたのが『貯蓄増強中央委員会』でした。
その後、時代のニーズに合わせていく形で1988(昭和63)年に『貯蓄広報中央委員会』へと名称を変更。2001(平成13)年には現在の『金融広報中央委員会』に名称を改めました。
2004(平成16)年には、愛称を『マネー情報 知るぽると』とし活動を展開。2007(平成19)年には、その活動をより身近なものとして感じてもらうため、愛称をシンプルに『知るぽると』としました。
現在『知るぽると』では「金融経済情報の提供」と「金融経済学習の支援」を軸に、教育現場でのイベントの開催、教材や広報誌、無料で受講できるeラーニングの実施など、その活動は多岐に渡ります。
金融情報と聞くと「なんだか自分には難しいかも」と少し構えてしまう人もいるかもしれません。しかし『知るぽると』のホームページ、SNSを検索して覗いてみると、「暮らし」「お金」「老後」「家庭・子ども」、「資産運用」など自身に必要な情報にアクセスしやすく読みやすい構成になっていて、金融が暮らしに身近なものとして感じられます。こういったサービスが無料で受けられるのはすごいことですね! 金融情報を難しく捉えず家計運営のヒントとして活用して欲しいという想いが伝わってきました。暮らしについて素朴な疑問、各種質問も受け付けており「気軽に相談して欲しい」とのことです。
さらに、金融リテラシー向上のための広報誌『くらし塾 きんゆう塾』という雑誌も季刊発行(1、4、7、10月の初旬発行)しています。雑誌は暮らしに役立つ実践的な情報を中心に、「江戸時代における家計管理に対する考え」といった読み応えのあるコラムも満載で読み物としても充分楽しめる内容となっています。江戸庶民の金銭感覚や商人の計算能力の高さなどを知れるなど、とても興味深い雑誌です。
渡邊さんは「広報誌をはじめ、生活に役立つさまざまな情報を無料で提供しています。お時間がある時にぜひ当ホームページにアクセスしてくださいね!」と基調講演を締めくくりました。
*暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト『知るぽると』
*eラーニング講座「マネビタ ~人生を豊かにするお金の知恵~」
後半は、「FIREと火の車の間、家計管理にどう心を燃やしますか?」と題し、家計管理を継続している家計簿のスペシャリスト6名によるトークセッションが行われました。
コロナに負けない家計の管理術をテーマに、すでに家計簿をつけている人には共感を、苦手だけどチャレンジしたい方には後押しとなるようなお話しを届ける本セッション。あわせて家計簿普及促進委員会の6社が、きんゆう女子。とコミュニティメンバーからの質問に答えていくというトークディスカッションも行われました。
まず初めに、ご登壇されたパネリストの方々6名をご紹介していきます。
一人目は累計950万ダウンロードを誇り、オンライン家計簿サービス「Zaim」より、綿島琴美(わたじま ことみ)さん。キャッシュレス派も現金派も使いやすい機能が充実している家計簿アプリ「Zaim」は、「毎日のお金も、一生のお金も、あなたらしく改善」というコンセプトのもとユーザーに寄り添ったサービスを提供されています。
*Zaim
二人目は「スマートアイデア」の代表取締役・江尻尚平(えじり しょうへい)さん。2秒でつけることができる簡単家計簿アプリ「おカネレコ」および家族向け家計簿「おカネレコプラス」を運営し、FPオンライン相談サービス「マネシル」などFintech分野に注力した事業も展開しています。
三人目は1953年版の創刊から2022年版で70冊目、初心者からベテランまで幅広い層から支持される、シンプルで使いやすい家計簿「明るい暮らしの家計簿」を発行している「ときわ総合サービス」の営業部部長代理・二宮裕子(にのみやゆうこ)さん。
四人目は家計簿を世に広め、家計運営を推奨した家計簿の元祖「婦人之友社」より岩井純一(いわいじゅんいち)さん。家計簿の考案者・羽仁もと子さんによる創業から2021年現在で118年という長い歴史を誇る会社です。2020年には、新たにクラウド版家計簿「kakei+」をリリース。多様化するライフスタイルに合わせ多くの家庭の家計を応援している会社です。
五人目は、シンプルなデザインで楽々お金の管理ができる資産管理サービス「Moneytree」のビジネスディベロップメントディレクター・山口賢造(やまぐち けんぞう)さん。明細を学習して自動的に支出をカテゴリ別に振り分ける最新のAI技術の導入など、家計簿の新しい形を提案しています。
六人目は、さまざまな銀行、ECサイト、クレジットカードなど金融サービスと連携してお金の流れを見ていくことのできる自動家計簿アプリ「マネーフォワード ME」を運営する「マネーフォワード」の瀧俊雄(たき としお)さん。キャッシュレスの「手触り感」をいかに普通のこととして伝えていくか、そのような事もテーマにされているとのことです。
登壇企業6社の紹介に続きいよいよパネルディスカッションがスタート。メインテーマのひとつ目は「家計簿のプロ達は日頃どのような家計管理をされているのか?」という誰もが気になっている事についてです。
●「ときわ総合サービス」二宮さん
自身の結婚を機につけ始めた家計簿が習慣化し、現在に至ります。手書きがメインですが、レシートをそのまま貼り付けたり、あまり手間をかけないようにしていました。「歯磨きをする」「顔を洗う」といった日常の動作と同じような感覚で生活に組み込むことで習慣化していきました。
●「Moneytree」山口さん
IT業界のバックグラウンドを生かして、ガジェットや自動化のツール等をうまく活用して管理しています。お金の使い道が自動的に記録されることを前提に考えているので、なるべく何にお金を使ったかが明細で分かるキャッシュレスやクレジットカードなどを利用するようにしています。
●「Zaim」綿島さん
生活基盤が他者と共有される結婚を機に、収入・支出をきちんと管理する必要があると感じ家計簿をつけ始めました。当初はExcelやパソコンの有料家計簿ソフトなどを使用していましたが、どうしても使い辛く感じていました。そんな折、スマートフォンで手軽に入力できるアプリが登場したことで、楽に記録できるようになりました。家計簿に対するストレスは無くなり、パートナーと一緒に手軽に振り返られることはむしろ楽しみのひとつになりました。形式にこだわらず決して無理せず、楽しんで続けられることが大切だと思います。
次に、今回のパネルディスカッションのメインテーマのひとつ「FIREと火の車の間、家計管理にどう心を燃やしますか?」についてお話を伺っていきます。その前に、「FIREとは何か?」あらためて説明していただきました。
近年、ビジネスパーソンの間で注目されている「FIRE」とは「Financial Independence, Retire Early」の事で、経済的な自立(Financial Independence)と早期リタイア(Retire Early)の頭文字を並べた言葉で構成されています。
若いうちにリタイアして仕事を辞めた後も、資産運用によって得られる不労所得により生活費などを賄っていくことを意味しています。
このようなライフスタイルは数年前から欧米各国を中心に広がっていて、日本においても注目が集まってきています。
会場でのアンケートでも35%の方々が「FIREに興味がある」と回答されていました。
一見するととても夢のあるライフスタイルである「FIRE」。実際、そこを目標にしている若い人も増えていると聞きます。そこで、パネラーの方々に「FIRE」について家計管理の観点からどのような見解をお持ちなのか。また、ご自身が「FIRE」するならばどうするのかといった内容をお聞きしました。
●「マネーフォワード」瀧さん
夢が溢れているようにみえてディストピア感もある言葉だなと感じています。最近知りましたが、厳密には4種類のFIREがあるそうです。ファットFIRE、リーンFIRE、バリスタFIRE、コーストFIREという4種類です。
私たちがイメージしている一般的なFIRE(不労所得のみで生活)がファットFIREで、資金面も含め難易度が高く実現はなかなか大変です。次にリーンFIREは小さく資産運用しつつ、生活の固定費などを減らし生活のレベルを下げその中でやり繰りしていくという、少し現実路線のFIREになります。三つ目はアメリカらしい表現のバリスタFIRE。これはコーヒー屋、つまり「スターバックスに勤めろ」という事のようです。よい会社に席を置き福利厚生や健康保険をしっかり受けた上で、裏側でリーンFIREを目指していくというライフスタイルを指しています。ある意味、一番現実的でいいとこ取りなFIREであるのかもしれません。日本における正社員神話に近いニュアンスを感じます。
最後にコーストFIREについて。定義は少し曖昧ですが、バリスタFIREをしつつリーンFIREをきっちり達成していくというライフスタイルを言うそうです。いずれにしても重要なのは「FIREの後どうするのか?」だと思います。リタイア後も社会や会社と関わりながら生きていく事は大切なことであると考えています。
●「Moneytree」山口さん
FIREそのものを否定するつもりはないですが、達成できた後も仕事は続けていくほうが良いのではないでしょうか。そのためには、自分が好きだと思える仕事を見つけることも大切だと考えます。先に挙がったバリスタFIREのようなライフプランを立てて行動していくのが理想の形なのかもしれません。
●「ときわ総合サービス」二宮さん
私自身は最近になって、そのようなライフスタイルについて知りました。多様な生き方、選択肢が増える中、FIREを目指す人が増えるのも自然な事だと感じます。理想を言えば、各々の生き方に沿った上で家計管理をしながらFIREの状態へと近づけつつ働けると、心の安定も同時に得られるのではないかと思います。
●「スマートアイデア」江尻さん
経済誌等メディアでも度々取り上げられ、大学生を中心に若い層にも広がりをみせていて、私自身「FIREするにはどうしたらよいですか?」と質問されることも増えました。FIREには資産運用が欠かせないですし、当然ですが相応の資金が必要となります。家計簿の中で支出をコントロールし貯蓄をきちんとしていくこともFIREへの一歩と言えるかもしれません。
個人的にはFIREは考えていません。リタイアした後の人生をどうしていくのか。FIREを目指す事と同じくらい、その後の生き方を考えていく事も大切だと思います。
●「婦人之友社」岩井さん
私自身はまだまだ働きたいという気持ちが強いので早期リタイアについては考えておりません。また、多くの人にとっても資産運用、FIREというのは敷居が高いのではないかと思います。
ただ、自分自身の引退後の事を考えた際、資産運用は必須であると考えています。それは、創業者・羽仁もと子さんの「各家庭が社会のために使う予算を組むことで、社会全体が豊かになる」という思想に由来します。リタイア後も社会と関わっていくためにはある程度資産も必要になります。
華麗で派手なイメージが先行しがちなFIRE。パネラーの方々それぞれイメージは異なっていましたが、共通していたのは、自分自身の仕事やライフスタイルに照らし合わせ冷静にFIREを捉えることが大切なのだということでした。
私自身もお小遣い帳アプリで毎日の支出をつけていたこともあり、非常に参考になるお話が多いと感じました。家計簿を活用し収支の管理をしていくことは、より豊かな暮らしを実現するための道しるべになります。単に節約のためというツールを越え、ライフプランを見直すために活用するのに家計簿は最適だと思いました。
登壇者の方による、これから家計簿をつけてみようと思う方へのアドバイスとして印象に残ったのが、「紙ベースにせよアプリにせよ、とにかく継続していくことが大切。とは言え、あまり深く考えず、ざっくりと大雑把に記録していくことでまったく問題ありません。楽しんで続けていくことで家計管理を習慣化させることが大事です」というもの。家計管理と聞くと、キッチリしなきゃいけないという気持ちが先に立ってしまいがち。ざっくりで良いということを聞き少し気が楽になりました。
さまざまな視点が飛び交った家計簿の夕べ。師走も迫り、一年を振り返る時期になってきています。来年もより豊かに生きていく上で、いま一度家計管理と向き合うよい機会となりました。
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