2022.07.19
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
4月23日(土) 、ハイブリッド形式(現地開催&オンライン)で『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。
江戸時代には日枝神社の門前町として栄え、酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。
東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。
平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広目、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。
今回は、山形県山形市で「秀鳳」を醸す秀鳳酒造場の蔵元武田秀和さんをお迎えしての開催でした。ハイブリット開催でしたので、リアルでも楽しんでもらえたし、函館や山口の方々にもオンラインでご参加いただきました。ありがとうございます。
<お話の見出し>
◆山形讃香
◆会社概要
◆会社方針
◆個人経歴
◆商品紹介
◆近年の主な設備投資
◆海外展開
◆本日のお酒のご紹介
◆Q&A
・まず初めに、今回、一番大事な話をしたい。「山形讃香」についてである。
・「山形讃香」とは、山形県酒造組合が主導している共通ブランドであるが、山形県が日本酒分野で初めて「県」単位としてGI制度の指定を受けた。そのGI山形のフラッグシップになるお酒が「山形讃香」である。
・山形県酒造組合(仲野益美会長)が県統一ブランドの純米大吟醸酒「山形讃香」を21年振りに全面リニューアルし発表会が3月11日、山形市のホテルメトロポリタン山形で開かれた。
・新山形讃香は選抜された酒米を使い、選抜された酒蔵が醸造。香味のバランスや後味のすっきり感に秀で、甘すぎず切れの良い、世界に誇れる酒になった。4月から酒販店や通販サイトで販売している。
・酒米は本県最高峰の大吟醸用「雪女神」のうち、本年度優良酒米コンテストで上位に入った3名が作った米を使用。精米歩合35%まで磨いた。
・醸造は、昨年の雪女神純米大吟醸酒求評会で1位だった米鶴酒造と当社が担い、県工業技術センターから助言を受け厳格な基準に沿って醸し、最高級酒に仕上げた。2蔵の酒はブレンドせず、瓶にはそれぞれ製造元を記す。
・ラベルデザインは世界的工業デザイナー奥山清行さん(山形市出身)が担当。フェラーリのデザインで有名。青色を基調とし、水の流れやみずみずしさを表現した。
・四合瓶を7千円で、本年度は約3千本限定で売り出す。当社のお酒は、通販サイト「山形酒通」で検索して購入できる。
・地理的表示(GI) 「山形」の認知度も高めて、輸出も目指す。
・山形讃香は県産酒の品質向上を目指し、酒米「山田錦」を使い1985年(昭和60)年にデビュー。2001年に県産酒造好適米「出羽燦々」使用に変更した。近年は全国的に日本酒消費量が減少しているため、同組合は酒蔵と農家の技術力、結束力の粋を集めたフラッグシップ酒を一新。毎年、酒米コンテスト上位の「雪女神」を使って雪女神の純米大吟醸の求評会上位の蔵が醸造することにし、魅力力向上を狙った。酒米農家と醸造酒蔵の組み合わせが毎年変わる面白さもある。
・発表会では、仲野会長が「光り輝くよう魅力を磨く。他県ではまねできない酒で、国内外に売り込む」と挨拶。醸造した武田社長、梅津社長は「良い酒を造る重圧はあったが非常に名誉。蔵が成長する機会になった」と述べた。酒米生産の志賀さんは「酒米作り、酒造りを極める企画に携われうれしい。腕を磨きより良いコメを作る」と語った。
◆会社概要
・1890年(明治23年)、山形県山形市にて清酒の製造を開始した。当時、酒蔵は今よりもたくさんあったが、現在、山形市では3社、山形県では50社弱が清酒製造を営んでいる。
・戦中戦後のお米のない時期は、米を酒だけに使うのはもったいないということで、いくつの酒蔵が休止または合併したりしており、当社もその期間は清酒の製造を止めていた。昭和42年に酒造業を再開して現在に至っている。
・蔵は、山形駅から自動車で15分くらいの住宅が密集している中にあり、場所が狭い。松がたっている建物が製造場(精米所も含んでいる)。右のほうが瓶詰め工場。
道幅が5mしかないので、大型トラックが入って来てもUターンができなくてバックで戻らないといけない。
・製造数量は年間1000石前後。ここ数年はコロナの影響で1割程度減らしている。
◆会社方針
・お酒としては、山形らしいスッキリとしてキレのある酒をベースに清酒の味の多様性を求める
▼使用する米の品種は十数種類
― 今季に新しく使用したお米は低グルテリン米の「春陽」(お米の中でも酵母や麹が消化しにくいような性質のたんぱく質を多く含み、白ワインに似たようなお酒になる)
― 販売店限定商品として、その地域の食用米も使用(大阪の吹田市、埼玉県志木市)。シンガポールのインポーターが志木市出身でシンガポールでも販売したとのこと。
― 酒造好適米は山形県(雪女神、その親の出羽の里<心拍の大きいお米>、その親の出羽燦々<山形県の酒米開発の元祖>)を中心に、山形県(美山錦)、兵庫県(山田錦)、岡山県(雄町)、広島県(八反、こいおまち)産のお米を使用
▼酸度は1.3~3.0
― 酸度3のお酒は麹歩合66%のお酒でそのうち白麹が半分
― 今年はリンゴ酸多生成酵母と白麹を使用のお酒を夏酒として発売予定
▼日本酒度 -30~+20のお酒を製造
― -30のお酒と+20のお酒は共に醸造アルコール使用
― -30のお酒はリキュール用途、もしくは熟成すると甘さが良くなるので長期熟成酒としても検討
▼アルコール分 13度~18度
― アルコール分13度のお酒は麹歩合66%、酸味の強い独特なお酒
白麹使用の酒販店PB
― 春酒としてアルコール分14度、アルコールの低さを感じないように白麹使用のお酒を製造
▼麹歩合 17~66%の範囲
― 17は一般的に少し低いというところをベースに製造
▼精米歩合 22~80%
― 最近、精米歩合を高くすると、中国では「磨いている=高級」とダイレクトな印象
― 個人的には精米80が良かった。いろいろ試してみて、どの精米が良いかは個人の好みになる。
▼使用酵母はきょうかい1801号と山形酵母NF-KAを中心にM-310、601など
― 本日のお酒で純米大吟醸2種類は、きょうかい1801号と山形酵母NF-KAのブレンド、花見酒はNF-KA単独で造っている。
・東京工業大学で物理情報システム創造専攻に入り、2007年に博士後期課程を修了。
・同年、通信機器メーカーへ就職し、光通信用モジュールの研究開発に従事。東京勤務だったので、東京に馴染みはある(笑)
・2015年 実家の(有)秀鳳酒造場に就職し、専務取締役に就任して、現在に至る。
・特徴的な3種類を紹介したい。
―― 酸度が出やすい。ブラインドだと白ワインと間違えるのではないか。
―― 品種によって果肉が非常に赤い。日本酒度-30のお酒を使用し、糖類無添加を検討したが、糖類を追加しないと甘さが足りないと感じた。
―― 韓国より750本の注文があったが、生産は600本のみ(国内未発売)
・2016年以降の主な設備投資については、以下のとおり。
・色がついているものは補助金を利用させてもらった。前職の経験から、自ら申請書を作成した。補助率が最も低くても1/2だったので、大変助かった。
・今後は建屋を改造して使い勝手を良くするほか、冷蔵庫など貯蔵設備に力を入れたい。
・当社は、6年前より海外輸出を開始した。山形県の酒蔵では後発で、先行している蔵の中には20~30か国輸出している。
・2020年より国内市場が低迷したが、輸出数量と輸出国を増加したことで、販売高を下支えした。
・輸出先は、中国、台湾、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、タイなどアジアが中心であるが、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、スペイン、スイス、ドイツ、USAにも輸出している。
・日本酒の酒蔵の多くが頑張って生き残っているのは、輸出を含めて販売ルートを多様化したおかげである。現在、コンテナ不足で出荷時期が決まっていなかったり、ヨーロッパ情勢の不透明感もあり、輸出のタイミングが合わないときがあるものの、販路を広げて何があっても対応できるようにしていきたい。
・輸出数量は、現在、全出荷数量の15%程度であるが、将来的には半分まで増やすのが目標である。
1 秀鳳 純米大吟醸 雪女神 R2BY
2 秀鳳 純米大吟醸 超辛口 R3BY
3 秀鳳 特別純米 花見酒 ゆっくり R3BY
乾杯!
Q:山形で日本酒に合うおつまみは?
A:枝豆もそうだが、山形のおつまみメーカーが豆菓子を出している。また、山形といえば、でん六豆。
Q:製造期の人の体制は如何に?他の蔵で、採用面接で土日を休みにしてほしいとの要望があったと聴いた。
A:冬季は日曜日のみ休み。10月初から甑倒しが3月12日。その間、日曜日も出勤で振休を取ってもらうこともある。
Q:いろいろなタイプのお酒を試行していますが、どんな方に飲んでもらいたいか?
A:イメージとしては、年配の方は黙っていても飲んでくれる。いままで手の出なかった層に飲んでもらい、減少している日本酒人口を増やしたい。
Q:白麹を使うということは、新政の亜麻猫を意識しているか?
A:酒の会で白麹のお酒を飲んだが、亜麻猫は飲んだことがない。飲んだら意識してしまうかも(笑)
Q:輸出を伸ばすのにどんなことを意識しているか?
A:インポーターも手持ちでいっぱいいっぱいな感じだったが、後発メーカーは今までと異なるアイテムで勝負。当社の「辛口でありながら香りがある」という日本酒はプッシュし易かった。ワインなどに慣れている方には、受け入れやすいかったのではないか。一方で、輸出先からは、大吟醸など香りがあるけど甘味がないものは調和がとれていないという評価だった。
毎回、恒例の集合写真です。ハイブリッド形式でしたので、現地参加の方とオンライン参加の方、ご一緒に!!
*写真撮影の時のみマスクを外しております
・武田さんの生真面目な性格が伝わってくる丁寧なご説明でしたね。90分がアッという目でした。
<番外編:KABUTO ONE1階のKNAGで懇親会!>
*写真撮影の時のみマスクを外しております
*兜LIVE! 蔵元トークのイベント情報はこちら
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