2023.08.29
こんにちは!
兜LIVE!編集部です。
この連載【金庫巡り】では、この日本橋兜町・茅場町周辺にある古い金庫にフォーカスして、その歴史や魅力を発信していきます。第三回となる今回は、誰でも見られるように金庫が保存展示されている「三菱倉庫株式会社」を訪れました。
東京中央区を流れる日本橋川に架かる江戸橋のすぐ近くに本社を構える「三菱倉庫株式会社」。「有限責任東京倉庫会社」として1887年に創業し、1918年に「三菱倉庫株式会社」に商号を変更しました。倉庫事業を中心に、港湾運送・国際輸送・不動産と事業を展開しています。
1930年に竣工した「江戸橋倉庫ビル」*三菱倉庫株式会社様より提供
三菱倉庫の本社があるのは、1930年に竣工した「江戸橋倉庫ビル」の外観を一部保存して建設された「日本橋ダイヤビルディング」です。江戸橋倉庫ビルは、東京都選定歴史的建造物に指定されている建物で、屋上の塔屋やバルコニー付きの窓など、全体的に船のような形をしている点が大きな特徴です。
近づいてみるとエントランス周辺の外壁には、丸みを帯びた自然石が使われていることがわかります。重厚感があるだけでなく、美しさを感じる造りとなっており、東京都選定歴史的建造物だけではなく、近代化産業遺産にも指定されていることにも納得です。
今回取材した金庫は、そんな三菱倉庫の本社1階に保存展示されているものです。現在は金庫として使われているわけではなく、扉だけが残されています。1930年の江戸橋倉庫ビル竣工時に造られたもので、2014年にビルがリニューアルされるタイミングで一度取り外され、クリーニングをした後に設置されました。展示されているのは、実際に使われていたのと同じ場所だそう。
金庫についているハンドルやダイヤルなどは、自由に触ることができます。これほど大きな金庫を触る機会はなかなかありません。開けることはさすがにできませんが、触れてみることをおすすめします。
扉の裏手には、「ー倉庫建築の進化形ー江戸橋倉庫ビル」をテーマとした展示があり、ビルの模型や作業時に着用されていた法被など、江戸橋倉庫ビルに関する資料を見ることができます。その中には建設当時の写真や図面もあり、この資料が置かれている場所が金庫室の中だったこともわかります。なお、展示スペースとなっている金庫室前の空間は、もともとは営業部の事務所として使われていたよう。
金庫扉の逆側の展示スペースは「『日本橋 江戸橋』のうつりかわり」と題し、江戸橋周辺の変遷と合わせて、倉庫業の歴史や三菱倉庫が行ってきた事業内容などについての展示があります。手前には4つの模型が並んでおり、現在のビルの形になるまでに何度も変化してきたことが一目でわかります。
展開している事業のひとつである「トランクルーム」についての説明もここで見ることができます。三菱倉庫が江戸橋倉庫ビルでこの事業を開始したのは、1931年のこと。あまり知られていませんが、今となっては一般用語として使われている「トランクルーム」という言葉を使い始めたのは三菱倉庫でした。
ただ、近年一般的に使われている「トランクルーム」は、小さな倉庫や保管施設を貸し出す、いわゆる「場所貸し」に当たるものを指すことが多いのですが、三菱倉庫が始めたサービスは少し違っています。資料からも見て取れるように、三菱倉庫が始めた「トランクルーム」は、顧客の家具や衣類を預かって、自社で保管管理を行うサービスです。
現在でもそのサービスは、日本橋ダイヤビルディングの中で温湿度管理が難しいとされる美術品などの貴重品を預かる形で続けられています。また、三菱倉庫はトランクルームのサービスに加えて、一般的に銀行などで見られる金庫の貸し出しである「貸金庫」も事業の一部としています。今回は、その貸金庫に現役で使われている金庫扉も取材させてもらいました。扉の高さは2mほど、厚さは30cmほどと見た目からも頑丈さが伝わってきます。
第3回の金庫巡りでは、三菱倉庫の古い金庫扉の展示と、現在使われている金庫の両方を取材させてもらいました。貸金庫の方は一般開放はされていませんが、1階の展示スペースは誰でも気軽に訪れることができる場所となっています。5月には「まちかどピアノ」も設置され、さらに多くの人が足を運ぶようになりました。
旧江戸橋倉庫ビルの竣工と同時期の1930年ごろに製作された、イギリスの「John Broadwood & Sons社」製のピアノで、自由に弾くことができます。展示と一緒にこちらも楽しみましょう。
現在は水運の街として意識されることはほとんどない日本橋エリアですが、展示を見ながら三菱倉庫と街の歴史を振り返ってみる機会を作ってみてはいかがでしょうか。
*三菱倉庫
*トランクルームサービスのページはこちら
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