2022.05.12
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
2022年4月5日、日本橋茅場町3丁目に『京橋もと』など日本酒の名店を手がける酛グループの新店『茅場町食堂 History by moto』がオープン。店舗運営を行うモトインプレッションジャパン株式会社代表取締役社長兼COOの鈴木隆之さんに、お店のコンセプトやこだわり、茅場町という街に出店した経緯を伺いました。
モトインプレッションジャパン株式会社代表取締役社長兼COOの鈴木隆之さん
――鈴木さん、本日はどうぞよろしくお願いします。まずはお店のコンセプトを教えていただけないでしょうか?
『茅場町食堂 History by moto』は酛グループとして5店舗目のお店になるのですが、酛グループのお店全てで共通しているのが「日本酒×〇〇」というコンセプトです。新店ということもあり姉妹店、特に田町や京橋のお店とは全く違う形態にしたいと考え、揚げ物やお肉系料理を提供する日本酒バルにしました。
――『茅場町食堂 History by moto』という店名にも何か意味が込められているのでしょうか?
あえて「食堂」という名前をつけたのは、料理の枠を作りたくなかったからです。『茅場町食堂 History by moto』には、そば職人で新橋や田町など酛グループの他店舗でも活躍した店長の村澤弘江と、和食やイタリアン、フレンチと幅広いジャンルの経験を積んだ料理長の天野直生という2名の料理人が在籍しています。料理のジャンルを絞らず、2人がコラボレーションして生まれるさまざまな料理を楽しんでもらいたいと考え、その幅の広さを表すために「食堂」と名付けました。
店長の村澤弘江さん(左)と料理長の天野直生さん(右)
「History by moto」という言葉には、お店のある茅場町、新川エリアが日本酒の歴史にゆかりのある地であることに由来しています。新川は江戸時代、兵庫の灘や京都の伏見で作られた日本酒を、船で運んできて下ろす日本酒の揚げ場でした。この新川で下ろした日本酒が、江戸の街に広がったわけです。いまでもキンミヤ焼酎で知られる宮崎本店の東京支社や、ワンカップなどで知られる大関株式会社の東京支社がこのエリアにあることからもその名残が感じられます。
ちなみに我々のオフィスも新川にありましてその理由も、新川が日本酒を江戸に広めたルーツだからです。開業以前より茅場町で行われていた日本酒イベントにも参加させていただいておりまして「いつかこのエリアに出店したい」と考えていたので、今回は念願の開業です。この地で日本酒の伝統を受け継ぎながら、新たな歴史を紡いでいきたいと思い、この店名にしました。
サンドウィッチは右が「スカーレットたまごサンド」で左が「高原ゴールドからしマヨたまごサンド」
――ランチではサンドウィッチを販売していると聞きました。日本酒バルなのに意外だと感じましたが、何か理由があるのでしょうか?
茅場町エリアで働く女性の方々が、コンビニでおにぎりやサンドウィッチを買ってオフィスに戻られる姿をよく見まして。そういう方々に手作りのサンドウィッチと野菜たっぷりのスープ、小さなおかず付きのランチセットで、パワーをつけてもらいたいと考えたんです。お弁当販売のノウハウはあったので、普通に考えればランチでお弁当を販売する方が近道なのですが、あえて新しいことに挑戦してみました。
サンドウィッチも「味わいが違う2種類の卵を使って、たまごサンドの食べ比べをしたら面白そうですよね」という村澤のアイディアで2種類のたまごサンドを販売しています。このほかにもコロッケサンド、メンチカツサンド、ハムカツサンド、野菜ツナサンドなど10種類ほどのサンドウィッチを取り揃えています。
「日本橋コロッケ」にはブルドックソース担当者の方からアドバイスを頂きながら一緒にオリジナルブレンドを完成したオリジナルソースと、スモークサーモンソースがつく
――ディナーメニューについて、おすすめ料理があれば教えてください。
門前仲町にある姉妹店『コロッケと明太子』の手作りコロッケとメンチカツ、ハムカツです。昔ながらのお肉屋さんのコロッケを再現しており、芋の甘みや、ホクホク感を出せるよう蒸し方やつぶし具合、芋の選定にもこだわって、店舗で揚げたてを提供しています。
これらの揚げ物に添えるソースにも逸話があって。兜町にオフィスを構えるブルドックソースさんのお問い合わせフォームに、「コロッケとメンチカツ用のソースを一緒に考案いただけないでしょうか?」と連絡したんです。ダメ元でメールしていたのですが、30分後ぐらいに「面白いですね、ぜひ」とメールで返事があり、とても嬉しかったのを覚えています。すぐにコロッケとメンチカツを持参してテストキッチンに伺い、ソース開発のために試食をしてもらったんですが「これソースいらないくらいおいしいですね。ソース屋泣かせというか。でも闘志が湧きました」と言ってくださって。私と澤村とブルドックソースの担当者の方が一緒になってソースの配合を考え、ハムカツとメンチカツで1種類、コロッケで1種類、あわせて2種類のオリジナルソースを製作させていただきました。
――「日本橋コロッケ」という名前の通り、地元企業のコラボレーションですね!
はい。サンドウィッチに使うコロッケやメンチカツにもブルドックソースさんのオリジナルソースを使用しています。ディナーで提供するコロッケには、ブルドックソースさんのソースのほか、お酒も進むようディルを使ったスモークサーモンソースも添えています。
3日かかけて作り上げるパテ・ド・カンパーニュに、低温調理した鶏レバーのオイル煮、スライスしたパルマ産生ハムがセットになった「冷菜盛り合わせ」
もう一つ、名物として考えたのが、私の大好きなパテ・ド・カンパーニュを含む「冷菜盛り合わせ」です。パテ・ド・カンパーニュって手間暇かかる分、お店のこだわりが出せるし、名物にするにはいいと思ったんです。そこに銘酒「山形正宗」を醸す水戸部酒造・水戸部朝信さんが惚れ込んだイタリア・パルマ産の生ハムを仕入れさせていただいて、店のスライサーを使って切り立てで提供しています。チーズのホエイを餌に混ぜて育てている白豚の生ハムなので、ほんのりチーズのような香りとうま味があるんですよ。さらに低温調理した鶏レバーのオイル煮を合わせて盛り合わせにしています。
酛オリジナルで造ってもらったという「萩乃露」
――従来の日本酒のお店とは料理のラインナップが異なりますね。日本酒は何種類くらい用意しているのでしょうか?
全国各地の日本酒を常時60種類ほど用意しています。ちょっとずつ、たくさんの日本酒を味わってもらいたいというのと、鮮度管理がしやすいよう4合瓶で取り揃えました。
「農民ロッソ」など国産ワインをグラス、ボトルともに揃える
また、今回酛グループとして初めて、国産ワインも4種類用意しています。国産ワインも近年ブドウの品種も変わってきたり、技術も向上してきたりと、レベルの高いものが増えてきているようで、お客様にもっと紹介したいと考えました。ただ、ワインに関してはまだまだ私たちも勉強中なので、お客様と一緒に開拓していければと思っています。
――シックな黒い壁面にオープンキッチン、コの字カウンターという内装も印象的ですね。
そこはこだわった部分ですね。元々酛グループは、若い方にもっと日本酒をカジュアルに楽しんでもらいたいという想いがあったんです。13年前にオープンした新宿の立ち飲み店舗もコの字カウンターだったのですが、隣り合わせでもお酒を通じてコミュニケーションが生まれるんですよね。実際、『茅場町食堂 History by moto』もオープンしてからまだ1週間ですけど、見ず知らずの人同士で会話が生まれています。
壁はお客様の衣服が汚れないよう、杉板を染色した焼杉仕立てにしています。杉の木って防腐効果があるため、日本酒を作る際の樽や桶としても使われており、日本酒に縁があるというのも決め手でした。店内は黒と白木カウンターを基調としたシンプルな内装にして、ペンダントライトでムードを醸しています。
外壁も黒の焼杉仕上げでシックな趣
――店頭にあるお店のロゴにも意味が込められていると聞きました。
はい。三角が人で、四角は地域で、円がそれを繋ぐ縁を表しています。あえて円を開けているのは、お店がお客様と一緒に今後繋げていきたいという意味を込めているから。このロゴは会長が考案したのですが、禅の世界観をモチーフにしています。ロゴは店長の弟さんがデザインしてくれました。
――鈴木様はいまの茅場町エリアの街の雰囲気について、どう感じていらっしゃいますか?
先祖代々この地に住む下町の伝統を受け継ぐ方々、そして新しい風を吹かせる次世代の方々、その両方の躍動を感じる街だな、と。近所の八百屋さんに開店のご挨拶に伺った際「開店してくれて嬉しいよ。ありがとう。困ったことは何でも言ってくれ。水道とかガラスの修理とかすぐ手配するよ」と言ってくださるなど、とても親切にしてくださいました。町内会長もすごくアットホームな方ですし、そういう下町の良さを感じます。一方で、新進気鋭の若手の方々が次々と新しい感性のお店をオープンさせている。新旧入り混じり、街として新たに動き出していると感じています。
――今後このエリアにはどのような街になって欲しいとお考えですか?
茅場町が平日だけでなく、休日も人が足を運ぶ面白い街になったらいいな、と思っています。弊社では「0を1にする仕事」を大切にしておりまして、休日に営業する飲食店の先駆けになり、街を盛り上げたいです。さらにそういう輪を広げ、周りのお店の方々にも「土日営業しようかな」と思ってもらえたら、すごい素敵なことだなと思っています。茅場町の近くには隅田川もあるので船に乗って東京観光していただいたり、日本橋エリアでショッピングも楽しんでいただいたりすることもできるので、その延長線上で茅場町にも足を運んでもらえたら嬉しいですね。
――そんな街の実現のためにお店やご自身でできること、やりたいことはございますか?
小さなお店なのでそんなに大きなことができるとは思っていませんが、いくつかやりたいことがありまして。すでにこのエリアでも土日営業されているお店さんがいくつかあるので、土日飲み歩きマップやハシゴ割クーポンなどを作って配布し、訪れる方たちに酒場ホッピングを楽しんでもらいたいですね。
もう一つやりたいのが、メイド・イン・トウキョウのお酒を発信すること。最近、田町や御徒町、清澄白河にも酒蔵、ワイナリー、ブリュワリーがありまして、うちでも御徒町にあるワイナリーさんのワインを置いています。そういう下町の酒蔵さんと一緒に、酒造りの秘話を聞きながら、お酒が飲めるというようなイベントを行いたいです。飲食店の価値ってリアルな情報を聞きながら、その場でしか食べられないものを食べたり飲んだりすることだと思いますので。
――今後のお店としての目標があれば教えてください。
いま日本の若手の造り手さんがすごく頑張っていらっしゃるので、日本酒だけでなく、メイド・イン・ジャパンのワインや、焼酎、ジン、ウイスキーにももっとスポットを当てて紹介していきたいと考えています。あとは飲食店の働き手不足も叫ばれていますが、飲食店の仕事って楽しいので、もっと働き手を増やしたいですね。
茅場町エリアの歴史に敬意を示しながらも、さまざまなアイディアでこのエリアとお酒の文化を盛り上げようと考えているモトインプレッションジャパンの鈴木社長。人、モノ、コトなど新たな縁を繋ぎ、歴史の一ページを刻もうと動き出した「茅場町食堂 History by moto」の今後を見守りたいところです。
■茅場町食堂 History by moto
東京都中央区日本橋茅場町3丁目6−1 阪井屋ビル 1F
03-5641-8778
営業時間:11:00〜14:00、16:00~22:00(土日祝)13:00〜21:00
定休日:月、祝不定休
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