2019.12.27
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
12月7日(土) 、日本橋茅場町にあるFinGATE KAYABAにて第20回『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
事始めの街と呼ばれている日本橋兜町・茅場町。江戸時代には酒問屋で賑わっていたこの街で、日本各地の蔵元とともに日本酒について学び、味わい、楽しく交流しその魅力を広めるため、毎月1回の頻度でイベントを開催しています。
今回は三重県鈴鹿市から清水清三郎商店の代表取締役 清水慎一郎さんをお招きし、日本酒「作(ざく)」のご紹介に加え、鈴鹿市の日本酒の歴史、日本酒を取り巻く市場環境まで幅広くお話いただきました。
今回は年の瀬の忙しい時期にも関わらず、50名以上の方にお申し込みいただきました。
それもそのはず、今回お招きした清水清三郎商店の「作」は、2016年のG7伊勢志摩サミットにて乾杯酒に選ばれた実績を誇るほか、毎年、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」、「Kura Master」、「SAKE COMPETITION 」などで、数々の栄冠に輝いた有名酒です。
また、2019年12月23日に発表された、国内外で開催された日本酒コンテストでもっとも評価された酒蔵を選ぶ「世界酒蔵ランキング2019」にて、清水清三郎商店が1位に輝いています。今回ご用意いただいた「作 雅乃智 中取り」や「作 恵乃智」なども受賞酒の1つです。
その清水清三郎商店の清水さんから直接お話を聞くことができるとあって、多くの日本酒ファンの方々がつめかけました。
鈴鹿といえば真っ先に思い浮かぶのが鈴鹿サーキットで、日本酒造りとは結びつかない方も多いのではないでしょうか?
清水さん自身も、「酒蔵は鈴鹿サーキットの近くにありますというと、『レーシングカーの爆音の環境で酒を造っているみたいであんまり美味しそうじゃないねえ』と言われたこともあります」とユーモアたっぷりに語り、会場が笑いに包まれました。
もちろん、鈴鹿サーキットで毎日F1をやっているわけではなく、実際は自然豊かなのどかな場所です。それどころか、鈴鹿のお酒造りには実は大変長い歴史があります。
古文書「倭姫命世記(やまとひめのみことせいき)」には、「味酒鈴鹿国(うまさけすずかのくに)」の記述があり、古代より鈴鹿はお酒の美味しい土地として認知されていたことがわかります。また、現代の辞書でも「旨酒(うまさけ)」をひくと、「酒の産地として有名なことから、鈴鹿にかかる枕詞」であることが記されています。
ではどうして鈴鹿では古代から日本酒造りが盛んだったのでしょうか?
古代、大和朝廷にとって、鈴鹿峠は軍事上重要な拠点でした。清水さんのお話によると、外敵の侵入を防ぐために関所を配置したことで鈴鹿は栄え、また伊勢平野を流れる鈴鹿川などの良質な水源もあり、酒の産地として発展したと考えられるとのことでした。
鈴鹿という地が、古くから酒造りに適した条件がそろっていたことなど、とても興味深い話をお聞きすることができました。
続いて清水さんのお話は、世界のお酒事情にまで広がります。
フランスでは16歳から(親の監督のもとであれば)飲酒可能で、スイスの全寮制の学校では、10代にして、ワイン造りにおけるぶどうの特徴や造り手についての知識を学ぶとのこと(参考図書:世界のビジネスエリートが身につける教養としてのワイン 渡辺順子著)。
欧州ではワインが教養の1つとして認められているといえます。
一方、今の日本では、お酒が教養であるという認識がそこまでありません。
この点について、清水さんは大変歯がゆく思われていて、もっと日本酒を教養の1つとして捉えていただきたいと思われているそうです。
しかし、この現状には仕方のない側面も。
一般にも知られている通り、日本人は欧米人と比較して、アルコール分解能力が高くないのです。
このような事情から、日本人には、別にお酒を飲まなくてもいいんじゃない?という考え方の人が少なくないというわけです。
実際、全酒類消費数量に占める清酒の割合は年々右肩下がりで、現在は7%以下となっています。一方、それと反比例するように日本酒の輸出量は年々増えており、本来であれば日本酒はもっと世界に誇るべき文化であるのに...と清水さんは仰っていました。
それではお待ちかね、清水清三郎商店の「作」をいただきます。今回はブラインドテイスティングではなく、清水さんの解説とともに6種類のお酒をいただきました。
①『作 陽山一滴水大吟醸』
精米歩合:40% 原料米:山田錦 酵母:自社保存株
"一滴水"とは仏教の用語で「一滴の水の中にも仏の命が宿るので、大切にせよ」という教え。
清水さんはお酒造りについて、「何か特別なやり方をしているんですか?」「こだわりはなんですか?」という類の質問をよく受けるそうですが、清水さん曰く、そんなものはなく、当たり前のことを当たり前に、日々地道にいかに積み重ねていくかが重要であると思われており、その考え方が、この一滴水という言葉に通じるものがあると感じて命名されたそうです。お酒造りに限らず人生そのものにも通じる、大変含蓄のあるお言葉でした。
②『作 恵乃智』
純米吟醸 精米歩合:60% 原料米:国産米 酵母:自社保存株
お米の恵みを活かした一本で、酵母による香りと味わいが特徴。
③『作 玄乃智』
純米 精米歩合:60% 原料米:国産米 酵母:協会7号系
比較的強い発酵力を持つ酵母の力を生かした酒質で、酸とバナナの豊かな香り。
④『作 朝日米』
純米大吟醸 精米歩合:50% 原料米:岡山朝日米 酵母:自社保存株
古い系統を持つ朝日米。素直な性格のお酒。
⑤『作 穂乃智』
純米 精米歩合:60% 原料米:国産米 酵母:協会 14号系
穏やかな酸と、鼻の奥にすっと立ち上がる爽やかなライチの香り。
⑥『作 雅乃智 中取り』
純米大吟醸 精米歩合:50% 原料米:山田錦 酵母:自社保存株
搾りの工程で最初の「荒走り」と最後の「責め」を除いた「中取り」部分で、
豊かな味わいと香りがありながら、最後の透明感が特徴。
上記の画像、テイスティングに使っているのがおちょこではないことにお気付きでしょうか?
実はこちらはワイングラス…ではなく、日本酒グラス。
今回のテイスティングに最適な2種類のグラス(大吟醸グラスと純米酒グラス)をご用意いただきました。
清水さんによると、フランス料理と日本酒という新しい組み合わせも世界で注目されているそうで、こんなおしゃれなグラスならテーブルコーディネートも素敵に仕上がりそう。と感じました。
また、WSET(Wine & Spirit Education Trust:ロンドンが本拠地の世界最大のワイン教育機関)でも世界28カ国で日本酒講座が開かれるなど、日本酒は世界中からますます熱い視線を浴びています。
おつまみは日本酒にぴったりな南伊勢町の串ひもの(ぶり・かつお・あじ、さば、かます)でした!
ワインの「ボルドー」「シャンパーニュ」はGI(地理的表示)といい、これは特定の産地に特徴的な原料や製法により作られた商品が産地名を名乗ることを許された制度です。
実はワインと同様に、日本酒にもGIがあります。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/ichiran.htm
現在、三重県もこのGI取得をめざしており、そのロゴマークには伊勢神宮に2000年以上も献上され続けている、のしあわびのデザインが使われる予定だそうです。
(のしあわび=アワビを薄くはいで伸ばし、乾かしたもの。日ごろ贈答品の印に使われる「のし」の起源でもある。)
世界中で三重のGI認証の日本酒が飲まれる日も遠くないかもしれませんね。
今回のお話では日本酒「作」についてだけではなく、鈴鹿のお酒造りの歴史から日本酒の市場環境、世界における日本酒人気や、日本酒の今後まで、大変幅広いお話を伺うことができました。
最後に、清水さんの「お話したように、日本酒を飲む方が少なくなってきています。みなさん、ぜひ、知り合いの方を一人でも多く、日本酒党に誘って増やしてください」という力強い一言と、それに応じる会場の盛大な拍手で締めくくられました。
本イベント「日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ」は今後も2020年3月まで、月1回の頻度で開催予定ですので、お酒好きの方は是非一度足を運ばれてはいかがでしょうか?
開催予定はこちらから。
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