2026.06.05
こんにちは!兜LIVE!です!
今年5月、東京各地で「東京建築祭2026」が開催されました。「建築から、ひとを感じる、まちを知る」をコンセプトに、普段は入れない場所や知られていなかったエピソードに触れながら建築とまちを楽しむ祭典で、都内各エリアで100以上のプログラムが一斉に展開されました。今回、兜LIVE!はそのなかのガイドツアー「開発者と歩く、建物をつなぐまちづくり」に参加してきましたのでレポートをお届けします!
集合場所はKABUTO ONEの4F会議室。街へと繰り出す前にまず、ガイドの伊勢谷俊光さんによる兜町のまちづくりについてのミニ講義を聞かせていただきました。伊勢谷さんは平和不動産 ビルディング事業部兼不動産投資事業部の課長で、2014年に本格化した兜町・茅場町エリアのまちづくりを、初期段階からリノベーション企画や誘致推進の実務面で牽引してきた方です。

平和不動産は、全国の証券取引所の現物出資によって設立された会社。いわば「証券取引所の大家さん」として長年この地に根ざしてきましたが、2014年に「人が集い、投資と成長が生まれる街づくり」という開発方針を打ち出し、施設整備や再開発を本格的に動かし始めました。伊勢谷さんはディベロッパーの役割について「建物を建てるだけでなく、"街の編集者"であろうと考えています。人の流れや滞在、テナントやイベントなど、街を俯瞰して考える立場を意識しながら事業を行っています」と語ります。
かつての兜町は、金融・証券の街として「日本のウォール街」と呼ばれ、渋沢栄一がさまざまな事業を起こした場所でもあります。しかし1999年の証券取引のIT化以降、立会場に人が集まる必要がなくなり、街は徐々に活気を失っていきました。スーツ姿のオフィスワーカーが行き交うだけで、夜は銀座へ、休日はわざわざ訪れる理由もない——そんな街から「多様な目的地となる街」へ。それが平和不動産が掲げた転換の方向性です。
そのまちづくりの軸となるのが「文脈を残す」「印象をつくる」「余白をつくる」という3つのこだわり。既存の古い建物の外観や意匠を活かしながら新しい使い方を生み出し、木材など異素材を取り入れて街に印象的なアクセントをつくり、建物と建物のあいだに人が使える空間を意識的に生み出してきました。「点として作るのではなく、面として街全体が連携しているように見せる」——その考えのもと、大規模再開発とは一線を画したリノベーション中心のまちづくりが積み重ねられてきたのです。

さあ、講義が終わったらいよいよ街へ!伊勢谷さんと一緒に、兜町をぐるりと歩いてきます。ルートはKABUTO ONEからスタートし、フュージョン台湾料理の勺勺(シャオシャオ)まで。解説を聞きながらの約40~50分の所要時間でした。

The HEART
まずはKABUTO ONEの1階です。オフィスビルにもかかわらず開けた空間に人が集っています。上を見上げると大きなキューブのサイネージが。こちらは「The HEART(ザ・ハート)」と名付けられていて、金融の中心として、株価などが表示されています。株価の状況によって色や動きが有機的に変化する、まさに「心臓部」といえる存在です。

続いては「風景を変える」ための木造建築、KITOKIへ。1階には「平和どぶろく兜町醸造所」が入店しています。

1~3階の型枠には、屋久杉を加工した木型枠が採用されており、有機的な凹凸が転写されています。さらに梁には秋田県産の栗の木を丸太のまま使用。日本初の木材乾燥機を使用して人工的に乾燥させることで、乾燥時間とコストの大幅な削減が実現しました。

柱の表面にも注目。実は柱の模様がひとつずつ異なり、縁起の良い昆虫の羽(カブトムシ、トンボ、テントウムシ、バッタ)の模様になっているのだそう。なんとなく通り過ぎてしまいそうになりますが、こんなギミックが盛り込まれていたとは驚きです。

また、低層部の革枠に活用した木材は、型から抜いた後にその凹凸を生かしてアートピースやベン
チなどの一部として使用されています。

続いてはJAPANESE CURRY AWARDS2025の新人賞受賞店「南印度洋行」(夜はスウェーデン発祥のクラフトビールショップ「Omnipollos tokyo」とその隣の「wine shop human nature」へ。こちらは老舗のうなぎ店だった「松よし」の店舗と調理場の面影を残しています。ちなみに、建物としての強度はきちんと補強されているので安心です。

扉の取っ手にはうなぎ店だったときの名残も!

次は昔ながらのオフィスビルの1階部分の外観に色を与え、雰囲気を変えている「Pâtisserie ease」が入る建物(兜町第2平和ビル)です。少し離れて建物全体を見ると、そのギャップがより魅力的に感じられます。

ほど近い場所にある「FinGATE Terrace」(兜町第4平和ビル)の1階、賑わい風景を生み出すためのオープンテラスが。

木のブロックは手にとって動かすことができるようになっており、遊び心も満点です。

CACICA兜町
兜町第4平和ビルの向かいにある兜町第1平和ビルの1階は、もともとはオフィス街らしくコンビニエンスストアが入っていたのですが、現在はアジアン雑貨とアジア料理が併設されている店「CASICA KABUTOCHO」が入っています。

続いて向かったのは、何気ないビル(兜町平和第1ビル)とビル(兜町平和第6ビル)の間の道。こちらビル外構リノベーションプロジェクトにより生まれた「kiten.」という空間になっています。兜町に働く人、暮らす人、訪れる人、滞在する人が自由に心地よく過ごせる空間を目指して、一体で整備をしたのだそう。

伝統ある金融街かつ新しい変化を彷彿とさせるイエローがアクセントとなっています。

平和不動産株式会社 プレスリリースより
夜はライトアップもされ、幻想的な雰囲気を楽しむことができます。
そしてツアーは平和不動産が“街の編集”に力を入れるきっかけとなったHotel K5(旧兜町平和第5ビル)へ。かつて第一銀行の建物だった外観と躯体を生かし、上質な重厚な空気を放っています。

こちらの建物、かつては漏水を防止するために外観にパネルが貼られていました。それを取り払い現在の外観となっています。よく見ると当時のビスがまだ残っているのがわかります。
アーチ窓がひときわ目を引く日証館。渋沢栄一の邸宅の跡地に建てられた建物で、東京都の歴史的建造物にも認定されています。この一部を店舗としてリノベーションしたのも平和不動産。
現在では行列の絶えないチョコレート&アイスクリームショップ「teal」や、ネイルサロンの「HANDWORK」等が入店しており、新しい風が吹き込んでいます。

兜町第7平和ビルは、外観が特徴的。もともと銀行だった建物を減築してあり、抜け感のある外観となっています。

テラス部分の壁面の木材はKITOKIの型枠材を再利用してあったり、旧銀行時代の階段がそのまま残っていたりと、今と昔を体感できる作りに。1階と地下1階は複合施設「BANK」として営業しており、ベーカリーのbank、ビストロyen、ライフスタイルショップcoin、フラワーショップのfêteが入店しています。週末などは若い人たちで賑わうスポットとして生まれ変わっています。
ちなみに地下1階には、かつて銀行時代の重厚な金庫もそのまま残されているのだそう。

テラスのどこかにかつての住所が隠れているので、ぜひ探してみてください!

お隣の兜町第6平和ビルにはコーヒースタンドSR、地下1階は複合施設「景色」となっており、ポップアップスペースやギャラリーなど、様々なチャレンジや人の出会いが生まれる場が提供されています。

いよいよラストは、フュージョン台湾料理店の勺勺(シャオシャオ)が入店している「prewood」というビルです。コンクリート造の建物の中で異彩を放つ木造建築となっています。金融街らしい街並みにサステナビリティの要素を感じられる建築を重ね合わせ、多様な価値観を受け入れる街の姿を表現しています。
実はこの建物、独自のモジュール工法により、躯体の工事はわずか2日で完了したのだそう。すべての部材がデジタル加工されており、移築や再構築も可能という、次世代型の建築となっています。
今回のツアーで印象的だったのは、「なぜここにこの店があるのか」「この建物のどこに昔の面影が残っているのか」——街を歩くだけでは素通りしてしまうような文脈が、伊勢谷さんの解説によって次々と見えてきたことでした。建築の「こだわり」は、単なるデザインの話ではなく、この街をどんな場所にしたいのかという意志の積み重ねでもある。兜町は今もまさに「編集中」のまちです。東京建築祭のような機会に、ぜひ一度歩いてみてください。
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