2022.02.13

【かぶかや・ヒューマン】 #18 「teal」眞砂翔平さん(シェフパティシエ・シェフショコラティエ)

渋沢栄一の旧邸宅跡地に建設された歴史的建造物・日証館に、チョコレート&アイスクリームショップ「teal」がオープンしました!かぶかや・ヒューマン#5で取り上げたパティスリー「ease」の大山恵介さん、元「パスカル・ル・ガック」の眞砂(まなご)翔平さんの2人がタッグを組み、それぞれの個性をコラボレーションしたスイーツを展開するお店です。一体どんな商品があるの?眞砂さんってどんな人?お店を突撃しました!


◆身近でユニークなスイーツのお店

――眞砂さん、はじめまして!

よろしくお願いします。



――こちらはチョコレート菓子とアイスクリームのお店なんですね。どんなものがあるんですか?

チョコレート菓子は、ドーナツ、ブラウニー、クッキー、マドレーヌなどですね。身近で、手に取っていただきやすいものを揃えています。



アイスクリームは、洋ナシとバジルを一緒に使うような、“組み合わせの妙”を狙ったものを揃えています。今後は季節を反映した商品も登場しますよ。



――ユニークですね!素材にこだわりはありますか?

チョコレートに関しては、購入したものはもちろん、店内で豆からつくったチョコレートも使っています。

他社からチョコレートを購入するときはブランドに左右されず、自分で実際に食べてみて「これは美味しいぞ!」と思ったものだけを採用するようにしています。


――お店で豆からチョコレートをつくっているんですか?!

そうです。最近は、カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造する「Bean to Bar(ビーン トゥ バー)」の専門店が増えてきているんですよ。

うちで使うカカオ豆は、カカオハンターで有名な小方真弓さん、静岡県浜松市の「カカオ アルン」さんから仕入れています。原産国はペルーやコロンビアですね。



アイスクリームに使うフルーツは、基本的には私たちが訪ねたことのある農家さんや、知り合いからご紹介いただいた農家さんがつくったものを産地直送で購入しています。




――この街のOLさんに人気が出そうですね。

私たちも当初は25歳から35歳くらいまでの女性客がメインになると予想していたのですが、実際にオープンしてみると、東日本橋方面に住んでいるファミリーもたくさん来てくれているんです。色んな方々に来ていただけて、うれしい誤算でしたね。



◆店名の由来は「お金を運ぶ鳥」



――あちこちに鴨がいますね。

店名の「teal」は、「鴨」や「鴨の羽の色・青緑色」を意味する言葉なんです。この日本橋兜町はかつて水運が盛んだったので、それにちなんで「teal」と名付けました。

鴨は壁画に多く登場する鳥で、エジプトでは神聖な動物とされていた水鳥です。お金を運ぶ鳥とされているので、この兜町にふさわしいと思って。



――それは縁起がよいですね!お店も素敵な空間です。

この日証館はもともとが素敵な建物なので、既存を生かしてリノベーションしました。綺麗すぎる新築の建物は居心地が悪いと思っているので、綺麗すぎない居心地のよいお店にしたいと考えたんです。窓や柱は、ほぼ既存のままですね。諸外国の建築デザインと日本の建築デザインの良いところを掛け合わせて、綺麗すぎないヴィンテージ空間に仕上げました。


お客様から調理の様子が見えるように、厨房との間仕切りはガラス張りにしました。



――しっとりした雰囲気で落ち着きます。イートインもできるのですか?

今イートインはジェラートのみですが、この春から店内のケーキも食べられるようにしたいと考えていて、イートイン専用のワッフルも考案しているところです。出来立てのワッフルにアイスをポンとのせたら、SNS映えすると思いませんか?(笑)。


◆経営も学べる環境で修行

――眞砂さんはどちらのご出身ですか?

和歌山県新宮市です。皆さんが想像する和歌山とは違って、僻地なんですよ。テレビゲームの「桃太郎電鉄」で一番行きにくいところです(笑)。東京からだと7~8時間かかりますし、本州内で電車で一番行きにくいところらしいです。


――桃鉄世代なんですね(笑)。なぜパティシエを目指されたんですか?

大学に行くつもりで勉強していたのですが、本当に勉強が嫌で……(笑)。ある日図書館で勉強しているときに、「これは僕の人生に必要ない勉強だ」と思ったんです。

そこで、もっと自分のためになる勉強をして手に職をつけたいと考え、料理と製菓の両方を学べる専門学校に進みました。



学校に通いながらアルバイトしていたのがケーキ屋だったので、その流れで製菓の道を選びました。卒業後は小竹向原(こたけむかいはら)にある「クリオロ」に勤め、その後溜池山王にある「パスカル・ル・ガック」でシェフパティシエを務めました。


――意志を持って進路を選択されたんですね。お店での修行中はいかがでしたか?

メニューが多彩で、パン、チョコレート、生菓子、焼き菓子、フランスの昔のお菓子、アイスクリーム、ゼリーなど、お菓子屋さんがつくるすべての商品について学べました。さらに、年間計画のつくりかた、工程の組み立てかた、時間内につくる方法を考える力も身につけられました。本当に色々なことを学べる環境でしたね。


鍋が飛んでくるような精神的に厳しい店ではなく、どうしたら効率よくできるか、どうしたらスタッフが早く帰れるかに頭を使う社風でした。当時学んだ店づくりの知識は、今とても役立っています。



――製菓だけでなく、経営の知識も学べたのですね。

はい。結局、労働時間が長くなるとスタッフがどんどん辞めてしまって、お店全体のコストパフォーマンスが悪くなるんです。新たに求人をかけて新人を育てるには膨大な時間とお金がかかりますから、今いるスタッフに長く勤めてもらうための政策は不可欠なんです。20代半ばでそのことに気づかせてもらえたことは、大きい収穫でしたね。


◆数々の受賞歴!裏には多大な努力が

――眞砂さんには、華々しい受賞歴があると聞きました。

はい、おかげさまで。2013年には Japan Cake Show 「味と技のピエスモンテ部門」で 金賞、2015 年にはJapan Belcolade Award 優勝、2016年にはJapan Cake Show 「Top of Patissier」優勝、2017年には Top of Patissier in Asia ベストショコラティエを受賞しました。


最初は「コンクールで日本一になるまでは頑張ろう!」と思っていたのですが、実際に何回か日本一になってからも、こうしてズルズル続けています(笑)。



コンクールには血生臭い努力が必要で、当時は朝6時から16時まで通常業務、終業後から夜中0時までコンクールの準備をしていました。コンクールって1年中やっているので、休みの日もずっと準備していましたね。


――そんなに大変なんですか!

1年間準備して受賞できなければ才能がないということなので、やれるだけやってダメならこの仕事を辞めようと思っていたんです。でも、実際に1年間準備したら優勝できて、これからも頑張ろうと思えて。


後輩が「日本一になりたい」と言ったら、同じように1年間準備させています。そうすると、本当に日本一になれるんですよ。ほらね、って(笑)。

「1年やれば優勝できるし、受賞歴があればその後の生涯年収が変わる。1年頑張ればあとの人生がラクなんだよ」と伝えています。


――眞砂さんが言うと、説得力が半端ないです(笑)。その後、どのような経緯で現在に至るのですか?

まだ私が「パスカル・ル・ガック」に勤めているときに、当店を運営する株式会社イートクリエーターが溜池山王で期間イベントを開催したのですが、今一緒にやっている「ease」の大山さんがイベントスタッフの一員だったんです。大山さんとは以前から顔見知りで、たまたま「このイベント一緒にやらない?」と声をかけてくださって。そうしてご一緒したことがきっかけで、その後私もイートクリエーターに入社することになりました。


右が「ease」の大山さん


入社後、この日証館に何かお店を出そうという話が持ち上がり、それなら大山さんと私で一緒にやろうと。そんなこんなで、今日に至ります。


――そうだったのですね。ちなみに、大山さんの印象は?

真面目ですね。もう、めちゃめちゃ真面目なんですよ。時間を守るとか、何かを最後までやり切るとか。


――眞砂さんも真面目ですよ(笑)。

そうですかね(笑)。でも、100人が食べたら100人が美味しいと言うものをつくることは徹底しています。奇をてらいすぎない、食べた全員が「美味しい」と言うものです。そのために、まずは色んな人に試食してもらって、リアクションをじっくり観察していますね。



目標は、「teal」を全国的に知名度のある店にすることです。ありきたりではないものをつくって、それを世の中の流行りにしていきたいですね。


だんだんと認知されてきているので、周辺の皆さんはもちろん、色んな土地からわざわざ足を運んでもらえるお店にしていきたいです。誰もが好きで、最高に美味しくて、しかもここでしか食べられない商品があれば、わざわざ足を運んでくれると思うんですよ。近い将来、朝から晩まで行列が絶えないお店にしたいですね。


メニュー考案は2人一緒に行うそう

◆このエリアをディズニーランドのような街に

――眞砂さん、お店を出すまでこの街と関わりはありましたか?

いえ、全然関わりなかったですね。最初に来たときは、“静かにビルが並んでいる怖い街”という印象でした(笑)。

でも、実際に勤めてみるとすごくおしゃれな街で。この日証館もそうですが、よくみると素敵な建物や歴史的建造物がいっぱいあるんですよね。


――このエリアは現在開発中なので、これからもっと素敵な街になりますよ。

そうですね。ディズニーランドのように、国内はもちろん、外国からも「わざわざ行こう!」と思ってもらえる街になったらうれしいですね。



場所も良いし、商品も良いし、商品をつくる人も良いー。そういうものを体現できるようになっていきたいです。サロン・ド・ショコラのように意味のあるイベントにも積極的に参加しつつ、この兜町で1年、2年、3年と積み重ねていきたいと思っています。


◆取材を終えて

「teal」の眞砂さんに迫りました!いかがでしたか?眞砂さんは、とにかく努力の人。目標のために根気強く努力を積み重ねられる、誠実な方だと感じました。皆さんも、今年のバレンタインは「teal」のお菓子を選んでみてはいかがでしょうか?眞砂さん、閉店後のお疲れのところありがとうございました!



■teal
・東京都中央区日本橋兜町1-10 日証館1階
(東京メトロ日比谷線・東西線「茅場町」駅 徒歩5分/東京メトロ銀座線・東西線、都営地下鉄浅草線「日本橋」駅 徒歩6分)
・TEL: 03-6661-7568
・営業時間:11:00~18:00
・定休日:水
ホームページ


■「ease」大山さんの記事はこちら
兜LIVE!かぶかや・ヒューマン#5 「ease」大山恵介さん(パティスリー・シェフパティシエ)

(ライター:安藤小百合


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