2020.01.30

【前編】Revitalize(再活性化)がコンセプト! 日本橋兜町「K5」を構想し たマネージメントチームにインタビュー

こんにちは!

兜 LIVE!編集部です。


2020年2月1日、東京都中央区日本橋兜町3番5号に株式会社 Backpackers' Japan と Media Surf Communications 株式会社、株式会社 Insitu Japan の3社が「Revitalize -新しい命 を吹き込む-」をコンセプトにしたマイクロ・コンプレックス「K5」(ケー・ファイブ)を オープン。


「K5」は兜町の象徴とも言える東京証券取引所からすぐ裏手、大正12年竣工の歴史的建築 物をリノベーションし、ホテルやレストランが集まる複合施設として新しい文化創造の発 信地を目指します。


マイクロ・コンプレックスとは大規模開発によるものでなく、地域に深く寄り添った小規 模複合施設のこと。「K5」では「1つの企業が開発を行うのではなく、感性を共にした様々 なジャンルのチームが集まり共同でプロデュースする」という要素もマイクロ・コンプレックスの定義として捉えているそうです。



今回は、株式会社 Backpackers' Japan の本間貴裕氏(写真中央)、Media Surf Communications 株式会社の松井明洋氏(写真左)、株式会社 Insitu Japan の岡雄大氏(写真右)の3名に「K5」のこれからや、兜町の魅力を尋ねました。


兜 LIVE!編集部(以下、兜):まずは、皆さんそれぞれの会社や、ご自身の自己紹介をお願 いします。


松井氏:私はメディアサーフコミュニケーションズと言う会社で、ファーマーズマーケッ トやコミューンを中心に、クリエイティブな事を色々やっています。僕は創設メンバーの1人で、現在13年目の会社です。


本間氏:僕は福島県会津若松の出身なのですが、20歳の時にオーストラリアを旅していま して。その時の経験を元に帰国後、バックパッカーズジャパンと言う会社を立ち上げました。

「あらゆる境界線を越えて人々が集える場所」をモットーに、国籍や考え方、職業・ 年齢を越えて人々が一同に集まるようなホステルやラウンジを展開しています。今、ちょ うど10年目です。趣味はサーフィンとスノボです。


岡氏:Insituの岡です。Insituは僕とオランダ人のパートナー達3人で始めた会 社で、僕自身は元々投資業を営んでおりました。2人のパートナーは生粋のホテリエルです。シンガポールから始まり、バリやスリランカ、イタリアと、小規模タイプのホテルを自分達で運営・プランニングしています。日本法人はちょうど丸1年になりました。


兜:かなり異なる経歴のお三方が集まったのは興味深いですね。今回の「K5」プロジェクトが発足するまでの経緯をお伺いしたいです。



本間氏:今から2年ほど前に、平和不動産の方からお話を頂きました。築 95 年の歴史ある このビルを紹介されまして。現在東京都では国際金融都市構想を推進されているのですが が、その構想の一環としてこのビルを「金融マンだったり、世界で活躍されている方々が 集まる場所にして兜町を活性化してほしい」と。

そんな中で、僕はそこにホテルを作ってほしいとご依頼いただいて。まず物件を見せて頂いたんですけれども、本当に一目惚れの ような感じで「是非ここでやらせてください!」とお返事しました。


ただ、大きいプロジェクトですし、物件自体がとても魅力的でしたので、僕だけではなく 誰かと組んでやりたいなと。最初にメディアサーフの松井さんにお声がけしました。松井 さんはファーマーズマーケットやコミューンを作る中で「その場所に賑わいを作り出す」 と言うのがとても得意な方で。日頃からよく一緒に呑む仲間でもありました。デザイナー にはスウェーデンのデザインユニットCLAESSON KOIVISTO RUNE 、建築設計には福島の建築チームADXを迎え入れました。多くの会社が携わる中で、スムーズにプロジェクトを調整しながら進めて行ける人材も必要と感じ、Insituの岡さんにも声をかけました。


◆一緒に前に進む仲間を探していくのが、僕らの考えるテナントキュレーション


兜 : 本間さんの一目惚れから「K5」構想が始まったんですね。今回のお三方の主な役割と しては「K5」のブランディングやテナントキュレーションと言うのが適切な表現になりますか?


松井氏:そうですね。テナントキュレーションと言うのが適切ではありますが......

今回は 僕ら3人の中で、当初から「こう歩んでいきたい」と言うプロジェクト像が一致していた と思うんです。大きい商業施設の中にとにかくテナントを埋め込んで入れるというよりは、「一緒に前に進んでいく仲間を探していく」というような感じ。


本間氏:テナントキュレーションではあるんですけど、できればそういう言葉は使いたく なくて。オーナー側とこちら側で、すごく境界線のようなものが見えてしまうから。仲が 良くて、信じられて、めちゃくちゃ実力のある友達をここに連れてくる。そんなイメージ でした。


松井氏:念頭にあったのは「たくさんの人が来てお金を落としてくれる場所を作る」と言 うことではなく、今までに出会ったことのない魅力的な体験をお客さんにしてもらうため に、ここにどんなコンテンツを作っていくか。それが、僕らの言うテナントキュレーショ ンの定義です。


兜 : 初めからお三方の中でコンセプトが明確になっていたんですね。珍しいと言うか、通 常であればそれぞれ色々な想いがある中で進んでいきますから、コンセプトがズレてしま うようなこともあるとは思うのですが。


本間氏:コンセプトを一緒に作った仲の良い友達がもう1人居て、福島弦って言うんですけど。


松井氏:そうそう、その名前は出しておかないと。是非、福島弦ところは赤字・太字で強調してください(笑)。


兜 : その方が「K5」のストーリーテラーだったりするのでしょうか?


本間氏:そうですね。最初のコンセプトメイクをした人間が福島です。「リバイタライズ (再活性化)・シティ」というのが、元々僕らが一番の大枠として捉えているコンセプト です。ただそこに大きい商業施設を作って終わりではなく、街をリバイタライズしたいと。 そのために、「センシャスホテル=五感で感じることのできるホテル」を作ろうという話 をしていました。今でこそ「リバイタライズ・シティ」と当たり前に僕らは言っているけ れど、それを主軸として今日ここまで来たというのは自分でも感慨深いものがあります。


兜 :「リバイタライズ・シティ」という大きな目標に向かう中で、課題や試練も多々あっ たのではないかと思います。


松井氏:課題を一番乗り越えているのは、間違いなく岡さんですね(笑)。 


本間氏:そうだね(笑)。



岡氏:つらい時はつらかったんですけど(笑)、喉元過ぎれば熱さを忘れるもので。リバイタライズというコンセプトが最初に決まっていて、それ自体は再活性と言う意味ですけ ども。じゃあ「再活性って、つまり何?」と(笑)。多分、みんな何となくはイメージできるけど、誰も正しい再活性化なんてわからなくて。そこからまず具体的にひとつひとつ の物に、それぞれ再活性化の要素を落とし込んで。出たキーワードとしては、地下1階~ 地上4階までの全5階の空間がある中で、「動と静の対比」があったり、「センシャス」 という五感で感じられる要素。それぞれを再活性化と言うコンセプトで因数分解して行って、この街に埋め込んでいくにあたっての適切なチーム作りですね。再活性化と言うイメ ージに沿ったテナントキュレーションを考えていく中で、「B」や、「KABI」、「青淵」「SWITCH COFFEE TOKYO」が良いんじゃないかとか。それぞれみんな自分たちのお店のスタイルを突 き詰めている人たちなので、彼らを取りまとめるのが僕ですね。取りまとめるのが大変だ ったと言うか。


松井氏:みんな自由だからね。(笑)


岡氏:やりたいことがそれぞれある人たちの集まりなので、ワンチームとしてみんながひ とつになるまでは大変なこともありました。越えてみたら「良かったな」と思えることし かないんですけど。


◆ハードではなくソフトの部分を元気にするのが「Revitalize」

兜 : 今回のコンセプトである「再活性化」は、少し不思議な印象があります。「再開発」 という言葉はよく耳にしますが。


本間氏:言われてみればそうかもしれませんね。かつてこの兜町は日本の金融中心地で、 天下の東京証券取引所もあって。でも街の機能は時代とともに少しずつお隣の大手町や丸 の内にも移って行って、人の流れも徐々にそちらに行ってしまった。その結果ハードの部 分、金融地の主張である建築物が兜町のメインイメージとして残ったような印象がありま して。人々に兜町と言うと、「ああ、あの辺ね」と言って、ハードである建物の形がまず 頭に浮かぶような感じと言うんでしょうか。僕らは「K5」から、兜町の中身の部分、そこにどんな色があって、どんな人が居て、というそういうエネルギーや様々な色を発信して いきたい。その彩りをどんどん「K5」から広げていく。それが再活性かなと。


松井氏:再開発と言うのは、「箱をいっぱい作っていく」イメージがあるじゃないですか。 再活性化は本質である中身のことだと思うんです。中身ありき、コンテンツありきが再活 性化。ただ鳥の巣箱をたくさん作って並べても、鳥は来ないと思うんです。


岡氏:僕らが変えたいのは空気感です。再活性って本来は有機物に使う言葉ですが、僕ら はビルを作ろうとしているのではなく、空気感を変えようとしています。少し元気がなく なっていたものが、もう一度元気になるようなイメージですね。


本間氏:個人的には再開発という言葉に、お腹いっぱいな部分もあると言うか。「誰がそ れを求めていたんだっけ?」みたいな。ビルがどんどん高くなって、空が狭くなって、そ こで暮らす人々のイメージが見えづらくなるような。


兜:人々や街に元気が戻ってくるのが再活性化。とても素敵なお話です。皆さんがリバイ タライズを突き詰めていく中でワンチームとしてまとまるまで、具体的に行ったことはあ りますか?


松井氏:殴り合い(笑)。


本間氏:言い合い(笑)。


岡氏:は、もちろんしてないですけど(笑)。各々の強み・良いところはわかっているけ ど、それに合わせて誰かが0を1にして、次の人は1から3までやって、その次の人は4から6までやって......みたいなチームの作り方ではなく、そのあたりは敢えてゆるくする よう心がけたと言いますか。日本のビジネス監修はとてもきっちり順序立てて進みますが、 海外だとより柔軟にプロジェクトが進むことが多いんですよね。僕らなりのやり方でプロジェクトを遂行した結果、「これって誰の持ち場なんだっけ?」と言う部分では、1度ぶつかりあってるんですよ。


本間氏:結果的にはそれが非常に良かった。僕ら三者の中でも、それぞれの役割分担がし っかりと、しかし区切られて進んでいくというよりは、信頼関係で円状に繋がれた。漏れ ているところをお互い柔軟に拾い合ったりですとか、「自分の領域ではないな」と言うと ころにも気軽に入り込んで行って助け合ったりする関係性を構築することができました。 実は今回、この3人で深く仕事をしたのは初めてなんですけど、プロジェクトが進むほど 信頼関係が築けて、相手を尊敬できるようになりました。「こんなにできるんだ、すげぇな!」とか。逆に、「こんなにできないんだ!」とか(笑)。信頼という言い方もできて、 理解という言い方もできる。「たぶん松井さん、あれは取りこぼすだろうな」と思っているところに先回りして、もう岡さんがホームランを打ってるとか。


松井氏:失礼な(笑)。


岡氏:でも松井さんは、逆に誰にもできないようなプレゼンをしたり、とてもクリエイテ ィブなところを担当したりして。「K5」の名前もロゴも、一発ですんなり決めてくれまし た。これだけの大きいプロジェクトだと、一番みんなこだわって揉めるところなのですが。 全員一致で決まりましたね。


◆「K5」の名前は敢えて無味無臭に

兜:「K5」のプレスリリースでは、名前自体には敢えて意味を持たせていないと拝見しま した。


松井氏:もともと「兜町第5平和ビル」という名前があるので、一応意味はあるんですけ ど。僕たちもずっと兜第5と言いながらプロジェクトを進めていたんですが、いつまでも その名前で呼ぶわけにもいかないな、と。先ほどの再活性化というキーワードにも繋がる んですけど、ハードではなく本質の部分、中身の部分が主役であって欲しいという想いが ありまして。そこに色を付けるのはあくまでそこに訪れる人達であり、建物自体は無味無臭、無色透明な名前にしたいと感じました。


兜:お話を聞いて、そこに介在するテナントとしても、顧客としても、受け入れる側が受 け入れやすいのかなと感じました。印象には残る名前ですが、主張がなく、馴染みやすい です。


本間氏:少し気の抜けたと言うか、肩に力の入らない名前を付けるって、すごく難しいこ とだと思っていまして。企業や物に名前を付ける機会はよくあるのですが、どうしても気 合いが入ってしまって、色々な想いを詰め込もうとしてしまうじゃないですか。でも一方 で、人に好かれる名前って実はいつの時代もそうじゃなかったと思っていて。創業者が石 橋さんだからブリヂストンとか、松下幸之助さんだから松下電器とか。何でもない名前の 方が、人々の生活に寄り添ってきたと思うんです。


松井氏:アップルとか、究極ですよね。


本間氏:そうですね。そこで力の入らないようにした「K5」と言う名前は、今回とても気 に入っています。


兜:一度聞くと、絶対に忘れないですね。 


岡氏:5Kって言ってた人も居たけど(笑)。 


松井氏:次世代(笑)。それもいいですね。


本間さんの一目惚れから始まった「K5」のプロジェクト。

後編では、マイクロ・コンプレ ックス「K5」を通して、日本橋兜町の空気感がどう変わっていくのかをインタビューします。


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