2020.09.16
みなさま、こんにちは!
兜LIVE! 編集部です。
8月29日(土)、第26回『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』をオンラインにて開催しました。
日本橋兜町・茅場町は事始めの街と呼ばれ、江戸時代には酒問屋で賑わっていました。兜町・茅場町を応援する兜LIVE!では、「日本酒」をまちの魅力の一つと捉え、どなたでも参加できるイベントを月1回の頻度で開催。日本各地の蔵元をお招きし、楽しく日本酒について学び、味わい、交流しています。
新型コロナウイルス感染防止の影響を受けて、暫くはオンラインにて開催。
自宅でリラックスしながら、蔵元さんの日本酒に対する想いを聞きながら日本酒を味わうのことができるのはなんだか素敵なことですね。
今回は石川県羽咋(はくい)市に拠点を構える、御祖(みおや)酒造の代表取締役 藤田美穂さんとオンラインでお繋ぎしました。日本酒『遊穂』のご紹介や、日本酒に対する想いなどをお話しいただきました。
御祖(みおや)酒造の名は、地元である御祖という町の名前から取られています。藤田家の家業ではなく、石川県出身の父が40年前に譲渡されたとのこと。1897年(明治30年)創業という話もあるが、文献が残っていないので登記簿上の設立日である1921年を創業年とし、来年で100周年としています。
現在の代表取締役 藤田美穂さんは17年前に御祖酒造店に入社。入社当時は、地域の農家の方々に配る普通酒(地域の農家の方に配る地酒)「ほまれ」が造られていました。
*御祖酒造
さあ!お待ちかねのテイスティングタイムです。
今回は利き酒(テイスティング)として三種類をご用意いただきました。
①ゆうほのみどり(生酛純米生加水)
日本酒度 : +7
アルコール度数 : 15.5%
酸度 : 2.3
原料米 : 長野県産美山錦(3年以上無農薬・無肥料のもの)
精米歩合 : 60%
説明 : 夏向けの食中酒。
アルコール度数が比較的低めでもしっかりした味わいの日本酒。
料理 : 夏野菜の煮浸し、酢の物
②ゆうほのあか(生酛純米吟醸火入原酒)
日本酒度 : +5.5
アルコール度数 : 17.5%
酸度 : 2.1
原料米 : 美山錦(掛)、山田錦(麹)
精米歩合 : 55%
説明 : 夏のスタミナ食向けのガツンとしたインパクトを楽しめる日本酒。生原も販売していますが、今回は火入れ。
料理 : 鰻、バーベキュー、肉料理
③ゆうほのあお(純米氷温熟成)
日本酒度 : +4
アルコール度数 : 16.5%
酸度 : 1.8
原料米 : 兵庫県産山田錦
精米歩合 : 60%
説明 : 夏でも楽しみたい熟成酒!というのがテーマのお酒。マイナスの冷蔵庫で2年以上ゆっくりと寝かせ熟成させています。夏のお燗酒にもおすすめ。
料理 : 煮物、だし物、魚料理
今回のブラインドテイスティングは5人の方がご名答!
このイベントのリピーターも多く参加されていて、さすがみなさま舌がこえていますね。
ちなみに今回ブラインドテイスティングをした遊穂は、グラスのような空気に触れる面積が多いほうが美味しくいただけるとのこと。
また酸味のあるお酒が苦手な方は、お料理と合わせて飲むとまろやかになるのでおすすめだそうです。
また、今回は京橋の銘店「京橋酛」さんが、参加者限定でお申し込みができる特製おつまみセットを作ってくださいました。
○お弁当の内容
・稲荷寿司(いくらの塩漬け、山形のだし)
・よもぎと蕗味噌の田楽
・子持ち鮎のコンフィ スダチ添え
・仔牛とピスタチオのテリーヌのマスタード添え
・帆立のなめろうとキンカン卵の醤油漬け
・鴨肉の山椒煮(低温調理)
・焼きナスのペースト
・鰆の西京焼き
・自家製XO醬(干し海老と貝柱の辣油あえ)
途中、オンラインにて登場して下さった店主曰く、今回の「遊穂」というお酒はスパイシーなもの(マスタードや山椒、XO醬など)とかなり合うお酒なので、特製おつまみセットをアレンジしたとのことでした。合わせるおつまみによって、さらにお酒の魅力が引き立つなんて奥が深いですね!
そしてサプライズゲストで、杜氏の横道俊昭さんも大阪のご自宅からご登場されました。
横道さんが御祖酒造さんとご縁があり出会ったのは約15年前。
数ある酒蔵の中でこちらにお世話になると決めたきっかけを話してくださいました。
お酒の方向性やどういうお酒が作りたいかを社長に伺ったとき「酸のしっかりした食中酒をつくりたい」と社長からいわれ、「これは自分のつくりたいお酒と同じだ」とふたつ返事でOKしたそうです。この出会いから「遊穂」は始まったのですね。
○質問1
なぜ横道さんは能登杜氏になったのですか?
横道さん
「私は大阪で公務員をしていました。お酒自体は好きでしたが、日本酒はあまり飲みませんでした。恥ずかしながら日本酒の良さがそれまではわかっていなかったみたいです(笑) しかし28歳で美味しいと思う新潟のお酒に出会い、そこから日本酒を飲み始め、勉強をして行きました。
いろいろなお酒を飲む中で、共通して能登杜氏のお酒が好きだった。それで能登杜氏になろうと思いました。当時はどこの酒蔵も後継者不足ではあったんですが、能登出身者以外で能登杜氏になる人はほとんどいなく、面白いやつだと言うことで受け入れてもらえました。
○質問2
酒造歴は?
横道さん
「最初は滋賀県「琵琶の長寿」(池本酒造)で6年ほど勤めて技術を学びました。その後、能登杜氏の元で数年過ごし、当時「菊姫」にいた農口杜氏の元でも仕事をしました。初めて杜氏になったのは大阪の大門酒造です。
○質問3
“変わらないを感じさせない”美味しいお酒を毎年つくるときの取り組みはしていますか?
横道さん
「原料である米はその年の気候や作り手により風味だけでなく食感も違うので、米への対応を含め新しい設備を入れたり、日々工夫をしてます。」
○質問4
「食中酒」と言うことで、お酒に合うお料理の紹介あるのですが、お料理に合わせてお酒を作っているのか、お酒を作ってからお料理を合わせるのでしょうか?
横道さん
「実は出会った当初から私と社長の好みが非常に似ているんです。最初は好きな鳥の唐揚げに合うしっかりした濃い味のお酒を作ろうという話から作りました。
近年は年齢を重ねるにあたりだんだん食生活も魚料理にシフトしてきたので、これからは魚系に合うお酒が多くなるかもしれないですね。
基本的には料理酒だと思って作っているんです。料理酒というのは「料理を作る際に入れるお酒」としても「料理と合わせて舌で転がして飲む」というのもどちらもだと僕は思っています。
何に合わせるかというよりいろいろな料理に合わせるために、酸や苦味をだして料理と馴染むように計算しています。」
美穂さん
「先程杜氏も話していましたが、最初お酒を作るときは、好きな料理に合わせて作りました。ちなみに酒造がある石川県だと、海の幸にあうお酒が殆どなんです。ですがこのお酒を作り始めた頃、私の出身は東京、杜氏は大阪で正直石川県のソウルフードがあまりわからなかったんです。それなら無理に合わせるより、私たちの好きな料理や粉物にあったお酒を作ろうと思いました。」
○質問5
使用米はなにを使っているのですか?
美穂さん
「使用米の65%は石川県産。五百万石、ゆめみずほ 能登ひかり、百万石乃白、などを使っています。1番使っているお米はゆめみずほです。
県外は兵庫県産山田錦、長野県上伊那郡(南アルプスと中央アルプスの間)の美山錦、滋賀県の玉栄。
ちなみに酒造があるこの地域は能登で1番田んぼが多い地域ですが、酒米作りに適している訳ではないので、地元に拘ってはいません。むしろ「誰が作っているお米か」というところを大事にして、農家さんには拘っています。」
○質問6
米作りで、作る人を重視する理由は。
美穂さん
「米を見ただけで良しあしが簡単にわかる訳ではないので、信頼できる人が作っているお米を使っている。作って頂いている農家さんは皆さん真摯な方々ばかり。困ったことがあって兵庫の山田錦生産農家さんに相談したら、朝、車を飛ばして能登まで来て日帰りで帰っていかれたりとか、一生懸命にお付き合いして下さる。絶対的に信頼している。」
○質問7
使用している酵母は?
横道さん
「主に9号系の酵母を使用しています。ちなみに今回テイスティングとしてご用意したもの全て「熊本酵母」を使っています。9号系の酵母は、旨味と酸をしっかり出すこと、熟成に耐えられるということで選定しています。なお、地元のお酒に一部「金沢酵母」を使用しています。」
○質問8
お米やお酒の作り手の人柄は、お酒の味に出るものなのか。
美穂さん
「自分はそう信じたい。自分が他の蔵のお酒を飲むときも、造り手の顔が浮かぶお酒はとても好き。嗜好品なので自分もお酒のタイプに好みはあるが、造り手の顔が浮かぶと、好みのタイプのお酒でなくても「すごくいいな」と思う。当蔵もそうしたお酒を造りたいと思っている。」
質問や答えからわかるように、お酒造りってまるで芸術作品を造るみたいだと思いました。
途中に美穂さんが「早くお酒飲まんと!」と一言。
それに対して横道さんが「飲まんとね。口が回らないし。まあ僕はさっきから飲んでますが(笑)」
という素敵な会話がありました。何気ない会話で酒造りへの愛を感じる瞬間。
参加者の方はチャットに「料理人と蔵元のお話を聞きながらのお酒はなかなか贅沢」という感想も下さいました。
イベントの終盤には酒蔵ツアーも行いました。
*横道杜氏のお部屋兼分析室
酒造期に横道杜氏は電子ピアノを持ち込んでバッハを弾くのが心の癒しとのこと。音楽って気持ちも豊かにするのに大事ですね!
*洗米・浸漬
水を空気で洗米。洗米機にホースを繋ぎ、ザルに出てきたお米を濯ぐ。洗ったお米をタライにつけます。その年のお米によって浸漬時間が違うとの事。10秒違うだけでかなり味が変わるので、杜氏さんの経験の賜物です!その後、脱水機を使用。
*蒸米
10月に新しい甑が入る予定。前の甑は譲渡したので現在は甑がない状態。
*麹室
増設したばかりの室。1日目に蒸したお米をいれ保存するステンレスの台。
2日目には木の板に移動させます。木を使わない酒蔵もありますが、よく乾燥をさせたいために未だ木の板を使用。
異物が目立ちやすいように床の色を赤にしているんだそう。
他の酒蔵さんの床が緑の場所が多いと教えてくださいました。
*酒母室
酒母を担当する美穂さんの仕事部屋。(大好きな福山雅治さんのポスターがたくさんあり、チャーミングな人柄をみることが出来ました。)
酛摺りは大きなバーミックスのような機械で行う。これには参加者みんなびっくり。
木の櫂で摺ると最低でも人数が2~3人いるが、この機械だと1人でも可能。
木の櫂と機械のものと味を比較したところ、味に差はなかったので機械を使っているようです。
半切り桶は、木桶の管理するのに人数が難しいためプラスチック製を使用。木製の方が乳酸菌が棲むので、いつか変えたいとのこと。
*仕込み室
以前は大きなタンクが多かったそうですが、横道さんがきてから少しずつ変えていったとのこと。
ここでWi-Fiが切れてしまい、蔵見学は終了しました。
やはり神聖な場には電波をシャットする何かがあるんでしょうか?笑
お酒作りがとても貴重で神聖な芸術だということを、参加者の多くが感じた瞬間でした。
事前に日本酒3種を宅配便で郵送し、当日は石川県の御祖酒造店と茅場町FinGATE、参加者各自のご自宅を繋ぎ、約30名の方にご参加頂きました。
オンラインの良いところは会場の人数制限もなく、遠方からも参加が可能なことです。
今回は西は名古屋、北は函館からご参加頂きました!
参加していたみなさんも、自分たちのペースでリラックスして楽しみながら、蔵元さんの日本酒に対する想いを聞ける素敵な時間を共有できました。
美穂さんや横道杜氏のお人柄あっての「遊穂」。
「変わらないを感じさせない」まさしく「不変」的なお酒ですね。
お酒造りがとても貴重で神聖な芸術だということを感じ、このお酒と合う料理を探していきたいと、「遊穂」のファンになるそんなひと時でした。
「日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ」は、これからも月1回の頻度で開催予定です。お酒好きの方、これから日本酒について学びたい方、お気軽にご参加ください!
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