2026.01.20

2026年の幕開け。世界の最新トレンドが交差する街、銀座の中心で、日本の『はじまり』を告げる物語へと誘う扉が開かれました。舞台は、五感の全てで神話を体感する総合芸術『一粒萬倍』です。
この日、神話の世界に触れようと期待に胸を膨らませた多くの観客が集結。和と洋の音楽、古典と現代の舞が融合し、五感の全てで神話を“体感”する。そんな唯一無二のスタイルが、情報に溢れる現代を生きる私たちの心に、深く、静かに響き渡りました。新春の澄んだ空気のなかで繰り広げられた、魂を揺さぶる創世の物語。その時空を超えた旅をレポートします。

GINZA SIXの華やかな喧騒を抜け、エレベーターで地下3階へ。扉が開いた瞬間、それまでの喧騒が嘘のような静寂と澄み切った空気に包まれ、思わず背筋が伸びます。そう、ここが今回の舞台。ファッションやグルメの最先端の場所にありながら、時が止まったかのような神聖な空間、「観世能楽堂」なのです。

客席に座り、美しい舞台を眺めていると、日常の慌ただしさがすーっと遠ざかっていくのがわかります。そして、場の空気を浄めるように響き渡ったのは、山伏による「法螺貝」の荘厳な音色。まるで、これから始まる神話の世界への扉が開かれる合図のよう。この特別な場所が、私たちの心を非日常へと切り替える、最初の演出でした。

「日本舞踊に、現代舞踊?和太鼓に、チェロ?」
そんな驚きの組み合わせこそが、総合芸術舞台「一粒萬倍」の真骨頂。

日本最古の歴史書「古事記」をテーマに、この世界の始まりや、私たちが日々いただく「食」の起源を描く物語。その壮大な世界を表現するために、各ジャンルの国内トップクラスのアーティストたちが集結した、まさに“奇跡のドリームチーム”なのです。

「伝統芸能って、少し難しいかも…?」そんな心配は、ここでは無用。目の前で繰り広げられるのは、最高にクールで情熱的なアーティストたちの、一夜限りのスペシャルセッションでした。
五感で味わう、言葉の少ない舞台。古事記という壮大な物語を、果たして追いかけることができるだろうか…?
そんな観客の不安を、舞台が始まる前にそっと解き放ってくれる時間がありました。

舞台が始まる前、物語の流れを、とても分かりやすく紐解いてくださいました。
これから始まる満天の星空観賞の前に、星座の見方をそっと教えてもらうような時間。
あらかじめ物語という夜空の地図を心に描くことができたおかげで、私たちは「筋を追う」という思考から解放され、目の前で繰り広げられる音楽と舞が「何を感じさせてくれるのか」に、全ての神経を集中させることができました。
この日、客席には目を輝かせるお子さんたちの姿も多く見られました。きっと、この心遣いがあったからこそ、大人も子供も、誰もが置いていかれることなく、安心して神話の世界への旅に出発できたのでしょう。
最高の体験への“おもてなし”とも言えるこの心優しい招待状のおかげで、私たちはより深く、物語に没入することができました。

この舞台には、物語を細かく説明する台詞がほとんどありません。では、どうやって神話の壮大な世界を描くのか。それは、演者の身体、魂を揺さぶる音楽、そして私たちが普段意識しない「余白」でした。


言葉に頼らないからこそ際立つのが、息をのむ「静」の美しさ。能楽師や日本舞踊家が、すり足ひとつで場の空気を支配します。張り詰めた緊張感、一瞬の静寂という「余白」の中にこそ、神々の計り知れない感情が凝縮されているのが肌で感じられました。


その静寂に応えるように訪れるのが、魂を揺さぶる「動」のエネルギー。ボールルームダンサーと現代舞踊家が、全身で感情を爆発させます。和太鼓の力強い鼓動が大地を揺らし、魂に直接語りかけるような箏の切ない音色が天に響く。その二つの音が織りなす響きの中で、その肉体は言葉以上に雄弁に、喜びや怒り、悲しみを物語っていました。
特に、私が心を奪われたのは、箏とチェロの奇跡的な響き合いでした。日本の伝統的な鋭い爪弾きと、西洋の深く豊かな弓の音が、互いに問いかけ、そして応え合うようにして、一つの壮大な物語を紡いでいくのです。そのあまりの美しさに、涙がこぼれそうになりました。
これは「観る」のではなく、五感で「浴びる」舞台。頭で理解するのではなく、心で感じる。演者の息遣いや、音のない空間の響きまで含めて味わう、最高の贅沢がそこにはありました。

神話の世界に浸っていると、ふいに響き渡る、ジャズトランペット奏者の音色。ここで語られたのが、渋沢栄一と、その理念を受け継いだ盟友たちの物語でした。
「公共の為、他人の為にはあらゆる犠牲を忍んで奔走尽力するも、私利を図るの念がなかった」
そんな彼らの「利他の心」は、「一粒萬倍」が描く「命は生かし生かされている」というテーマと深く共鳴します。歴史と芸術が交差する知的なサプライズに、物語の深みが一層増した瞬間でした。

舞台のクライマックスで描かれるのは、「五穀の起源」の物語。食物を司る女神が、荒ぶる神に殺されてしまう、という衝撃的な展開を迎えます。
「なぜ、そんな悲しいことが…?」
しかし、その女神の亡骸から、稲や麦、豆といった五穀の種が生まれたのです。
そう、神話が伝えているのは、「食べること=他の命の犠牲の上に成り立つ」という、厳粛な真理。

私たちが毎日、何気なく口にしている「いただきます」という言葉。それは、巡り巡って自分の元へやってきてくれた、尊い「いのち」への感謝の心だったのだと、改めて気づかされました。演者が大地を踏みしめる「すり足」に込められた、大地の恵みへの感謝の祈り。その一つ一つの所作が、私たちの日常の食事を、少しだけ神聖なものに変えてくれるような気がしました。


終演後、ロビーで販売されていたのは、公演の余韻に浸れる特別なオリジナルグッズ。奇跡のお米と呼ばれる「イセヒカリ」でつくられた純米大吟醸と、一粒萬倍の刺繍が施され、伝統文様が描かれた手拭い。
ただの記念品ではなく、あの感動を持ち帰り、日常の中でふと思い出すためのお守りのよう。こんな素敵な形で体験をシェアできるのも、嬉しいポイントです。

「一粒萬倍」は、単なる舞台鑑賞ではありませんでした。それは、自分自身の「命」や「食」のあり方について、深く、静かに見つめ直す、まるで瞑想のような時間。そして何より、日本にはこんなにもクールで、世界に誇れるアーティストたちがいるんだ!という喜びに満ちた体験でした。
次にこの“奇跡のセッション”が開催される時は、ぜひこの唯一無二の体験を、あなた自身の五感で味わってみてください。きっと、明日からの日常が、少しだけ豊かに、そして愛おしく感じられるはずです。
写真撮影:新井勇祐
一粒萬倍 A SEED
【今後のスケジュール】
2026/1/31 愛媛県民文化会館
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