2023.02.02
こんにちは!
兜LIVE編集部です。
12月25日(日) 、『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。
今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。
江戸時代には日枝神社の門前町として栄え、酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。
東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。
平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広目、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。
今回は、三重県鈴鹿市で「作」を醸す清水清三郎商店の代表取締役清水慎一郎さんをお迎えしての開催でした。清水さんは、蔵元トークがスタートした2018年以降5回目のご登壇となります。過去4回、その時々の話題をお聞かせ頂きましたが、今回のお話のメインは、外国人へどう日本酒の魅力を伝えるかの苦悩(笑)に加え、本年7月に開催された国際ソムリエ協会・名古屋総会に合わせて開催された「参加者の三重県ツアー」と「国際日本酒会議in三重」について。いっしょに答えを探しましょう!!
*過去の兜LIVE! 蔵元トーク
2021年12月25日、2020年12月26日、2019年12月7日、2018年12月8日
・なかなかコロナが終わらないが、海外の大統領がマスクを着用しなくて良いというと、その国の国民はみな「パッ」と止めるが、日本では岸田首相が外でのマスクは不要だと発言しても、日本ではそんな発言がなかったかのように、みんなマスクをしている。そうした日本人の価値観で造った日本酒には意味があるのかなぁと思っている。
・兜LIVE!蔵元トークは今回51回めで、私は5回も参加させてもらい、大変光栄に感じている。
・世界情勢が変わっている中で日本酒の状況も変化しているいるが、残念ながら日本酒全体の生産量はまだ減っている。例えば、日曜日の夕方にTVをみて、美味しい食材で食事をしているシーンがあっても、アルコール飲料のスポンサーはビール会社が多いので、ビールを飲んでいるシーンはよく見るが、日本酒を飲んでいるシーンはほとんど出てこない。なんとか、BSでは日本酒を飲むシーンが少しは登場するが、、、もっと露出してもらいたいものである。
・まず、プロモーションビデオを観てもらいたい。
<三重酒造組合「Celestial Water」動画>
(※)ページの左下から動画を視聴可能。
・最近、海外の方々が日本酒を評価する機会に接することが多い。ワインは、「味に複雑さがある」、「余韻が長い」、「テロワール」といった表現を使うことが多いが、日本酒をこれに当てはめようとすると無理がある。例えば、「テロワール」といっても、当社ではコメを作っていない。
・ビール業界では、世界のどこでも生産されているが、麦の原産地については話題にならない。一方、アルコール発酵とは関係のないホップの原産地については話になる。ビールの醸造は麦芽(モルト)の糖化、熱処理殺菌、酵母を入れて発酵という過程になる。そこに、ホップを入れることで色々な味わいが出て、特徴のあるビールができる。
・ワインは糖化という過程がなく発酵だけ。ワインの中にある果汁が複雑味を与えている。
・日本酒の場合、1つのタンクの中に、麹、蒸米、酵母が入って発酵が始まり、麹はデンプンを糖に変え、酵母がアルコールに変える。麹、酵母がいろいろな作業をしている。お米はブドウと違って酸を持っていないが、発酵によって酸を出す。アミノ酸も香りの成分も造り、海外の人は日本酒にジュースが入っているのかと勘違いすることがある。酵母が造り出した香りもあり、麹と酵母の相互作用によって、日本酒の複雑さが発生する。
・利き酒をすると、「すっきりしている」とか「切れが良い」といったシンプルな表現を好むが、実際は複雑な味である。この複雑な味をどう表現し、どうやって価値があるものと説明すればよいのか。米は日本酒を造るうえで大切なものだが、米の味が直接にお酒の味になる訳ではない。並行複発酵で麹と酵母の相互作用が産み出す、酸や香りの成分が、複雑な味わいをもたらしている。これをワインとの対比で言うならば、日本酒は、いわば、「並行複発酵により、醪の中で果汁を造っているようなもの」といえるのではないか。
・甘酒では、麹で糖化させたもので、単にお湯に砂糖を溶かした味ではない複雑な味。これは麹が作ったコメの果汁であり、これをどうやって説明したらいいのかが悩みの種。うまい価値のつけ方がないものか。
・これまで、日本酒造りでは、原材料の米や精米歩合が大事だと言っていた。山田錦の価値とは何か。木材で例えるなら、「正目の木」(節目のない材木)ということか。節目のある材木は、大工が鉋をかけるときに、節で「カツン」と止まり、そのまま力を入れて鉋をかけると凸凹になる。上手い大工は力加減を変化させることで、鉋をかけると同じような鉋くずができ平らな表面になるが、下手な大工は凸凹した表面になる。「正目の木」のような山田錦は、いろいろな杜氏が酒造りをしても、多種多様な技術を受け入れ美味しい日本酒になる。
▼精米具合が高ければ良いお酒?
▼原材料が高いから良いお酒?
▼お米が高いから高い酒?
・お蕎麦屋さんにいって、美味しいお蕎麦を食べた時に、北海道産だとか、信州産だとか、そば粉を誉めるか。そば粉を誉めるのではなく、蕎麦を作った人を誉めるのではないか。
・同じ材料を使ったから同じ値段とするか。クックパックを使った人の料理と長い経験のある人の料理の値段は同一とは思わない。
・海外の方は、海外にも山田錦があるが、日本の山田錦と何が違うのか、同じ山田錦なのに何で味が違うのかとよく聴かれる。
・現在、そういう状況になってきたので、自分たちが造ってきた日本酒にはどんな価値があるのかを考えるのに良いタイミングだと思う。
・2022年7月に、国際ソムリエ協会の総会を初めて日本で開催。開催地は名古屋。訪問メンバーは、20か国、30名のトップソムリエ。
・これにあわせて、当社への訪問の話があり、私から「折角だから三重県に1泊して地元を知って欲しい」と三重県ツアーをアレンジした。
・日中は、清水清三郎商店、元坂酒造、かつおの天白、鳥羽のミキモト真珠島、伊勢神宮などを訪れるエクスカーションを実施。夜は志摩観光ホテルで「国際日本酒会議in三重」を開催。
▼エクスカーションについて
・清水清三郎商店では、蔵見学と、新築した事務棟にあるテイスティング・ルームでテイスティングを実施。その後、西麻布にある伊勢料理のお店「伊勢すえよし」の田中佑樹さんによるお料理を提供。
―― 「かつおの天白」で鰹節に触れて、当社での食事中に、「伊勢すえよし」田中さんが出汁についてトークとデモンストレーションを実施。
―― 2020年世界最優秀ソムリエのオリビエ・プシエ氏は、「フレンチ本膳」のペアリング・ディナーのあと、「今まで食べた中で5本の指に入る最高のディナーだった。」と絶賛(なお、同氏は辛口な発言で有名とのこと)。
▼「国際日本酒会議in三重」について
・「国際日本酒会議in三重」は、
1.パネルディスカッション、
2.三重の酒8種類と樋口シェフの「フレンチ本膳」とのペアリングディナー、の2部構成。
・パネルディスカッションでは、「日本酒をどのように世界に広めるか」を討議。
・2020年の世界最優秀ソムリエ、オリヴィエ・プシエ氏はマリアージュの重要性を力説。「アスパラガスに合わせるといっても、ホワイトアスパラガスとグリーンアスパラガスでは異なる。ホワイトアスパラガスには特別純米酒、グリーンアスパラガスには美山錦の純米大吟醸が合う」と説明。
<参考:2020年世界最優秀ソムリエ、オリビエ・プシエ氏について>
(※)オリビエ・プシエ氏が優勝した際の記事。それまでの歴代の最優秀ソムリエについて記されています。
・フロア参加者である各国を代表するソムリエとも、自国の料理とのマリアージュについて、活発な意見が交わされた。
★ ソムリエは世界中におり、レストランで提供される飲み物はワインから水、お茶まで取り仕切る存在。そこにはシェフも口出しできない。
★ ソムリエの皆さんは、顧客に最高の経験をしてもらうための情報を欲しているので、日本酒の良さを知ってもらえば、あとは、彼らが日本酒を広めてくれる。
▼日本酒の種類
「作」 雅乃智 中取り 純米大吟醸(山田錦50%精米)
「作」 塊山一滴水 純米大吟醸(山田錦40%精米)
「作」 奏乃智 純米吟醸(50%精米)
―― お酒の説明資料は和英併記。英語の説明では、グルコース濃度、pH、酒石酸
(Tartaric acid)の記載があります。テイスティング・コメントは、MW(マスター・オブ・ワイン)大橋健一氏によるもの。
・3種類の説明を聴き終え、お待たせしました。乾杯!
・毎回、恒例の集合写真です。生まれて5か月の赤ちゃん参加!最年少記録を更新しました(笑)
・清水さんは、5回目のご登壇でしたが、毎回、新鮮なお話を聴かせていただいています。昨年5月に三重県鈴鹿市の蔵に行っているのですが、早くも行きたくなりました。
<番外編:清水さんは、翌日、ラーメン二郎を初体験!二郎の店主は日本酒大好きです。>
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