2022.02.15

第42回『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。

こんにちは!

兜LIVE編集部です。


1月22日(土) 、ハイブリッド形式(現地開催&オンライン)で『日本酒を蔵元トークとテイスティングで楽しむ』を開催しました。


今では国際金融都市といわれる日本橋兜町。

江戸時代には酒問屋で賑わっていた「日本酒の聖地」でした。東京証券取引所において初上場時の5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいるとのこと。

平日は賑わうこの兜町に、休日にも人が集まってもらいたい。そんな願いから日本各地の蔵元を招き日本酒について学び、味わい、楽しく交流し、その魅力を、兜町の魅力といっしょに広目、お酒が地域と人をつなぐ場所...。そんな場所に発展するように願いを込めて、毎月1回日本酒セミナーを開催しています。


今回は、岐阜県美濃加茂市で「津島屋」、「御代櫻」を醸す御代桜醸造の第6代蔵元 渡邉博栄さんをお迎えしての開催でした。昨年はオンラインでしたが、今回は茅場町にお越しいただき、リアルでも楽しんでもらえたし、函館や三重、愛知、山口の方にもオンラインでご参加いただきました。ありがとうございます。


内容は、以下のとおり盛り沢山。「御代櫻」と「津島屋」の商品戦略について最新動向をお聴きできたほか、岐阜県オリジナルG2酵母、醪品温をリアルタイム把握・記帳できるシステムの検討など、色々とお聞きすることができました。


◆自己紹介

◆経営理念&2022年度スローガン

◆会社の所在地について

▼岐阜県について

▼美濃加茂市について

▼中山道太田宿豆知識

▼美濃加茂市の気候

◆会社概要

◆既存の製造設備

◆令和3酒造年度の新規製造設備

◆最近の蔵の様子

◆原材料:米

◆原材料:水

◆酒造りについて

◆酵母

▼G2酵母について

◆2021年の振り返り

◆With & Afterコロナ

▼新商品について

▼商品評価のポイント

▼情報発信の充実・直販の見直し

▼DX導入

▼ブランド戦略の見直し

◆今回のお酒について

◆Q&A


◆自己紹介

・御代桜醸造の六代目蔵元。1976年生まれ、45歳。大学では経営学を専攻。大手ビール会社に勤務ののち、御代桜醸造へ入社。1酒造期間、自社で造りに従事した後、広島県東広島市の独立行政法人酒類総合研究所で酒造りを学んだ。

・趣味はランニングと登山。酒造りをしながら夜明け前に毎日走っている。

・妻の動物好きが影響して、現在、シベリアンハスキーやチワワ達と同居している。人間よりも犬の方が強いという状況。


◆経営理念&2022年度スローガン

・経営理念として、「創造・努力・信用」という言葉を先代から引き継いでいる。

・毎年元旦にスローガンを変更する。2022年度スローガンは「現場・現物・現実」とした。製造業では、当たり前の事とされている言葉であるが、そこに改めて目を向けて、お客様に感謝の心を持って頑張ろうと言っている。

・昨年は、コロナ禍で沈んだ世の中を盛り上げたいと「ワクワクを積み重ねよう」をスローガンとしていた。今年は原点に返り、物造り・お客様創りをしっかりやろうということで「創造を積み重ねる」という言葉をキーワードとしている。


◆会社の所在地について

▼岐阜県について

・岐阜県は、関東・関西・名古屋という大きな消費地へのアクセスが非常に便利というメリットがある。

・岐阜県は、全国で8つしかない内陸県の一つ。県土の約8割が豊かな森林。水資源にも恵まれ、都道府県別水力エネルギー量は全国1位。

・酒蔵の数は42蔵あり、全国で7位。1位の新潟県などに比べると小規模な先が多いが、それぞれの蔵元が切磋琢磨し、個性豊かなお酒が造られている。

・岐阜県はモノ作りが盛んな土地柄。「包丁」、「理髪用刃物」、「和食器」、「洋食器」、「タイル」、「木製机・テーブル・椅子」等の出荷額シェアが全国1位となっている。

・お酒に関係するモノとしては、岐阜県大垣市が枡の生産で日本一であり、全国シェア80%を誇る。「大橋量器」という枡メーカーがあり、モダンでお洒落な枡も作っている。


▼美濃加茂市について


・蔵は、旧中山道の太田宿という宿場町にあり、江戸時代の雰囲気が残っている。当地出身の著名人としては、小説家の坪内逍遥や、歴史学者の津田左右吉などがいる。

・美濃加茂市は「オミクロン株緊急事態宣言」を発令。岐阜県に「まん延防止等重点措置」が適用されているほか、岐阜県独自の「第6波非常事態宣言」も出され、東海三県では、岐阜県だけが飲食店での酒類提供を終日禁止する扱いとなっている。

・市の花はアジサイ。「津島屋」のブランドロゴでも使用している。アジサイは小さな花が集まって大きな花を咲かせるが、自分達も、そうした酒造りがしたいと思っている。


・食の世界遺産にも登録されている「堂上蜂屋柿(どうじょうはちやがき)」という干し柿がある。名人が作ると1個数千円の値が付く。


・木曽川のほとりに「リバーポートパーク」というバーベキュー場が出来た。今は難しいが、先々、ここで是非お酒の会を行いたいと考えている。


・美濃加茂市は健康をテーマにしたまちづくりを行っており、2022年1月から「中部国際医療センター」が稼働。非常に大きな病院。屋上にヘリポートが2つあり、将来的には海外セレブ向けのメディカルツーリズムも目指していると聞いている。


・美濃加茂市を写真で俯瞰すると、真ん中に木曽川が流れ、対岸が可児市になる。山に囲まれており、山と川に近い土地である。


▼中山道太田宿豆知識

・宿場町の中でも、馬籠宿や馬籠宿などに比べて地味な場所と思っていたが、意外と面白い歴史が残っている。

・ここには、中山道三大難所の一つ「太田の渡し」があった。渡船料金は、1人6文、馬9文との記録が残っている(一文は10~20円)。

・山の第一人者のお墓が、地元の祐泉寺にある。槍ヶ岳や、岐阜県の最高峰笠ヶ岳を開山した播隆上人と、日本ラインの命名者でもある地理学者の志賀重昴(しげたか)氏の墓である。


・蔵のすぐそばには、重要文化財・旧太田脇本陣林家住宅がある。約250年前の建物が現存しているのは、太田宿に地震が少ない証拠と言われる。なお、隣の宿場の建物は濃尾地震で倒壊している。

・「桝形」の形態を現わしている宿場であるのも特徴である。道が突然折れ曲がるようになっており、外的から防備する要塞の役割を担っていた。

・2021年大河ドラマ「晴天を衝け」との関連では、非業の死を遂げた天狗党党首の武田耕雲斎が、1864年11月29日に太田宿の本陣で宿泊した。そのお礼として兜と歌碑が残されている。

・2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に関連の深い場所もある。1221年に後鳥羽上皇が鎌倉幕府を討幕する為に挙兵した承久の乱における大井戸の戦いの古戦場がある。2000人が美濃加茂市側に布陣したと伝わる。但し、当時は太田宿がまだ存在しておらず、中山道は東山道と言われていた。


▼美濃加茂市の気候

・年間を通してみると、温暖で年間降水量は多め。冬の酒造期は乾燥し、安定的な気候のもとで酒造りに取り組むことができる。一方、夏は水害につながる寸前のゲリラ豪雨が増えた。


・気温は、夏は40度に迫る猛暑日がある一方、冬はー5度以下まで冷え込む日があるなど、夏と冬の寒暖差がとても大きくなっている。令和3酒造年度は平年よりも寒い日が多い印象である。


・そうした気候の変化に対応した製造設備や貯蔵設備を順次導入中。今後は安定した原材料確保も大切な経営課題。昨年は雄町の希望数量を確保できなかった。

・蔵は木曽川に近い。昨年の「兜LIVE!!」では、2020年7月に危険水位を超える増水となったお話をした。2021年は、8月15日に線状降水帯(積乱雲)の発生による猛烈な集中豪雨で、危険水位を大幅に超える増水となった。


・この地域は、水の恩恵と脅威の両方と向かい合ってきた歴史があり、それはこれからも続くものと思っている。


◆会社概要

・創業明治26年。今年で129年となる。来年130周年ということで、色々と企画をしたいと考えている。

・杜氏は酒向博昭で地元出身。20代から杜氏を務めている。製造担当は8名で、うち4名がパートタイム。酒造期は自分や営業担当も蔵に入って、酒造りをする。

・営業のベテラン社員が定年退職し、平均年齢が少し若返って40代が中心。とはいえ、杜氏も20年以上の経歴となり、技術継承の観点もあって、新規採用を計画中。


◆既存の製造設備

・過去、普通酒や本醸造を大量に製造していた時代があり、蔵の敷地は広く、製造設備も大きいものがある。そうした中、現代において自分達の造りたいお酒を造るにはどうすれば良いかという観点から、順次設備を置き換えてきている。


・新しいところでは、ウッドソン社の「圧密式」洗米機がある。連続洗米を行うのが特徴。

<参考:ウッドソン社の「圧密式」洗米機

・吟醸用小型蒸米機は、総米800kgと1200kgのものを、計2台入れている。

・一方、放冷機は古く、昭和49年の導入。しかし、必要に応じて部品を替えれば問題なく稼働する。

・一番困っているのは、薮田式自動醪搾機。一番初期のA型を使用。これの入れ替えが直近の大きな課題。

・KT式吟醸瓶燗急冷機は高品質なお酒を造るために導入した。

・大型冷蔵コンテナやプレハブ冷蔵庫を増やしている。気候についてお話したが、夏場の高温からお酒を守るほか、無濾過生原酒の氷温貯蔵が必要なためである。

・生産能力としては、仕込むだけならば1,000石超まで造れるが、貯蔵出荷管理の品質面を考慮し、製造量は800石程度としている。

・品質を最優先に考えながら、高付加価値型商品を適度に製造可能な体制を模索中。現在、小仕込みで多くの種類を造っているが、もう少し商品の絞り込みをして、より良いものを、適度なボリュームで製造できる方向に考え方を変えてきている。


◆令和3酒造年度の新規製造設備

・「HOSHIZAKI製氷機」を更新した。当社は井戸水を使用しているが、特に限定吸水には水温が少し高いので、冷やすのに氷が必要。また、もろみの温度調整にも使用する。


・「京都電子 迅速アルコール測定器キットSD-700」を新規導入。アルコール測定は負担のかかる作業で、試験管に試料を入れてアルコールランプで蒸留し、時間をかけて分析する必要があった。また、その結果の評価も人によって若干のブレが生じる。


・しかし、この測定器では、誰がやっても同じ結果が得られる。また、ろ過時間や蒸留時間も短縮でき、試料量も30ml程度で測定できる。

・これまで、測定は杜氏が担当していた。測定器の導入で、作業を分担しつつ、少数精鋭で酒造りをしていく体制を作りたいと思っている。こうした観点からの設備導入は、これからもどんどん続けていきたい。

◆最近の蔵の様子

・写真で最近の蔵の様子を紹介する。先週の日曜日の朝7時。この日は出品酒クラスの純米大吟醸の留め仕込み。快晴でカラッとした天気となり、自然放冷も順調だった。


・蔵を外から見た時に出ていた蒸気は、蒸米作業を行う甑から出ているもの。105度前後で1時間程度かけて蒸米を行う。米の内部をα化して麹菌を生やしやすいようにするほか、米を殺菌する目的がある。


・蒸し上がりの時間は、以前は朝6時頃だったが、今は夜明け直後の方が気温が低いということもあり、8時前後としている。但し、一部の製造メンバーは甑の準備などのために4時や5時に出勤している。


・自然放冷は、人が蒸米を運び、布の上に手作業で広げて、自然の冷気で放冷する。手間もかかり、「熱い」ので大変である。

・麹米の場合、あまり冷ましすぎると麹菌が生えにくくなるので、厚めに広げて、麹室の温度である30度程度まで冷まして麹室に運ぶ。掛米の場合、薄めに広げて、一粒一粒を締まった蒸米に仕上げるようにしている。

・ウッドソン圧密式連続洗米機による洗米では、ジェット気泡で洗米して糠を剥がし、糠を含んだ水をすぐ米から分離するため、糠の再付着が防げる。泡がクッションになるので米も割れにくく、蒸米が順調に行えるようになった。


・連続式で流れる部分をザルに変えれば、10kg単位で洗うこともでき、非常に便利な機械である。

・次は昨日の醪の様子。現在は泡無し酵母を使用するので、比較的おとなしく発酵する。写真は総米640kgの純米大吟醸で、お酒になると原酒で倍の1280Lぐらいになる。タンクのある場所が狭いので櫂入れがしにくく、留の仕込みは特に醪が重たい状態で非常に重労働になる。


・次は、ヤブタからお酒が出てきているところの写真。ヤブタが古いので心配したが、何とか今期も元気に動いている。


◆原材料:米

▼「御代櫻」使用米

・「御代櫻」ブランドは主に岐阜県産米を使用することとしている。メインは地元で契約栽培して頂いている「あさひの夢」で、精米歩合は50%、60%、70%の3種類。

・岐阜県の酒造好適米「ひだほまれ」を使用した純米酒も造っている。しかし、割れやすいと言われており、50%まで磨くとかなり割れる。高品質な酒を造るには心許ないので県の方で新しい酒米の開発をしているが、時間がかかっている。


▼「津島屋」使用米

・「津島屋」では全国各地の優良とされる酒造好適米を積極的に使用。自蔵の水や技術との相性も考えながら、美味しさを模索している。

・長野県産「美山錦」、「山恵錦」、兵庫県産「山田錦」、岐阜県産「山田錦」、広島県産「八反錦」、北海道旭川市産「吟風」、岡山県産「雄町」を使用。

・令和3酒造年度は新しい品種は使用せず、令和2酒造年度に初使用した「山恵錦」の相性など、色々なことを確認しながら酒造りを行っている。来期の構想はある程度あり、若干変えていくかもしれない。


◆原材料:水

・木曽川の伏流水を、5m程の井戸から汲み上げて使用している。硬度は中軟水で、甘く感じられる、口当たりが良く優しい水。水の特徴がお酒に出ていると思う。

・水には、鉄分のように酒を悪化させる成分や、酵母の働きを助ける成分がある。当蔵の水は、悪い成分が少なく、良い成分が適度に含まれている。水がただキレイというだけでなく、醸造用水として使いやすい。ふんだんに使えるのも有難い。

◆酒造りについて

・日本酒造りの基本は「一麹、二酛、三造り」と言われているが、その前段階である原料処理が重要であると感じる。そこで失敗すると、後の工程は上手くいかない。

・そうした観点からいえば、お米の育成から手掛ける酒蔵も増えている。原材料からどう考えるかというのは、これからもっと良い酒造りをするには大切なポイントだと思う。

・設備には大きなものや、古い物もあるが、手作業を増やすなどして丁寧な酒造りに努めている。

・三段仕込みは、江戸時代以前に確立された伝統的な手法であるが、そこに、最新の酵母技術等を盛り込んで、「伝統と革新の融合で醸す繊細な酒造り」により、自分達独自の味わいを生み出したいと考えている。


◆酵母

・純米大吟醸・純米吟醸では、スタンダードなK-1801(当方注:「k」は「きょうかい酵母」の頭文字)のほか、カプロン酸エチルを少し控えめに出すK-1901も使用。今年は初めてG2酵母を使用。岐阜県独自の酵母で、後ほど説明する。M310酵母も使用。

・純米酒・普通酒では、ヒトケタ酵母とかオールド酵母と呼ばれるものを使用。K-901のほか、同酵母の派生で少し酸を強めに出すKT-901も使用。

・最近のトレンドであるK-701は暫く使っていなかったが、今年、酒質の見直しの中で復活させた。山田錦との組み合わせで美味しい純米酒を造りたいと思っている。

・昨年初めて使ったのがK-8。全国でも使っている蔵は少ない。味が濃く、酸が強く出るのだが、頒布された時代は淡麗辛口が求められていたため、時代に合わず廃番になっていた。

・当蔵で、酸や旨味のある酒を造りたいと思い、日本醸造協会に問い合わせたところ頒布可能と言われ、使用することとした。K-8には泡なしが無いので、泡あり酵母となる。繊細な醪管理をしないと汚染などの心配があるので、久しぶりに良い勉強となった。

・K-8は、K-6(新政酵母)から分離された酵母。今年、「K-8のオリジナルに当たるK-6を使用したことがないね」という話になり、初めてK-6を使用した。K-8とK-6を同時に仕込み、どう違うかというテーマで造った。既に上槽が終わっていて、興味深い結果が出た。同時に商品化する予定があるので、是非とも飲み比べていただきたい。

・自社独自の酵母としては、ワイン醸造用酵母がある。かなり特殊な酸が出る。面白い酵母で、今後も大事にしてゆきたい。

・吟醸系は香りを出す酵母を使用するが、単純に香りだけ高いお酒だと香水を飲んでいるようで美味しさを感じられないことも多い。そのため、香りを出す酵母と、酸や旨味を出す酵母をブレンドする「混合仕込み」を基本として酒母を育成していく。

・吟醸系は殆どが混合仕込み。G2酵母は今年初めてだったので単独で使用したが、殆どは、配合を変え、試行錯誤しながら造っている。最近は「食事の時に飲める吟醸酒」をテーマに、香り系酵母を使いつつも、香りを抑えめに造ったりしている。

・ヒトケタ酵母については、改めて向かい合うと、味わい深かったり、熟成に強かったり、奥が深いと思っている。


▼G2酵母について

・岐阜県産業技術センター開発による岐阜県オリジナル酵母。2018年冬、岐阜県内15蔵の試験醸造からスタート。この時は、当蔵はK-1801等に注力していたため、未知の酵母による影響を懸念し、参加しなかった。

・1997年に開発された岐阜県オリジナル清酒酵母「G酵母」を元に育種された。なお、G酵母は、その後派生したものとして、G酵母泡あり酵母、多酸性G酵母がある。

・G酵母は酢酸イソアミル系でK-701等に近い。当蔵はカプロン酸エチルを生成する酵母が欲しかったのでG酵母は使ってこなかった。

・G2酵母は、従来のG酵母と比較すると、3倍以上のカプロン酸エチルを生成できる。華やかなリンゴ等の果実系の香りを表現する。K-1801よりやや強いという印象。

・従来のG酵母やK-1801と同程度の強力な発酵力を有する。軽快な辛口酒に対応可能で、すっきりとした飲みやすさが表現できる。また、厳冬期の低温下においても、比較的安定した醸造が可能。飛騨地方でも重宝すると思われる。

・今期、地元美濃加茂市産契約栽培米との組み合わせで、純米吟醸を試験醸造。これによりALL岐阜酒を造ることができ、岐阜の魅力を発信するという観点から、意味のあることだと思っている。


◆2021年の振り返り

▼日本酒イベント回数(オンライン含む)

・2019年は約120回(規模の大小は問わず)。2020年は約17回。2021年は12回。

・オンライン日本酒会は落ち着いた印象。11月に「日本酒ゴーアラウンド」がリアル開催されるなど、リアル開催の嬉しさを改めて感じた。貴重なリアル対面型イベントをどのように計画して活用するか、時にはどのようにリスクを回避するのかも含めて、とても大切だと考える。


▼蔵元出張日数(岐阜県外へ行った日数)

・2019年は約155日、2020年は約30日、2021年は25日となった。オンラインの打ち合わせが日常的になった。

・コロナ前よりもSNSによる情報発信が重要になった。インスタグラムも細々と続けているが、蔵の店頭で商品の画像を見せて「これありますか?」と問われることがある。見て頂いている人がいるのだと改めて感じた。

・個人的にも、インターネットショッピングをより利用する環境になった。趣味のトレランシューズなどは、名古屋まで行っても買えないことがある。それをメーカー直販サイトで買えるのは凄く便利なことだと思っている。

・お酒も、インターネットが良いという訳ではないが、身近に売っていない場合にも手に入れられるということの価値を考える必要はあると思う。


▼売上

・総売上は、対2020年比で105.1%だった。10月以降のコロナ禍の落ち着きや、繁忙期の12月に向けた取り組みが功を奏した。

・当蔵は、輸出(北米・アジア)が比較的早期に回復した恩恵を受けたが、地元だけで販売している蔵は厳しかったかもしれない。

・業務用市場の苦戦を前提として、家庭用の販売施策を充実。元々、特に津島屋では業務用の一升瓶のアイテムが多かったが、2021年は720mlを重視した。パッケージ重視にも取り組んだ。卸様との取組み強化も行った。

・「創造しよう」という話をしたが、新商品の投入を例年以上に行った。既存商品も、味やパッケージで何か一つでも変化を加えるなど、商品リニューアルを増やした。

・社内的な話としては、早期商談の実現等、基本的な営業活動の実行にも取り組んだ。

・それでも、対2019年比は、87.6%なので、まずはコロナ禍前まで戻せるよう、今年も頑張っていきたい。


◆With & Afterコロナ

▼新商品について

・令和3酒造年度も続々と魅力的な商品を創り続ける。2月以降、色々な商品を予定している。

2022年2月

・津島屋外伝 純米酒 Nordwind Perlwein 2022

・津島屋外伝 純米吟醸 prototype S 2022 Black Label

・津島屋外伝 純米吟醸 prototype S 2022 Green Label

⇒prototype S 2022 Black LabelはK-8を使用。Green LabelはK-6を使用。飲み比べて頂くと面白いと思う。

2022年3月

・御代櫻 純米吟醸 Leaf

・御代櫻 寒造り純米大吟醸 Sakura 他

⇒「御代櫻 純米吟醸 Leaf」が、G2酵母を使用したお酒。これについてのご感想は是非お聞きしたい。


▼商品評価のポイント

・少し流通向けの話になる。お酒を造って、お客様に届けるために考えるポイントを整理している。


①価格帯

⇒商品の価格帯がお客様のニーズや、市場(ターゲット)に合っているかが大事だと思う。ただ安ければ良い訳ではない。求められる品質を、求められる価格で提供することが大事だと考える。競争力も大事。

②商品取引条件

⇒流通向けだが、納入価格とか流通マージンとか。こうした点も工夫するとお客様の評価に結び付く。

③味わい

⇒お客様が満足する味わいになっているのかが大事。自分達が伝えたい味というものもあるが、「どういった味が求められているか」、「特徴は明確か」といった点を考えながら表現してゆきたい。

④新規性・独自性

⇒何かどこかに目新しさ、自分達らしさを盛り込みたいと考えている。

⑤機能性

⇒例えば、商品が扱い易いかという点についていえば、生酒は冷蔵庫に入れる必要があるので扱いにくい。当社は生酒が得意だが、特に贈答の場合、贈られた方が生酒をどう管理されるか分からないので、火入れのお酒も大事だと感じる。

⑥パッケージデザイン性

⇒見た目の品質も大事だと考えている。

⑦ブラッシュアップして育成していける可能性

⇒最初に欠点があっても、魅力的なら、改良して伸ばしてゆければと思う。

・これらのうち、「新規性・独自性」は、同質化が進んでいる日本酒業界にとって大事だと思う。また、「ブラッシュアップして育成していける可能性」も大切にしていきたい。


▼情報発信の充実・直販の見直し

・公式HPは、自分が蔵に戻ってから全く見直していなかった。酒蔵からきちんとした情報を発信することは大事だと思っている。

・特に「津島屋」は、自社からの情報発信を全くしていなかった。特約店様に販売のプロとして情報を伝えて頂くことを念頭に置いていたからである。しかし、世の中に商品が溢れる中、酒販店としても全ての情報の把握は難しくなっている面がある。

・また、蔵から情報を得たいというお客様のニーズも感じるようになった。そこで、HPのリニューアルを2022年2月上旬に予定している。購入可能な店のリストや、商品情報も充実させたい。

・また、この度ECサイトを開設した。もっとも、ただ既存商品を販売するよりも、ここでしか買えないものを作るとか、地元コラボで作ったものを紹介するとか、そうしたものの発信に使用したい。


▼DX(デジタル・トランスフォーメーション)導入

・特に製造現場への導入が大事だと考えている。現在の製造現場は、杜氏や蔵人が現場に行って温度計を挿して確認するとか、「そろそろ麹が目的の温度になりそうだから見に行く」という形になっている。

・これに対し、システムを導入し、温度計を設置し、データを飛ばせるようにすることで、温度経過をスマホやPCで確認できるようになる。

・タンクを冷やすクーリングロールに電磁弁があり、設定により品温が操作できる仕組みだが、それを遠隔で操作できるようになるとすれば、大変便利になる。

・経過簿のグラフも、手作業だと、測定時点の記録を繋ぐため、ギザギザになる。ずっと計測が続けられれば、より精緻な温度変化を知ることができる。また、酒母や醪の温度変化についての記帳義務も自動記録出来て、手作業から解放されるというのは革命的な便利さだと思う。

・仕事がしやすい、良いお酒を造りやすい環境を整備した上で、新しいメンバーを迎えて、より良い酒造りが出来る体制の構築に繋げていきたい。


<参考:品温管理のシステム化について>

(ラトックシステムと第一工業、協業で酒造の品温管理支援を強化~「もろみ日誌」と連携して品温管理機器をIoT化~>()(


▼ブランド戦略の見直し

・「津島屋」は特約店の限定流通。こだわりの商品群をお届けしている。様々なお米を使用し、無濾過や滓がらみなど商品数が多いブランド。

・「御代櫻」は代々引き継ぐブランド。自分の代になってから、より岐阜県に特化した酒造りをしてきている。今回、G2酵母の導入で、より岐阜に特化することができた。このように、更に尖らせていくことができると考えている。


・一般的に、純米大吟醸から普通酒まで一通り揃えていることが多い。しかし、「どれを飲んで欲しいですか?どれが一推しですか?」とお客様に問われて答えられないようでは本末転倒だと考える。

・平均的であるとか、総合的であるということもメーカーとしては大事ではあるが、自社のブランドをより強くするには、進化させる必要がある。「尖」という字は、「大」の上に「小」が乗っている。小さい蔵が大きな蔵に勝つには、尖らせるしかないと思う。

・令和4酒造年度には、「津島屋」で、もっと尖らせていきたい。130周年ということで「御代櫻」も色々やりたいことがある。ブランドの進化を急いで実行したいと思っている。

◆今回のお酒について

①  「津島屋外伝」 純米大吟醸 四十五才の春 (R2BY)

・岐阜県本巣市(もとすし)産契約栽培米山田錦50%精米、日本酒度:+1.0、アルコール度数:16度、酸度:1.4。

・昨年(2021年)の春に販売を開始したお酒。10か月程度、マイナス5度の冷蔵庫で氷温熟成した無濾過生原酒。昨春よりも旨味が増しているのではないかと思う。

・「四十五才」の意味について良く尋ねられる。弊社の杜氏が28歳の時に初めて全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、「二十八才の春」という酒を発売。それから毎年、杜氏の年齢を冠したお酒を販売し、今回で18年目となる。


①  「津島屋」 純米吟醸 廣島産八反錦 滓がらみ Tropial∞ R3BY

・広島県産八反錦55%精米、日本酒度:-3.0、アルコール度数:16度、酸度:1.7。

・2022年1月20日に蔵出ししたばかりのお酒。八反錦は早生で、淡泊なお酒に仕上がりがちだが、このお酒は滓成分を残すことで新酒から味わいに複雑さを出している。



③「津島屋外伝」 純米酒 prototype M 2021 another sky

・長野県産美山錦60%精米、アルコール度数:14度。酒質詳細は非公開。

・prototypeシリーズでは、これまで、色々な酵母を使用したり、アッサンブラージュをしたりしてきた。そうした一連のチャレンジの集大成ともいえるお酒。Mは美山錦の頭文字から。

・美山錦の純米酒をベースに、広がりのある甘みや印象的な酸を出しており、「日本酒らしさ」と「日本酒らしくなさ」の両面を持ち合わせている。料理との相性も幅広く、自分は今、非常に好きなお酒。


◆Q&A

(Q)酵母の混合仕込みについて教えて欲しい。

(A)規模がそれなりに大きい酒蔵であれば、2酒類の酒母を立てて、分量で混合割合を決めた方が再現性は高くなる。当蔵の規模だと、それをやると大きな仕込みになってしまう。そのため、酒母に2種類の酵母を投入し、その量やタイミングなどで割合を決めている。


(Q)パッケージ重視というお話があったが、具体的にどのようなパッケージを採用したのか。

(A)「御代櫻」でパンダのキャラクターが載っているだけ、という商品を出した。「まず目に留めてほしい」という趣旨で出したもの。

元々、パンダのイラストの載ったカップ酒を販売しており、輸出先の米国で良く売れている。そうしたことから、国内でもパンダのお酒を作ってみた。

<参考:「御代櫻 あじわい純米酒 Moon Panda」(酒泉洞堀一HP)>

<参考:「御代櫻 純米カップ」(御代櫻酒造公式HP)>


(Q)酵母の説明で、「K-701は暫く使っていなかったが、今年、酒質の見直しの中で復活させた」とのお話があったが、具体的にどのように見直したのか。

(A)山田錦の純米酒については、これまでK-1401を使用していた。しかし、味わい深さや酸の観点から、自分の求めるものに対して不足感があった。そこで、K-701のしっかりした濃醇な味わいにもう一度取り組んでみたいと考えた。


◆最後はみんなで集合写真

毎回、恒例の集合写真です。ハイブリッド形式でしたので、現地参加の方とオンライン参加の方、ご一緒に!!


*写真撮影の時のみマスクを外しております


◆まとめ

渡邉さんには、兜LIVE!蔵元トークで4年連続お話をいただきました。昨年のレポートの内容を復習したら、昨年からの変化がより深く重層的に理解できます。経営理念としての「創造・努力・信用」に加え、2022年度のスローガン「現場・現物・現実」で原点に返り、「創造を積み重ねる」ことの大切さが伝わって来るお話でした。

2023年もぜひ、兜LIVE!でお会いしたいですね。お待ちしております!



<渡邉博栄さんをお迎えして開催された過去の「兜LIVE!」レポート>

2021年1月23日

(※)完全リモート開催。リアルタイム・オンライン蔵見学を実施。

2020年1月25日

2019年1月26日



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